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『第94話 ババ抜き勝者はだれ』

いつも応援ありがとうございます!


前回、グランマルシェ正門前の大渋滞を乗り切るため

馬車の中で始まった前代未聞の超本気ババ抜き対決。


泣く子も黙る公爵閣下と、大陸最強のヴィンテ・ラジの兄弟が、1枚のカードに命をかけて一喜一憂するカオスな車内。


じつは恐怖の『ジョーカー(ババ)』を握りしめていたのは、インテリ天才魔法使いのアレクお兄様でした!


顔は笑顔のままなのに、心の中は大焦りでへのへのもへじ状態なお兄ちゃん。萌ちゃんの可愛すぎる表情の罠(?)や、男たちの意地とデレがぶつかり合う中、ついに決着の瞬間が訪れます!

「くぅ、ジントの手札あと2枚しかないよ」


アレク兄様は唇をへのへのもへじにまげながら悔しかっていた。


(萌が始めるまでにこの悪魔みたいな

カードが手元にあった人が負けだって

言ってた。僕このままじゃあ負けてしまう、どうすればいいのか!)


なんとジョーカーを持っているのは

アレク兄様だった。


顔は笑顔のままなのに心の声はとっても焦っていた。


大都会グランマルシェの正門前、大渋滞の馬車の中で始まった前代未聞の

『ババ抜き対決』は、いよいよ最終局面に突入していた。


現在の状況を整理しよう。最初に全てのペアを揃えて、ドヤ顔でいち早く上がったのは、野生の勘だけで突き進んだ

ライダにい様だ。


「よっしゃあ! 兄ちゃんの勝ちだぜ萌ちゃん!」と、今も馬車の片隅で鼻高々にふんぞり返っている。


中身OLの私としては「脳筋のお兄ちゃんが一番に抜けるなんて……」

とちょっと悔しい。


そして、残されたのは「ジント様&萌

チーム」と、顔で

笑って心で泣いているアレクにい様だ。


手札はそれぞれ2枚ずつ。そして、その不名誉な『悪魔みたいなカード』は

現在アレクにい様の手元で怪しく微笑んでいる。


「さあ、アレク。私の手札から引くが

いい。萌ちゃんと私の愛の絆が紡いだ

カードだ。どれを引いても君に勝ち目はないがね」


ジント様が、私をスッポリと逞しい腕の中に抱いたまま、冷徹な笑みを浮かべて2枚のカードをアレクにい様の前に突きつけた。ジント様の手札にあるのは

ペアを待つ『数字のカード』が1枚と

何の役にも立たない『スカのカード』が1枚。


アレクにい様がここで『数字のカード』を見事に引き当てれば、アレクにい様のカードとペアになって、同点で上がる

(勝ち抜け)ことができる。


逆に『スカのカード』を引いてしまえば、ゲームはそのまま継続だ。


アレクにい様は、笑顔の仮面を張り付かせたまま、ジント様の右側のカードに

そっと手を伸ばした。


その瞬間、ジント様の腕の中にいた私は、わざとらしく両手をパタパタと

振って、これ以上ないほど輝く天使のような笑顔をアレクにい様に向けた。


「あうー! ばぶばぶぅ!(お兄ちゃん、そっちそっちー!)」


(さあお兄ちゃん、中身OLの演技力を見よ! 可愛い妹のおねだりフェイントよ!)


「ひっ……!? こ、これは……!」


私のあまりの可愛さに、アレクにい様の手がピタリと止まった。


その美しい瞳が、激しく動揺に揺れ

動く。


(萌ちゃんが、そんな愛らしい笑顔で僕に右のカードを勧めてくるなんて……。いや、待てよ? 萌ちゃんはジントと

チームなのだ。僕を勝たせるわけが

ない。ということは、右のカードは罠

(スカ)で、左のカードこそが

本命……! 萌ちゃんは僕を騙すために

あえて右を勧めて逆心理戦を仕掛けているんだね!?)



