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61.「ちょうどあそこにカフェがある」

7月最初の投稿です。

そして今日から仕事が忙しくなる><;

 

 

 

「俺はイオだ。これからよろしく」


「こちらこそ」



 最後に手にグッと力を入れてから握手した手を離す。

 メイランの手は俺の手よりも体温が低いのか、ちょっとひんやりしていた。

 俺が力を入れるとそれに答えるように予想よりも強ち力で握り替えしてきたので、女性ではあるがステータス的な力の強さはあるようだ。



「さて。これからどうすればいいのだろうか」



 メイランはそう俺に問いかけてきた。

 だが特に今すぐやっておく必要性があることに俺は心当たりはない。

 依頼はガルムさんがこれから書くのだろうから、ギルドの方に指名依頼が届くのはまだ先だろう。



「うーん……そうだ、じゃあとりあえずPT(パーティ)を組んでおこうか。一緒にガルムさんの依頼を受けるわけだし」


「ああ、構わない」



 考えていると俺はPTを組むという事を思いついた。

 そしてメイランにそれを伝えるとなんの躊躇いもなく承諾されたため、もう一度手を差し出しメイランと握手をする。

 PTを組むためにはメンバーに加えたいプレイヤーと、握手をする必要があるからだ。



 ポォーーン!



《プレイヤー“メイラン”にPT申請を出しました》


《プレイヤー“メイラン”がPTに参加しました。 メンバー:【イオ】 【メイラン】》



「どうだろう? こちらは確認できたが」


「ああ、大丈夫。こっちもちゃんとPT組めたみたいだから」


「それはよかった」



 アナウンスを知らせる音が頭に響き、半透明のウィンドウが中に現れ俺とメイランが無事PTメンバーになったことを伝えてきた。



「ではこらからどうしようか」


「そうだな、とりあえずもうガルムさんもどこかに行っちゃったし、店を出ようか。後のことは歩きながらでも考えよう」


「了解した、リーダー」


「り、リーダー? それって俺のこと?」



 突然メイランは俺の事を『リーダー』と呼んだ。

 部屋を出ようと扉の方に体を向けていた俺は、呼ばれ慣れていない呼び名に反応して後ろに続こうとしていたメイランを振り返る。



「もちろんだ。もう私達はPTメンバー。そしてリーダーはイオ、君だ。ならば私がPTリーダーのことを“リーダー”と呼ぶのは普通のことだろう」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。いつの間に俺がPTリーダーになってたんだ」


「なんだ、知らないのか? PTリーダーは基本的にメンバーに参加申請を出した者がなるのだぞ。今回で言うならリーダーが私に申請を出し、私がそれを受けた形になる。したがってリーダーは君ということだ」



 メイランは淡々と説明する。

 付け加えるとアナウンスの後に出現するウィンドウに、《メンバー:【○○○】》と表示されるのだが、最初にアバターネームが書かれているプレイヤーがそのPTのリーダーとなるらしい。

 ゲーム初日にシャロンとセイと俺の三人でPTを組んだが、リーダーについては全く触れていなかったため知らなかった。

 確かあの時はシャロンのアバターネームが最初に書いてあったはずなので、あのPTのリーダーはシャロンだったということだろう。



「そうだったのか。知らなかったよ」


「まあPTリーダーだからといって特別何かする必要があるわけではない。もしリーダーという呼び方が嫌だったら変えるが」


「うん、そうだね。出来ればリーダーって呼ぶのはやめてもらいたいかな」


「ではイオと呼ばせてもらう。そちらも私のことはメイランと呼んでくれ」


「了解、メイラン」



 話が一区切りついたところで俺達は再び店を出るため足を踏み出した。

 点灯の方に出てみるとガルムさんの弟子である男性が、店内に展示されている武器や防具と行った商品にハタキを掛けていた。

 脇の壁にはモップが立て掛けられている。

 どうやら掃除をしているようだ。



「おや? 話はつきましたか」



 男性は俺達に気が付くと掃除の手を止め話しかけてきた。

 俺は部屋であった事を掻い摘んで話す。

 そしてガルムさんが指名依頼にメイランも加えたという事を話すと、一瞬驚いた顔を見せメイランの方を見たが直ぐさま元の顔に戻り、俺達に『頑張ってください』と応援の言葉を掛けてくれた。



