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33.「そこの者等っ、止まれ!」

新たな街

 

 

 

 緩やかな坂道の頂上までもう少し。

 周りの木もまばらになってきていて、どうやら森の終わりも近いようだ。



「――あっ! 見えた、ヴァイスが見えましたよ!」



 頂上まで登り切るとリックが嬉しそうな声を上げて、そのまま一人先に坂を下っていく。

 さっきまで『疲れた~疲れた~』と連発していたのに。



「途中でアクシデントもあったが、全員無事に辿り着いたな。恩にきるぞ、イオ」



 俺の肩を叩いてリックの後を追うように坂を下るドラン。

 その背中は相変わらず広くて頼もしいが、明らかに足早になっているのに気付かない俺じゃない。



「あれが、第二の街『ヴァイス』か」



 俺は立ち止まってヴァイスの街を見下ろした。

 そして、下り坂の途中で止まっていたリックとドランの二人に声を掛けられ、俺も坂を下り始める。



 ―――――――。

 ―――――。

 ―――。





 ロックベアーを三人で倒したあと、街道に戻ってヴァイスを目指し歩いた。

 残っていたポーションを分け合って体力と魔力を回復し、三人でロックベアーのドロップアイテムを見てみる。



「僕は毛皮だけでした。でもまあさっきの戦闘ではほとんど役に立ってなかったし、仕方ないと言えば仕方ないかなぁ。ドランは?」



 リックはちょっと残念そうな顔をする。

 次にドランがドロップアイテムの内容を口にした。



「俺は毛皮と岩と肉だ」



 ドランが素直にドロップアイテムの内容を言うと、リックが『凄いな~』と感心していた。

 


「……ん? 俺か」



 二人のやりとりを見ていたら、その二人から同時に顔を向けられた。

 きっと次は俺の番だぞ、ということだろう。

 俺は今回の戦闘で手に入ったドロップアイテムを確認する。



【ロックベアーの毛皮】×2

 ロックベアーから採れる頑丈な毛皮。

 生産素材として使用出来る。



【ロックベアーの背岩】

 ロックベアーから採れる岩石。

 生産素材として使用出来る。



【ロックベアーの肉】×3

 ロックベアーから採れる肉。

 生産素材として使用出来る。



 ここまではドランと一緒の内容だ。

 だが俺はこれ以外にもドロップアイテムが手に入っていた。



【ロックベアーの胆】

 ロックベアーからごく稀に採れる胆。

 生産素材として使用出来る。


 使用することで解毒することが出来、一定時間対毒耐性を上昇させる。

 代わりに一定時間スタミナの減りが早くなる。

 対毒耐性、スタミナ減少の効果時間は4:00分間。 



 ロックベアー(・・・)の胆ということは、漢方とかで有名な『熊胆(ゆうたん)』みたいな物なのかな。

 アイテムの説明にもごく稀に採れると書いてあるし、効果付きだからレアドロップって奴なのだろう。



「俺は【ロックベアーの胆】ってのがあったよ」



 俺がそう言うと、ドランはへぇ~という軽い反応だったが、リックが予想以上の反応を見せた。



「本当ですか!? 【ロックベアーの胆】ってなかなか手に入らないんですよ! うわぁいいなぁ」



 リックが目をキラキラさせ鼻息荒く熱弁を続ける。



「【ロックベアーの胆】はその希少性からかなり高くて、市場に出回っても僕なんかじゃなかなか手が出せない代物なんですけど、それを調合するといろんなアイテムが作れるんですよ。一番効果があるのは毒消しなんですけど、やっぱり【ロックベアーの胆】と言ったら体力と魔力を同時に回復することが出来る『特薬』アイテムですね。【ロックベアーの胆】を使った特薬は他のレシピで作った特薬と比べると、一番効果は低いですけど調合に必要なその他の材料が揃えやすいのでなかなかに重宝されています。もちろん毒消しと特薬以外にも使えますよ。各種耐性効果を上昇させるアイテムに調合時加えると効果時間が上がって――」



 まさにマシンガントークだ。

 リックの意外な一面を垣間見えて、俺は……少し、ほんの少しだけ引く。

 そんな様子を見ていたドランは、小さく『やれやれ、またか』と言ったきり、我関せずを貫いていた。



「――と古くから伝えられていて、そのことは歴史のある薬師の家系から見つかった調合レシピに」


「リック! ほらっ、もうヴァイスが目と鼻の先だぞ!」


「え? わあ、やっと帰ってこれたぞ!」



 俺は話しの流れを思いっきりぶった切り、リックはようやく熱弁を止める。

 あの坂の頂上からここまでずっとしゃべり続けてた。

 しかも【ロックベアーの胆】の話から発展に次ぐ発展を遂げ、最後には『自分の考えるこれからの薬師のあるべき姿と、過去の先人たちの知恵に負けない調合レシピの開拓』という、一体何の論文だよと突っ込みたくなるような話しになってしまっていた。



