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28.「そこの者、止まれ!」

※加筆しました。4/4・4/15

 

 

 

「え? 今なんて言いましたか?」



 俺は目の前の女性に再度聞き直した。



「現在ヴァイスへの街道は封鎖されているため、一般の往来は出来ないようになっています。例外は領主様など身分がはっきりとしている貴族の方か、特別な許可証を持っている商会の人間のみとなっています」



 困ったな。

 第二の街ヴァイスに行けってクエストが発生しているのに、どうやら俺は向かうことが出来ないようだ。



 ―――――――。

 ―――――。

 ―――。





 俺が今いるのはクエスト発行所――通称冒険者ギルド――だ。

 マップのナビ機能を使って迷うことなくここにやってきた俺は、建物一階の中心に設置されていたカウンターに向かい、そこにいた受付嬢のNPCに話をかけた。

 


 ヴァイスはどの方角にあるのか、この街からどのくらいの距離にあるのかと質問したのだが………。

 結果はまあ、冒頭を通りだ。



「どうして街道封鎖なんてしてるんですか?」



 俺は女性に質問した。



「現在このフォートの街とヴァイスの街を繋ぐ街道にて、盗賊団の活動が活発化しているのです。恐らくフォートの街とヴァイスの街に、盗賊の一味が潜伏して支援しているものと思われます。現在多数の方々がその盗賊団を討伐するクエストを受注していますが、残念ながら未だに討伐されたという報告が来ていません。そのため街道は危険という理由と、盗賊の仲間が街から合流したりするのを防ぐため、騎士団が封鎖しているのです」



 要約するとつまり、街道には盗賊が出て危険だから、被害者が出るのを未然に防ぐのと、街から盗賊団を支援している奴がいて、その邪魔をするためにも封鎖してるってことか。



「じゃあ街道から外れて、隠れながら移動するのは?」



 時間は掛かるかもしれないけど、街道沿いに盗賊が出るならそこから離れた場所を通ればいいと思って聞いてみた。



「ヴァイスの街は南にあり、街道の周りは森となっています。その森には危険度の高いモンスターが出現しますし、盗賊がいないという保証もありません。どうしても森を突っ切るというのであれば無理矢理止めはしませんが、襲われる可能性もありますし、何より盗賊と間違われる可能性もあるのでオススメはしませんね」



 うーん。

 ちょっと悩むな。

 運が良ければヴァイスまで行けるかもしれないけど、もしモンスターとか盗賊と戦闘になったら俺の戦闘能力だと心配が残る。

 それになにより、盗賊と間違われるなんてまっぴらゴメンだ。



「あ、そうだ。さっき貴族や許可証を持ってるなら通れるって行ってましたけど、その人達ってもしもの場合に備えて護衛とか着けてるはずですよね。それに同行をお願いするって言うのは出来ますかね?」



 きっとそういう人達が街道を通るなら、戦闘が得意な護衛を連れているはずだ。

 その人達に便乗っていうのは言い方が悪いけど、一緒に行けないだろうか?



「それは難しいかと。ああいう方達の護衛は信頼出来る直属の部下や、付き合いのある者に限られますから」


「そうですか……」



 あとはどんな方法があるだろう。

 別に一人で森を抜けてヴァイスに向かっても良いのだけど、たどり着ける可能性は高くないだろうな。

 シャロンとかに連絡がつけばまた違うんだけど。



 俺は何か手はないかと頭を捻っていると、その様子を見かねたのか、女性がポロッと言葉をこぼした。



「街道を通るのも護衛に加えてもらうのも、誰か身分の高い者からの紹介があれば問題無いと思うんですけどね」



 そんなことを困ったような苦笑いをしながら言っていた。



 ………ん?

身分の高い(・・・・・)者からの紹介(・・・・・・)』だって?

 もしかしたら、アレが役に立つかも。



「あの、俺実はこんな物を持ってるんですけど。これって何かに使えますかね?」



 そういって俺が所持品の欄から出現させたのは、さっきもらった『メレディアン家の身分保証書』だ。

 俺はそれを便箋に入れたまま女性に渡してみた。



「コレはなんですか? えっと、『この者の身分はメレディアン、家、当主代理で、ある……セ、セサラ=メレディアン、が、家名と自身の名に、誓い、保証す、る』―――へ?」



