第30話 “ちっぽけな世界”
「さあ、撃てェ!!!!」
――ズガァァァァアアンンンッッ!!!!!!!!!
砲身が火を噴き、怒涛の轟音が大地を揺らす。
その砲弾は、三度まっすぐタイガに向かって突き進んだ。
「く……っ!! それなら何度でも受け止めてやる!!! 来いッ!!!!」
タイガは再び剣の鞘を構え、砲弾に真正面からぶつかっていく。
ドカァァァアアアアァァァンンンッッ!!!!!!!
「あ……ぐううううううぅぅぅぅううああああああぁぁぁッ!!!!」
腕に走る痺れるような衝撃。
砲弾の破壊力が、骨の奥まで響いてくる。
けれど――タイガは踏みとどまった。
巻き起こる爆風の中、また鞘一本でその一撃を止めたのだ。
「……頑丈すぎる……彼も……ていうかその鞘も、一体どうなっているんですか……!!」
普段は冷静沈着な雲でさえ、息を呑んで呟いた。
明らかに常識を逸脱した防御力……それは、もはや化け物じみていた。
「……惜しいな……本当に惜しい……」
開守は、土煙の中でなお立ち続けるタイガの影を睨む。
その目には苛立ちと、どこか哀しみにも似た色が宿っていた。
「そこまでの力を持っているのに、やっていることはまるで子供のわがままだ……っ!!」
それは激昂というより、噛み締めるような叱責だった。
「……なぜそうまでして必死になるんだ。こんな小さな……すでに滅んだ小さな村の為に、オマエは……ッ!!」
抑え込んだ怒気が、唸るように漏れる。
「我々がやっていることは……世界を救う為のことだ!!
この大きな世界を……救う為のな!!!
我々だけではない……今もこの世界中の至るところで、魔王軍と戦い……そして命を落としていく者が大勢いる……
オマエのやっていることはッ!!! 世界中で命を懸けて戦う者達、その全ての〝想い〟を……踏みにじる行為だッ!!!!」
開守の怒号が村に轟く。
タイガの並外れたタフネスを彼も認めているからこそ、許せなかった。
世界のことなど考えず、ただ身勝手に振る舞うような、その姿が。
だが――
「……そうだ……人の〝想い〟は……大切なモノだ……」
土煙の向こうから、タイガの声が返ってくる。
「消されていい〝想い〟なんてない……!!
踏みにじられていい想いなんて1つもない……ッ!!
だからボクは守るんだ!!! この小さな村の人達の〝想い〟もッ!!!!」
風を裂き、土煙を鞘で薙ぎ払いながら、タイガが駆け出す。
開守の方へ――全身で、まっすぐに。
「愚かな……ッ!!! それこそが最も、〝世界中の人の想い〟を踏みにじっていると、なぜわからんのだァアアアアッッ!!!!」
「違うッ!!!!」
「撃てェエエエエエエエッッ!!!!!」
ズガァァァァアアンンンッッ!!!!!!!!!!!!
開守の力強い号令と共に、大砲の砲撃がタイガを襲う――
だがタイガは……
「世界中の人の〝想い〟を……踏みにじっているのはオマエの方だろ!!!」
「なに……っ!!?」
「ぐううううううぅゥゥウウウウウウッ!!!!!!」
タイガは砲弾を受け止めながら、叫ぶ。
「猫ちゃんや、この村の人達の〝想い〟もッ!!!! 世界中の人の〝想い〟に入ってるはずだ!!!」
「っ!!?」
鞘で受け止めたその砲弾を、タイガは――
<基礎能力スキル:タフネスのランクが《E》に上昇しました>
「でええええええええええェェェェエエエエ!!!!!!!! やああああああああああアァッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「なにィッ!!!?」
カキィィィィィィンッ!!!!!
――衝撃音とともに、砲弾を跳ね返す。
それは一直線に、調査隊員達の方へ飛んでいき――
――ドカァァァアアアアァァァンンンッッ!!!!!!!
