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「うむ、なるほど。つまりは男女の仲人をすればいいのだな。なに、私は実は男女の仲を取り持つことにかけては、ちょっとした実績があってな」
海の神様に対して容赦がないソドムさんだが、楽しめることは楽しむ主義なのか。バネッサさんの後ろ姿を眺めながら、なぜか得意そうに言う。
「そういうご利益があったんですか。へぇ」
さすがは建国の神獣さんである。縁結びの神様でもあるとは。私は感心したが、ふと、王弟殿下~の作品の中でイドラ殿下とアゼルさんのプロポーズを見守ったあの実績をカウントしているのかと心配になる。あれは……ソドムさんは関係ないのでは??あれこれ面白おかしく炊き付けたりアドバイスをしてはいたが、アゼルさんがイドラ殿下に対して激アマだったので、あれはイドラ殿下がトラックに体当たりして愛の告白をしても笑顔で受け入れてくれただろう。
元々両想いの男女の背中を押しただけの行為を実績扱いしていいものか。
しかし乗り気なのを邪魔してはいけない。愉しそうな推しの姿は健康に良い。
「まぁ……でも私は個人的に……見込みは薄いかと思いますけど」
「と、言うと?先ほどもそのように言っていたな?」
「何度もリセットボタンを押してギャルゲーをやり直しても目当てのヒロインを落とせてないので……多分、根本的に、海の神様はバネッサさんの好みじゃないんだと思います」
「……なんと」
記憶をやり直して、関係性も作り直しても、結果的に良くて「いいお友達」止まりだ。良くてというより、そういう対象にならないという証明ではないのか。
「バネッサー!!」
と、私がそんな話をしていると、お店の入り口がバタンと大きな音を立てて開いた。
青い髪に青い目の日焼けした大男。真っ白い少し擦り切れたシャツと、八重歯のとてもキュートな……まぁ、多分、海の神様メルザヴィア様だ。ソドムさんが「復活が早かったな」と興味なさそうに呟いたので間違いない。
「あら、メル。今日は早いのね。仕事はもう上がり?」
「あぁ!今日も大量だったんだぜ!ほら、やるよ!!」
愛想よくバネッサさんがメルザヴィアさんの相手をする。愛想は良いが、先ほど私たちに向けられた接客スマイルと全く同じだ!!
しかしメルザヴィアさんはバネッサさんの笑顔に全力で嬉しそうな笑顔になる。へらり、と笑い、背負っていた大きな籠を前に出してバネッサさんに差し出す。
そこには金の鱗の魚や大粒の真珠を咥えた小魚がたくさん入っていた。あ、珊瑚もある。
「あやつ。女に貢ぐために己の眷属を差し出しているのか。阿呆なのか」
「うわぁ……でも、なんか……魚さんたちも……我が王の為、みたいな……使命感を帯びた目をしてますよ……人望、じゃなかった魚望あるんですね……メルザヴィアさん」
私とソドムさんはちょっと引いているが、バネッサさんの笑顔は変わらない。豪快に笑い、お礼を言ってメルザヴィアさんをお店の中に案内する。
と、そしてそこから、私はメルザヴィアさんがなぜ恋多き女バネッサさんにとって「論外」判定なのかを理解する光景を見せつけられた。
*
「あ、あまりに……社会不適合者!!人でなし!!」
殴り合いの大乱闘となった酒場の隅で、私はソドムさんにしっかりガードされながらメルザヴィアさんを罵倒した。
酒場にバネッサさんを口説きに来たメルザヴィアさん。
まず最初にしたことはバネッサさんの美しさを…………歌う!!!!!!アカペラで!突然!!!!
酒場の人たちはいつもの事なのか「うるせぇ!」「黙れ!」などと罵倒した!別に歌は上手くはない!!バネッサさんはゲラゲラ笑いながら仕事を続ける!!
それだけならまだよかった……次に、メルザヴィアさんは、バネッサさんを口説くために……自分が金銀財宝をどれだけ持っているか……要は、財力自慢!!そして望めばバネッサさんが想像もできないような良い暮らしをさせてやると……!!ついでに今の暮らしがあまりよくないだろうと、蔑む!!!!!!!クズ!!!!!