 そして今回のリックの熱弁(という名の暴走?)でわかったのだけど、リックは【薬師】のスキルを持っていて、ヴァイスでは小さいながらも店を営んでいるそうだ。

 俺も自給自足を考えて【薬師】を取っているので、今度リックのお店にお邪魔させてもらっていろいろ教えてもらうのもいいかもしれないな。



「――ん? そこの者等っ、止まれ!」



 森を抜けてすぐの場所に、フォートの街の方にもあった関所があった。

 まあフォートとヴァイスを繋ぐ街道を封鎖しているんだから、こっちにもあるのは当たり前か。



 今度の関所は比較的スムーズに通ることが出来た。

 メレディアン家の身分保証書を見せたら一発だ。

 なんでも向こうの関所から『誰が・いつ・何人で』関所を通ったか、という情報をやりとりする方法と規則があって、その為俺達が到着する前に連絡が来ていたらしい。



「そうだ。あの、街道に出没していたと思われる盗賊と遭遇したんですけど」


「なに!? それは本当ですかっ」



 元々あの盗賊たちが居たせいで街道は今でも封鎖されている。

 だったらその脅威はもうないと教えておかないと、いつまで経っても封鎖は解けないだろう。



「十数人から二十人くらいの規模だったんですけど」


「ふむ、人数の情報はこちらに来ている物と同じですね。……どのようにして襲われましたか」



 俺達が遭遇した盗賊の規模と、首領だったと思われるやつの人相を伝える。

 関所を守る騎士の一人はメモを取ってから質問してきた。



「最初は森の中から街道を歩いていた俺達に弓で仕掛けてきたな」


「そうそう! それで街道沿いに逃げようとしたら、その先に盗賊の団体さんが待ち構えてたんです」



 ドランとリックが答えると、騎士は『やはり同じ手口か』と顎に手をやって眉をひそめた。



「どうやらあなた方が遭遇した盗賊は、例の盗賊で間違いないようですね。よくぞ無事にここまで辿り着きました。情報ありがとうございます」



 騎士はお礼を言って立ち去ろうとした。

 クルッと回れ右して俺達に背を向け歩き去ろうとするその背中に、俺は慌てて声を掛け呼び止める。



「あの、その盗賊たちはもういないと思います。俺達のことを追いかけて森の中に入ったら、ロックベアーが出て盗賊たちは全員やられるか逃げ出すかしてました」



 俺がそう話しかけると騎士は『なんですって!?』と勢いよく振り返り戻ってきた。



「す、すみませんがちょっと詳しいお話を聞かせてもらえますか? ここではなく、ヴァイスの街までご同行してもらって騎士団の詰所で」



 そのお願いを俺達は聞き受けることにした。

 どうせ目的地はヴァイスだし、こういうことにはちゃんと協力しないといけないからな。



「あっ、でもドランの弟」


「そうだった……」



 リックの一言で二人がヴァイスまで急いで戻りたかった理由を思い出した。

 騎士団の詰所での事情聴取?もどれくらいで終わるかわからないし、先に本来の目的を果たしてからにしてもらおう。



「すみません。一連のことについて話すのは構わないんですけど、先に用事を済ませたいのですが」



 俺はさっきまで話していた騎士に声を掛けた。

 ちょうどその時、騎士は一羽のハトっぽい鳥を空へと羽ばたかせる。

 一瞬だがその鳥の足に銀色に光る、明らかに人工物の物が括り付けられていたところを見るに、伝書鳩みたいな役割を持つ鳥だったのだろう。



「お待たせしました。用事の方は先に済ませてもらって構いません。ですが、必ず今日中に詰所の方までお越し下さい」



 どうやら先にドランの弟の元へ行けるようだ。

 気のせいでなければ、ドランの顔も安堵しているように見える。



「じゃあ行こうか、二人とも」


「ああ」


「はいっ」



 騎士が見送る中、俺達は関所を抜けヴァイスの街に向かう。

 ようやく第二の街『ヴァイス』に辿り着けた。



 ポォーーン。



《クエスト達成。ヴァイスの街へ向かいましょう》



 ポォーーン。



《あなたは第二の街『ヴァイス』へやってきた最初のプレイヤーです。よって『ヴァイス』でのみ有効の特典が送られます》



 ポォーーン。



《【ヴァイス優待宿泊券】を入手しました》






お読み頂きありがとうございます。


ようやく新しい街に到着しました。

30話を過ぎてようやく……展開が遅くて済みません(汗)

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