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24.「布団の中に何か――」

※姓名の間を『・』から『=』に変更しました。3/31

※誤字修正6/6

 

 

 

「申し訳ありません。当家の使用人がお見苦しいところを……」



 頭痛を抑えるように額に指を揃えて当てながら、扉の所に立っていたメイドさんが部屋に入ってきた。



 そのメイドさんはまるでキャリアーウーマンのようで、出来る女を思い起こさせる雰囲気を醸し出している。

 緑色の髪をつむじがある辺りでお団子状に丸く纏めていて、歳は見た感じ三十代前半くらい。



「あなたもいつまでそのように這いつくばっているのですか。立ちなさい」



 女性が土下座の体勢をとり続けている、もう一人のメイドさんに声をかける。



「いえっ、メイド長! 許して頂けるまで、私はこのまま頭を地に擦りつけさせて頂きますっ」



 やっぱりこの人は只者じゃなかった。

 キャリアーウーマンみたいな出来る女っぽく感じていたその女性は、なんとメイド長だった。

 


「はぁ、まったく。あなたときたら……」



 メイド長はやれやれといった様子で、諦めにも似た溜息を吐いた。



「あのすみません。俺この状況がよく分かっていないんですけど。すみませんが説明してもらえますか?」



 俺は恐る恐る二人に聞いてみた。

 あれ?

 そういえば女の子の姿が見えないぞ?

 どこにいったんだ?



「かしこまりました。ご説明致します」



 説明はメイド長の女性がしてくれるようだ。

 まぁもう一人のメイドさんの方は、まだ土下座続行中だから必然的にそうなるよな。



「申し遅れました。私はメレディアン家にお仕えしております、メイド長のルーシア=アムストロと申します。以後お見知りおきを」



 メイド長あらためアムストロさんが、メイド服のスカートの端をちょっと摘んで持ち上げ、綺麗なお辞儀をする。

 着ているのはメイド服だが、まるでドレスでも着ているような美しい雰囲気がした。



「あの! 私はメイド兼お嬢様の護衛を担当しておりますっ、名前をセレスティ=マクレイヤといいます! 本当にすみませんしたー!」



 便乗して土下座メイドの女性も自己紹介してきた。

 彼女はマクレイヤさんというのか。

 


「ではまず、ことの始まりからお教え致します。単刀直入に申し上げますと、ここにいるマクレイヤがあなた様をこの街の中央広場にて、その……勘違いから攻撃してしまい気を失わせてしまったのです」



 はい?

 なんですかそれ?



「その後街の騎士団の方がやってきて、一度気を失っていたお客様を治癒院へ、そしてマクレイヤは詳しい事情を聞くために、騎士団の詰め所へと連行されました」



 俺はアムストロさんが言う話を思い出そうと考えたが、何だかドンドン頭が痛くなってきた。

 そのズキンズキンと心臓の鼓動に合わせて感じる痛みは、思い出そうとすればするほど痛みを増してくる。



「今回の騒ぎには多数の目撃がいらっしゃって、その方々の証言もあり『彼女がしてしまった勘違いも情状酌量の余地がある』として罰金と厳重注意で済み、後に詰め所へ出向いた私が身元引受人となりました」



 ……そうだ。

 確かあの時、串焼きの女の子と話をしていて――そうだった。

 女の子の服にタレがこぼれたんだ。 



「彼女を連れて詰め所を出ようとした時に、ちょうど治癒院からお客様の容体について連絡を持ち帰った騎士の方がやってきました。どうやら命に関わるようなケガはなく、体の打撲、特に顔部分と気を失っているだけとのことで、私共は当家にて責任を持って目が覚めるまでのお世話をすることにしました。事後承諾ではありましたが、幸いにもこの屋敷を任されている当主代理も同じ考えをお持ちでした」



 顔、打撲。

 ………………っ!?



「思い出した! 俺、誰かにいきなり吹っ飛ばされたんだった!」



 そうだったそうだったっ。

 俺あの時女性の大声を聞いて、そっちを見たら黒のガーターベルトとかが見えて、その直後に顔に衝撃が来て、そっから記憶がないぞ。

 そうか、あれはたぶん膝蹴りか何かで、実行犯が目の前で土下座してるマクレイヤさんだったのか。



「あわわわっ、す、すみませんっっっしたあああ!」



 一度顔を上げて俺と目が合ったマクレイヤさんは、何だか体育会系なノリで謝ってきた。

 たぶんこれが彼女の素の姿なんだろう。

 清楚なイメージのあるメイドさんが土下座、っていう行動も体育会系な彼女だからと考えてみると頷けるな。



「私、あの時あなたがお嬢様に手を出そうとしているんだと、そんな風に勘違いしてしまって。――悪いロリコン男が、小っちゃくって可愛い可愛いとっても可愛いお嬢様に、その汚れきった不潔な手で触れようとしてると考えたら、我を忘れて跳び膝蹴りを……」



