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35.「事情聴取」

10万PVを超えました!

ご覧頂きありがとうございます。


※誤字修正6/25

 

 

 

 ザ、ザ、ザ、ザ―――。



「でもよかったのか?」



 俺は前を歩くドランの背中に向けて声を掛けた。



「何がだ」



 ドランは振り返ることもなく、前を向いて歩きながら答える。



「いや、ドランのお母さんに会わなくて良かったのかな? と思ってさ」



 一番の目的だったトーラスくんに会って、薬を渡すことは達成出来た。

 だけど、久しぶりに帰ってきたというのに、ドランは家族に会うこともなく今こうして出かけている。



「あ~、メイアさん――あ、ドランのお母さんはメイアって言う名前なんですけど、あの時はちょうど寝てたみたでしたから。仕方がないよ」



 何故かドランではなくリックが答えた。

 そして苦笑いを浮かべてドランと顔を見合わせる。



「んん? どういうこと?」



 俺の頭の中は『?』で一杯だった。



「……お袋は寝起きが悪いんだ」



 ドランが若干肩を落として小さく溜息を吐くように言った。



「自分で起きる場合はその限りじゃないんだが、誰かに寝ているところを起こされると……攻撃的になる」



 何だかドランがどこか遠い所を見る目をして空を見上げる。

 さらに、どういうわけかリックまで同じ行動を取っていた。



アレ(・・)は、痛いよね……。アレだったらモンスターだって倒せるんじゃないかな。ハハハハ」



 乾いた笑い声を上げるリックをみた通りを歩く一般人は、何か悪い気配を感じ取って俺達を避けるようにして歩いて行く。

 ドランと俺がリックの肩を掴んで、『帰ってこい』と体を揺さぶることでリックは現世に戻ってくることが出来た。



「はっ!? 僕は一体何を」


「いい、思い出すな。どうでもいいことだ」


「ドラン? そうだ、僕達は騎士団の詰所に向かってたんだった」


「そうだ。だから行くぞ」



 そんな二人のやりとりを見ていた俺は、今後もしメイアさんの睡眠中に出くわしても、絶対に起こさないようにしようと密かに心に決めるのだった。



 ―――――――。

 ―――――。

 ―――。





 ヴァイスの街に入った時に潜った門、あれが見えるところまで一度通った道を戻ってきた。

 そのまま門へと向かわず、途中の道を曲がり少し歩く。



「ほら、あそこに他のより大きい建物が見えますよね? アレがこの街の騎士団が使ってる詰所です」



 目的地が見えた。

 外観は木とレンガで作られていて、周りの建物よりも二回りほど大きい。

 正面入口には関所で見た騎士と同じ鎧を着た人が、手に『Y』の字に近い形をした刺又(さすまた)に様な物を、柄を地面に刺すように持って立っている。

 刺又と言っても防犯に使われるシンプルな物ではなく、『V』になっているところには無数の棘が生えている凶悪な外見をした物だ。



「すまん、ちょっといいか」



 そんなもはや防犯用とは呼べない武器を持った人に、ドランは臆することなく声を掛けた。



「どのようなご用件で?」



 以外と普通に応対してくれた。

 この騎士の人はフルフェイスの兜を被っているので顔は見えず、横一本線状に空いたところから目だけが見えている。



「俺達は街道に設けられた関所を通ってきたんだが、そこにいた騎士からここに来るように言われた。連絡はしてあるそうなんだが」



 ドランがそのまま俺達を代表して用件を伝えると、騎士は俺達に待つように言って建物の中へと入っていった。

 きっと中にいる人に確認を取りに行ったのだろう。



 数分経ち、さっきの騎士が戻ってきた。



「確認しました。イオ、ドランツェ=スカットン、リンクス=ストック、の三名で間違いないですか」



 俺達は頷いたり声を出して肯定する。



「お待ちしてました。中へどうぞ。案内の者がいますので、その者の指示に従って下さい」



 そう言われて俺達は詰所の中へと足を踏み入れる。

 中は快感とは違って、白一色の石材で作られていた。



「わざわざご足労頂いてありがとうございます。私はヴァイス騎士団一番隊隊長のミリアリア=パートンと言います」



 詰所の中を物珍しげに見渡していたら、唐突に女性に声を掛けられた。

 今まで見てきた騎士は全員男性だったので、勝手に『騎士=男性のみ』と思い込んでいたが、女性の騎士もいたのか。



「皆さんの案内をして、そのまま私がお話を聞くよう言われています。さっそくですが、こちらにどうぞ」 



 パートンさんは笑顔で奥に続く廊下へと誘導する。



 カシャ、カシャ、カシャ。



 身につけている防具も女性用の物みたいで、男性騎士の物とは全然違う。

 やはり女性と言うこともあって軽量化しているのか、必要最低限の部分しか防具で守られていなくて肌が露出している部分が多かった。

 肩を露出しているし、下はスカートを履いていて太ももが丸出しになっている。



「――ここです。どうぞお入り下さい」



 キィーーー。



 パートンさんが部屋の扉を開けてくれたので、俺達はスルスルと中へと入っていく。

 俺達三人が入りきったところでパートンさんも入って来た。

 背後で扉がガチャッと閉まる。



 入った部屋には窓がなく、天井によく分からないが光る物が付けられていて、それによって部屋の中が明るく照らされている。

 部屋の中央には長方形の質素な木の机が置かれていて、その脇に背もたれのない椅子が三脚:三脚、合計六脚備え付けられていた。



「すみませんこんな部屋で。別に皆さんが怪しいから取調室なんかに連れてきた、というわけではないんです」



 なんと、この部屋は『取調室』だった。

