↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者になりたいのに賞金首になっちゃったボク ~人助けするたびに、懸賞金と仲間が増えていく~ バンディット!!  作者: ちゃんなか
相対する転生者達――グリングリン・ロッジ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/87

第76話 “どんな理由があろうと賞金首だ”

 ――ロマの小屋を離(はな)れたタイガとミヤコは、村の中央へと続く小道を歩いていた。

 道の端(はし)には相変わらず、瑞々(みずみず)しい野菜が至(いた)る所から生えている。


「ムシャムシャムシャ……ゴクン!! あー!! うめェー!!! 早く治すために野菜食べてエネルギーつけないとね~」


 タイガは木に生えたトマトやナスを頬張(ほおば)りながら、村へ向かう。


 さっきまでの緊張(きんちょう)が嘘(うそ)のように、森を抜(ぬ)ける風が涼(すず)しい。


「あいつら……放っておいていいのか? 特にロマ、結構(けっこう)な剣幕(けんまく)だったぞ」

「ムシャムシャゴクン……そうだね。でもボクらに出来ることはないよ」


 タイガのあっさりした返答に、ミヤコは目を丸くした。


「……意外だな、おミャーって結構(けっこう)な世話焼きだと思ったけど……」

「え? そうかな……? そりゃあ困(こま)った人がいたら、出来るだけ助けになりたいけど……」


 タイガは野菜を口に運ぶのを止め、言葉を続ける。


「ロマはきっと大丈夫(だいじょうぶ)だよ。この村で1年も上手くやってきてたんだもん」

「まあ、確(たし)かに……」


 ミヤコは納得(なっとく)するように小さく頷(うなず)く。


(ずっとひとりぼっちで、故郷(こきょう)を逆恨(さかうら)みしてたミャーとは違(ちが)うもんな……)


