第1話 “BET IT ALL, FIND ANOTHER WORLD”――異世界の夜明け(後編)
少女がリュックを背負い、森から走り去ろうとした直後……
近くの茂みがガサリとざわめき、青い綺麗な羽を持った、蛾のようなモンスターが飛び出してきた。
「グギャギャギャアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」
「っ!!? もう来たのか!!? く……ッ!!」
少女は反射で腰のナイフに手をかけ、思いきり引き抜く。
刃が淡く光り、空気を裂く音が2度走った。
「〝スプリットファング〟ッ!!」
「グギャアアアアアアアアアッ!!?」
モンスターの体に、鮮やかな2本の切り傷が刻まれる。
蛾はそのまま地面に落ち……ぴくりとも動かなくなった。
「うわ!? こいつスゴイ怖い顔だね!!?」
「蒼面蛾……この辺りの森に生息する〝人面蛾〟だ……!!」
少女の言う通り。
蛾の胴体には、〝青白い人の顔〟のようなものが貼りついていた。
まるで悲鳴を上げているかのような、歪んだ表情で。
「今この森では、蒼面蛾が大量に発生してるんだ……!! しかもこいつらは夜行性……昼間とは比べものにならない数で押し寄せるぞ……ッ!!!」
「大量に!? それじゃあ……」
少年は目を見開き……
次の瞬間には、その青い瞳を輝かせて言った。
「この綺麗な蝶々が、沢山いる幻想的な光景が見られる!?」
「バカ!!! それより前に襲われるわ!!! こいつら人喰うんだぞッ!!!!」
「え~~~~~ッ!!!? 人喰うのォッ!!!!?」
「おミャーそんな呑気で今までよく生き残れたな!? 早く逃げるぞ!!!」
「へ? うわ!!?」
少女はグイッと彼の手を掴み、森の出口へ向けて駆け出した。
強引に引っ張られ、彼は思わず声を上げる。
「ねえ!! どこに逃げるの!?」
「とりあえず森を抜ける!! 街道まで追ってこなければいいが……!!!」
「そっか! わかった!!」
素直に頷く少年。
だが少女の頭の中は、ぐちゃぐちゃだった。
(く……っ! てかなんでミャーはこいつを連れて逃げてるんだ!! ほっとけばよかったのに……さっきのシチューの件と言い、今日は変だ……!!)
そう考えながら……彼女はふと気づく。
(あれ……てかこいつを連れてって……どうやって……)
咄嗟のことで気づかなかった。
自分が、少年の手をギュッと握りしめていたことに。
「うわあああァ!!? なに手ェ繋いでんだァ!!!!」
「ええええ!!!? いやキミから握ってきたよねッ!!?」
少女が思いきり手を振りほどくと、彼も今回ばかりはツッコミに回る。
「き、気やすく触るな!! ケダモノ!!! シャアアアアア!!!!」
彼女は顔を真っ赤にし、耳をピンと立てながら、少年から距離を取った。
「え~……ボクなにもしてないよ~」
彼はマフラーを指で捩じり、困った様な顔をする。
「ホントに調子が狂う……!! なんなんだ、こいつは……」
少女は尻尾を落ち着きなく揺らし、色の違う両目で彼を睨みつける。
だが、その時――
「グギャギャギャギャ!!!!」
「ギャー!! ギャー!! ギャギャギャーッ!!!」
「――っ!!?」
前方の茂みが、同時にガサガサと揺れた。
鮮やかな羽根が見え――蒼面蛾が飛び出してくる。
しかも、4体。
月明かりを受けた翅の模様が、ひらり、ひらりと宙に揺れる。
4体は横に広がり、じりじりと距離を詰めてくる。
逃げ道を探るような動き。囲い込む気だ。
「しまった……ッ!!! もうこんなに……!!」
「お~!! やっぱり綺麗だな~!!!」
この状況でなお、少年は羽根の模様に見とれている。
「グギャアアアアアアアアアアアア!!!」
だが、呑気な彼の感想をかき消すように、1体の蒼面蛾が突進してきた。
「ぐ……!! 〝スプリットファング〟ッ!!」
少女は1歩踏み込み、躊躇なく短剣を振り抜く。
蒼い羽が切り裂かれ、鱗粉と共に宙を舞った。
月光を受けて煌めくその光景は、まさに幻想的。
だが、その実態は紛れもない地獄だった。
「ギガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!!!」
「アギャギャギャアアアアアアアアアアアアアアアァ!!!」
倒したのは、たった1体。
背後から、残る3体が一斉に襲いかかってくる。
「く……! 同時に3体……いけるか……ッ!!?」
「ボクも手伝うよ!!」
「おミャーは余計な事すんな!! 行き倒れてたんだろ!! 足手まといだ!!!」
少女は叫び、彼の言葉を切り捨てるように前へ出た。
「む〜!! ボクだって戦えるのに〜」
後ろから聞こえる不満など聞こえないふりをして、彼女はナイフを振りかざす。
「〝スプリットファング〟ッ!!!」
「〝ファング〟……ッ!!!」
「〝ファング〟ッッ……!!!!」
閃光が走る。
刃は風のように敵の懐へ潜り込み、影と影の隙間を滑るように舞った。
2本の光が、何度も、正確に――蒼面蛾達を切り裂いていく。
「ギャギャギャギャ!!?」
「ギギャアアアアアアアアアア!!!?」
蒼い羽が散る。
たちまちのうちに、3体を仕留める早技。
だが、その代償は重い。
「はぁ……っ!! はぁ……っ!!」
少女は膝に手をつき、肩で息をする。
息をするたび、胸が焼けるように熱い。
(く……っ! 〝消費MP〟が多い……!! 森を出るまで、持ち堪えられるか……!?)
弱音が喉元までせり上がる。
だがそれを、少女は力ずくで押し戻した。
(いや……まだだ……ッ!!! ミャーは独りで生きていくって決めたんだ!!!)
唇を噛みしめ、曲げていた腰を無理やり伸ばす。
「こんなところで……! 終われ――」
顔を上げようとした、その時――
――ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!
「「ッ!!!?」」
森の木々を揺らし、空気が爆ぜるような轟音が響いた。
一拍遅れて、凄まじい突風が2人を叩く。
「うおォ!? 今度はなんだァ!!?」
「……おいおい……まさか……これって……ッ!!!」
少女は風に煽られる髪も構わず、顔を青ざめさせる。
胸の奥を貫く、最悪の予感。
「は……はやく!! はやく逃げな……ッ!!」
だが――もう、遅かった。
「グギガギャアアアアアアアアア!!!」
「ゴガギギャギャアアアアアアアアアアアア!!!!」
「っ!!!?」
周囲の木々が一斉に揺れ、
その影から、次々と蒼面蛾達が姿を現す。
数は――今までとは、桁が違う。
見渡す限り、数十体以上。
四方八方を、完全に囲まれていた。
「アギャギャギャギャギャア!!!!」
「ガギグギャアアアアアアアアアアア!!!!」
「ギャイギャイギャイギャイイ!!!!」
「キシャアアアアアアアアアァァァァ!!!!!」
「にゃ……にゃんだよ、これ……」
少女の声が、震える。
顔から血の気が引き、視界が狭まっていく。
「こんな……数……どうやって……」
誰が見ても、詰みだった。
だが――
絶望は、まだ終わらない。
――ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
再び吹き荒れる爆風。
先程よりも勢いを増し、2人の頭上へ襲い掛かる。
「――!!? ……あ……あ……嘘だろ……なんで……」
「んぐぉ!!? これはさっきの……ッ!!!」
少年は腕で顔を守りながら、風の〝出どころ〟を探す。
森の奥――ではない。
――上だ。
いつの間にか2人は、森の中にぽっかりと開けた草地へ飛び出していた。
白い光が真上から降り注ぎ、周囲に群がる蒼面蛾達の蒼い羽を、不気味なほど鮮明に照らし出していた。
そして――
その淡い夜の光を背に、羽ばたく巨大な影があった。
ゆっくりと、焦らすように降りてくる。
近づくにつれ、その全貌が明らかになる。
蒼面蛾と同じ、青い羽。
だが、その輝きはまるで別物だった。
月光を受けて、ランタンの灯りすら塗り潰すほどの蒼。
羽の中央には、満月のような金色の円紋。
幻想的な羽ばたき。
だが、そのサイズは、小さな家屋を優に超えている。