「「「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?」」」
爆煙と衝撃が周囲を呑み込んだ。
「どうだッ!!! 何度もやってくれた、そのお返しだ!!!!」
タイガは爆煙の向こうへ叫ぶ。
だが……その煙が晴れたとき、見えたのは――
「……ふざけるな……ッ!!!」
「な……っ!!!?」
土煙を割って現れたのは、開守。
その姿に、大きな変化はない。
ほんの少し、衣服が焦げているだけ……
だが、その腕が――
「……〝虎硬身〟ッ!!!!」
腕を前に突き出し、手のひらから煙を立ち上らせる開守。
「まさか……砲弾を〝素手〟で受け止めたのか!!!?」
「た、隊長ッ!!」
「そんな……!! 俺達なんかを庇って……!!!」
隊員達が顔を上げる。
開守の腕は焼け焦げ、皮膚が裂けているというのに――その表情には、一切の動揺がなかった。
「……フウウゥーーー……ッ!!!!」
だが、表には出さないが、彼の中には激しい感情が渦巻いていた。
(なぜ……なぜ俺は、隊員達を庇った……? 今まで、どれだけ多くの仲間がやられてきても……致し方のない犠牲だと、割り切ってきたのに……っ!!!)
激しい戦いのさなか、開守の心に、何か大きな変化が起ころうとしていた。
(ふざけるな……っ!!! 例えいかなる犠牲を払ってでも、進み続ける……それが俺の信念だ!!!)
ほんの刹那、揺らいでしまった大切なモノ。
それを支え直すように、彼は大きく息を吐くと、鋭く吠え、叫んだ。
「……今世界中で戦う者達と……すでに死んだ小さな村の住人が……同じなわけないだろうッ!!!!
その重みが……まったく違う!!!!」
突き出した拳を握り締め、その腕で爆煙を振り払う。
そして、その後ろから彼と同じような叫び声が聞こえた。
「うおおおおおおおおおおおおおォッ!!!! 隊長の為に撃てェエエエエエエエエエエッ!!!!!」
開守の咆哮に呼応し、隊員達が三門の大砲を再びタイガへ向ける。
ズガァァァァアアンンンッッ!!!!!!!!!!!!
ズガアアァァァァァァアアンンンッッ!!!!!!!!!!!!!!!
ズガアアアァァァァァァァァアアンンンンンンンンッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
三門同時砲撃。大地が裂け、空気が悲鳴を上げるような轟音が鳴り響く。
「っ……!!! オマエ達……っ!!!」
仲間が自分の為に放った砲弾。
開守の瞳が、わずかに揺れた。
「何発来ようとも……!!!! でえやあああァッ!!!!!!!」
カキイイイイィィイインン!!!!
一発目の砲弾を、タイガが再び打ち返した。
それは空中で次の砲弾とぶつかり――
――ドドカァァァアアァァァアアアァァァンンンッッ!!!!!!!
二発がぶつかり、空中で爆散。爆風が火花を散らしながら広がる。
だが――
「く……っ!!!」
タイガの腕が痙攣するように震える。
その手に握られた鞘に――
――ビシィ……ッ!!
不気味な音とともに、ヒビが走った。
「よし!!! 一石二鳥!! ラッキー!!! もう1発!!!! ドオオオオオリャアアアアァァァッ!!!!!!」
三発目が飛ぶ。
タイガは歯を食いしばり、咆哮とともにそれを打ち返した。
カキイイイイィィイインン!!!!
だが――
――バキィィッッ!!!!
「おわァァッ!!? 折れたァ!!!?」
打ち返した反動に耐えきれず、鞘が無残にも砕け散った。
鋭い破片が空中に舞い散り、土煙の中で輝きを放つ。
そして、タイガの打ち返した砲弾は、軌道を僅かに外れ――
――ドカァァァアアアアァァァンンンッッ!!!!!!!!!!!!
敵陣の大砲一門へと直撃した。大砲そのものを吹き飛ばし、爆煙と轟音が響き渡る。
「うわあああァッ!!!? 大砲があァッ!!!?」
調査隊員の驚愕の叫びが空気を震わせた。
破壊された大砲の破片が四方へと散り、戦場の様相が一変する。
「な、なんてことだ……ッ!!! 大砲をやられちまうなんて……!!!!」
「いいやチャンスだ!! 相手も得物を失った! 間髪入れずに撃てェ!!!!」
――ズガァァァァアアンンンッッ!!!!!!!!!!!!
