21.「このロリコンが」
作者のことではありません。
えぇ、ホントウデストモ!
「どういうつもりなのシャロン!? ウチのギルドは『女性限定』じゃなかったの!? ベータ版の時からそうだったじゃない! 私の妹が男性恐怖症なのは知ってるでしょ!」
何だかいろいろ驚く内容が聞こえてきた。
女性限定のギルド?
女の子が男性恐怖症?
もう何が何だかわからん………。
「別にウチは女性限定ってわけじゃないよ。ベータの時は最初に女性メンバーで集まってたら、いつの間にか周りが勝手に『男子禁制』って言い出しただけなの。それにマーちゃんの男性恐怖症を治すために、このゲームを始めたって前に聞いてたから、気を利かせたつもりでイオを誘ったんだけど……イオの人の良さは私とセイちゃんが保証するよ」
マーちゃんとは話の流れ的に、そこの女の子のことだろう。
シャロンがそう説明するが、金髪女性は納得いかないようであーだこーだと言い合っていた。
「あらあら~。仕方ないわね~」
パンパン。
「はいは~い。二人とも、ちょっと落ち着きましょうね~」
手を叩いて自分に注目を集めるおっとり女性。
全員の視線が集まり自然と静かになったことを確認して、女性は人差し指を一本だけ立てて話し出す。
「まずはエリーザ、あなたはマレットちゃんの事が大切なのはいいことだけど、さっきのイオさんへの態度は頂けないわね~」
エリーザが金髪女性のアバターネームらしい。
おっとり女性に注意されて、エリーザさんは『うぐっ』と図星を突かれて苦虫を苦虫を噛み潰したような顔をする。
「シャロンはシャロンで、何の説明もなしにことを進めようとしたのはいけないわね~。私たちは仲間なんだから、大切なことは事前に話し合わないと~」
今度はシャロンがさっきのエリーザさんみたいな反応を見せる。
おっとり女性はこの面子を見守るお母さんみたいなポジションにいるみたいだった。
「さてと……」
おっとり女性はシャロンとエリーザさんの様子を見て満足したのか、一度ふぅと息をついて今度は俺に向かって話しかけてきた。
「というわけで~、先程はウチのメンバーが申し訳ありませんでした~」
そういってわざわざ席を立って頭を下げてくる女性。
語尾が間延びしているが、きちんと誠意を込めていることが窺えたので、俺はあたふたしながら答える。
「いやいや、そんな、頭を上げて下さいよ。全然気にしてませんから、ほんと、えぇはい」
とりあえず俺も女性の言ったことに賛同して、頭を上げてもらった。
正直シャロン達の話を聞いて、今のところ『女性』しかいないらしいので、誘われても断ろうと思っていた。
男性の中に女性が一人の『紅一点』ならぬ、女性の中に男性が一人の『黒一点』はちょっと遠慮したい。
なので尚更のこと謝られる筋合いがないので困ってしまう。
「あとその、シャロンには悪いけど、まだギルドとかに加入するつもりはまだ無いので」
そこまで言うと女性も察し、『それは残念です~』と言ってくれた。
「『まだ』ということは、いずれはギルドに興味が出るかもしれない、ってことですよね~? その時はまたよろしくお願いしますね~。あ、よろしかったらフレンド登録しませんか~?」
俺はギルドに入る件については、『考えておきます』と実に日本人らしい返事をしておいた。
そしてついでにおっとり女性と握手をしてフレンド登録を行う。
ちゃんと登録出来たようで、フレンド一覧には新しく《マリエル》という項目が増えていた。
「えー。イオはギルドに入らないのー」
シャロンが何だか俺に不満を言いたそうにしていたが、エリーザさんとマリエルさんに腕を引かれつつ背中を押され、そのまま連れだってその場をあとにする。
二人、いやおそらくマリエルさんに頭が上がらないのか、シャロンはなすがままになっている。
エリーザさんはさっき注意された俺に対する態度もあってか、どう反応したらいいのかわからずムスッとしたまま無言だった。
マリエルさんはそんなエリーザさんを見てクスクス笑いつつも、俺に軽く会釈してその場を離れていった。
「……(ペコリ)」
女の子ことマレットちゃんも、三人の背中を追うように小走りで行ってしまったが、途中で一度立ち止まりこっちに向かってお辞儀をして行った。
男性恐怖症らしいし、あの子なりにきっと頑張ったんだろうな。
「あぁー。何か疲れたな」
モグモグ、モグモグ。
それにしてもギルド、か……今のところは別に興味もないし、とりあえず自分なりにこのゲームを遊んでいれば、ギルドに加入するタイミングが来るんじゃないかな?
モグモグ、モグモグ、――ゴクン。
「ま、その時がくるまでは気ままに遊んでればいっか………ん?」
そこで俺は視線に気が付く。
何となく感じた視線を探し辺りを見てみると、いつの間にか背後に小さな女の子が立っていた。
「うお?! いつの間に!?」
驚いて振り返りその子をよく見てみると、以前この広場で串焼きの屋台を見つめていた女の子だった。
今日も白いワンピースを着ていたが、前会った時とは違い長い赤髪は、いわゆるツインテールの形に纏められている。
「何だこの前の君か。いきなりいたからビックリしちゃったよ」
大きなリアクションを取ってしまったことが恥ずかしくて、誤魔化すように笑いながら女の子に話しかける。
やはり身長差があるので、屈んで目線を合わせることは忘れない。
モグモグモグ。
「今日もモゥモゥの串焼き? 今度はちゃんと買えたみたいだね」
女の子は小さな口を動かしてモゥモゥの肉を租借して、最後にゴクリと飲み込んでから口を開く。
「ネーネが、お金……持たせてくれた」
無表情に加えて抑揚のない声で女の子が俺の質問に答えて、ワンピースに付いていた前ポケットから硬貨を取り出して見せてくれた。
その硬貨には5000という数字が書かれている。
「そっか。でもね、あんまりお金を見せびらかすようなことはしない方がいいよ。悪い人が寄って来ちゃうかもしれないからね」
俺は女の子に忠告するのだが、よく分からないようで可愛らしく首をコテンと傾けていた。
まぁまだ小さいこの子には難しいかな―――あ。
俺は女の子のワンピースに串焼きから、焼き肉のタレっぽいソースが垂れ落ちてしまう瞬間を見てしまった。
女の子も自分の服についた茶色いシミを無言で見ている。
「ちょっと見せてごらん」
俺はそういって女の子に手を伸ばす。
―――そして、その行動を取ったことを後になって後悔することになる。
「ウチのお嬢様に何するつもりよ! このロリコンがーーー!」
中央広場に若い女性の大声が響いた。
そしてその声はだんだんと俺の方へと近づいてきて、俺がその方向を見た時目に映った光景は、『黒いガーターベルトと揃いのニーハイ』そして、『猛烈な勢いで顔に迫り来る膝』だった。
お読み頂きありがとうございます!
ここで少し詳しい解説を一つ。
『倫理規制で下着は見えない』という設定(10.「――戦闘、開始」)がありますが、今回のはセーフです。
下着ではなく、見えたのがガーターベルトの『紐』部分だったためです。
それより奥は神秘ゾーンとなっております。
感想、登録、評価お待ちしております^^
また次話でお会いしましょう。




