31.「嫌な予感が的中しちまった」
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※誤字修正・加筆しました4/10・4/13・4/15
「おりゃぁあああ!」
ブオン!
バキィンッ!
「ガハァッ?!」
ドランの振るった斧が盗賊の一人を吹き飛ばす。
もうこれで盗賊達と戦うのは三度目だ。
戦っては離れる、頃合いを見てもう一度仕掛けてまた逃げるという、一撃離脱戦法?を繰り返している。
必死になっているのでよく覚えていないが、盗賊たちの数は少し減っているようだ。
体力ゲージを真っ黒にさせて倒してしまったのか、それとも回復するために一時的に戦線離脱しているのか……。
それはさておき、ドランの活躍のおかげでなんとか今まで三人とも生きながらえているけど、正直もうそろそろ辛くなってきた。
「なにやってやがんだ! こっちの方が多いんだぞっ、囲んで潰せばそれで良いんだよっ!」
もう怒り心頭といった感じで、盗賊団首領の男が手下の盗賊達に喚き散らし、たまたま近くにいた手下なんかはとばっちりで蹴り飛ばされていたりする。
「させるか。《ファイア》!」
ボゥン!
「ギャアア! あぢぃいいっ」
首領に言われた通りドランを囲もうと、遠巻きに移動していた奴目掛けて魔法を放った。
反対側はリックが同じく魔法を放って牽制している。
俺の《ファイア》が命中した盗賊は、どうやら腕に当たったようで武器をその辺に投げ捨て、痛みを抑えるように無事な方の手で押さえながら地面に膝を付いていた。
「ぬぅんっ! ―――よしっ、潮時だ! 行くぞっ」
ドランがまた一人盗賊を薙ぎ払うと俺とリックのいる方へと駆けてきた。
援護のために俺とリックは魔法を放つ。
無事合流出来たら強化魔法を使って早々にこの場から逃げ、逃げる道中でポーションを飲み、ドランは体力を、俺とリックは魔力を回復しておく。
「……ドラン、大丈夫?」
リックが心配そうにドランに声を掛けた。
俺達は後方から魔法を放っているだけだが、ドランは一人盗賊達の目の前に立って斧を振るっているから、体の傷は治っても身につけている防具や服の傷までは治っていない。
「ああ、お前のポーションのおかげで体は何ともない。だが……ポーションはあとどれくらいある?」
ドランの質問にリックは答えられなかった。
その様子を見て『そうか』と一言呟くだけで、ドランは何も言わなかった。
――そうなのだ。
俺達の持っているポーションが、そろそろ底をつきそうだった。
既に最初の方で俺の持っていたポーションもドランとリックに渡していたが、それでも人一人が持っていただけの量なのでたかが知れている。
俺はポーションの他にもフォートの街でもらった【丸薬】も使おうとしたのだけれど、残念ながら全部ダメになってしまった。
袋ごと取り出した時にちょうど敵の魔法が飛んで来て、俺を掠めるように飛んでいった魔法は袋をズタズタにし、中身の【丸薬】も全滅した。
「……あと一回あいつらと戦ったら、もうそれで打ち止めだ」
俺はここまでの戦いで消費したポーションの数を頭の中で思い浮かべ、計算してみたところあともう一度戦闘をしたらライフポーション、マナポーション共に底をつく計算になった。
盗賊達はまだまだいる。
ここらで諦めてくれたら嬉しいんだけど、その望みも薄いだろう。
俺達三人は黙ったまま森をかき分け走り続けた。
―――――――。
―――――。
―――。
「くそおおお! 相手は三人だぞ!? やる気あるのかテメェら!?」
「で、でも。あいつら強くて。こっちの魔法使える奴はみんな優先してやられちまってて、弓の奴もやられました。あっちの魔法使ってる奴を片付けないとどうにも」
「うるせぇ!」
「ブフッ?!」
その頃盗賊団首領はイライラが募って周りの手下に当たり散らしていた。
今も運がない一人が首領に顔面をグーで殴られて後ろへ倒れていった。
「ちくしょうっ! ちくしょうがっ!」
それでも気が収まらなくて、近くに生えていた木の幹を何度も蹴り飛ばす。
蹴られる度に木が揺れて、木の葉がヒラヒラと舞い落ちている。
「――あの、そろそろ不味いんじゃないすかね」
「ああっ!? なにがだよっ」
「俺達もうけっこう森の奥深いところまで来ちまってますよ。しかも奴等と戦ったりしてかなり五月蠅くしちまってます」
木の幹を蹴っていた首領は、その手下の話を聞いてピタリと動きを止めた。
そして自分が今どこにいるのか確認するように、キョロキョロと森を見渡し始める。
「まずいな……いつの間にかこんなとこまで来ちまってたのか……」
「ここいらには『ロックベアー』が出ます。もうあいつらは諦めた方がいいかと」
