62.「ミイラ取りがミイラになっちゃったみたい」
少し投稿に間が空いてしまいました><;
「よし。ではそろそろ行こうか」
「ああ、そうだね」
紅茶を飲み終え少しメイランと話した後、ウェイトレスのNPCに声をかけ会計を済ませる。
そのまま『ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております』という見送りの言葉を聞きつつ、俺とメイランの二人は街の外に出る門を目指した。
実は紅茶を飲みながら話した結果、すぐに森へと入り実戦にて連携を確認することになったのだ。
向かうのはもちろん【森の中の死闘】のイベント開催地となり、尚且つ、ガルムさんからの指名依頼をこなすあの森だ。
「ところでこのまま森に行くのはいいけど、メイランはあの森でモンスターと戦った経験はあるのか?」
「心配は無用だ。もう一通りあの森に出没するモンスターは網羅した。一対一ならば何が出てきたとしても、森のモンスターなら遅れを取ることはない」
メイランは自信満々にそう言い切った。
「そちらこそどうなのだ?」
「俺? 俺はメイランみたいに自信はないけど、ある程度は戦えると思うよ」
「そうか。ならば楽しみにしておこう」
「あんまり期待しすぎないでくれよ。プレッシャーになるし」
俺の言葉にふふっと笑ってみせるメイラン。
笑った時に僅かに白い歯が見える。
これが漫画やアニメだったらキラリッと歯が謎の光を反射していたことだろう。
そうこうしているうちに門が見えてきた。
俺とメイランのようにこれから街の外に出て行くプレイヤーや、その逆、街の外から戻ってきたプレイヤーで今まで見たことのないくらいの賑わいを見せている。
「こんなにプレイヤーがいたのか。今まで何度かこの門の方には来たけど、こんなに沢山いるのは初めて見たな」
俺がそんな感想を口にしていると背後から女性の声がした。
「それはそうだよ。だってもうすぐイベントなんだから! 少しでも強くなって、情報を集めて、イベントの時に優位に立つためには事前に動いておかないと!」
思いの外近い所から声が聞こえ、俺は思わず『うおっ!?』と変な声を出してしまった。
「イベント(戦い)は始まる前から始まってるんだよ、イオ」
「って、シャロンかよ」
声の主の顔を見てみるとその正体は何を隠そう、俺の妹だった。
何だかんだで直接―ゲームの世界で直接というのも何か変だが―会うのは久しぶりだ。
「イオ、そちらはどなたなのかな?」
「ああ、悪い。紹介するよ、俺の妹でシャロンだ」
「よろしくお願いしまーす」
一瞬メイランの存在を忘れていた俺は、一言詫びを入れてからシャロンを紹介した。
道の真ん中で立ち止まっていると他の通行人の邪魔になるので、俺達三人は連れだって道の端の方へと向かう。
「君はイオの妹だったのか。私は君のお兄さんと一時的にPTを組んでいるメイランという。よろしく頼む」
「ん? メイランさん?」
「そうだが、何か?」
建物と建物の間に良い具合に空いたスペースがあり、俺達はそこまで移動した。
そしてメイランがシャロンに自己紹介をしたのだが、シャロンはメイランの自己紹介を聞いて確かめるように名前を再度確認するように聞き直す。
「いやー、どこかでメイランってアバターネームを聞いたことがあるような?
