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20.「お出掛けですか」

書いてみたところ、文量が6000文字を越え気軽に読むには多いかな?と思い二つに分割して投稿することにしました。


ですので微妙なところで話が途切れているように感じるかもしれませんが、ご了承下さい。

 

 

 

 学校の近くで二人を拾ったあと、セイ――本名は望月誠マコトと自己紹介されたが、セイとあだ名で呼んで良いと言われた――を車で自宅に送り届けた。

 彼女の家は瓦の屋根と生け垣が似合う純和風な造りの家だった。

 話を聞くと、こことは別の場所には祖父が師範を務める剣道の道場を開いているそうだ。

 前にPTを組んだ時に言っていた『弓を少し扱える』というのは、この道場の関係で弓道を一時期やる機会があったかららしい。



 ―――ブゥゥン、キキッ。



「お客さん、着きましたよ。初乗りなので600円です」



 セイを下ろしたあと、渋滞に捕まることもなく自宅に帰ってくることが出来た。

 俺はガレージに車を入れる前に、玄関近くで車を駐めていったん春香を先に下ろすことにした。

 


 ついでにタクシーの運転手の真似なんかをしてみる。

 初乗りとか600円の値段設定とかは、全部適当に言ってみただけだ。



「運ちゃんあんがとねー。はいこれ」



 春香は俺の悪ふざけに乗り、制服のポケットからアメ玉を取り出して俺に渡してきた。

 きっと運賃の代わりなんだろう。

 俺はどうもと気のない返事をして、口の中にポイッとアメ玉を放り込んだ。

 ん……オレンジソーダ味かな?



「ところで、お兄ちゃんは今日も“∞”やる?」



 ドアノブに手をかけたところで動きを止め、春香が聞いてきた。



「そうだな。いちおうログインするつもりではいるよ」



 別に隠すことでもないので、俺は素直に質問に答えた。



「そっか。じゃあ私先にログインしてるね。“∞”の中でコール送るから」



 そう最後に言って春香は車を降り家へと入っていった。

 俺はリモコンでガレージのシャッターを上げて、車をバックで中へと滑り込ませた。



 車の鍵をロックしてキュッキュッ!と防犯センサーが作動する音がガレージに響く。

 ガレージを出てシャッターを下ろし家に入り、俺もゲームをする準備をすることにした。

 楽な服装に着替えたり、VRMMOプレイ中に粗相をしてしまうなんて事のないようにトイレに行ったりして、忘れ物がないかを確認する。



「……よいしょっと」



 そして準備が整いVRSを顔に装着すると、自室のベットに仰向けに寝転がった。

 VRSのサングラスみたいな画面越しに、部屋の天井が見える。



『――Loading……Now Loading……――Load Complete.』



 情報の読み取りが終わり、いつでもゲームを開始することが出来る様になる。



「“∞”起動」



 そして俺は昨日に引き続き、VRMMORPG“∞”の世界へと旅立った。



 ………………………。

 ………………。

 ………ムクリ。



「……あぁそっか。宿でログアウトしたんだっけ」



 横になっていた体を起こしてみると、見覚えのない部屋だったので一瞬困惑してしまった。

 俺は体を起こした拍子に床に落ちてしまった掛け布団を、ベットの上に戻して簡単にだが折りたたんでベットから抜け出す。 

 首や腕を回してみたが特に違和感はなかった。


 