「――そう、かもしれねぇな」
三人組みを仕留めるどころか、死人こそいなかったが被害まで出してしまって盗賊側は完全に赤字だった。
出来れば仕留めてその戦利品で賄いたかった首領だが、ロックベアーの相手をするつもりはなかった。
「おし、悔しいが今回はこれで終いだ。引き上げるぞ!」
首領の声を聞いて手下の盗賊達は、各々返事をして帰り支度を整え始めた。
「チッ、やれやれだぜ」
腰に手を当てペッと唾を吐いた首領の男。
―――ガサ―――ガサ――。
その背後、三人組みと自分たちが戦いながらも通ってきた方向から、ガサ、ガサ、と小さく何かの音が聞こえていた。
………………。
…………。
……。
三度目の戦闘を終えてから様子が一変した。
盗賊達が追ってこなくなったのだ。
「諦めてくれたんですかね?」
リックが安堵の笑みを浮かべながら言った。
俺は『どうだろうな』と答えたが、内心ではリックと同じでホッと一安心ついていた。
「………」
「ドラン? どうしたの、何か見えた?」
俺とリックが安心している一方で、ドランは一人盗賊達がいるであろう方向をジーっと見つめていた。
「嫌な感じがする。なにがどうとは説明出来ないんだが」
そう言いつつもドランは視線を一向に外さない。
俺も釣られて同じ方向を見た。
「俺はよくヴァイスの近くにある森に入ってたんだが、そこで前ヴォルフの群れに遭遇したとこがあったんだ。その時も今みたいに嫌な感じがして、事前に身を隠して群れをやり過ごすことが出来た。だから――」
そこまでドランが言った時、森に何かの音が轟いた。
ビクッと体が反応したが、音を聞いて正体を探るとそれは何かの動物の鳴き声みたいに思えた。
とにかくお腹の底から響くような声――いや、咆哮だった。
「なになになに!? 今の、なんなの!?」
リックは涙目になって取り乱し、俺の肩を力強く掴んでガクガクと揺さぶってきた。
「お、俺に、言わ、れて、もっ! わからないよ」
揺さぶられながらだと喋りにくいので、肩をいなしてリックの手を振り払って答える。
そして俺とリックはドランのことを同時に見た。
「……嫌な予感が的中しちまったな」
ドランの額から頬を伝って顎へと汗が一滴流れる。
俺は無意識に今まで森では邪魔だったので、ずっと背負っていた槍を手にしていた。
『うわああああ?!』
『たっ助けてくれ!』
すると森の向こうから声が聞こえてきた。
今この森にいてあの方向から声がするということは、十中八九、さっきまで俺達を追いかけ回していた盗賊達の声だろう。
「嫌だ! 俺はまだ死にたくない!」
「盗賊なんて止めてやる! もうこんなのこりごりだ!」
「ひぃっ、ひぃぃっ」
見つめる森の奥から数人の盗賊達が姿を現したが、俺達のことなど眼中にないようで気に留めることもなく素通りしていく。
そいつらの顔は涙でビショビショだったり、鼻水を垂らしていたりなど個々によって違いはあったが、皆一様に恐怖の色で染め上げられていた。
「今日はとことんツイてないな。盗賊に襲われるは、今度は……」
――ガサガサガサッ!
バサァア!
「今度は『ロックベアー』かよ」
ドランは口元をぎこちなく歪めながら、森に生い茂っていた草藪を突き抜けて、今まさに俺達の目の前に姿を現したモノを見つめた。
大きさはずっと昔、幼稚園に通っていた頃に遠足で言った動物園で見た、立派な牙を生やしたアフリカゾウくらいだろうか。
リックが教えてくれたように、四本足でノッシノッシと歩いてくるそいつの背中には、魚の背びれみたいに黄土色の岩が生えていた。
焦げ茶色の毛並みは硬くゴワゴワしていそうだが、木々の隙間から伸びる太陽の光で少しテカって見える。
「――た、たすけ、――て」
そして、そいつの口には人が咥えられていた。
たぶんあれはさっきの盗賊団の首領だと予想していた人物だ。
もう体力ゲージの赤い残量が雀の涙程度しか残っていない。
腕をプルプル振るわせながら俺達の方へ伸ばすが、それが気に触ったのかロックベアーは噛む力を強くした。
ガチンッ!
そんな硬い物同士が当たる音が、ロックベアーの顔当たりから聞こえてきた。
さっきまで口に咥えられていた首領の姿はなく、噛み締められた牙と『次の獲物』を見つけロックオンした赤い瞳が見える。
ドランは斧を構え、俺は槍を両手で持ち、リックは涙を流す。
ロックベアーがゆっくりと前足をあげ、後ろ足二本で立ち上がり真上を向いて形容しがたい咆哮をあげ、俺達三人とロックベアーの戦いの火ぶたは切って落とされた。
お読み頂きありがとうございます。
盗賊との戦闘は終了し、ついにボス級モンスターとの戦闘です!
次話もよろしくお願いします^^