「じゃあお邪魔しました」


「迷惑を掛けてしまい申し訳なかった。今度は普通の客としてこよう」


「ええ、またのお越しをお待ちしております」



 わざわざ店の外まで出てきて見送ってくれた男性にもう一度頭を下げ、俺とメイランは道を歩き始めた。

 少し歩いてからガルムさんの鍛冶屋の方を窺ってみたが、男性はもう店内へと引き返したようだ。

 店先にはその姿はない。



「これからどうしようか」



 俺は隣を歩くメイランに話しかける。

 彼女は俺よりもやや身長が低いので俺の言葉に反応すると、僅かに顔を上げ俺の方を見上げてきた。



「とりあえずお互いのことについて把握する必要があるだろう。戦闘スタイルなど知っておかないと戦闘の際に支障が出てしまう」



 キリッとした顔つきで俺から視線を外さず告げるメイラン。

 歩く度に薄紫の髪の毛はサラサラと宙を舞い、太陽の光を反射してキラキラして見える。

 女性騎士といった見た目と背筋をピンと伸ばした姿勢で歩く彼女は、男の俺から見ても格好良くて尚且つ綺麗だった。



『おい、あの子見てみろよ。すっげー綺麗じゃね?』


『おーホントだ。まあこのゲームはアバターの外見を自由に弄れるから、現実の方はどうかわからないけどな』


『でも美的センス抜群じゃね? あのアバターを見る限り』


『まあ……そうだな』



 少し離れた場所に立ち止まっていたプレイヤーの男性二人が、メイランの方を見て話す声が聞こえてくる。

 その他にも今すれ違ったNPCの男性、オープンカフェで食事をしているプレイヤーの女性なども、チラチラとメイランのことを窺っていた。



「? おい、どうかしたのか」



 自分が話しかけた相手がいつまでも返事をしなかったことを不信に思ったのか、メイランは軽く俺の肩を叩いてきた。



 どうやら俺の隣を歩く当の本人は、周囲から自分に向けられている視線に全く気が付いていないようだった。

 視線を直接向けられたわけではない俺ですら、少し周囲に気をやると気が付いたことなのに。

 意外とメイランは天然というか、鈍感なのかもしれない。



「ああ、ごめん。なんでもないよ」


「そうか。それならいいんだ」



 他の事に気が向いてしまっていた俺は、拝み手しながら軽く頭を下げ謝った。

 メイランは元からさほど気にしていなかったようで、気にした様子もなく許してくれる。



「ちょうどあそこにカフェがある。あそこなら落ち着いて話が出来るだろう。どうだろうか?」



 そう言いながらメイランが指さしたのは、ついさっき俺が見ていたオープンカフェだった。

 オープンカフェにはメイランのことを窺っていた女性プレイヤーがいたのだが、彼女は突然メイランが自分(実際には彼女ではなくカフェ自体)を指さしたので驚き、そそくさと席を立ってどこかに行ってしまった。

 自分が盗み見ているのがバレてしまったと勘違いしたのだろう。

 やや早歩きで去っていく彼女の背中は、すぐに人混みの中に消えてしまった。



「ちょうどあの席が空いたな。あそこに座ろう」



 そして女性プレイヤーが座っていた場所にスタスタと歩いてくメイラン。

 俺はそんな彼女に見えない角度で苦笑いを浮かべ、その後に続いて席に座った。



「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか」



 席に着くとNPCのウェイトレスがやってきた。

 俺とメイランは無難に紅茶を頼む。

 まわりにいる他のお客の大半が紅茶を頼んでいた上、テーブルに備え付けられていた小さなメニュー表にも【当店オススメ】と書かれていたからだ。

 


「かしこまりました。少々お待ちください」



 注文を終えるとウェイトレスは店内へと入っていった。

 この場には俺とメイランしか残っていない。

 俺は早々に話を切り出す。



「じゃあまずは俺から話そうか。俺は槍を武器にしてる。あと魔法も少し使えるから遠距離攻撃も出来るよ」


「槍と魔法か。それは好都合だったかもしれないな。私はこれら(・・・)を使う」



 そう言ってメイランが何もないところから取り出したのは、短い二本の剣だった。



「これって短剣っていうのかな?」


「いや、私のこれはただの短剣ではなく、二本で一対の双剣という代物だ。見ての通りリーチが短いため近接戦闘しか出来ない。私は魔法も回復魔法しか取っていないので、遠距離攻撃は出来ない」


「なるほど、だから好都合だったのか」


「そうだ。中遠距離の攻撃が出来るイオと近距離の私。相性が良いのではないだろうか」



 確かに頭の中で考えるだけなら相性は良いように思う。

 だが実際に連携が取れるかどうかというのは、相性云々とはまた別の物だろう。



「そうだね。バランスは良いと思う。どうかな、ちょっと街の外に出てみない?」


「実戦で確かめて見よう、と言うことか」


「まあそんな感じだね」


「いいだろう。私も異論はない、ではさっそく――」



 メイランが腰を上げようとしたところで、俺達の席に影が差した。



「お待たせ致しました。こちらご注文の品となります」



 先程のウェイトレスが俺とメイランの前に、琥珀色の紅茶が注がれたティーカップを置く。

 次いでミルクや砂糖が入った小瓶とスプーンを置くと、『ごゆっくりどうぞ』と言い残しその場を後にした。



「………」


「あー、とりあえず飲んでからにしようか」



 椅子から浮かせていた腰を再び下ろすメイランを、俺は視界の端に捉えながら紅茶に口を付ける。

 現実世界で飲んだティーパックの紅茶とは、比べものにならないくらい美味しい紅茶だった。







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 以下、登場人物紹介です。

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【メイラン】



 女性。モデル体型。十代半ば。プレイヤーアバター。


 主人公が出会った女性プレイヤー。

 ゲーム内のアバターネーム“メイラン”のみ判明しており、現実世界の方の本名は不明。


 男っぽい口調で話すが礼を軽んじているわけではない。

 容姿は整っており独特な口調もあってカッコイイ系の美人さん。

 年齢に似つかわしくない色気がある。


 今までのゲーム歴は不明だが“∞”ではソロで活動していた模様。

 見返したい相手がいるらしい。


 同性からモテる麗人。


 ゲーム内では両手に剣を持つ双剣で近接戦を得意とする戦闘スタイル。







最後までお読み頂きありがとうございます。


メイランが使う『双剣』は【剣】スキルから条件を踏むことで使えるようになる【双剣】スキルです。

基本的な武器スキルの派生を登場させたのは、何だかんだでこれが初めてです。

主人公の【槍】スキルはいったいどんな変貌を遂げるのでしょうか?

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