表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/73

50.「クエスト名“ガルムからの指名依頼【1】”」

記念?すべき第50話!

私事ですが『50』という数字は割と好きな数字です。


※誤字修正・加筆5/24

 

 

 

 目が覚めてみると日が昇っていた。

 部屋の窓からは太陽の光と、通りを行き交う人々の音が聞こえる。



「うー、んっ! あー、何だか変な感じだな」



 俺は手を組んで頭上に目一杯持ち上げて、伸びの運動をする。

 ここはゲームの中なので疲労感なんかはなかったが、朝起きるとついこの行動をやってしまう。



 変だと感じたのは、時間が一瞬のうちに過ぎてしまったように感じたからだ。

 感覚としては数秒も経っていないような気がする。

 まあ現実の方でも同じ事が言えるかもしれないけど。

 


「よしっと。今日はガルムさんが依頼を出してるはずだから、ギルドの方に行ってみないとな」



 さっそく俺は冒険者ギルド(正式名称:クエスト発行所)に行くため、装備を付け準備を整え部屋を出た。

 部屋を出ると階下からいい匂いが漂ってくる。

 俺はギルドに行くということも忘れて、いい匂いに釣られて階段を下りた。



「おう、おはようさん」


「おはようございます、ロジィさん」



 階段を下りきり酒場に辿り着く。

 そこには朝食を食べている人々がいて、比較的ゆったりとした空気が流れていた。

 夜の酒を飲む場とはまた違った一面を見せている。



「あら、あなたがイオさんなのね」



 店の中を見渡していると、ロジィさんの後ろから現れた女性に声をかけられた。



 背中の中程まで伸ばした綺麗な金髪で、垂れ目と左目の端の方にある泣き黒子が印象的な、三十くらいの色気漂う女性だ。

 カウンターの中にいると言うことはこの店の従業員なのだろう。

 その証拠にロジィさんと同じエプロンを着けている。 



「なかなか会う機会がなくて、挨拶が遅れてしまってごめんなさい。私はエレノア、この人の妻よ。それで宿の方は私の担当だから、何かあったら私に言ってちょうだいね」



 エレノアさんはそう言い右手を差し出してきた。

 俺もそれに答えて右手をだして握手する。



「はじめましてエレノアさん、お世話になってます。今のところ何も不都合なことはありませんので、ご心配ありがとうございます」


「いえいえ、それはよかったです」



 そのままエレノアさんに案内され、俺はカウンターの一角にある席に着いた。

 俺が座るのを見届けると、エレノアさんは少々お待ち下さいと言い残し、またカウンターの奥へと入っていく。


 

「おう、イオ。お前朝食は食べるだろ? パンと肉、どっちがいい?」



 後退するようにカウンター越しにロジィさんが話しかけてきた。

 手には中華鍋みたいな物が持たれている。



「あ、はい、食べます。えっと、……じゃあパンでお願いします」


「あいよ。じゃあちょっと待っててくれ」



 ロジィさんが奥へと引っ込むと、それに代わるように今度はエレノアさんが奥から出てきた。



「はい、どうぞ」


「あ、どうもありがとうございます」



 どうやらお冷やを取りに行っていたみたいだ。

 エレノアさんはどうぞと言いながら、俺の前に水が入ったカップを優しく置く。



「今日は何かご予定はあるんですか?」


「ええ、まあ。ちょっとギルドの方へ行ってみようかと思って」


「“ぎるど”ですか?」


「あー、すみません。クエスト発行所のことです。俺が勝手にギルドって呼んでるんです」


「そうなんですか。そういえば最近、街中でギルドって言葉をよく聞きますね。もしかしたらそれも発行所のことだったのかしら?」



 エレノアさんが言う街中で『ギルド』と言っていた人は、おそらく俺と同じプレイヤーだろう。

 最近よく聞くということは、もう多くのプレイヤーが第一の街『フォート』から、この第二の街『ヴァイス』にやって来ているのかもしれないな。



「おうっ、またせたな!」


「朝食が来たみたいね。それじゃあイオさん、ごゆっくりどうぞ」


「ありがとうございます」



 ロジィさんが朝食を持ってきてエレノアさんとの会話も終わった。



 今日の朝食は黒コッペパンに似たパンと、ミルクの香りがする温かいスープ。

 それにサラダを加えてデザートに、輪切りにされた黄色い果肉のフルーツが付いていた。



「いただきます」



 俺は手を合わせてから料理に手を伸ばし、美味しいロジィさんの料理を堪能した。



 ――――――。

 ――――。

 ――。





 朝食を綺麗に食べ終えた俺は、予定通りギルドへとやって来た。

 建物に入り一直線上にあったカウンターまで足を進める。

 ちょうどそこでは職員の女性と男性が何やら話し込んでいたが、俺が近づく前に話し終わったようで去っていく。

 俺は他に誰も並んでいない事を確認して更に足を進めた。



「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか」



 俺が女性の前までやってくると、彼女はニッコリ笑って俺を迎えてくれた。

 前にロックベアー討伐の報酬をもらいに来た時に会った、あの女の子とは違う女性だ。



「あの、俺宛に指名依頼が来てる筈なんですけど」


「かしこまりました。確認致しますので、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「はい、イオっていいます」