顔は笑顔の仮面を張り付かせたまま

だが、アレクにい様の脳内プログラミングは完全にバグを起こしていた。


深読みしすぎて勝手に自爆ルートに入り始めている。


「僕の勝ちだ! 左のカードを引かせてもらう!」


アレクにい様は自信満々にフッ、と笑うと、ジント様の左側のカードをシュッと引き抜いた。


「あぅ……(あーあ、引いちゃった)」


私がわざとらしくガッカリした表情を

作ると、引き抜いたカードを見たアレクにい様の顔が、一瞬にして真っ白に凍りついた。アレクにい様が引いたのは

ただのスカのカードだった。


「バカな……! 僕の高度な計算が

萌ちゃんの可愛い笑顔に狂わされる

なんて……っ!」


心の中で大号泣するアレクにい様を他所に、次は「ジント様&萌チーム」の

ターンだ。


ジント様が、アレクにい様の手元にある2枚のカードを見据える。


私はジント様の手を優しく誘導するように、アレクにい様の左側のカードを短い指で「ちちんぷいぷい」と指差した。


「あうーっ!(こっちだよ、ジント様!)」


「わかった。君の言う通りにしよう」


ジント様は何の迷いもなく、私が指差した左側のカードを引き抜いた。そのカードの数字は――ジント様の手元に残っていたカードと、見事にピタリと一致

した。


「揃ったね、萌ちゃん。私たちの勝利だ」


ジント様がカードをパッと机に置くと

私を見てフワリと極上の聖母のような微笑みを浮かべた。


「あうー! ばぶばぶぅ!

(やったー! ジント様、大勝利ーっ!)」


私が嬉しくなってパチパチとちっちゃな手を叩くと、ジント様は愛おしそうに

私の頬に自分の頬をすり寄せた。


というわけで、前代未聞のババ抜き対決、本当の勝者は――圧倒的なチーム

ワークと絆を見せつけた

『ジント様&萌チーム』である!


「うあああーーーっ!! 僕が、僕が最下位(ドベ)だなんて……! 悪魔のカードから逃れられなかった……っ!」


アレクにい様がついにへのへのもへじの顔のまま頭を抱えて座席に突っ伏し

最初に上がっていたライダにい様は

「ギャハハハ! ざまあ見やがれ

アレク!」と大爆笑している。


最強の男たちが馬車の中で一喜一憂し

大騒ぎしている光景は本当にカオスだ。


コンコン、とそこでタイミングよく馬車の窓が叩かれた。


「が、公爵閣下……! 大変お待たせいたしました、検問の手続きが完了いたしました!」


窓の外を見ると、いつの間にか私たちの馬車の前には遮るものが何もなく、巨大な正門がすぐ目の前に迫っていた。


ババ抜きに夢中になっている間に、長い長い大渋滞を完全に乗り切っていたのだ。


「よし、街に入るぞ。萌ちゃん、勝者のご褒美に、街一番の特級スイートルームへ案内しよう。そこで君の好きな砂糖をいくらでも集めてあげるからね」


ジント様が私の小さな手を握り、優しく囁いた。最下位で落ち込むアレクにい様も、街に入ると聞いて急にキリッとした表情に戻っている。


ババ抜き大決戦を制した私は、大好きな家族の腕に抱かれながら、新たな謎と

マカロン作りが待つ大都会グランマルシェの中へと、いよいよド派手に足を踏み入れるのだった。

(第94話 完)

第94話をお読みいただき、ありがとうございました!


ついに決着を迎えた、馬車の中の熱き

『ババ抜き対決』!栄えある勝者は、完璧なコンビネーションを見せた「ジント様&萌ちゃんチーム」でした!


最初から手元にあった「悪魔みたいなカード」に怯え

顔は笑顔なのに心の中は大焦りで、唇をへのへのもへじに曲げていたアレクお兄様(笑)。


萌ちゃんの中身OL直伝の「可愛いおねだりフェイント」に見事引っかかり、深読みしすぎて自爆してしまった

姿は、天才魔法使いの威厳がゼロで最高に愛おしかったですね。


ババ抜きで大盛り上がりしている間に、長かった大渋滞もいつの間にか解消!


次回第95話、ついに馬車はグランマルシェの街の中へ!勝者のご褒美として、ジント様が萌ちゃんのために手配する「街一番の特級スイートルーム」や、マカロンの

ための「最高級砂糖の買い占め」といった、さらなる過保護ドタバタが炸裂します!



読者の皆様へのお願い


「笑顔の裏でへのへのもへじになってるアレクお兄様が面白すぎる!」

「ジント様と萌ちゃんの勝利のいちゃいちゃが尊い!」と思ってくださった方は、ぜひ作品への応援をお願いいたします!


ページ下部にある【広告の下】から、・ブックマーク登録・評価(☆☆☆☆☆を★★★★★に!)をポチッと押していただけると、萌ちゃんが次の街で伝説のアイテムをサクッと見つける大きなエネルギーになります。

どうぞよろしくお願いいたします!

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