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『第93話 ババ抜き対決』

いつも応援ありがとうございます!


前回、グランマルシェ正門前の大渋滞を楽しく乗り切るため、マジカルカバンからトランプを取り出した萌。


ライダにい様とアレクにい様の2人を同じチームにしたら絶対にケンカになりそうだと察した萌は、お兄ちゃんたちをそれぞれ個人戦で参加させることに!最高の婚約者であるジント様とタッグを組み、ずっしりとしたカードを構えるジント様にシャッフルの仕方を教えながら

前代未聞の超本気ババ抜き対決がいよいよ開幕します!

世界中の富が集まる商業都市

『グランマルシェ』の正門前。馬車は長い長い検問を待つため、萌のひらめきでババ抜きをすることになった。


ジント様萌チームとライダ、アレク個人ですることになり、ふたりでやると喧嘩になりそうだと思った。


いくら泣く子も黙る公爵閣下の紋章が

入った高級馬車とはいえ、四方八方を

他の馬車に囲まれてしまっては物理的に前へ進めない。


対面に座るお兄ちゃんたちは、渋滞の

イライラから今にもお互いの胸ぐらを

掴んで大喧嘩を始めそうなほど一触即発のピリピリした空気を醸し出していた。


だからこそ、2人を同じチームにするのは絶対に危険だ。ここは別々に戦わせて、その闘争エネルギーをすべてゲームにぶつけてもらうのが一番安全である。


マジカルカバンからトランプを取り出した私は、私を逞しい腕の中にスッポリと抱いてくれているジント様の膝の上に

パラパラとカードを広げた。


「さぁカードゲームとやらを初めましょうか。えーっとまずシャッフルをしたらいいんだよね? 萌」


ジント様はずっしりとしたカードを持ちながら、ババ抜きの仕方を萌に聞いていた。


大人の男の人の大きな手に対して、前世の標準的なトランプのカードは少し小さく、そしてこの世界の上質な厚紙で作られているせいか、独特のずっしりとした重みがある。


ジント様はまるで、国家の運命を左右

する極秘の魔導書でも扱うかのような

恐ろしく真剣な目付きでカードの束を

見つめていた。


「あうー、ばぶばぶ!(そうだよジント様! カードをバラバラに混ぜてね!)」


私が短い指でカードを交互に重ねる

ジェスチャーをしてみせると、ジント様は「なるほど」と美しく頷き、その長い指先を器用に動かして驚くほど滑らかな手付きでシャッフルを始めた。


さすがは何をやらせても完璧なスパダリ公爵閣下である。


トランプを混ぜる姿だけで絵になりすぎていて、中身OLの私は思わず見惚れてしまいそうだ。


「フン、ただ混ぜて配られたカードを

引くだけの遊びだろ? 騎士団の演習に

比べりゃあ、そんな紙切れの勝負なんて一瞬で片付けてやるぜ!」


ライダにい様がゴツい拳をボキボキと

鳴らし、不敵に笑う。


「浅いね、ライダ。萌ちゃんが教えてくれたゲームだよ? 単純な運任せの遊びであるはずがない。きっと高度な確率論と、相手の心理を読み解く魔力コントロールが必要なメンタルスポーツに違いないさ」


アレクにい様は早くもインテリ天才魔法使いとしてのスイッチが入ったらしく

眼鏡の奥の瞳を怪しく光らせている。


(いや、ただのババ抜きだからね!?

そんな大戦争みたいな気迫で挑まないでよお兄ちゃんたち!?)


ジント様によって綺麗に配り終えられたカードを、男たちは一斉に手元に揃えた。


私のちっちゃなもみじ饅頭のような

赤ん坊の手ではカードを持てないため

ジント様が「ジント&萌チーム」の手札を扇状に広げて持ってくれている。


私はジント様の胸元に収まったまま

どの一枚を引くか、引かれるかを一緒に見守る総司令官だ。


「まずは、手札の中で同じ数字が揃ったカードをペアにして捨てるんだ。

萌ちゃん、これで合っているかい?」


「あうっ!(そうそう、完璧!)」


ジント様が私の指示通りにサクサクと

ペアを捨てていく。


お兄ちゃんたちもルールを理解したようで、カードを捨てていくが――アレク

にい様の手元に、不敵な笑みを浮かべたピエロの絵、つまり『ジョーカー

(ババ)』が残っているのを私は見逃さなかった。


ゲームが始まると、馬車の中の空気はさらに熱を帯びた。


ライダにい様がジント様の手札から

カードを引く番になり、戦場で一騎打ちを迎えた戦士のような鋭い眼光で睨みつけてくる。


ただのババ抜きなのに、男たちの気迫が尋常ではない。


ライダにい様がジント様の手札の右端のカードに触れようとした、その瞬間

――。


「あぅ……!