「申し訳ありません。ここ(・・)に手を置きながらもう一度お願い出来ますか」



 女性はカウンターの下でゴソゴソしたかと思うと、白くて丸い物体を取り出した。

 鏡面加工したようにツルツルピカピカしていて、石で出来たボウリングの球みたいだ。



「ここです。ここにお願いします」 



 女性はカウンターの上に取り出したその球を、クルッと回転させある部分を俺の方に向けて指さす。

 見てみるとその球の表面は手の形に窪んでいて、右手がちょうどはまるようになっていた。



「こう、ですか?」


「はい結構です。お名前をお願いします」


「イオです」



 俺が自分のアバターネームを告げると、球からオーブンのタイマーのような『チーン!』という音が鳴った。



「ご本人だと確認が取れました。指名依頼を確認して参りますので、少々お待ち下さい」



 女性は座っていた椅子から立ち上がり一礼し、受付のカウンター内にあった棚から書類の束を取り出した。



 どうやら今のは俺が本当に『イオ』だったのか確認するための物だったみたいだ。

 俺という固体がイオだと調べる物なのか、俺が嘘をついているのか確認する物なのかはわからないけど。

 

 

 ……一分もしないうちに女性が戻ってきた。

 女性の手には一枚の紙が持たれている。



「お待たせ致しました。イオ様には、ガルム様より指名依頼が来ております。こちらがその依頼書です。ご確認下さい」



 俺はどうもと言って紙を受け取った。

 そして、書かれていた内容を読んでみる。



 ――――――――――



【指名依頼】


 依頼者:ガラム


 指名先:イオ


 内容:サーベラの牙6本の納品。


 条件:期限は無期限。

    牙は成獣からしか採らないこと。

    少々の傷は構わないが折れたりひび割れを    起こしている牙は納品不可。


 成功報酬:次の指名依頼



 ――――――――――



 間違いなくガルムさんから出された、俺宛の指名依頼だった。

 今まで一度もギルドを利用したことがなかったので、今回の依頼が普通なのか以上なのか、簡単なのか難しいのかはサッパリわからない。



「あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」


「何でしょうか」



 わからないことがあったら、わからないままにしておかない。

『聞くは一時(いっとき)の恥、聞かぬは一生の恥』だ。



「この『サーベラ』っていうのはどんな生き物なんですか? 牙を納品ってことは倒さないといけないと思うんですけど、強いんですかね?」


「サーベラは森に住む肉食のモンスターです。強さはハッキリとこうだとは断言出来ませんが、その長い牙は鋭いのでそれさえ注意しておけば、致命傷までは負わないかと」


「そうですか……」


「よろしければ図鑑をご覧になりますか? モンスターの絵姿や特徴、生態などが書かれておりますが」


「そんなのがあるんですか? 是非お願いします」



 またもや女性はカウンターの下から(くだん)の図鑑を取り出し、出しっぱなしになっていた手形付きの球をしまって、代わりに分厚い本をカウンターの上へと置いた。



 俺は一言断りを入れてから図鑑を捲った。

 一ページごとに一体のモンスターについて書かれていて、手書きのモンスターの絵と文章が書いてある。

 今回調べたいのは『サーベラ』のページだが、途中で見覚えのある『ヴォルフ』なんかが書いてあり、興味があったが目の前で女性が俺の事を見ているので、本来の目的から脱線することは出来なかった。



「――あった。これだ」



 図鑑は五十音順に書いてあったので、探すのに時間は掛からなかった。



 そのページに書かれていた『サーベラ』の絵は、薄緑色のハイエナのような四足歩行の生き物に、絶滅したサーベルタイガーのような長い特徴的な牙が上顎から二本生えた姿だった。



「……体長は大きい個体で約一メートル強(尻尾は含まず)。牙が三〇センチ以上まで伸びる。牙は噛み付き突き刺すだけでなく、頭を振って切り裂くことも出来るので要注意。群れることは殆ど無く、森や砂漠、岩山など広く分布していて、環境に合わせた体色をしている、か」



 俺はそこまで読んで図鑑を閉じた。

 そして図鑑を女性の方へと差し出す。



「ありがとうございました。色々勉強になりました」


「それはよかったです。他に何かお聞きしたいことはありますか」


「牙の納品はここで出来るんですか?」


「いえ、こちらは依頼の受注のみとなっておりますので、依頼が完了しましたらあちらのカウンターの方へお願い致します」



 女性が手で示したのは前にドランとリックと一緒に向かった場所だった。

 

 

「わかりました。どうもありがとうございます」


「いえ、それでは健闘をお祈り致します」



 俺は女性のお辞儀に軽く返す。

 その時だった。

 手に持ったままだった依頼書が消えてしまったのは。



 ポォーーン!



《クエストを受けました。クエスト名“ガルムからの指名依頼【1】”は、ステータスから進行状況を確認することが出来ます》






 ============

 以下、登場人物紹介です。

 ============



【エレノア=フィリプス】


 女性。NPC。???。女将さん。


 ヴァイスの街にて店を開くロジィの妻で宿屋担当。

 主人公は見た目から三十歳くらいだと予想したが、二十代後半と言っても通用しそうな容姿をしている。

 だが本当の年齢はもっと上らしい。

 性格よし、顔よし、家事万能と器量が揃った彼女は、男女関係なく人気がある。

 

 女性からは羨ましがられているが、本人の性格もあり妬まれることはない。

 男性からは夫がいるにもかかわらず、アプローチを度々受けるがロジィの事を心から愛しているため軽く流される。

 それでもしつこい輩は常連男性客等から、紳士協定違反として制裁が加えられるらしい。


 自分よりも料理が美味しい夫の腕に、内心ちょっぴりふて腐れている。


 ご近所のマドンナ。






最後までご覧頂きありがとうございました。


PS3でエースコンバットの配信が始まりましたね。

それはさておき、クエストの開始です。

ターゲットは『サーベラ』で、牙の納品が完遂条件。

次話では戦闘を予定しています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