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30/73

30.「盗賊達を迎え撃とう」

間に合わなくて0時を過ぎてしまいました><。


※加筆しました4/9・4/15・6/20

 

 

 

「野郎共! いけえええっ!」



 その掛け声に全員が不揃いの声を上げて答え、武器を掲げて俺達に向かってきた。

 きっとあの男性NPCが盗賊団の首領なのだろう。

 よく見てみたら、そいつだけ他の盗賊とは違って見栄えの良い武具を身につけている。



「どうする二人ともっ」



 俺はドランとリックに聞いた。

 自分ではどうしたらいいのかわからない。

 


 ここまでの道中では俺がこのPTのリーダーみたいなことをしていた。

 関所を通れる俺が通れなかった二人の同行を認めた、という形だったのでその流れからそうなった。

 だけど俺はスキルとかがあっても戦闘に置いてはずぶの素人だ。



 ここは少なくとも俺よりも場慣れしているであろう、この世界の住人である二人の意見を聞くのが最善の手だと思う。



「まずイオとリックは魔法で牽制しろっ、そのあと森の中に逃げ込むぞ!」



 俺はドランの言った通り【火魔法】を使った。

 槍を左手に持ち替えて、右手の平を突っ込んでくる盗賊達に向ける。



「わかった! くらえっ、《ファイア》!」



 ――ボゥンッ!



 盗賊との距離を見誤って、俺の魔法は先頭を走っていた男性の足下に着弾した。

 だがそれで上手いこと相手の出鼻を挫くことが出来たようだ。

 魔法の小爆発に驚いて足を止めた盗賊に、後ろから続いて走っていた盗賊がぶつかって、数人将棋倒しのように倒れていた。



「うわああ!?」


「おい止まれ! 止まれってのっ(いて)ぇ!?」


「アチィ! 火だっ、火だぞ!」



 最前列付近にいた盗賊はちょっとしたパニックになっていた。

 重なっていて見にくくなっているが、数人の盗賊たちの頭上に表示されている体力ゲージも減っている。



「気をつけろっ、あの野郎魔法使えるぞ! 固まらないでバラバラに行けっ!」



 盗賊達の首領の指示が飛び落ち着きを取り戻す盗賊達。

 そして指示通り、さっきは街道に沿って一塊で走っていた盗賊達は、今度は二手に分かれて向かってきた。



「僕も行きますっ。《ウィンドカッター》!」


「俺ももう一回だ。《ファイア》!」



 ヒュヒュンッ、ザンッ!

 ――ボゥン!



 俺は右を、リックは左に向けて魔法を放った。

 今度はちゃんと狙い通り盗賊に当たって後ろに吹き飛ばし、それに巻き込まれるように三人ほど後方へと倒れるのが見える。



「今だ、行くぞ!」



 ドランの声が聞こえ俺達は左手の森へと走り込んだ。

 流石に街道のように歩きやすい地面ではない。



「走れ! でも真っ直ぐは駄目だぞっ、弓の奴が森に入るはずだからなっ」



 すっかり忘れていたが、そういえば元々この森の中から矢が飛んできたのがきっかけだった。



「だ、大丈夫かな!? 僕達、誰も弓の奴の姿を見てないけど」


「あんな大勢の相手をするよりかは、弓の一人二人の方が断然良い」



 後方からは盗賊達が追いかけてくる声が聞こえる。

 口々に『待てええっ』やら『殺すぞ!』など罵声をあげていた。



「そういえばこの森って、危険なモンスターが出るって聞いたぞ」



 フォートの街の冒険者ギルド(クエスト発行所の通称)で、受付の女性に街道封鎖の話を聞いた時に『街道を避けて森を抜けるのは?』と、聞いたら『森には盗賊に加えて危険度の高いモンスターが出るかもしれないからオススメしない』って言われたことを思い出した。



「それはきっと『ロックベアー』のことだ、イオ。ここらで一番厄介なモンスターだ」



 ドランが走りながらすれ違い様に、比較的細い木や竹のような植物を手に持つ斧でなぎ倒しながら言った

 おそらく切り倒した物を障害物にして、後ろから追ってくる盗賊達の追跡の邪魔をしようとしているのだろう。

 


 だけど切り倒していた木なんかは、細いとはいっても人の胴体くらいは優にある。

 持ち前の筋力だけでなぎ倒しているのかと思ったら、ドランの体をうっすら赤い霧みたいなのが取り巻いていた。

 これが自己紹介の時に言っていた身体強化の魔法なのか?



「ロックベアーは頭のてっぺんから背中を通って尻尾に向かって、魚の背びれみたいに岩が伸びているんです。気性が荒くて、森に入った人が出会ってしまうとまず間違いなく襲われます」



 リックがモンスターについて補足情報を教えてくれた。



「じゃあ、もしかして今のこの状況って不味くないか。盛大に騒ぎまくって存在アピールしまくってるぞ」



 背後では相変わらず盗賊達がやかましく喚いている。

 様子を窺おうと肩越しに振り返ってみると、盗賊達のいる当たりに何かが見えた。



「――っ!? 魔法だ! 避けろ二人ともっ」



 俺が叫ぶと二人も背後を振り返って、今まさに放たれた炎の塊を見て目を見開いた。

 急いで真横にジャンプして躱す。



 バァン!