耳をつんざく轟音とともに、再び砲門が火を噴く。
砲弾は唸りを上げ、まっすぐタイガへと迫った。
「ぐ……ッ!!! 鞘がないなら……!!」
タイガの瞳に、雷のような決意が閃く。
ここで自分のありったけを――全てを賭ける覚悟が、全身を駆け巡った。
「ドオオオォォオオアアアアァァァァッ!!!!」
次の瞬間、彼は大地を蹴り、砲弾へと自ら飛び込んだ。
金属と肉体がぶつかる――いや、受け止める。
タイガは〝足〟で砲弾を受け止めた。
「い……っ!!! ぐぅ……ッ!!! グウウウウウウウゥゥゥゥゥウウウウウウウウッッ!!!!!!!!!」
激痛が全身を走り、鼓動が耳を打ち鳴らす。
しかし、タイガは足に力を込め、逆襲の一撃を放つ。
「……!!? まさか蹴り返す気か!!!? 総員!!! 退避せよ!!!!!!」
開守の号令が飛ぶや否や、部下達は散り散りに四方へ駆けた。
「ウアアアアアアアアアアアアァァァァアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」
バアシイイイイイイイイイィィッ!!!!!
タイガの渾身の蹴りが砲弾を逆方向へ弾き返す。
空気を切り裂くその力は、まるで獣の咆哮のように響いた。
<基礎能力スキル:脚力のランクが《D》に上昇しました>
開守は迫る砲弾を両手で受け止めるべく構えを取る。
「さあ……来いッ!!! 俺だってまだまだ……なッ!!?」
だが砲弾は彼の真正面を外れ、足元へ吸い込まれるように落下。
直後、爆炎が足元から噴き上がった。
ドカァァァアアアアァァァンンンッッ!!!!!!!!!!!!
爆風とともに噴き上がった煙が開守を飲み込む。
灰色の濃厚な幕が辺りを覆い、視界を完全に奪った。
「く……っ!!! しまった! これでは視界が……!! 小癪な真似を……ッ!!!」
腕を振り払い、煙を散らそうとする開守。
しかし、煙は不自然にその場に留まり、流れない。
風が――止んでいる。
(煙が散らない……無風……!? こいつ、計算して……いや、〝天を味方〟につけたか……!!!)
開守は目つきを鋭くし、辺りを探る。
彼の額には汗が滲み、呼吸が荒くなった。
「ちィ……!!! どこだ!! どこにいる!!! 小僧オォッ!!!!!」
叫び声とともに、拳を振るうが、空を切るだけ。
その先に敵の姿はなかった。
「ヘヘっ!! ここだよ!!!」
「ッ!!!? ぬうッ!!!!」
不意に声が響いた方向へ再び拳を振るうが、そこには誰もいなかった――
「残念!! ビイイイイイイイイイイリャアアアアアアアアアアアアァァァァ!!!!!」
「っ!!!?」
雷の破裂音が耳を裂き、空気が震えた。
振り返ったその瞬間には、もう遅かった。
「ビリビッリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!!」
青白い閃光が直撃し、開守の巨体を貫いた。
筋肉が痙攣し、皮膚が焼け、全身を電撃が駆け巡る。
「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!?」
白目を剥く開守。
その姿に、隊員達の悲鳴が広場に響く。
「「た、隊長ォッ!!?」」
「そんな……っ!!? 〝開守〟ッ!!!!?」
雲も思わず開守の名前を叫ぶ。
決着はついたかに見えたが――
「――ぬ"うう"う"う"う"ゥ"ゥ"ゥ"ゥ"ゥゥうううう"う"ううぅぅぅぅ"ん"ん"ん"ん"んんッッッ!!!"!!!」
地面を割るような踏み込みと共に、開守は膝を沈め、全身で雷撃に耐え切った。
<基礎能力スキル:雷属性耐性《F》を習得しました>
「んな……ッ!!? ここに来て耐性スキル!!!?」
開守の目の前に浮かぶメッセージウィンドウを見て、タイガは驚愕した。
「ぬうううううううううがああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああああッッッ!!!!!!!!」
