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『第97話 マカロン作り開始』

いつも応援ありがとうございます!


前回、ジント様と二人で完璧な道具の準備を整え、秘密のレシピノートを開いていた萌。


第97話では、道具を準備している萌ちゃんたちの元へ

お兄ちゃんたちがもの凄い勢いで帰還します!


ライダにい様が持ち帰った台車いっぱいの最高級砂糖。

そして、アレクにい様が頭に羽を乗せながら命がけ(?)で持ち帰ったグランマルシェで一番高い卵とは……!?妹のために全力すぎるお兄ちゃんたちのドタバタ劇、いよいよマカロン作りが開始です!

「あうー、ばぶばぶ!

(よし、これでボウルも測りも準備万端だね!)」


最高級ホテルの広々とした大台所。

大理石の作業台の上に、ジント様が

テキパキと並べてくれた銀色のボウルや魔導測り、泡立て器を眺めながら、私は満足げにちっちゃな胸を張っていた。


ポシェット型の空間魔法具『マジカルカバン』から取り出した、前世の日本語で書かれた秘密のマカロンレシピも手元にある。


あとは、お兄ちゃんたちが持ち帰ってくれる材料を待つだけ――。


そう思った、まさにその時だった。


静かだったホテルの廊下の方から、地響きのような大きな足音がバタバタと聞こえてきた。


(えっ!? なに、この突進してくるような凄まじい足音は……!?)


私が短い首をすくめて驚いていると

次の瞬間、キッチンの重厚な扉がバンッ!!! と凄まじい音を立てて勢いよく開け放たれた。


「はぁはぁ……もえ! この街で1番甘い砂糖をとってきたぞ!」


肩を大きく上下させながら、もの凄い形相で入ってきたのは、戦斧使いのライダにいだった。


見れば、ライダにいは大きな台車を押している。その台車の上には、これでも

かと山積みにされた袋が、天井に届きそうなほど高く積み上げられていた。


あまりの重量に、台車の車輪がみしみしと悲鳴を上げている。


(ら、ライダにい、息が上がってる……! っていうか、台車いっぱいの

お砂糖!? 試作のレベルを完全に超えてるよぅ!)


「もえちゃん、砂糖だけじゃあ足りないと思って、グランマルシェで1番高い卵をとってきたよ」


ライダにい様の背後から、いつもは

クールな天才魔導士のアレクにい様

これまた異様な執念を瞳に宿して現れた。


その手には、まるで国宝でも扱うかのように大切に抱えられた、魔法のクッション付きのカゴ。


その中には、うっすらと黄金の魔力を

まとった、見るからに高級そうな卵が

ぎっしりと並んでいる。


どうやらアレクにい様は、お菓子作りには砂糖だけじゃなくて卵も絶対に必要だと途中で気づき、わざわざ街の高級な

ニワトリ小屋のところまで猛ダッシュで行ってきてくれたらしい。


よほど激しい争奪戦(?)を繰り広げたのか、アレクにい様のいつもは完璧に

整えられている綺麗な髪の頭の上に

白いニワトリの羽が2、3枚ぐらい

ちょこんと乗っかったままになっていた。


(アレクにい様! インテリ美形魔導士のプライドはどこにいったの!? 頭に羽が乗ったままドヤ顔するの、シュールすぎて面白すぎるからやめてーーっ!!)


ぷるぷると震える私の横で、ジント様がふっと息を吐いて呆れたように二人を見つめた。


「ライダ、アレク。萌ちゃんのために

そこまで必死になるのは良いが、少し落ち着きなさい。アレク、頭に羽がついているぞ」


「あ、あれ? 本当だ。ニワトリどもの

警戒心が強くてね……魔法で威嚇して、一番良い卵を産む個体から譲り受けてくるのに少し手こずったよ」


アレクにい様は平然とした顔で頭の羽をパパッと払うと、黄金の卵をそっと作業台に置いた。


どうやら本当に命がけでニワトリ小屋から高級卵を「とって」きてくれたらしい。


「よし! 材料は揃ったな! 萌ちゃん

マカロン作り開始だ!」


ライダにい様が腕をまくり、やる気満々で大理石の作業台に身を乗り出す。

私は「あうーっ!(二人とも、ありがとー!)」と元気いっぱいに拍手をして

さっそく指示を出すことにした。


マカロン作りにおいて、最初の最大の

難関は『メレンゲ作り』だ。


アレクにい様が命がけで取ってきてくれた極上の卵から卵白を分け、それを泡立て器でしっかりと、ツノが立つまで泡立てなければならない。


私は銀色のボウルに入れた卵白を指差し、泡立て器を「しゃかしゃか」と

動かすジェスチャーをした。


「あうー、ばぶばぶ!(にい様たち

これを混ぜて!)」


「おう、任せろ! 俺の筋肉を見せる時が来たな!」


最初に名乗りを上げたのは、もちろん

怪力のライダにい様だ。


ライダにい様はまるで伝説の武器でも

握るかのように泡立て器をガシッと

掴むと、「おおおおおらあああああーーーッ!!」と咆哮を上げ、肉眼では捉えられない超高速で腕を動かし始めた。


シャカシャカシャカシャカシャカアアアアッ!!!


