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70.「ん? 女の子?」

※今回は主人公視点ではありません。

 

 

 

「シャロン! お願いっ」


「オッケー。これで、ラスト!」



 そんな言葉と共にカマイタチのような見えない刃がトレントを切り刻む。

 トレントはその攻撃を最後に動きを止め、光の粒子となって姿を消していった。



「ふう。やれやれ、いきなり木が襲いかかってきたのには驚いたね」


「だから言ったじゃない。何があるかわからないから、よく注意して行きましょうって」


「だってー、全然ボスが見つからないんだもん。どうせなら他のプレイヤーよりも早く、一番最初に討伐したいじゃん」



 たった今トレントを倒したシャロンの元に戻ってきたエリーザは、腰に手を当て全くもうと溜息を吐く。



「それにしても、まさかこのゲームのトレントがあんなにモンスターっぽくないなんて。まあこれはこれで新鮮だったけど、思っても見なかったねー」 


「それは私も思ったわ~。もうあれはモンスターって言うよりも、木のお化けみたいよね~」


「ちょ、ちょっと怖かった、です」



 エリーザに少し遅れてやって来たマリエルとマレットの二人も会話に加わってきた。

 マリエルは困ったように頬に手を当てながら首を傾げ、マレットはトレントの姿が怖かったようでマリエルの後ろに隠れるように立っている。



「心配しなくて大丈夫よ、マレット。何があっても私が絶対守ってあげるから」


「う、うん。ありがとう、お姉ちゃん」


「おー、格好いいこと言うね! まるで王子様みたいだよっ」


「誰が王子様よ! 私は女よっ」


「ちょっ、暴力反対!」



 現実世界で姉妹であるエリーザとマレット。

 そんな二人の会話を茶化そうとしたシャロンだったが、エリーザが拳を握り振り上げる仕草をみて降参と両手を上げホールドアップする。



「はいは~い。おふざけはその辺りにしておきましょうか~。まだ敵が近くにいるかもしれないんだからね~」



 戦闘中の緊張感が霧散し、ドタバタが始まりそうになったところでマリエルが手をパンパンと叩く。

 


「まったく……あんまり茶化さないでよね、シャロン」


「はーい。すみませんでしたー」


「あんた絶対反省してないわよね? やっぱり少し痛い目を見た方がいいのかしら」


「お、お姉ちゃん。ダメだよ」


「あらあら~」



 また始まりそうになったシャロンとエリーザの痴話喧嘩のようなスキンシップ。

 だがそれは第三者の手によって始まる前に中断されることになった。



「―――ん? 女の子?」



 森の中から現れた一人の男性。

 その姿に気付いたシャロン達は咄嗟にそれぞれの得物を構える。



「待って待って! 僕は敵じゃないからっ、武器を納めてくれ!」



 いきなり自分に向けられた無数の敵意に驚いた男性は、顔の前で両手を伸ばし待ったを掛ける。

 よく見てみると男性はプレイヤーではなくNPCだった。 



 シャロン達は警戒を解くことなくその男性NPCの姿を観察する。

 緑色の髪の毛をしていてねずみ色の外套を身につけており、その外套の隙間から見える男性の体にはポーションと思われる瓶を無数に身につけていた。



「あなた何者? 一体私達に何の用?」



 シャロン達が知りたいと思っていたことをエリーザが代表して男性NPCに問いかける。

 そんな彼女は返答次第ではタダでは済まさないとでも言うかのように、それまで下げていた双剣の剣先を上げ男性に向けた。



「僕はリンクス、リンクス=ストックといいます。この森には仲間達とクエスト発行所の依頼で来ていて、調査をしてました」



 男性NPCはリンクス――リックだった。

 


「それで? 私達にどんな用があるの」


「い、いえ。ただ森を調べていたら何やら話し声のような音が聞こえてきたので、様子を見に来ただけです。音を辿って来てみたら皆さんがいて」



 エリーザとリックの間に沈黙が流れる。

 エリーザはまだ双剣を構えたままリックのことを値踏みするように頭の先から脚まで眺め、リックはリックでその視線を感じ取り嫌な汗を流していた。



「もうその辺にしておきなよ。リンクスさんも嫌がってるでしょ」


「ひゃん!? ちょ、ちょっとシャロン! どこ触ってるのよ!?」


「うへへ、柔らかいのう、いい匂いじゃのう」


「馬鹿なこと言ってないで離れなさいよ!」


「お姉ちゃんっ、お、落ち着いて」



 そんな他人が入り込めないような空気が流れているにも関わらず、シャロンがエリーザに背中から抱きつきマレットは止めようとしたのだが上手く行かず、オロオロしていた。

 抱きつかれた当のたエリーザはいきなりのことで驚き、一瞬でリックのことなど頭から消し飛んでしまい双剣を鞘へと戻す。

 