「すンゲェーッ!!!! デッケェー!!!!!」
少年は目をキラキラと輝かせ、完全に見惚れている。
だがその横の少女は、彼の表情とは正反対に、顔が完全に青ざめていた。
まるで2人を囲む、蒼面蛾のように。
彼女の腰は砕け、その場にへたり込んでしまう。
「な……なんで……群れのボスが……〝近森の主〟が、こんなところまで……」
「へ~!! こいつがボスか~! そりゃあデケェはずだ」
少女の恐怖など意に介さず、少年は呑気に見上げ続ける。
「……〝蒼面蛾王〟……最近の蒼面蛾大量発生の原因で……ギルドが〝緊急討伐指定モンスター〟にしてたヤツだ……
ランクは《C》、蒼面蛾は《E》ランクだから、こいつらよりも2つもランクが上だ……」
◆ ◆ ◆
【蒼面蛾王】
〇分類:蛾型モンスター(特殊個体)
〇ランク:《C》
〇二つ名:《近森の主》
■緊急討伐指定モンスター
◆ ◆ ◆
「丁寧な解説ありがと!!」
「いつまでたっても呑気なおミャーに!!! ちゃんと状況を理解させるためにしたんだ!!!!!」
少女は全力でキレながらツッコミを入れた。
だが、その声は怒鳴っているはずなのに、今にも泣きそうだった。
「あは……あはは……もう終わりだ……ミャー……こんなところで……」
どうしようもなさすぎて、もはや笑いすら零れてくる。
目の前には数十体以上の蒼い羽。
見上げれば、月光を背負って降りてくる〝蛾の王〟。
少女の耳は、ふやけた紙のようにへたり込み、尻尾は根元から折れたかのように、地面に倒れている。
彼女の瞳から、光が消えていく。
涙すら出ない。出せない。
心は乾き、ひび割れ、その隙間へ冷たい現実だけが突き刺さる――
――だが、そんな少女の前で、小さな影が豪快に笑った。
「あはは!! ボスってことはさ……こいつ、〝やっつけたら〟スンゲェいっぱい経験値もらえるかな!?」
「……は……? 〝やっつけたら〟……?」
絶望で頭が白くなっていた少女には、言葉の意味が一瞬理解できなかった。
だが――
遅れて、頭を殴られたような衝撃が走る。
「――はッ!!!? おミャーあれを〝倒す〟って言ってるのかッ!!!?」
少女は強引に正気へ引き戻された。
「うん! でへへ~!! はじめてのボス戦だ!!!」
少年は恐れるどころか、ワクワクしながら巨大な蛾を見上げている。
こんな状況なのに、彼は好奇心を隠そうともせずに笑っていた。
「む……無茶だ……っ!! あんなのどうやって……人間の何倍もあるバケモノだぞ!!!?」
その絶叫を遮るように、少年がくるりと振り返った。
これまで彼女の恐怖にまるで反応しなかった彼が、一度だけ、安心させるように笑う。
「だいじょうぶ! 〝命の恩人〟に、指一本触れさせないから!!」
「へ……?」
ずっとマイペースを貫いてきた少年から、不意に返された言葉。
しかも、それはまるで――
(にゃんだよ……それって……ミャーを守ってくれるってことか……?)
ひとりぼっちでも生きていく――そう決めた少女に、寄り添うような言葉。
(違う……ありえない……だって、誰も助けてなんて……)
記憶の底に沈めた暗い光景が、再び浮かび上がりかける。
だが、それをかき消すように少年は宣言した――
「――さあ……クエスト、開始だァ!!!!」
「ゴアアアアアアアアアアガギギャギャギャギャアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!」
応えるように、蛾の主――〝蒼面蛾王〟も咆哮する。
絶叫とともに、ヤツの体が淡く発光した。
光は渦を巻き、濃密な魔力の塊となって膨れ上がる。
「……っ!!? 〝呪文〟が来るぞッ!!!!」
少女が叫んだのとほぼ同時に、蛾王の体から爆風が解き放たれた――
――ビュルゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!
ズゥウワシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!