激しい金属音が響き

一瞬で卵白が真っ白な泡になるけれど

「ば、ばぶばぶーっ!

(ストップー! 力任せに混ぜたらキメが荒くなっちゃうーー!)」と私は慌てて両手をブンブン振って止めた。


強すぎる力で混ぜるとマカロンが失敗してしまうのだ。


「次は僕の番だ。お菓子作りは精密さが命だからね」


次に交代したアレクにい様は、眼鏡を

キラーンと光らせて

「サッ、サッ、サッ」とメトロノームのように正確なリズムで動かし始めた。


確かにキメは細かくなりそうだけど

丁寧すぎて今度はスピードが全然足りない。


おまけに「卵白の分子構造が……」

とブツブツ呟いていてちょっと怖い。


お兄ちゃんたちの極端なお手伝いに私がレシピノートを抱えて困り果てていると、ジント様がそっと近づいてきた。


「困っているようだね、萌ちゃん。私に貸してごらん」


ジント様は滑らかに泡立て器を受け取ると、手首を柔らかく使って動かし始めた。


シュル、シュル、シュル……。


無駄のない完璧な動き。


ライダにい様のような乱暴な力もなく

アレクにい様のような硬さもない。


驚くほど滑らかで力強く、空気を綺麗に巻き込んでいく。


みるみるうちに卵白はシルクのような

艶やかな、ピンと美しいツノが立つ極上のメレンゲへと姿を変えた。


まさに完璧なメレンゲだ。


「あうー! ばぶばぶーっ!

(ジント様、すごーーい! 完璧!!)」


私が満面の笑みで拍手を送ると、ジント様は嬉しそうに目を細めて私の頭を優しく撫でた。


お兄ちゃんたちは

「くっ、ジントに美味しいところを……!」

「やはり器用さでは彼に敵わないか……」と悔しそうに肩を落としている

けれど、ライダにい様の砂糖と、アレクにい様の卵のおかげで、最高の土台が

できた。


「よし、メレンゲは合格だ。次は、この輝くお砂糖とアーモンドの粉を混ぜる

工程に移ろうか、萌ちゃん」


お兄ちゃんたちの全力すぎる愛と、

ジント様の完璧なサポート。ちょっと

(かなり?)賑やかだけれど、萌ちゃんの『幻のマカロン作り』は、最高の

スタートを切ったのだった。

(第97話 完)

第97話をお読みいただき、ありがとうございました!

バタバタと大きな足音を響かせて、台車いっぱいの砂糖を運んできたライダにい様!


そして、砂糖だけじゃ足りないと気づき、頭に羽を

2、3枚乗せたままドヤ顔で最高級の卵を届けてくれたアレクにい様!二人の萌ちゃんへの愛が強すぎて、準備段階からツッコミどころ満載のドタバタ劇となりましたね。


その後のメレンゲ作りでは、やっぱり器用なジント様が完璧に仕上げて美味しいところを持っていってしまいましたが、お兄ちゃんたちが命がけ(?)で集めてくれた最高の材料のおかげで、極上のマカロン生地の土台が

完成しました!


次回第98話は、いよいよ生地を混ぜ合わせて「オーブンでの焼き上げ」に突入します!焼き上がるマカロンの

あま〜い香りが、ついに高級ホテルを包み込みますが……?


読者の皆様へのお願い

「頭に羽を乗せたアレクお兄ちゃんが最高に愛おしい!」

「お兄ちゃんたちの全力のバタバタに癒やされた!」

という方は、ぜひ作品への応援をお願いいたします!


ページ下部にある、・ブックマーク登録・評価(☆☆☆☆☆を★★★★★に!)をポチッと押していただけると、萌ちゃんが次の焼き上げ工程で、綺麗な「ピエ

(マカロンのギザギザのふち)」を大成功させる素晴らしい魔力の火加減になります。どうぞよろしくお願いいたします!

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