 炎の塊は俺達がいたところとは違うところに生えていた、太い大きな木の幹にぶつかって破裂した。

 木はそのまま燃えるようなことはなかったが、ぶつかった場所からは白い煙が立ち上っている。



「くそ、あいつら魔法まで使って来やがった。あれは相当頭に来てるみたいだな」



 ドランが悔しそうに歯を噛み締めて盗賊達のいる方を睨み付ける。

 だがいつまでもその場で立ち止まっていては危険だ。

 俺達はすぐに森の中を走り始めた。

 デコボコしてはいるが坂道じゃないのは救いだった。



「さっきの炎、あいつら魔法使えたのか。なんで今まで使ってこなかったんだろう?」



 俺が疑問をつい口に出して独り言を呟くと、リックが独り言に返してきた。



「盗賊は獲物の持ち物を狙ってますから、なるべく傷を付けないで手に入れたいんです。魔法を使って直撃でもさせたら、相手の防具とかに傷がついちゃいますから、あんまり使わないんですよ」



 なるほどな。

 言われてみれば納得だ。



「でも今魔法使ってきたよな……ああ、だからドランが『頭に来てるみたいだ』って言ってたのか」



 獲物に傷が付くかもしれないって考える余裕が、怒りと苛立ちで無くなったんだなきっと。

 俺が自己解決したら『そういうことです』とリックが答え合わせしてくれた。



「――くそっ、追いつかれるぞ」



 ドランが言う通り、盗賊達はもうすぐそこまで来ている。

 どうやら盗賊達の方がこの森に慣れているようで、ドランの作った即席の障害物も徐々に意味をなさなくなってきた。



「このままじゃジリ貧です。……どうしましょう」



 リックが不安そうな表情で俺とドランに聞いてきた。

 ドランと俺は顔を見合わせてアイコンタクトを取った。



「俺は、出来れば戦いたくない。でもこのままじゃいずれ追いつかれる。……俺はドランの意見に従うよ」



 少しの間だ三人は無言になった。

 自分の呼吸音と森を走り草木をかき分ける音、それと盗賊達の騒音しか聞こえなくなって、ドランが口を開いた。



「―――盗賊達を迎え撃とう。ただし出来るだけ距離を離して二人は魔法で、俺は隙を見て接近戦に持ち込む。深追いしないであいつらに囲まれる前にまた逃げて、もう一度迎え撃つ。一撃離脱だ」



 ドランが提案した作戦だと、ドラン一人がかなりの危険を背負い込むことになる。

 俺は何か違う手はないかと言おうとしたが、それよりも前にドランが動いてしまう。



「行くぞ、援護は任せた。なるべく距離の近い相手から優先して魔法で狙ってくれ」



 もうやるしかないっ。

 俺は魔法を盗賊目掛けて放った。



「《ファイア》! 《ファイア!》」



 ボゥン!――ボゥン!



 続けざまに二発魔法を放とうとしたのだが、実際には若干間が空いてから二発目の魔法が出てきた。

 これが連続で放つ限界のようだ。



「《アクアショット》! 《アクアショット》!」



 ふと横目にリックを見てみると、俺が初めて見る魔法を使っていた。

 リックは右手の人差し指と中指をぴったり合わせて立たせ、シッペをするような形にして指先を盗賊に向ける。

 すると指先にボックスティッシュ大の水が現れて、真っ直ぐ勢いよく盗賊目掛けて飛んでいき、それに当たった盗賊は後ろに吹き飛ばされていた。

 威力は比べものにならないけど、まるで巨大な水鉄砲みたいだ。



「ぜええぇりゃああああ!」



 ギャリィィンッ!



「ぐっぁあああ!?」


「この、こいつっ!」


「次はお前だっ、おらあああ!」



 グオン、ドボッ!



「ぐぇえっ」



 ドンッ、ドサ―――。



 離れた場所ではドランが斧を手に盗賊達と接近戦を繰り広げていた。

 斧を振り下ろし剣で防御しようとした盗賊を、その防御ごと力でねじ伏せる。



 隙を突こうと斧を振り下ろした体勢のドランに斬り掛かった盗賊は、横に薙ぎ払うように振り抜かれた斧によって体がくの字に折れ曲がり、ちょうど背後にあった木に背中から叩きつけられ力なく地面にずり落ちていった。



 何人か叩きのめしたドランだが、相手の盗賊は体力ゲージは黒い部分が多いが赤い部分がまだ残っているので、倒してしまったわけではないらしい。



「頃合いだ! いったん逃げるぞっ」



 ドランは斧を肩に担いでこっちに走り戻ってきた。

 俺とリックはその背中から襲いかかろうとする盗賊達に、魔法をプレゼントしていく。



「《スピーダー》!」



 リックがドランに強化魔法をかけて全員でまた森を走り出す。

 盗賊達と接近戦をしていた分ドランは俺達の後方を走っていたが、リックの掛けた強化魔法のおかげですぐに前を走る俺達に追いついてきた。



「くそおおお! 追えっ! 逃がすんじゃねぇぞ!」



 背後からは悔しそうな盗賊首領の声が聞こえてくる。



「いいぞ、今の調子でいこう」



 ドランは走りながらリックからポーションをもらって飲む。

 すると疲れている様子だったドランの顔から疲労の色が消えていた。



 そういえば俺もマナポーションを持ってたんだった。

 けっこう魔法を使ったし、飲んで魔力を回復しておこう。



 キュポン。

 ゴクゴク、ゴク―――。

 


 ――初めて飲んだポーションは、幼児向け乗り物用酔い止め薬のドリンクの味がした。





お読み頂きありがとうございます。


盗賊達の戦いはこのままでは終わりません。

また違うステージへと移行します。


次話もよろしくお願いします^^

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