――これまで森に吹き荒れていた突風。
その正体が、今ここで牙を剥いた。
「これは……〝風属性呪文〟かッ!!? うわあああァッ!!!?」
少女は吹き飛ばされそうな体を必死に踏ん張る。
土が舞い、息が削られる。
だが、前方の少年は――
この暴風の中で、微動だにしなかった。
ただ剣の柄を握り、目を閉じる。
まるで世界の音を一度全部消して、何かに集中しているように。
「ふぅ……」
少年が静かに息を吐いた瞬間、パチ……パチ……と、乾いた音が周囲に生まれた。
雷だ。
小さな青い稲妻が、少年の周囲を走り始め、空気を焦がしていく。
水色のマフラーが、緩やかに棚引く。
彼の黒のクセっ毛が、ふわりと持ち上がる。
バチィバチィ!!
黒髪の間を、青い電光が通る。
それに押し上げられるように、青いメッシュがギザギザと天へ跳ね上がった。
同時に、顔つきも変わる。
つい先程まで、無駄にきらめいていた青い瞳から、甘さが消えた。
細められた眼差しは、獲物を捉えた肉食獣のように鋭い。
口元には、迷いのない決意だけが浮かんでいた。
さっきまでの能天気な少年は、そこにはいない。
雷を纏った〝勇む者〟の顔だった。
髪の先端から、細かな電光が散る。
それらは何かに引き寄せられるように集まりはじめ、やがて太く、眩い光の筋となって――
剣へと、吸い寄せられた。
刃に、雷が走る。
青白い閃光が刃全体を包み込み、低く唸るように震えた。
少年は全身に力を込め、足を踏み込み――
剣を横薙ぎに振るった。
「はああああああァッ!!!!!」
剣から烈風が放たれる。
それは蛾王の爆風と正面からぶつかり――
――ビュオオオオオオオオオオオオオオォォォ……ッ!!!
次の瞬間、場に静寂が落ちた。
「グオオオォッ!!?」
最初にその意味に気づいたのは、蛾王だった。
自分の呪文が――打ち消された。
『――何かがおかしい。
目の前の獲物は……一体なんなんだ……?』
そう思考を巡らせた時には、もう遅かった。
「子猫ちゃん! かがんで!!」
「え?」
言われるまでもなく、彼女は腰が抜けたまま動けずにいた。
だが不思議と、彼の背中を見ていると――
失ったはずの力が、胸の奥からじわりと戻ってくる気がした。
少年は振り抜いた剣を縦に構える。
バチバチバチィ……ッ!!!
帯電は一気に増し、剣に絡みつく雷が暴れだす。
眩しさで目がくらむ程の光。
そして――
少年は、剣を思いっきり振り抜いた。
「〝ビリット……スラアアアアアアアァァァッッッシュ〟!!!!」
刃がぐるりと1回転する。
ピッシャアアアアアアアアアアアアンッッッ!!!!!
剣先から溢れた閃光が、円となって広がり――蛾の群れを、まとめて包み込んだ。
剣に纏った雷が、周囲の蒼面蛾を1匹残らず焼き尽くしていく。
「――っ!!!」
「――ギャ……ッ!!!!?」
悲鳴を上げる暇もない。
蒼い羽は光の中で崩れ、鱗粉は火花へ変わり、闇へ散る。
蒼面蛾王も目を見開き、ただその光に呑み込まれることしか出来なかった――
「――グギ……!!? ギギギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!??」
――あたり一面を閃光が覆い、やがてすべての音が消えた。
光が引いていき、視界が戻ってくる。
まぶたの裏に焼きついた残光が、まだちらついていた。
「う……っ! ま、まぶし……!! にゃにが……?」
少女は片目だけ薄く開き、次にもう片方をそっと開く。
涙も出ないほど乾いていた瞳に、遅れて光が馴染んでいった。
そして――
「――え……エエエエエエエエエッ!!?」
目の前に広がる光景は、信じられないモノだった。
――森の中を、鮮やかな青い鱗粉と羽が、ゆっくりと舞い散っている。
まるで夜空に降る雪のように、淡く、静かに。
月明かりを受けたそれは、あり得ないほど綺麗で……
だからこそ、恐ろしいほど現実離れしていた。
その美しい幕の下で、
大量の人面蛾が、地面に転がっていた。
羽は裂け、胴は焦げ、
青白い顔は、悲鳴の途中で固まったみたいに歪んだまま。
