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38.「少し熱くなりすぎたようだ」

予定が狂いログアウトまで話を持って行けませんでした(汗)

もうちょっとだけゲームパートが続きます。


※誤字修正4/21

 

 

 

 俺、ドラン、リックの三人はとりあえず、市場の方へと行くことにする。

 クエスト発行所に行く道すがら、案内もしてもらったので道はもう大丈夫だ。



「いったんどこかで休まないか。報酬の分配についても話し合いがいるだろう」



 とりあえずいったん落ち着こうという話になり、市場の屋台で適当な軽食を買う。

 俺が買ったのはハンバーガーみたいな見た目の物で、バンズの間にはチャーシューみたいなスライスされた肉が挟まっている。

 ドランは肉の串焼きを買っていて、リックはホットドックみたいな物を買っていた。



「あそこのベンチが空いてるよ」



 買った商品を手に持ちながら人を避けつつ歩いて行くと、フォートにあったのよりは狭いが広場に行き着き、そこに設置されていたベンチに三人で腰掛けることにした。



「ふぃ~。……今日は色々あったねぇ」


「……そうだな」



 リックが緊張が解けたかのように息を吐く。

 しばし無言になり、俺達はそれぞれ買った食べ物をモソモソと食べていく。

 結局全員が食べ終わるまで誰も口を開くことはなかった。



「――報酬の分配だが、俺はいらん。お前達二人で分けてくれ。80,000Lだったから、その方が40,000ずつになって分けやすいしな」



 ドランが唐突にそんなことを言い出した。

 それを聞いて俺とリックは反論の声を上げる。



「いや、それはダメだ。ロックベアーとの戦闘ではドランが一番活躍したんだから、ドランがもらわないでどうする」


「そうだよ。それに、報酬をいらないって言うのは僕の方なんだから。僕、ほとんど役に立ってなかったし」



 俺は三人で分けるべきだと主張し、リックは自分が報酬を受け取らないと言い出す。

 今度はリックに向かって俺は反論した。



「リック、リックだってちゃんと戦闘に参加してただろ。後ろで隠れていて何もしなかったならまだしも、ちゃんと魔法で攻撃したり、ドランの攻撃のために囮までやって見せたじゃないか」


「でも、ダメージらしいダメージなんて与えられなかったし――」


「待ってくれ。そもそも二人を巻き込んでヴァイスに向かったのは、薬を届けたいという俺の個人的な用事のせいだ。そのせいで危険な目に遭わせてしまったのだから、その詫びも兼ねて――」



 俺達の会話は平行線の兆しを見せ始めた。

 しかもそれぞれが自分の主張を曲げないので、終いにはだんだんヒートアップしていき、語尾が強くなってきてしまう。



 ザワザワ、ザワ、ザワ―――。



『なんだなんだ? 喧嘩か?』


『騎士の人呼んできた方がいいかな』


『男三人でなにやってんだか』


『えっ!? 何っ、男の三角関係ですって!?』


『どこどこ! どこよっ』


『あのマッチョの人と灰色のもじゃもじゃ頭の人が、真ん中に座ってる純朴そうな男を取り合ってると見たっ!』


『『『キャアアアッ!』』』



 会話に熱中していたところに、女性の悲鳴?歓声?

 とりあえず甲高い大きな声が耳に入ってきて、俺はハッと我に返った。

 俺達は少なからず人々の注目を集めてしまっていたようだ。

 少なくない視線が集まっている。



「二人とも一度落ち着こう。ほら、周りの迷惑にもなるし、な?」



 俺が二人にそう言うと、二人も我に返った様子を見せ、そして自分たちに集まっていた視線にたじろぐ。



「すまない。少し熱くなりすぎたようだ」


「僕も。すみませんでした」



 とりあえずクールダウンすることには成功したようだ。

 俺達はそれぞれ謝ってベンチに座り直すことにした。



 その様子を見ていた野次馬の人達も、俺達が落ち着いたことを確認すると散り散りになってその場を後にする。



『『『――チッ!』』』



 なにやら女性数人がこっちを見ながら、何の前触れもなくいきなり盛大な舌打ちをしていった。

 ……何か気に障ることでもしちゃったのかな?