開守は全身の力を振り絞り、地響きを立てながら大きく踏み込んだ。
まるで弾丸のような勢いの体当たりで、タイガへと襲いかかる。
「〝鉄山靠〟ッッ!!!!!!」
「ぐべええええええエエエエエェェェェエエエエエエエエッッ!!!!!!!!??」
骨の髄まで響く凄まじい衝撃が、タイガの身体を揺さぶる。
その小さな体を一気に浮かせ、空中へと押し上げた。
「タイガァ!!!?」
少女の絶叫が、鳴動に飲み込まれる。
「このまま潰れろォ!!! この小さな村と共にィ!!!!!」
開守は咆哮をあげながら、巨体の全てをタイガに押し付ける。
標的は村の一角。
壁が半ば崩れ落ち、瓦礫が散乱する古びた家屋だ。
瓦礫の隙間からは、乾ききった白骨が無言で横たわっている。
かつてそこに暮らしていた誰かの残骸――静かな哀しみを漂わせていた。
「貴様は世界の為に戦う者達の〝意思〟など理解できぬまま……
このちっぽけな村で死んでいけェッ!!!!!」
開守の声が執念に震え、風が吹き荒れる。
彼は怨念めいた力で、小さな少年を押し潰そうとする。
「……世界の為に……? それならボクだって……いや!!! 誰だって戦ってる!!!!!」
タイガは宙に浮いたまま、開守の巨体に押されていく。
それでも、必死に叫び返す。
そして、家屋へ突っ込む直前――
――ズザアアアアアァァァァァアアアアアアアアアアアッ!!!!!
地面が激しく震え、砂塵が舞い上がる。
村全体が揺れるかのような衝撃だ。
タイガは空中で体勢を捻り、両足を地面に深く突き刺し、踏ん張った。
「んな……ッ!!? バカなッ!!!!?」
「みんな……世界の為に戦ってる……!!!! この村は……猫ちゃんにとっての〝世界〟だ!!!!!!」
その言葉に、近くで戦況を見守っていた少女の瞳が揺れた。
「……ミャーにとっての……セカイ……?」
だが開守は、なおも圧力をかけ続け、その巨腕で小さな少年を押し潰そうとしながら口元を歪めた。
「ふん!! こんなちっぽけな村が〝世界〟? 笑わせるな!!!
世界とは……何百万……いや、何億か!? 膨大な数の人間が……!!!!」
「いいや……どんなにちっぽけでも、ここには猫ちゃんの……喜びも悲しみもいっぱい詰まった……たった〝ひとつの世界〟だ!!!」
タイガの声は叫びとなり、鋭く空気を切り裂いた。
彼の瞳には強い決意が燃え盛り、その手は腰のポーチへと伸びていく。
指先が掴んだのは――
「でェエエエエエエッやああアッ!!!!!!!!」
「ぐうゥ!!!?」
グサァ!!!
タイガは躊躇なく、掴んだモノを渾身の力で開守の左腕へと突き立てた。
「なんだこれは……!!?」
開守の表情が一瞬だけ歪む。
見下ろした先には――
「剣の……柄!!!!?」
刃のほとんどが失われた、壊れた剣の柄が深々と腕に突き刺さっていた。
武器としての機能を失いながらも、まるで獣の牙のように肉を穿つ。
(そういえば……こいつ……!!!)
開守は、先程タイガが玲玲との戦いで口にした言葉を思い出す――
――
――――
――――――
『――あ~、剣壊れちゃったんだよね……ここに来る途中でさ――』
――あの時は何気なく聞き流していた言葉。
だが今、その欠けた根元が彼の肉を貫いていた。
「雷だけじゃ効かないのなら……これならどうだッ!!!!」
――ビリビリビリィ!!!!
次の瞬間、タイガは右足を地面から引き抜き、そこに蒼白い電流を走らせた。
「ぐ!!? あ……が……っ!!」
だが、すぐに異変が起こる。
電流は雷を発した〝タイガ自身〟に襲いかかっていたのだ。
「ぬ!!? おい貴様!! 足に雷を纏っているのか!!?
バカか!!! 感電するぞ!!! 自分の足がどうなってもいいのか!!!!?」
「いいさ!!!! 命がけの戦いなんだ!!!!」
開守の眼が見開かれる。
常軌を逸した覚悟――それが、目の前の少年から溢れ出していた。
「でえェエエエエエエエエエエエェェェェエエエエエエヤアァッ!!!!!!!」
バアシイイイイイイイイイィィィイイイイイッ!!!!!!