 俺ってあの時、この人にはそんな風に見られていたのか……。

 軽く、いや、かなり凹む。

 絵文字にするなら『_| ̄|○』とか『orz』だ。

 というか、実際にベットの上でそんな体勢を取った。



「ああぁ! すみませんすみませんすみません」



 マクレイヤさんは土下座を解いて立ち上がって、手をあたふたと彷徨わせて俺の事を心配そうに見ている。

 


 なんだよー、俺が許すまで土下座続けるんじゃなかったのかよー。



 モゾ、モゾモゾ、モゾリ。



「ん? 何だ。布団の中に何か――」



 ペタペタ、ツンツン。

 モゾッ、モゾッ、ピクンッ!



 さっきまで俺が横になっていた布団の中に、何か柔らかくて動くモノが入り込んでいた。

 俺は特に何も考えず布団を手にとって、めくり上げてみた。



 バサッー!



「………」



 布団の中には串焼きの女の子が入っていた。



「お嬢様!? そんなところで何を!?」


「何をなされておいでですか? 当主代理」



 そんな女の子を見たメイドさんの二人はそんなことを言って驚いていた。

 というか、この小さい女の子がお嬢様でこの屋敷を任されてるっていう当主代理!?

 冷静に話を聞いていればその時点で気が付くことが出来ることだが、俺は今の今までそんな考えちっとも頭に浮かばなかった。



「……えっち」



 女の子が頬を紅色に染めて、モジモジと身動ぎしながら、潤んだ瞳で俺の顔を真っ直ぐ見てきた。

 片手でゴスロリ風ドレス?ドレス風ゴスロリ?

 まあとにかくスカート部分の裾を足下の方向に引っ張り、もう片方の手で口元を隠すような仕草は、恥ずかしいのを必死に我慢している様にも見える。



「あなたは、えっち」



 ちょっと待ってみようか?

 何でそんな顔と仕草をしながら、俺の事を『エッチ』と呼ぶんだい?

 それじゃあまるで、俺が君に何か助平な何かをしたみたいじゃないか。



 ―――あ。



「も、もしかして。今、布団の上から、どこか触っちゃっいけないところを触っちゃった、みたいな?」



 ポッ。

 モジモジ。



 はい、口にしなくてもその反応を見れば一目瞭然です。

 でもわかってもらいたい。

 これはあくまで事故なんだ。

 けしてわざとやった訳じゃないんだ。



 ぷっちん☆ ぷっつん☆



「ん? 今、何か切れるような音がしたような」



 バキッ、ベキッ、ボキッ!



「覚悟は出来てるか? このロリコン男」



 物凄くドスの効いたマクレイヤさんの声がする。

 そして、拳を手で包んでマンガやアニメでしか聞いたことがないような、関節の骨が鳴る音を部屋に響かせていた。



「一度ならず二度までも。ウチのお嬢様に何してんのよおおおお!」


「何をしているんですかっ、やめなさい!」



 広場で聞いたのと似た大声を上げて、今度は握り拳を吐くって跳びかかろうとするマクレイヤさんを、すかさずアムストロさんが止めるために割ってはいる。

 それでも完全には止めきれなくて、俺は服やら髪やら引っ張られて、マクレイヤさん・アムストロさん・俺の三人は、部屋の床をゴロゴロと揉みくちゃになって転がった。



「……よかった。元気そう」



 そんな俺達三人の様子をことの発端である女の子は、ベットの上に女の子座りし備え付けの枕をギュッと抱き枕のように抱きしめて、そこに顔を半分程埋めながら上目遣いで見ているのだけだった。






お読み頂きありがとうございます。

感想、登録などお待ちしております^^


私が作品を書く中で一番と言っていいほど悩むこと、それは『名前を考える』ことですね。

安直なありふれた名前もいいと思うのですが、ちょっと捻った名前を考えてみたいと思ったりして、無駄に悩む時間が増えるという……。


ちなみにこの串焼きの女の子、作品中で重要なイベントに関わってくるキャラクターにするつもりです。

詳しいことはまだ内緒ということで。


次話もよろしくお願いします!

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