そもそも酒場の女給設定にしたのはメルザヴィアさんだろう……あれだ。シンデレラプロジェクトでもしたつもりなのか……。
ゲラゲラ笑っていたバネッサさんも、自分の暮らし、それなりに楽しくやっている暮らしをメルザヴィアさんの価値観で判断されて目が据わった。酒瓶を全力でメルザヴィアさんの頭を殴り、それを合図に始まる酒場の大乱闘。
本来メルザヴィアさんが圧勝しただろうが、残念ながら今この場にはソドムさんがいた。
私が折角運ばれてきた料理を堪能できず、ならず者が吹っ飛んできたお陰で料理が台無しになったことで涙目になった。するとまず、ソドムさんが笑いながらそのならず者をメルザヴィアさんに投げつけた。クリティカルヒットしたが、その一撃はなんとか堪えたメルザヴィアさんの頭に、ソドムさんが投げつけた酒樽が連続ヒットし、そして撃沈した。
今は大暴れする海の男たちの足元で何度も踏み潰されているが、まぁ、死なないからいいだろう。
*
ピピーっと、私は白い笛を吹いてずるずると神域に引きずり込んだメルザヴィアさんにアウトを突きつける。
「色々駄目です」
「何がだ!?」
「なんていうか、物語でいう所の当て馬キャラを目指したいんですか?」
メルザヴィアさんは大真面目にバネッサさんを口説くべく行動しているようだが、あの言動で落ちる女はいるとしても、それはバネッサさんではないだろう。
「人間の女ってのは金持ち男に見つけられたいんだろ?」
「だが、今の貴様の身分は漁師という設定ではなかったのか」
「あぁ、そりゃあれだ。前に貴族って設定でやったら身分違いだなんだのと拒否されてよー」
たぶんそれあれだと思う。身分を理由に体よく振ったんだと思う。
しかしメルザヴィアさん。貴族は駄目だけど金持ちの漁師ならいけると思うあたり、人間社会を理解できていない。いや、メルザヴィアさんとしてはバネッサさんは海が好きだから、海の男、海賊という犯罪者ではなく、漁師なら好かれやすいと、一応メルザヴィアさんなりに考えたそうだ。
「メルザヴィアさん。ちょっと正座してください」
「はぁ?なんで俺サマが……いや、うん、良いな。丁度地べたに座りてぇと思ってたんだよ。だからおい、神獣、無言で睨むんじゃねぇ」
「私は何もしていないが?」
平和的に、協力的なメルザヴィアさんは芝生の上にちょこん、と正座してくれた。私はその前に立ち、びしっと指をさす。
「あらゆる方向性がそもそも間違っていて論外ですが、第一、なにより!!大前提!!誠実さが皆無!!駄目です!」
「せ、誠実ぅ!?」
「そうです。良いですか、どんな女性であっても、バネッサさんでも私でも。まず男性に求めるのは誠実さです!」
はいそこ、ソドムさん「私には備わっているな」と頷いていますが、神様たちの誠実さ=人間にとっても誠実かどうかジャッジさせていただきたいところだ!
私は折角なのでソドムさんもメルザヴィアさんの隣に正座していただいた。にこにこと大変うれしそうだ。
「ははは、実に面白いな。まるで母親に叱られる童のようだ」
推しが楽しそうなのは何よりですが、私はこの恋愛を勘違いしている人外に物を申したい。いや、ソドムさんはこのまま伸び伸び育っていただきたいのだが、それはそれとして、人の求める誠実さについてはレクチャーしてもよいだろう。
「はい、ではお二人に質問です。目の前で自分の好きな女性が泣いていました。どうしますか?」
「「原因を探して滅ぼす」」
ピピーーーーーー!!!!!!アウト!!!!!
私は全力でホイッスルを鳴らした。
「ソドムさん!?あなたまで!?アゼルさんとイドラ殿下のことご存じでしょう!?イドラ殿下はアゼルさんが泣いてたらそんなことします!?」
「我が友は妻を泣かせる原因は八つ裂きにしていたが?」
あ、うん。まぁ、確かにそれはそうだろうな。
だがここでポイントなのは、相手に見えないところでやっている、という所だ!私の質問は、その女性に何をするか、である。
はい、と、メルザヴィアさんが手を上げた。
「一回殺して泣くような記憶を消す」
「なんと外道極まりないことを……愛する者を手にかけるなど言語道断だ」
「じゃあテメェはどーすんだ」
「二度と外界の愚物に煩わされることが無いように安全な場所に連れていくのが良いだろう」
さらり、と当然のように言うソドムさんに、少し感心したような顔をしたメルザヴィアさん。
私は再び、全力でホイッスルを鳴らした。
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あと半分くらいで終わりだと思うと、例の「いやだ……終わりまで書きたくない……いつまでもソドムさんの人外ムーブ悋気を……ぐだぐだ書いていたい」という悪癖が発症しそうになります。