雷を纏った右足が、爆音と共に開守の腹へ突き刺さる。
腹部から衝撃と稲妻が同時に炸裂し、周囲の空気が一瞬真空になったかのように音を失った。
「ッ!!!? ……ぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああッッ!!!!?」
開守の絶叫が空を裂く。
巨体が弓のようにしなり、その反動で――
――ヒュウウウウウゥゥゥゥゥウウウウウウウウン!!!
20mを優に超える高さまで、開守は空へと吹き飛ばされた。
あまりの衝撃で広場の地面が爆ぜ、周囲に土砂が雨のように降り注ぐ。
「た、隊長オオオオオオオオォ!!!?」
「あ、ありえねェ!!! 2mを超える巨漢の隊長が!!!! あんな高くまで……!!!!」
驚愕と恐怖が入り混じった隊員達の声が響く。
地上に残ったタイガは荒い息を整える間もなく、両足に再び雷を纏った。
周囲の空気は震え、地面を焦がすような熱気が立ち込める。
「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ……ッ!!!!」
稲妻の音が大地を裂き、地表を走り抜けていく。
タイガの動きはまるで雷そのもの。
鋭く、迫力に満ちていた。
「たあああああああアアアアアアァァァッ!!!!!」
そのまま、雷鳴と共に地面を蹴った――
――バチイイイイイイィィィンッ!!!
空へ向けて跳躍するタイガ。
上昇する軌道は開守を軽々と越え、さらに高く舞い上がる。
「小さな村だとか……家とか……そんな、なんてことない場所が、誰かにとっての〝世界〟なんだ……!!」
その声は雷鳴よりも鋭く、開守の鼓膜を貫いて響き渡った。
タイガの瞳は静かに燃え盛る炎のように青く輝き、雷をまとった拳を高く振りかざす。
バチバチイイィ!!
「ぐうぅあッ!!!?」
放たれた稲妻は真っ直ぐに開守の腕を貫く。
「な、何故だ!!? やつは雷のコントロールが……なッ!!!?」
――いや、そこに突き刺さった〝壊れた剣の柄〟へと集中して走っている。
(そうか……!!! この柄が〝避雷針〟になって……ッ!!!!!)
開守の瞳が血走る。
避けられぬ運命に抗うように歯を食いしばった。
「小さな村、家族や友達……たとえ守りたい人が何人でも……
大切な人のために戦う想いは同じだ!!!!
それが、その人だけの〝世界〟なんだ!!!」
タイガの叫びは、雷鳴と共に大地と空に轟き渡る。
「そんな〝ちっぽけな世界〟のために、命を懸けて戦ってる人達がいる……!!!!
ボクも守りたい……世界中の人達の……〝ちっぽけな世界〟を!!!!」
指先から足先まで力が漲る。
空中で一瞬の溜めを作ると、タイガは爆発的な勢いで加速し、開守に向かって一直線に飛び込む。
「ふざけるなァ!!! なんの犠牲もない勝利など……ありえな――」
「〝ちっぽけな世界〟すら救えなくて……この〝おっきな世界〟が救えるかァ!!!!
だああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああアアアアアァァァァッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
雷光が爆ぜ、火花が散り、衝撃波が周囲を巻き込みながら、大気を震わせる。
雷を纏ったその足は、鋭く閃光を散らしながら、まるで巨大な雷槍のように開守を貫く。
「〝ビリットオオオオオオォォォォッォ!!!!! インパクトオオオオオオオォォォォォ〟ッッ!!!!!!!」
「ぬ"うううううううううう"う"う"う"うううううううううゥゥゥゥ"ゥ"ゥゥゥゥ"ゥ"ゥゥうううううううう"う"ううぅぅぅぅ"あああああああア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ぁ"ァ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ッ"ッ"ッ"ッ"ッ"ッ"ッ"ッ"ッ"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"!"」
タイガの雷を帯びた足が開守の腹部に深く突き刺さり、その巨体は咆哮と共に激しく震えた。
そのまま、まるで岩の塊が天から叩きつけられるかのような衝撃と轟音を伴い、開守は地面へと打ち付けられていく。
――ドオオオオォガアアアアアァァァアアアアアアアアァァァアアアアァァァンンンッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
爆音が大地を震わせ、巻き上がった土煙が周囲を覆った。
砂塵が竜巻のように渦を巻き、轟く風圧が調査員達の衣服や髪を乱した。
地面はその衝撃で裂け、まるで巨獣の足跡のような巨大なクレーターが広場の中央にぽっかりと穿たれた――
大地が揺れ動き、轟音が徐々に遠のき、やがて辺りに静寂が訪れる。
クレーターの中心には、巨体を大の字に投げ出した開守が倒れていた。
対照的に、土煙にまみれ、全身ボロボロになりながらも、力強く地面を踏みしめて立つタイガの姿があった。
その瞳は、決して揺らぐことのない強い光を放っている。
「……よし……!!」
短く、しかし力強いその言葉が、広場の静寂を破る。
「クエスト……クリアだああああああああああああああああアアアアアアァァァァァッ!!!」
力強い宣言が、乾いた空気を震わせる。
見守っていた少女の顔には、喜びと安堵が広がった。
「……タイガ……ッ!!」
村の静けさに、勝利の余韻だけがゆっくりと染み渡った。
いよいよ戦いに決着……!!