 鞘へと戻された双剣を見てリックはホッと一安心する。



「どうもすみませんでした~。あの子も悪気があるわけじゃないんです~」


「あ、いえ。僕は気にしてませんから。見ず知らずの人間を警戒するのは当然ですし」


「うふふ、ありがとうございます~」


「ど、どうぞお構いなくっ」



 一安心したリックのところにマリエルが近づき、エリーザの事を謝ってきた。

 その際マリエルはリックの顔を覗き込むように体を近づけてきたため、リックは恥ずかしさのあまり妙な返事をしてしまう。



「そういえば、リンクスさん。ちょっといいですか」


「? なんでしょう」



 一通りエリーザを弄り終えたシャロンがリックに話しかける。

 その後ろではエリーザが肩で息をしていて、マレットがその背中を優しく撫でていた。



「さっき『仲間達と森の調査をしてた』って言ってましたけど、その仲間の方達はどこにいるんですか?」


「それなら僕がやってきたあっちの方にいます。割とここから近い所ですからよかったら皆さんに紹介――」


「リック、ここにいたのか。すぐにここを離れるぞ、急げっ」



 リックがシャロンの質問に答えているところに乱入者が現れる。

 茶髪で服の上からでもわかる鍛え抜かれた体を持つガタイのいい男性。

 それはドランツェ――ドランだった。 



「一体どうしたの、ドラン。そんなに慌てて。他の人はどこ?」


「他の奴等は先に逃がした。残ってるのは俺達だけだ。早くこの場を」


「あのー。何かあったんですか?」



 突然現れたもう一人の男性NPCが、自分たちのことなど眼中になく話を続けていたので、存在のアピールも兼ねてシャロンが慌てた様子を見せるドランに声をかける。

 声をかけられようやくシャロン達四人に気が付いたドランは、全員を一瞥するとすぐに吐き捨てるように言い放つ。



「アンタ達もここを離れるんだ。……いや、危険かもしれんから俺に付いてくるんだ。とにかくここを離れないと」


「ちょっと、いきなり現れて何言ってるのよ。とにかく事情を説明してよ。というかあんた誰よ」



 一方的に話を進めるドランに少々ご立腹のエリーザが腰に手を当てつつドランに話しかける。



「今は時間が惜しい。理由は移動しながら話そう」


「うーん。何だかわからないけど、この人ってリンクスさんのお仲間で合ってますよね?」


「あ、はい、そうです。パーティを組んでるドラン、ドランツェ=スカットンです」


「じゃあ見た目はともかく悪い人でもなさそうだね。みんな、とりあえず今はドランツェさんの言う通りにしようか。これはリーダー命令です」



 まだ何か言おうとするエリーザの反論をリーダー命令で一蹴するシャロン。

 マレットとマリエルはすぐに移動の準備を始め、エリーザも渋々ながら文句を言うこともなく用意を始める。



 ―――だが、少し遅かった。



 リックとドランが現れた方向から聞いたこともない、思わず身を竦ませてしまう大音量の咆哮が轟いた。



「な、なに? 今の」



 いつもの間延びした語尾がなくなるマリエル。

 その誰に言ったわけでもない言葉に答えたのはドランだった。



「――残念だが、全員心を決めてくれ。“奴”が来る」



 森に木霊する咆哮の残響が小さくなり消えていくと、次いで地面から震動が伝わってきた。

 それは一定のリズムで起こり徐々に強くなっていく。



 そして、シャロン、エリーザ、マレット、マリエル、ドラン、リック。

 六人の目の前に黒に近い灰色をした大きな物体が姿を見せる。



「これが、このイベントのボス」 



 その言葉を皮切りに、六人とジェノザウルスの戦いが始まった。






お読み頂きありがとうございます。


今回は主人公の妹視点でした。

次話から元に戻ります。

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