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「それで?可愛いお嬢ちゃん。アンタは何?あの男と同じなのかい?」
女海賊の告白を受け、ガタガタ震える私にバネッサさんは優しく問いかけてくる。だがカウンターテーブルにザクッ、とナイフが突き立てられているので、優しいがこれはあれかな。拷問とか尋問の前触れかな、と私は泣き出したい。
知ってることを洗いざらい吐いちまいな、と視線で強制される。
しかも同類=外道疑惑も立てられており、バネッサさんの態度は私を完全に敵認定しかけているのだ。
どちらかというと私もバネッサさんと似たような立場なので何なら「神様の被害者の会」の設立を提案できるのではないかと思う。が、今この状況はメルザヴィアさんのお使い、多分「アタシの好きな男のタイプを探ってこいとか言われたんだろう」と思われている。
「ち、違います……あの……えっと、どっちかと言いますと……わ、私も、バネッサさんと同じで……!!」
敵じゃないです、味方になれます、ととりあえずはそれをまず第一に告げた方がいいだろう。
命乞いではない。「このまま私がストレスと恐怖を感じ続けると、ソドムさんが手っ取り早くこの港を沈めてバネッサさんの腹を割く」というのが頭をよぎったからである。
同じ、という私の必死の言葉にバネッサさんの綺麗な眉毛がぴくん、と動いた。
そして、目の中に先ほどとは違う感情が宿る。
「同じ?――アンタが?」
「そうです、私も神様の……………ッ!!!!!!?????????????」
よし。
これでお友達に!!
などと淡い希望を抱くべきではなかった。
私はバネッサさんに髪を掴まれ、カウンターに引き摺り込まれそうになる。咄嗟にカウンターを掴んで踏ん張った!!ブチブチブチと抜ける毛!!!!若ハゲは嫌だ!
必死に抵抗しながら私はバネッサさんを見る。
胸から体中に黒い鱗が覆われていく。日に焼けた肌は黒くなり、私を掴む手は女性の柔らかさが消えていった。目が合った部分は緑色の宝石のようなものが埋め込まれている。怪物の姿へ変わりゆくバネッサさんに私は絶句した。
「差し出がましいとは思うのだがな。私の助けが必要かと思ってな」
「っ……ソドムさん!」
ドガン、と、私を掴んでいたバネッサさんが吹き飛ばされた。文字通り、色んなものをなぎ倒してが瓦礫に埋まるバネッサさんを見届ける暇もなく、私は現れたソドムさんに抱き上げられる。
「助けていただいてありがとうございます!でも、あれ!何ですか!?」
「何とはおかしなことを聞く。イドラ・マグダレアの遺物をその身に取り込み、ただの人間が無事でいられるわけがないだろう?」
魔獣の欠片。魔王の因子を取り込んだイドラ・マグダレアの力の欠片は、単純に人体に有害だという。宝石の形にして愛でている分には良いが、その力を引き出す、あるいは影響を受けようとすると、完全な魔獣にはならないまでも、それに近い怪物になると……。
な、なんてものを世にバラまいたんだ……イドラ殿下。
そしてそれを私に飲ませているソドムさんに軽く引く。
「あぁ、貴女は別だ。貴女は我が友と、あのものを語る女の血が流れているからな」
「そういう問題ではないと思いますが」
「あれは貴女の当然の権利で遺産だ。取り戻すべきだろう?」
この件に関しては私が嫌と言ってもソドムさんは私に取り込ませるだろうことはわかっているので、私は微妙な顔をするのみにとどめた。
防御障壁のようなものを張ってくださっているのか、ソドムさんと私の周りだけ瓦礫は飛んでこない。けれど起き上がった半魔獣のバネッサさんが建物を破壊し、街を蹂躙していく。
「こうも暴れられてはロクに話もできまい。落ち着かせておくか」
「お、お願いします!」
ソドムさんが虚空から槍を取り出してバネッサさんに投げた。咆哮を上げて半魔獣が体に刺さった槍を引き抜こうとするが、びくともしない。
半魔獣の大きな手や尾がソドムさんを攻撃するけど、ソドムさんは「児戯にもならんなぁ」と残念そうにそれを悉く躱した。半魔獣などと私は呼んだが、ソドムさんの力の半分もないのは明らかだ。
体中を槍で串刺しにされ、暫くしてバネッサさんが大人しくなった。
断末魔の悲鳴のような大きな声を上げて、体が徐々に人の形に戻っていく。ただその全身を貫くように槍が一本、刺さっているが……。
「ぐっ、う……!!この……!!」
「まだ睨んでくる元気があるようだな。目はなくとも会話はできるだろう?潰して良いか」
いいわけないだろう。
私はソドムさんに下ろして頂き、その手を掴んでスタスタとバネッサさんの前に進み出る。
「誤解です!」
「ぐっ、う!何が!だ!!」
「ご覧ください!この私と!手を繋いでる!!神獣さんを!わかりますか!?誤解です!!」
子供に手を引かれるソドムさんは「積極的だな」と大変うれしそうにしている。
私はバネッサさんが急に黒化した理由を考えた。
緑の目の怪物になった、つまりそういうことだろう。
「バネッサさんにとってのメルザヴィアさんは、私にとってソドムさんなんです!」
被害者の会の設立に関しては諦めよう。
私が全力で叫ぶと、バネッサさんはぴたりと動きを止める。
私はぐいっと、ソドムさんと繋いでいる手とは反対の手でバネッサさんの手を掴み神獣さんの神域に引き込んだ。
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レゴリスまで行きついた方がいてビビってます。そういう伏線は入れましたが、気付かれるとは思わなかったです。なろうの読者さんって博識すぎませんか。