 まあ何となくそんな感じのする部屋だとは思ってたけど。

 窓がなくて質素な部屋だったし。



「実は少し前に喧嘩騒ぎがありまして。結構な人数が詰所に連行されてきて、本来使う予定だった応接室は、目撃者の事情聴取に使われちゃったんです」


「いえいえ、お気になさらずに。別に何とも思ってませんから」


「すみません、ありがとうございます。ささっ、どうぞお掛けになって下さい」



 俺がそう言うとパートンさんはお礼を言って頭を下げ、俺達に座るように勧めてくれた。

 お言葉に甘えて俺達は椅子を引いて腰掛ける。

 座った配置は部屋の入口側にパートンさん、その反対側に向かい合うように俺、リック、ドランの順で三人並んで座った。



「ではこちらからいくつか質問しますので、それに答えてもらう形でお答え下さい。あ、でも嘘を吐いてはいけませんからね。嘘を吐いたらその場で拘束しちゃいますから」



 パートンさんの最後の台詞に俺達から小さな笑い声が上がる。

 それは本気ではなく、冗談で言っていると声色からわかったからだ。



「じゃあ、まず皆さんは街道に出没する盗賊に襲われたあと、ロックベアーにも遭遇したとのことですが、これに間違いはありませんか?」



 パートンさんが見る中俺達は間違いないと答える。



「では盗賊と遭遇したところからお話ししてもらえますか」



 誰が答えようかとドランとリックに聞いてみようとしたら、二人とも俺の事を見ていることに気が付いた。

 そして二人の視線が、『お前に任せた』と物語っている。

 


 まあ別に話しづらいとか、パートンさんと会話するのが嫌だとか、そんなことはないから構わないんだけどね。

 俺は仕方がないなと思いつつ代表して口を開いた。



「襲われたのは大体フォートとヴァイスの中間地点くらいです。最初に森の中から不意打ちで矢を射掛けられて、街道沿いにヴァイス方向に逃げたら盗賊たちに待ち伏せられてました」


「ふむふむ、なるほど」



 パートンさんは胸元に手を突っ込んで、そこからおもむろに取り出した紙にメモを取る。

 なんちゅうところに仕舞ってるんだこの人は。

 ビックリしたじゃないか。



「その後は盗賊と戦闘に突入したのですか?」


「いえ、森の中に逃げました。それである程度逃げたら迎え撃って、しばらくしたらまた逃げ迎え撃つと繰り返して」



 あれは今考えてもかなり危険だった。

 あの時は盗賊に追われててやるしかないと思ってたけど、冷静に考えられる今だったらもっとやりようがあったのにと考えてしまう。



「結構な無茶したんですね」


「そうですね。もうあんなのは二度とゴメンですね」


「ははは。それで、その後は?」


「何度目か盗賊と戦って逃げていた時です。盗賊たちが追ってこなくなって、様子を見ていたら数人の盗賊が血相を変えて草むらかな飛び出してきて、俺達のことなんか気にも留めずそのままどこかに行ってしまいました」



 そういえば盗賊は何人かあの場から逃げたんだった。

 また盗賊行為を繰り返してなければいいんだけど。



「それはロックベアーが原因で、どうやら俺達を追いかけていた最中に襲われたみたいです。直接見たわけじゃないんですけど」


「なるほど」



 カリカリとパートンさんが紙に書き込む音が聞こえる。

 今度はさっきよりも時間を掛けていた。



「逃げ出したという盗賊の中に、首領の男は含まれていましたか? その男の特徴は――」



 パートンさんが言った首領の男の特徴は、俺が勝手に首領だと思い込んでいた男の物と酷似していた。

 ドランとリックにも念のため確認してみたところ、あの男で間違いないという結論に至った。

 


 だがその男はロックベアーの餌食になるところを目の当たりにしている。

 なので逃げ出した心配はない。



「その首領はロックベアーにやられました。俺達三人がこの目で見ていたので間違いありません」



 俺がそう言うとパートンさんは、ドランとリックにも確認を取る。

 二人も俺と同じ答えを言った。



「間違いない。アイツは俺達の前で死んだ」


「僕もです。その瞬間を見ました」



 その答えを聞いてパートンさんは、残念そうな様子で『そうですか……』と呟いた。

 なんでもその盗賊は自分の手で捕まえたかったらしい。

 盗賊が出没するようになってから、何度か盗賊討伐に派遣されたらしいが、全て空振りに終わったそうだ。



「でもこれは私の我が儘ですから。人々の安全を考えれば、例え倒したのがロックベアーだったとしても、結果オーライです」



 残念そうにしていたのも束の間、次の瞬間には元気なパートンさんに戻っていた。



「話の腰を折ってしまってすみませんでした。続きをどうぞ」



 照れ笑いを浮かべてどうぞと掌を上にし、差し出すようにして俺に話すように促す。



「あとはそのままロックベアーとの戦いに突入して、――三人で力を合わせて倒しました」



 チラッと二人のことを見てみると、ドランはどことなく誇らしげにふんとそっぽを向き、リックは嬉しそうにニコニコしていた。



「ふふっ、皆さんご無事で何よりでした。そして、ロックベアー討伐、おめでとうございます」



 そんな俺達の様子を見ていたパートンさんは、お祝いの言葉を贈ってくれた。

 パートンさんの顔には笑みが浮かび、微笑ましい物を見る目で俺達のことを見ていた。






最後までご覧頂きまして誠にありがとうございます。


新キャラ、女騎士『ミリアリア=パートン』が登場しました。

一応主要人物になる予定です。


もう少ししたら主人公はゲームをログアウトして、物語は現実パートに移ります。

それが終わるとまたログインしてゲームパートに。

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