よければブックマーク、評価等で応援してください!!
調査隊隊長、蓮 開守のステータス――
兵士Lv.15 前職:武闘家Lv.15
HP:320 MP:0
ちから:95
みのまもり:106
すばやさ:101
こうげき魔力:0
かいふく魔力:0
きようさ:71
うんのよさ:23
所持スキル
〇基礎能力スキル
タフネス《E》[パッシブ]
体が頑強になり、最大HPとみのまもりが上がる。
マッスル《C》[パッシブ]
肉体の力が高まり、ちからが上がる。
アジリティ《C》[パッシブ]
身のこなしが軽くなり、すばやさが上がる。
雷属性耐性《F》[パッシブ]
雷属性から受けるダメージを軽減する。
不屈《E》[オートトリガー]
HPが半分以下になると自動的に発動し、みのまもりが上がる。
不動《F》[パッシブ]
物理攻撃を受けても、ひるみにくくなる。
回避集中《D》[オートトリガー]
攻撃の回避に成功すると自動的に発動し、会心率が上がる。
〇技能スキル
剣術《D》[パッシブ]
剣を装備している間、攻撃力が上がる。
格闘術《C》[パッシブ]
格闘攻撃時、攻撃力とすばやさと会心率が上がる。
クンフー《C》[パッシブ]
格闘系武技の習得条件となる。格闘攻撃時、攻撃力とすばやさと会心率が上がる。
盾術《C》[パッシブ]
盾を装備している間、防御力が上がる。
重装備慣れ《C》[パッシブ]
重装備によって生じる行動上のペナルティを軽減する。
軽装慣れ《D》[パッシブ]
軽装時、すばやさが上がる。
〇武技スキル
パワースラッシュ《D》[アクティブ]
力をためて、重い一撃を放つ。
シールドバッシュ《C》[アクティブ]
盾で相手を殴り、低威力のダメージを与える。一定確率で相手をひるませる。
挑撃《D》[アクティブ]
敵1体を挑発しながら攻撃する。ちからと自身に向けられたヘイトに応じて威力が上がり、残りHPが少ないほどさらに威力が上昇する。
咆哮《C》[アクティブ]
大声を上げ、敵の注意を自身へ引きつける。
大咆哮《E》[アクティブ]
激しい咆哮で敵の注意を自身へ引きつけ、敵全体にダメージを与える。
鉄壁の構え《C》[アクティブ]
一定時間、防御力が上がる。動きが遅くなる代わりに、攻撃へ耐えやすくなる。
気功法《D》[アクティブ]
一定時間、自身のちからと回避率を上げる。
虎硬身《D》[アクティブ]
発勁によって全身の筋肉を瞬時に鋼のように硬化させる。刀さえ跳ね返す堅牢さを得る防御技。
飛燕脚《E》[アクティブ]
すばやさに応じて威力が上がる跳び蹴りを放つ。
剛破突き《F》[アクティブ]
敵1体を攻撃し、防御力の一部を無視してダメージを与える。
鉄山靠《D》[アクティブ]
全身を使って相手へぶつかる体当たり技。巨岩さえ押し砕く威力を持つ。