 自嘲気味(じちょうぎみ)に胸(むね)の奥(おく)で呟(つぶや)く。

 風に揺(ゆ)れる草の音が、ミヤコの心をそっと落ち着かせてくれる。


「あ、そういえば。麦わら帽子(ぼうし)、宿に忘(わす)れて来ちゃったね……」

「あ……まあでも、もうロマにもルリノにも〝賞金首(しょうきんくび)〟だってことバレたしな……」


 ミヤコは肩(かた)をすくめ、気楽そうに答える。

 昨日までなら気にしていたことも、今となっては少し笑い話になっていた。


 そんな他愛(たあい)ない話をしているうちに、道の先が少し開け、村の広場が見えてきた。


「そっか。ならもう……ん……? ちょっと待った」

「え?」


 タイガは突然(とつぜん)足を止め、腕(うで)を横に伸(の)ばしてミヤコを制(せい)した。

 その動きは軽いものではなく、何か気配を察した者の反応(はんのう)だった。


 ミヤコも思わず息を呑(の)む。



 ――何かが違(ちが)う。


 昨日なら、洗濯桶(せんたくおけ)の水音や、大人達(おとなたち)の談笑、子供(こども)の笑い声が聞こえていた。

 いろんな生活音が溢(あふ)れていたはずの広場が――今日は、妙(みょう)なほど静まり返っている。


「人がいない……みんな隠(かく)れてる……」

「あ、確(たし)かに誰(だれ)もいにゃい……」


 ミヤコもようやく異変(いへん)に気付いた。

 広場には陽の光が降(ふ)り注いでいるのに、どこか冷たい空気が漂(ただよ)っている。


「やっぱり、昨夜のバラバラ死体があったから……?」

「いや……それだけじゃない……かも……」


 タイガの声には確信(かくしん)に近い鋭(するど)さがあった。


 そして彼(かれ)はゆっくりと、広場の中心――

 ただ1人ぽつんと立っている黒い影(かげ)へ視線(しせん)を向けた。


 その影(かげ)もまた、動かず。

 こちらを待っていたかのように、黒曜石(こくようせき)のような瞳(ひとみ)だけが陽を照り返している。


「……やあ、タイガ。昨夜以来だな」

「クロト……だっけ」


 その漆黒(しっこく)の美少年は、昨日酒場で出会った冒険者(ぼうけんしゃ)クロトだった。

 昨日のような尊大(そんだい)で鼻につく態度(たいど)ではなく、今はただ静かに、じっとタイガを見据(みす)えている。


「……おやおや、随分(ずいぶん)とやんちゃしたみたいじゃないか。何かあったのか?」


 全身を包帯(ほうたい)でぐるぐる巻(ま)きにしたタイガの姿(すがた)を眺(なが)めながら、クロトは薄(うす)く笑みを浮(う)かべた。


「ちょっと大きな〝猫(ねこ)ちゃん達〟と遊んだだけだよ」


 その言葉にクロトの眉(まゆ)がピクリと動く。


「〝猫(ねこ)〟か……オレ様はあまり好かんな。ヤツらは忠誠心(ちゅうせいしん)がない……」


 クロトはわずかに鼻を鳴らし、村の家々の物陰(ものかげ)へと視線(しせん)を滑(すべ)らせる。


「やはり動物は、人に従(したが)うのがいい……まあ、うちの馬鹿犬(ばかいぬ)は偶(たま)に鬱陶(うっとう)しくなるがな……」


 その言葉と同時に、近くの建物の影(かげ)からゴソ……と何かが動く音がした。

 最初はかすかだったそれは、やがてガサ……ガサガサ……と、徐々(じょじょ)に大きくなっていく。


「……昨日は麦わら帽子(ぼうし)で、顔がちょっとしか見えなかったが……間違(まちが)いないな」

「ん……? はっ!!? ミヤコ!! 構(かま)えて!!」

「え? い、いきなり……んにゃ!!?」


 クロトの言葉に、タイガは咄嗟(とっさ)に臨戦態勢(りんせんたいせい)を取る。


 だが、その警告(けいこく)とほぼ同時に、物陰(ものかげ)から姿(すがた)を見せたのは――



「――へっへっへ……よう坊主(ぼうず)、年貢(ねんぐ)の納(おさ)め時だぜェ?」

「酒場にいた冒険者(ぼうけんしゃ)……!!? 囲(かこ)まれた!?」


 村の建物の影(かげ)に身を潜(ひそ)めていたクロトのパーティーの冒険者達(ぼうけんしゃたち)が、ぞろぞろと姿(すがた)を現(あらわ)し、タイガ達を取り囲(かこ)む。

 粗暴(そぼう)そうな男、不敵(ふてき)な笑みを浮(う)かべた弓使い、無表情(むひょうじょう)の魔術師(まじゅつし)――さまざまな顔が輪をつくる。


 その数、ざっと20から30人ほど。

 じりじりと距離(きょり)を詰(つ)めてくる気配に、広場の空気が一気に重くなった。


「こんにちは、昨日の猫(ねこ)さん。こんな再会(さいかい)になって残念……」

「おミャーは……ノエル……っ!!」


 銀の髪(かみ)を揺(ゆ)らす、犬のケモニアの少女ノエルが、集団(しゅうだん)の中に立っていた。

 白銀の刃(やいば)は淡(あわ)く光を帯び、彼女(かのじょ)はそれを正面に構(かま)えて、いつでも飛び込(こ)めるように身を沈(しず)めている。


「これは一体……まさか!!?」

「ああ、そうだろうね……」


 タイガとミヤコに最悪の予感が渦巻(うずま)く。

 その答え合わせをするように、囲(かこ)んだ冒険者(ぼうけんしゃ)の1人が声を上げた。


「へへ、クロトさぁん。本当にこんなガキが〝《B》ランク〟の〝賞金首(しょうきんくび)〟なんですか~?」

「っ!!?」


 知られていた――タイガが〝賞金首(しょうきんくび)〟だということが。


「ああ、見てみろよ。顔が同じだ……それに名前も同じ、他人の空似(そらに)じゃあないだろう」


 クロトは静かに、だが逃(に)げ道を塞(ふさ)ぐような圧(あつ)でタイガへ近づきながら、1枚(まい)の紙を突(つ)きつけた。


「んな……!? そ、それは……〝手配書(てはいしょ)〟……!?」

「ああ、随分(ずいぶん)新しい〝手配書(てはいしょ)〟だ。オレ様も今朝まで知らなかった――」




 ━━━━━━━━━━━━━

 《 W A N T E D 》

 D E A D O R A L I V E

 ~タイガ~

 懸賞金(けんしょうきん):1,000,000ディジー

 ━━━━━━━━━━━━━




 ざらついた紙に刻(きざ)まれているのは――紛(まぎ)れもなく、タイガ本人の顔だった。


「……大人(おとな)しくしろ。そうすれば、苦しい思いはしなくて済(す)む」

「な……!!? ま、待ってくれ!! タイガが〝賞金首(しょうきんくび)〟になったのは、訳(わけ)があって……っ!!!」


 ミヤコが声を荒(あら)げるが、その言葉はクロトによって切り捨(す)てられる。


「どんな理由があろうと、〝賞金首(しょうきんくび)は賞金首(しょうきんくび)〟だ」


 クロトは両手を胸(むね)の前へ持ち上げ、手のひらをぴたりと合わせた。

 次の瞬間(しゅんかん)、彼(かれ)の指と指の隙間(すきま)から、細く透明(とうめい)な糸がシュルルッ!!! と這(は)い出(で)してきた。


 まるであやとりのように、指の間をくぐりながら、糸はするすると長く伸(の)びていく。


「……話を聞いてくれる感じじゃなさそうだね……大人(おとな)しくやられるつもりはないよ!!」


 タイガは身構(みがま)えた。

 傷(きず)だらけの体でも、踏(ふ)み込(こ)む気迫(きはく)は衰(おとろ)えていない。


「なら味わうといい。オレ様が〝女神〟から与(あた)えられた、この〝傀儡師(くぐつし)〟の力を……ッ!!!」


 糸がうねり、空気が震(ふる)え、タイガを囲(かこ)む冒険者達(ぼうけんしゃたち)が一斉(いっせい)に武器(ぶき)を構(かま)える。


 静かな村の広場で――戦いの幕(まく)が、上がろうとしていた。

 第77話は明日の20時10分に投稿(とうこう)です。

 ブックマーク、評価等で応援よろしくお願いします。

 感想、コメントなども待っております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。