「じゃあ整理しようか」


 

 気を取り直して俺は二人の注目を集めるように口を開く。



「ドランは『俺とリックに自分の用事のせいで、迷惑を掛けてしまったから報酬はいらない』。リックは『戦闘の時にあんまり役に立てなかったと思うから報酬はいらない』。要約するとこう言うことだよな」



 俺の言葉をちゃんと聞いて、間違いないと答える二人。



「そして俺の言い分だけど、俺は三人でちゃんと分けるべきだと思う。ドランのは別に気にするようなことでもないし、リックは自分を過小評価しすぎてると思うぞ」



 話を途中で区切り、間を置いてから二人の顔を見て続ける。



「それにいいのか? 二人の言い分を聞いちゃったら、俺が報酬全部もらっちゃうことになるんだぞ?」



 ドランは自分はいらないから、俺とリックで分けろと言い。

 リックも自分はいらないから、俺とドランで分けろと言う。

 そのままこれを採用したら自動的に、俺だけが報酬をもらうことになってしまう。



「それでも一向に構わん」


「僕も。というか、よく考えたらイオがトドメ刺したんだったよね? だったらイオが全部もらうのも頷けるよね」


「そうだな。付け加えるなら、イオのおかげで街道を通れた。そのお礼もまだだったな」



 なんだか流れがおかしくなってきた。

 さっきまで『自分はいらない。そっちで分けろ』と主張していた二人だったが、今度は『いかにして俺に報酬を受け取らせるか』にすり替わっている。



「あのなー………」



 俺は文句を言おうとしたが、あることを思いついて、変なところで言葉を止めてしまう。

 その不自然さに違和感を覚えたドランとリックの二人は、あーだこーだと言うのを止めて俺の事を見る。

 


 ちょうどいいので、俺は今さっき思いついたことを実行に移した。



「よしわかった。じゃあ俺が報酬をもらうよ」



 俺がそういうと二人は渋る様子を見せることもなく、クエスト発行所でもらった袋ごと俺に手渡してきた。

 それを受け取った俺は、袋の口を開き中身を確認した。

 中には金色に光る硬貨が八枚入っていて、試しに一枚手に取ってみると表面には、『10,000』と書かれている。



 俺はまず硬貨を三枚、30,000Lを手に取った。



「話は変わるんだけど、……ドラン」


「ん? なんだ」



 俺はドランの方に体を向ける。



「弟のトーラスくんにお見舞いの品を贈りたいんだ。だけどどんなのがいいのか俺にはわからないから、コレ(・・)で何か買ってトーラスくんに『イオからのお見舞いだ」って言って渡しておいてくれ。釣りはいらない」



 ドランの手を無理矢理引き寄せて、その手の中に30,000Lを握らせた。



「お、おい」


「あとリックのも話があるんだ」



 今度はリックと向かい合う。



「実は俺【薬師】スキル持ってるんだ。だけどまだ《調合》ってしたことがないんだ。リックの家は薬屋でリックも【薬師】持ってるんだろ? 今度俺に《調合》のレクチャーしてくれないか」


「え? はえ?」



 捲し立てるように話を進める俺に、リックは目を丸くしていた。



「もちろんタダでとは言わないからさ。ほら、今この場でお礼(・・)の前払いしておくから。頼むよ」



 ドランに引き続きリックの手も取って、その手に30,000Lを握らせた。



 俺が思いついたのはつまりこういうことだ。

 報酬を受け取りたがらない二人に、『いったん俺がもらった報酬を、理由を付けて二人に渡す』という何とも単純なアイディア。

 ちょっと無理矢理気味になった感は否めない。

 でもこれなら二人も断りにくいんじゃないかと思う。



「おいイオ。今のはどういうことだ」



 ダメだった。

 やっぱり無理矢理だったのがいけいなかったか。



「どうもこうも。俺はもらった報酬を好きに使っただけだ」



 俺はあえて強気の姿勢を取る。



「トーラスくんの事は俺の心配だし、お見舞いはどうせなら喜んでもらいたいからね。ドランは家族なんだから好みを知ってそうだと思ったから、単に頼んだだけだよ」


「………」



 ドランが無言で俺の目を真っ直ぐ見てきた。

 穴が空きそうな視線から逃げることなく、俺もドランの目を見つめ返す。

 俺から送る視線には、暗に『返してももう受け取らないぞ』という意味合いを込めてみる。



「……まったく、お前と来たら……。わかった、コレでアイツの好きな物でも買ってくることにする。もちろん、お前からの贈り物だって言ってな」



 ドランは観念して受け取った。

 こんな形になってしまったけど、トーラスくんには元々お見舞いの品を贈ろうと思っていたので、別に気にすることでもない。



「わ、わかったよ! 僕の知ってる調合レシピを教えてあげるからっ」



 リックは鼻息荒く、拳を握ってズイーッと俺に顔を近づけて勢い込む。

【薬師】スキルの《調合》を教えてもらうっていうのは、さっきとっさに思いついた理由付けだったけど、自画自賛になるがナイス閃きだったと思う。

 これでポーション類の自給自足が一歩近づいた。





お読み頂きありがとうございました!


次話こそはログアウトさせたいっ><;


今度『登場人物の一覧』を投稿したいと考えています。

サブタイトルの数字がずれてしまうのは避けたいので、本編の後におまけのような形で書きたいと思います。

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