「私の名前を? どこでかな」
「うーん、っと……どこだったかな」
シャロンは胸の前で腕を組んでうんうん唸りながら頭を捻る。
俺はその様子をただ何となく見ていた。
「――あっ! シャロンったらっ、こんな所にいたのね!」
シャロンという単語に反応してその場にいた全員が声のした方を見る。
そこには女性プレイヤーが、見るからに怒った様子でこちらに向かってきていた。
しかもその女性は俺も一度会って話した事がある人物だ。
「エリーザどうしたの、そんなに怒っちゃって。せっかくの可愛い顔が台無しになっちゃうよ」
「私を怒らせてるシャロンにだけは言われたくないわよ!」
そう、女性は以前シャロンに紹介されたエリーザさんだった。
彼女とはシャロンが俺の事をギルドメンバーに誘おうと考え、その考えを直接聞いた時に会った以来の再開だ。
あの時は俺のギルド加入に猛反発していた。
「とにかくもう他のPTメンバーは集合場所に来てるの。あなただけが幾ら待ってもこないから、探しに来たのよ」
「そういえばもうそんな時間だったね。ごめんごめん、ちょっと知り合いに会ったから話し込んじゃって」
「知り合い? ――って、あなたは」
ここでようやくエリーザは俺の事に気が付いたようで、俺が軽く会釈して挨拶すると驚いたようだった。
そして次いでメイランに顔を見た時、彼女は『ああっ!?』と俺の時とは比べものにならないくらい驚いてみせる。
「メ、メイランさんじゃないですかっ」
「ああ、君は確かエリーザだったかな? 久しぶりだね」
「は、はいっ! お久しぶりですっ」
二人はお互いに知り合いだったようだ。
メイランが軽く微笑みながら話しかけると、エリーザさんはギクシャクしながら鹿威しの様に首を上げ下げしていた。
若干頬も赤らんでいるように見える。
「なんだメイラン、エリーザさんと知り合いだったのか」
「ああ。ゲーム公式スタートのすぐ後、フォートの街でクエストで一緒になったことがある」
何とも世界は狭い――いや、この“∞―エンドレス―”の世界はまだ街は二つしかなかったか。
「ああっ、思い出した。メイランさんってエリーザが言ってたカッコイイ姫騎士さんだ!」
「ちょ、ちょっとシャロンっ」
「いやー、やっとすっきりしたよ。そうだそうだ、私が聞いたメイランさんの名前ってエリーザが言ってたんだった」
手をばたつかせて慌てるエリーザさんを後目に、シャロンは一仕事終えた後のように大きく息を吐きながら額の汗を拭うような仕草を見せる。
「姫騎士? 姫騎士ってなんだろう」
「さあ。私も初耳だ」
「え? 自分の事なのに知らないの」
「さっぱりだな」
姫騎士というのはなんだろうと思いメイランの方を見てみたが、視線があった彼女からは予想外の返事が返ってきた。
「あー、姫騎士って言うのは勝手に付けた渾名とか、通り名とかそんなのだよ。エリーザが前『すっごくカッコイイ女のプレイヤーがいたたの! 剣士、いえ、あの人は“姫騎士”ね!』って、それはもう興奮してむぐぐぐっ!?」
「それ以上は言わないでえええ!」
シャロンの口を背後からエリーザの両手が塞いだ。
だが時既に遅く、もう全て聞き終えた後だった。
「かっこいい――のかな、姫騎士。本人としてはどう?」
「やめてくれ。恥ずかしいじゃないか」
メイランは愛想笑いのような出来の悪い笑みを浮かべていた。
そしてシャロンとエリーザさん二人の取っ組み合いは、少し目を離した隙にヒートアップしていく。
「んむううっ! むううーーー!」
未だに口を押さえられていて声にならない声を上げるシャロン。
純粋な魔法使いである妹は剣士であるエリーザさんの拘束を、力の差で解くことが出来ずジタバタするしかないようだ。
しかもどれだけ力を込めているのだろうか。
僅かにだがシャロンの足裏は地面から離れ宙に浮いていた。
現実世界でこんな事をしたら、首の骨とかが折れてしまうかもしれない。
「――マリエルさんこっちです。こっちからお姉ちゃんの反応があります」
「あらそう~。まったく、エリーザまで帰ってこなくなっちゃうなんてね~」
「ミイラ取りがミイラになっちゃったみたいですね。………ふわっ!?」
「あらあら~。これはいったいどういう状況なのかしら~」
通りの向こうからまたもや女性プレイヤーが二人こちらにやってくるのが見える。
その二人もエリーザさんと同じく俺が以前会った、シャロンのフレンドにしてギルドメンバーになる予定の人達、エリーザの妹でもあるマレットちゃんと、間延びした口調が特徴的なマリエルさんだった。
お読み頂きありがとうございます。
仕事が忙しくてなかなか執筆がはかどりません(汗)
エリーザ・マレット・マリエルの三人の登場人物紹介は、次回の投稿で書く予定です。
次か次の次で戦闘回になるはずっ。




