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「え、嘘、美味しい」


 わぁ、と私は少し冷ましたたこ焼きを頬張り、もぐもぐとしてから驚きの声を上げた。

 たこ焼きの粉と卵と水を混ぜただけのブツをタコ焼き機の穴の中に注いで、少ししたらぶつ切りにしたタコを投下。そしていい感じに周りが焼けたらクルっとひっくり返す。企業努力のたまものか、素人さんでも簡単にひっくり返せる構造。とても素晴らしい。


「おい、何なのお前の嫁さん。俺の脚食っといて不味いかもって思ってたのか?」

「はははは、ははは。いや、はははは」


 朗らかに笑いながらソドムさんは器用にたこ焼きをひっくり返していく。神獣にこんなことさせていいのかと思うが、大変愉しそうなので何よりです。


 驚きは純粋に「私が作ったのに、美味しい、だと!?」という驚きだ。しかし海の神様にそれを正直に申告しなくても良いだろう。まぁ私が作ったと言っても、粉を混ぜただけだ。これで不味くなる方がおかしいかもしれない。


「要領は掴んだ。これは中々に面白いな。宝砂殿、あとは私が焼くので好きなだけ食べてくれ。蛸が足りなくなれば目の前にいくらでもあるからな。遠慮なく言うといい」

「おいこら神獣。てめぇ何俺サマを食材扱いしてくれやがるんだ」

「はて、珍妙なことを言うな?お前を生かす理由が他に見当たらないが……食材としての価値を放棄して良いのか?」


 ソドムさんは神様仲間と会えて楽しそうだ。私はもぐもぐと、次々に焼けるたこ焼きを食べていく。ソドムさんも召し上がらなくて大丈夫なのかと心配になるが「貴女がたくさん食べているのを見ていたい」と仰る。そんなに食べないが……まぁ、私がお腹いっぱいになったらご自分も食べるだろう。


 私はこれまで間違っていた。


 たこ焼きなど、別に蛸が入っていなくても美味しいと思っていた。

 ようは粉モン。マヨネーズにソースに鰹節、それに青のりがかかっていればなんでも美味しい。中に蛸が入っていなくても美味しいと、そのように信じていた。


 しかしこのたこ焼きはどうだ。


 ぷりっとした新鮮なタコ!

 生命の力強さを感じるタコ!!

 噛めば独特の甘さがあり、歯ごたえたっぷり!!

 さすがに触手として動いているのを見たのでお刺身にして食べる勇気はないが、粉モンに包まれて加熱していれば怖いものなどなにもない!!


 美味しい、美味しい、と私は絶賛し、もぐもぐとたこ焼きを食べ続けた。





「で?なんだって?お前ら、外の連中に喧嘩売ったんだって?」


 私がたこ焼きを20個ほど平らげ、あとはソドムさんと、そして自分の眷属なのに良いのかと思うが、海の神様もたこ焼きを食べ始めた。ハイボールとか一緒に購入しておけばよかったのだが、私の外見は子供なので未成年はアルコールが購入できない。


 長いクシを器用に使って、海の神様がたこ焼きをぱくりとやる。


「知っているのか」

「そりゃ噂になンだろ。引きこもってた神獣が、そのまま外の連中に好きに国を渡すんじゃねぇかって見当だったのによ。はは、なんだって?その貧相な小娘が魔獣の器……おい!!無言で脳天を潰しにかかるんじゃねぇよ!!!!!!!ちょっと潰れたじゃねぇか!!!!!!!」

「なぜ私の目の前で私の番を見下して五体満足でいられると思うんだ?」


  ノーモーションで殴り掛かったソドムさんにより、海の神様の顔がちょっと抉れた。けれど軟体動物なのかなんなのか、少しぐびゃっとした後に海の神様の顔が元に戻る。何でもありですね。


 私は食後の珈琲をすすりつつ、お二人の楽し気なじゃれ合いを眺めた。

 海の神様の前で私のことを妻だのなんだの言っているが、これは冗談でいっているだけだとわかっている。海の神様を揶揄うために私にそんな設定を付属するのだ。



「それで海の。貴殿はイドラ・マグダレアの遺物を知らないか?七つのうちの二つ三つは心当たりがあったのだが、それ以外はてんで見失ってしまっていてな」

「さぁな。海に沈んでりゃ俺サマがわかるだろうから、どこぞの船を沈めた時に一緒にってことはねぇだろう。ちょっと前に海賊が持っていただろう。あれはどうなった?」

「捕らえられ縛り首になったそうだ。先ほどの港町で30年ほど前の出来事だと」

「へぇー、そりゃあ知らなかった。どうせほっときゃ人間なんぞすぐに死ぬのにわざわざ殺すなんて人間ってのは暇だねぇ」

「あ!今嘘つきましたね??」


 ふーんと関心がなさそうに明後日の方向を見る海の神様に私は待ったをかける。


「ほう、嘘と?」


 がしっと、ソドムさんがすかさず海の神様を押さえつける!!海の神様逃げられない!!


「い、言いがかりだ!!これだから人間は!!」


 抵抗する海の神様!けれどソドムさんががっしり掴んでいるので、逃げられない!!


 観念した方がいいと思います!!

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