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「あら、アンタらこの辺りじゃ見かけない顔だねぇ。観光かい?」
「え、えぇまぁ……はい。そんなところです」
ガヤガヤと騒がしい港町の酒場。大皿料理を両手と頭にのせてするすると狭いテーブルとイスの間を行き来するのは看板娘の……バネッサさん。
まだ未成年の私が周囲の粗野なお客さんたちを怖がらないようにと奥のテーブル席を用意してくれた。
「あれが例の女人か。確かに、腹に魔獣の欠片があるな。どれ、裂いて取り出しておくか」
「いやいやいや、ソドムさん。それはしないですって、海の神様と約束したじゃないですか」
「約束したのは宝砂殿であって私ではないからな」
それはそう。
私は「ぅうぅーん」と唸り、木板に書かれたメニューで顔を隠す。
とりあえず海の神様はひとまず解放することになった。欠片の場所がわかったので用無しというか、たとえソドムさんに歯向かってきても問題ないとそのように判断したのだろう。
バネッサさんと自分を放っておいてほしいと懇願し続けてもソドムさんが折れることはない。なので海の神様はターゲットを私に変更した。
『おい、テメェ……あいつはテメェを女房だなんだなんて言ってるが……テメェにゃその気はねぇんだろ?』
こっそりこそこそと、内緒話。
『推しは推しですからねぇ……』
『推し……?意味はわかんねぇが……お前らはいつもそうだろ。俺サマたちとあまりに違う。だから、バネッサも同じだ。どうあっても、恋仲にゃなれねぇんだ』
と、ここで私は海の神様から一つ依頼を受けることになった。
ミッション:俺サマとバネッサの仲を取り持ってほしい。
そうしたら魔獣の欠片を渡して良いと、そのように約束してくれた。
私の疑問としては、欠片を渡したらバネッサさんは死んでしまうのではないかという所なのだが、ここが人外は感覚が違う。死んで終わるとしても、バネッサさんの「恋心」あるいは「愛」を手に入れることができたなら、それで良いとそういう話だそうだ。
「うーん、うーん……恋路を応援…………でも、聞いている限り、見込みがなさそうなんですよね」
「そうなのか?」
バネッサさんではない別の給仕のお姉さんに注文をしつつ、ソドムさんが首を傾げた。給仕のお姉さんの視線がとてもあからさまにソドムさんに好意的なのだが、人の感情に疎いのか興味がないのかソドムさんはメニューと私を交互に見るのみだ。
「お客さん、ここは初めてでしょ?おすすめの料理はここで楽しめるけど、他にも良い場所があるからよかったら案内しましょうか?観光は地元の人間に案内させるのが一番よ」
日に焼けた肌に長い黒髪のとっても魅力的な海の女性だ。なんと大変豊かなお胸もある。大胆にばいぃーんと露出しているが、酒場の雰囲気ととても合っている。私はこう、自分のすとーんとしている胸部を両手でスカっと撫でた。まぁ、成長期なので……。
「申し出はありがたいが、見知らぬ場所をわからぬままに散策する楽しさもある。私の連れが空腹なので料理を急いでもらえると助かるのだが?」
「あ、ごめんなさいね。お嬢ちゃん、すぐに出来るものから一番に作って貰ってくるわ!」
ソドムさんがにこやかに応対したので、お姉さんも断られたことに気分を害することなくサービス業として正しい振る舞いを思い出してくれた。
「モテますね」
「外から来た者が珍しいのだろう」
確かに珍しさはあると思う。私はこっそりと酒場の他のお客さん、男性たちとソドムさんを見比べた。王家で大切にされていた神獣さんだけあって、物腰に気品がある。The荒くれ者!海の漢!という彼らとは全く違うタイプだ。折角ならと声をかけてしまうこともあるだろう。
「私は外見はどっちかというと、体育会系ながっちり海の男タイプが好みな……ミシってした!!!今天井が!!!!!ミシって……!!!」
「古い造りのようだからな。ところで宝砂殿、言葉の続きは慎重に選んだ方が良い」
くっ……基本的に、二次元の推しは外見では選ばないが、三次元の私の外見の好みは高倉健や阿部寛……!!でもこれを言ったら私の視界から海の男が消える。具体的には屋根で物理的に潰される……!!
「見かけでソドムさんを推してるわけではないのですが、ソドムさんの外見もとても素敵だと思いますよ……!!」
「それは良かった。日に何か所も港町が壊滅しては騒ぎになるだろうからな」
一か所でも騒ぎだと思います。私は突っ込みを入れたかったが堪えた。
「あの女海賊が持っていた欠片は硨磲だったな。イドラはあれを美しい腕輪として造らせた。貴女の細い腕にはまだ大きいと思うが、人の成長は早いから問題ないだろう」
あー、硨磲。しゃこ貝かぁ……。今までの赤真珠やソドムさんの角の瑪瑙を考えると、やはり……なんというか、七宝だろうと推測される。七つに分けてという話だったから、私はてっきりイドラ殿下が摩訶不思議アドベンチャーの漫画をお気に召してその影響かと思ったが……これはどちらかというと、宝石たちが月と戦う方のやつだったかもしれない。
となると、私の名前が宝砂というのも……なんだか、いったい何がどこまで偶然なのか。
「どうかしたのか?」
「いえ。ちょっと海の神様のことを考えていました」
「やはり滅ぼしておくか?」
「そういう話じゃないですね……その、なんで上手くいってないかって話なんですけど」
「色々試してみてはいるようだがな」
はい、と私は頷いて、ここへ来る前に海の神様から聞いた話を思い出してみる。
バネッサさんの死体をゲットした海の神様は、イドラ殿下の遺物を使って彼女に仮の命を与えて、自分と恋をしてもらうようにあれこれ試してみたらしい。
ある時は身寄りのない彼女を引き取った資産家。
またある時は記憶を無くした彼女を支える幼馴染。
またまたある時は兄という設定などなど……海の神様は「ぼくがかんがえたさいきょうの設定」で、バネッサさんとの出会いをやり直している、のだが、行けて「良いお友達」止まりらしい。
バネッサさんは毎回、海の神様以外の男性に恋をする→町が滅びる。やり直し、という、ギャルゲーのリセットボタンを連打の方を神様規模でやるとこうなる、という見本である。
更新しなかった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!申し訳ございません!!!!!!!!!!!
ただのうつです!!!!!!!!!!!!!!!何もしたくないけど何もしないと何も進まない!!!!!!