そして、その中央には――
彼らの主、蒼面蛾王が白目を剥き、巨体を横たえていた。
「森の主を……倒しちゃった……」
少女の声は、かすれていた。
理解が追いつかない。
喉の奥だけが、ひどく冷えていく。
蒼面蛾王の体表で、バチッ……バチッ……と断続的に火花が弾ける。
帯電の痕跡。
雷撃の余韻を残すように、焦げた匂いが夜風へ混じる。
「……ホントに……こいつら全部……」
自分の目でしかと見届けたのに、少女は受け入れられない。
無理もない。
だって……
それをやったのは……
目の前にいる、小柄な少年なのだから。
「だっはっはっは!!! よし!! クエストクリアだあああアアアアッ!!!!」
彼は満面の笑みで叫び、両腕を上げた。
その無邪気さに、少女は言葉を失う。
「お……おミャー……いったい、にゃにモノなんだ?」
「ん? そういえばまだ名乗ってなかったね」
彼女が戸惑い混じりに問いかけると、少年はニパ~っと笑いながら答えた。
「ぼくは〝タイガ〟!! よろしくっ!!!」
月の明かりが揺れ……その笑顔だけが、やけにまぶしく見えた。
~あとがき~
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【モンスター図鑑】
【蒼面蛾王】
〇分類:蛾型モンスター
〇ランク《C》
〇生息域:朱円王国周辺の森林地帯の奥
〇活動時間:夕暮れ~夜明け(夜行性)
〇二つ名:〝森の主〟
〇所持スキル
〇基礎能力スキル
アジリティ《D》[パッシブ/変異型]
風属性耐性《C》[パッシブ/変異型]
麻痺耐性《C》[パッシブ/種族型]
夜目《D》[パッシブ/種族型]
軽やかな羽《C》[パッシブ/変異型]
〇技能スキル
飛行《C》[アクティブ/種族型]
触角探知《C》[アクティブ/種族型]
〇武技スキル
羽で打つ《C》[アクティブ/自己習得型]
月光鱗粉《C》[アクティブ/変異型]
〇魔法スキル
ヒューサ《C》[アクティブ/風属性/変異型]
ヒューサル《D》[アクティブ/風属性/変異型]
〇異能スキル
月光《C》[オートトリガー/変異型]
朱円王国近郊の森に突如として現れた、蒼面蛾の異常成長個体。
通常の蒼面蛾は、胴体だけでも人の頭ほどの大きさを持つ。
しかし、この個体は人間の数倍に及ぶ巨体へと変貌しており、翼を広げたときの幅は家屋1軒に匹敵する。
異常成長の原因は分かっていない。
冒険者ギルドでは、魔力汚染、あるいは土地そのものに生じた異変が原因ではないかと推測されている。
この個体が出現して以降、周辺の森では以下の異常が確認された。
・蒼面蛾の大量発生
・夜間における深刻な視界不良
・精神錯乱および幻覚被害
・狩人や旅人の相次ぐ失踪
これを重く見た朱円の冒険者ギルドは、蒼面蛾王を緊急討伐対象に指定。討伐クエストを発行した。
羽は深い蒼色を基調とし、その縁は銀色に染まっている。
通常種の羽に刻まれていた歪な三日月模様は、蒼面蛾王では鮮やかな金色の円へと変化しており、夜空に浮かぶ満月を思わせる。
頭部も通常種以上に、はっきりと人間の顔に似ている。
目と口を閉じている間は穏やかな表情に見えるが、ひとたび目を見開き、口を大きく開けば、その顔は狂気じみた笑みへと一変する。
異能スキル〈月光〉は、一定量以上の月の光を浴びることで自動的に発動する。
月光を受けた羽は青白い光を放ち、蒼面蛾王の飛行能力と風属性魔法を強化する。
さらに、発動中に武技〈月光鱗粉〉を使用すると、まき散らされた鱗粉が月光を複雑に反射。周囲を淡い光で満たし、この光を長時間見続けた者に、方向感覚の喪失、精神錯乱、幻覚などを引き起こす。
また、〈月光〉の輝きには周囲の蒼面蛾を呼び寄せ、興奮状態にする作用もある。
集まった蒼面蛾が3匹を超えると、それぞれの〈群飛〉が自動的に発動する。そのため、蒼面蛾王との戦闘が長引くほど群れの連携は強まり、討伐の難度も上昇していく――
――遠目には神秘的で美しく、近づけば本能的な恐怖を呼び起こす。
まさしく、〝森の主〟と呼ぶにふさわしい異形である。