 内容を音読し終えたところで、女性が気の抜けた変な声を出した。

 そしてワナワナと方を震わせながら、微妙に震えるその手で慎重に便箋に入れ直し、ゆっくりとした動作で俺に返してきた。



「じゅ、十分です。これがあれば、問題無、ありません。同行はおろか、直接、街道の関所を、通ることも、出来ます」



 何故かさっきまで視線を合わせてくれていたのに、いきなり視線を微妙に逸らして話す女性。

 その話し方も、さっきまでのハキハキした話し方から、オドオドした感じになっていた。



「わかりました。じゃあとりあえず街道の関所っていうところに行ってみます。いろいろありがとうございました」



 女性のことも気になるが、今はヴァイスに向かうことの方を優先しよう。

 俺は丁寧な対応をしてもらったので、会釈して感謝を述べた。



「いえいえいえ、そんなお礼なんて良いですよ、はい」



 思いっきり勢いよく首を横に振る女性。

 俺は片手を軽くあげてから受付をあとにし、建物から出て南広場を目指す。

 とりあえず、ヴァイスは南にあるって行っていたから、南広場を抜けて門から外に出てみよう。





「―――おい」


「大丈夫、わかってるよ」



 そんな俺の姿を影から窺う人影があった。

 人影は二人分あり、南へと歩く俺の後方を付かず離れずついてきていたが、俺が気付くことはなかった。



 ………………。

 …………。

 ……。





 ―――南広場を抜け門を潜り、フォートの街の外へと出た俺は、離れた場所に小さく見える森を確認した。

 そして、その森へと続く一本の道が門から伸びていたので、俺はその道を歩いた。



「そこの者、止まれ!」



 道を歩き続けて、森へと近づくと木を組み合わせて作ったテトラポットのような物がいくつもあり、バリケードのように積み重なっていた。

 これがあの受付嬢が言っていた関所だろう。

 そこには揃いの鎧を着込み武装した騎士風の男性が複数人いた。



「この街道は現在封鎖されている。申し訳ないがこれより先へは通すことが出来ない」



 関所の向こうには森があるが、街道がその森を二つに割るように続いている。

 森はかなりうっそうと生い茂っていて、まだ日が昇っているのに奥の方は真っ暗でよく見えなかった。



「実はこんな物を持ってるんですけど。これで通してもらうことは出来ますか?」



 そういってもう一度身分保証書を取り出して、話しかけてきたここの責任者と思われる棋士の男性に渡してみる。



「拝見する。……っ!? こ、これはっ」



 するとここでも驚かれた。

 そんなに凄い物なのだろうか、この身分保証書は。



「……失礼致しました。貴方は盗賊ではないことはわかりましたのでここを通るには問題ありません。ですが、お一人で行くのは少々危険かと」



 そうか、通る許可が出ても俺一人じゃ盗賊達の格好の獲物になっちゃうか。

 やっぱりシャロンになんとか連絡を取って、PTでも組んでもらって一緒に行くしかないのかな。



 そう考えていた時だった。



「ちょっといいか」



 背後から知らない男性に声をかけられた。

 誰だろうと思い振り返ってみると、また別の騎士に声をかけられ話を聞かれている男性二人が立っていた。

 どうやらその内の一人が俺に声をかけてきたみたいだ。



「俺に何か用ですか?」



 そう聞くと、男性の一人が『ああ、そうなんだ』と頷いた。

 男性二人は話を聞いていた騎士も連れてこちらに歩いてくる。



「すまないが、実はアンタお願いがあるんだ。俺とこいつの二人を、アンタと一緒に連れて行ってくれないか? 俺達、街道が封鎖されちまってヴァイスに行けなくなってて困ってたんだ。だから頼む、この通りだ」



 俺に声をかけてきた男性が用件を話し頭を下げる。

 その男性はスポーツ刈りみたいに刈り上げた茶髪に、使い込まれて傷が多数見られる防具を身につけ、背中には大きな斧を背負っていた。

 腕の筋肉が凄くて、テレビ中継でみたことのある陸上の砲丸投げの選手みたいだと思った。



「突然すみません。でも、どうしても僕達はヴァイスに行きたいんです。もう三日も立ち往生していて、何か方法はないかとずっと悩んでいました。そんな時に、クエスト発行所であなたのことを見かけたんです。そして、申し訳ありませんが受付の方との会話が耳に入りまして、こうしてお願いしに来ました」



 もう一人の男性も頭を下げた。

 緑色の髪をしていて、平均的な慎重体型をした温和そうな男性だった。

 男性は街中で見かけたNPCと同じような、いたって普通の服の上からポンチョのような物を羽織っていて、腰にはいくつものポーションと思われる試験管風の入れ物を挿していた。



「そういえば自己紹介がまだでした。申し遅れましたが、僕はリンクス=ストックと言います。こっちはドランツェ=スカットンです」



 斧を持ったがたい野言い男性がドランツェ=スカットンで、ポーションを一杯持っている男性がリンクス=ストックだ。



「俺はイオって言います。それで、詳しい話を聞いて良いですか?」



 見ず知らずの俺に頭を下げてまで、どうしてヴァイスに行きたいのか聞いてみた。

 二人は一度顔を見合わせて、ストックさんが代表して話し始めた。



「僕とドランは元々ヴァイスの街の住人で、フォートの街にはドランの弟の病気に効く薬を調達しに来ていたんです。ですが薬を手に入れたはいいものの、ご覧の通り帰ることが出来なくて……ドランの弟の病気はすぐに悪くなると言うことはないんですが、なるべく早く薬を飲ませるに越したことはないので」



 なるほど。

 それで俺の事を見かけてここで声をかけてきたのか。 



 ―――うん、そういうことなら問題無いかな。

 スカットンさんは見るからに強そうだし、俺自身一人ではこの先に進むのは躊躇していたから、タイミングも良かった。



「わかりました。じゃあ一緒に行きましょう。……この二人も一緒に通してもらうことって出来ますか?」



 俺は大事なことを聞き忘れていたので、騎士の人にお伺いを立ててみた。

 答えは『問題なし』だった。

 俺が身分を証明出来ているので、そのお付きという形であれば同行者がいてもいいらしい。

 もちろん同行者の身分も確認は怠らないけど。



「ありがとうございますっ」


「ああ、恩にきる」



 二人は俺に向かってもう一度頭を下げた。



《リンクス=ストック ドランツェ=スカットン がPTに参加しました。メンバー:【イオ】 【リンクス=ストック】 【ドランツェ=スカットン】》



 ここに即席ながら三人PTが結成された。

 そして、実はコレがこのゲーム“∞”で初めての、『プレイヤーとNPCの混合PT』であったのだが、俺は知る由もなかったのだった。






お読み頂きありがとうございます。


主人公の初クエストが始まりました。

そして、この第二の街へと向かうのが物語の最初の冒険(山場)でもあります。

ようやく本格的なバトルシーンの展開がっ!


メレディアン家の影響力についての説明は今のところしない方向で考えています。

今後の物語の展開で明かされる予定です。


次話もよろしくお願いします^^

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