 リンリン、リンリン、リンリン。



 俺が借りた部屋から出ようとしたところで、頭の中に鈴を鳴らすような音が聞こえてきた。

 これは俺が昨日ログアウトする前に、ステータス画面を色々弄って設定した【コール】の着信音だ。

 ちなみに初期設定の場合は『プ、プ、プ』と昔懐かしい音になっている。



 俺にコールをしてきた相手の名前は『シャロン』だった。

 コールはフレンド登録している相手だった場合、誰がかけてきたのかがわかるようになっている。



 ガチャッ。



「もしもし?」



 俺は手を耳に当てて受話器を取るような仕草をする。

 コールをする時別にこのアクションをする必要はないのだけれども、周りに自分はコールで会話中ですよとアピールするためのマナーのような物だそうだ。

 もちろんこれもシャロンから教えられた知識だ。



『もしもしイオ? 今どこにいるの?』



 そう聞かれたので俺は簡単に今いる宿の場所を教えた。



『じゃあ中央広場に来てくれない? 場所は昨日の休憩スペースで』



 俺はシャロンが言った場所を思い出し、問題無く覚えていたのでそれで了承する。



『それじゃまたあとでねー』



 プツンッ。



 コールはそこで切れた。

 今日の予定はとりあえずログインしてから決めようと思っていたので何もない。

 なので俺はさっさとシャロンが指定した場所に行くことにした。



「お出掛けですか」



 宿を出る時にカウンターに立っていた従業員の男性(もちろん彼はNPC)に声をかけられた。



「えぇ。ちょっと妹に呼び出されたもんで」



 俺が頭に手を当てて困ったように言うと、従業員の男性は『おや、それはそれは』と微笑ましそうに顔を(ほころ)ばせている。

 男性に借りている部屋の鍵を預け、『いってらっしゃいませ』という声を背中に受け宿をあとにした。



 ガヤガヤ、ガヤガヤ。

 ザワ、ザワ。



 相変わらずフォートの街は人の賑わいを見せている。

 そして中央広場に近づくにつれて、比例するように人の数も増えていき賑わいも大きくなっていく。



「イオー。こっちだよー」



 俺が中央広場に到着し、休憩スペースに足を向けていたところで声をかけられた。

 視線を上げてみてみると、シャロンが手を振って小さくピョンピョンジャンプして自分の居場所をアピールしている。



「お待たせ……(チラッ)」



 俺は片手を上げながら近づいて行き、休憩スペースを盗み見た。

 何故ならそこには見慣れない女性が三人座っていたのだ。



「シャロン! 一体どういうことなのっ」



 座っていた女性の内、ロングの金髪で短い剣を腰の両サイドにぶら下げている女性が、突然休憩スペースにある木製の机をダンッ!と叩いて立ち上がる。

 俺より少し年下、春香と同じくらいかなという見た目をしていて、きっと綺麗な女性なのだろうが今は傍から見てわかるくらい機嫌が悪いようで、どういうわけか俺の事を睨み付けてきた。



「……ッ(プルプル)」



 そんな金髪の女性の横に座っていた、オレンジ色の髪を二つのお団子状にしている女性が体を小さくし、若干涙目になって小刻みに震えている。

 見た目は小学生くらいなので、女性というよりも女の子と言った方が似合っているかな。

 女の子は先がグルグル巻きになっている、仙人が持つ杖を三○センチ物差しくらいのスケールにした物を手に持っていた。



「どうしたの? 寒いのかい?」



 俺が女の子の様子が気になって話しかけてみたら、『ひぅっ!』と何だかよく分からない声を上げて、ビクンッ!と身をすくませた。



「ちょっと! 私の妹を怖がらせないでよ!」



 そして金髪女性に怒鳴られた。

 女性は女の子を庇うように抱きしめて、俺には厳しい視線を向けてくる。



 というか、え、どういうこと?

 俺何か悪い事したか?



「ゴメンね~? あの子、妹ちゃんのことになるとちょっと怒りっぽくなるの~」



 座っていた最後の女性が、頬に手を当てて笑みを浮かべる。

 その女性は外国の海のような綺麗なエメラルドグリーンの色をした、ふわふわウェーブの髪をしていて草で作った王冠の様な物を付けていた。

 見たところ武器になりそうな物は持っていない。

 この女性は俺と同じか少し上くらいの年齢に見えるが、おっとりとしていて雰囲気がセイとは違う方向に大人っぽく感じる。



「は、はぁ? そうなんですかー」



 俺は愛想笑いを浮かべて適当に返す。

 どういう状況かさっぱりわからないので、俺を呼び出した張本人であるシャロンを問いただしてみた。



「で、俺は何で呼ばれたんだ?」



 するとシャロンが頬を指で()きながら話し出した。



「えっとね、私ここにいる三人と、あとセイちゃんともう一人を加えた六人でギルドを作ることにしたの。とは言っても、まだギルド創設の資金も足りないから、『予定』って付くんだけどね」



 いったんそこで話を切るシャロン。

 俺はここまで聞いて、呼び出された理由について大体の見当が付いた。



「それでイオもどうかな?って誘おうと思って呼んだんだ。七人目のメンバーになら『絶対反対よ!』ない?」



 シャロンの台詞が終わる前に、金髪女性が声を被せてくる。

 女性はヒステリック気味に声を荒げ、シャロンに抗議し始めた。





お読み頂きありがとうございます^^


ここまでを通して女性キャラが沢山登場していますが、ハーレムを目指しているつもりはありません。

今回は『男子禁制・女子限定ギルド』を出したかったため女性キャラが増えることになりました。


次話は23日0時ちょうどに予約投稿致します。

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