(あ、そっちはダメー!)」

と私が焦って口を丸くしてしまった。


感情がすぐ顔に出てしまうのが赤ん坊の辛いところだ。


それを見たライダにい様が、ピクッと

動きを止める。


「待てよ……。今、萌ちゃんがそんな

可愛い顔をしたってことは……これが

ハズレだな!? 俺の野生の勘がそっちは危険だと告げている……! ならば

真ん中のこれだ!」


ライダにい様がニヤリと笑い、中央の

カードをシュッと引き抜いた。


「あうーっ!

(あ、それも揃ってないよーっ!)」


私が「あちゃー」と短い手でおつむを

押さえると、引き抜いたカードを見た

ライダにい様が「よっしゃあ揃った!」と馬車が揺れるほどの雄叫びをあげた。


「ふ、浅いねライダ。萌ちゃんの表情を読み解くだけの浅薄な勝利だ。本当の心理戦というものを僕が見せてあげよう」


次に手札を広げたアレクにい様は

あろうことか、その綺麗な瞳にほんのりと魔力を込め始めた。


トランプに魔力感知を使おうとするお兄ちゃんの頭脳の無駄遣いに、私は心の中で猛烈にツッコミを入れる。


そんな大盛り上がりのババ抜き対決が

3周目を迎えた頃、コンコン、と馬車の窓を叩く音がした。


「が、グランマルシェ公爵閣下……!

検問の順番でございます……!」


恐る恐るカーテンを開けた門番の兵士が馬車の中を覗き込んだ。


門番の頭の中は、冷徹な公爵閣下たちが渋滞の怒りで街を吹き飛ばすのではないかという恐怖でいっぱいだったはずだ。


しかし、門番の目に飛び込んできたのは――。


「よし萌ちゃん、次は僕のカードを引いておくれ!」


「おいジント! 萌ちゃんの手を誘導するんじゃねぇ! 萌ちゃん、こっちのクマ

さんの絵のカード(※ただのキング)が格好いいぞ!」「あうー、ばぶばぶぅ!(どれにしようかなー!)」


最強の男たちが、1人のばぶばぶな赤ん坊を囲んで、トランプのカードを突き出しながら必死にデレデレとした笑顔を

作っている、あまりにもカオスで平和すぎる光景だった。


門番の兵士は目の前の光景が理解できず、完全に思考がフリーズして白目を

剥きそうになっていた。


大都会グランマルシェの正門。


私たちは、門番たちの哀愁と困惑が入り混じったすまじい視線の洗礼を受けながら、最高に賑やかなまま、いよいよ大都会の中へと足を踏み入れるのだった。

(第93話 完)

第93話をお読みいただき、ありがとうございました!

渋滞のイライラでお兄ちゃんたちが大喧嘩を始めそうな空気を察し、すかさず「個人戦」を提案する萌ちゃんのファインプレー(笑)。


ずっしりとしたカードを大きな手で構えながら、真剣な顔で「シャッフルをしたらいいんだよね?」と萌ちゃんに確認するジント様の姿は、ギャップ萌え全開で最高に愛おしかったですね!


そして、ようやく順番が回ってきた門番さんが馬車を覗いた瞬間の「大困惑のリアクション」!

恐ろしい公爵閣下たちが赤ん坊を囲んでトランプで一喜一憂している姿を見て、門番さんの脳内処理は完全に

バグってしまいました。


次回、ついに正門をくぐり、グランマルシェの街の中へ!の前にババ抜きの勝者を発表致します。


読者の皆様へのお願い

「ジント様の真剣なシャッフル姿が格好いい!」


「お兄ちゃんたちのケンカを回避させた萌ちゃんが賢い!」と思ってくださった方は、ぜひ作品への応援をお願いいたします!

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ブックマーク登録・評価(☆☆☆☆☆を★★★★★に!)をポチッと押していただけると、萌ちゃんが次の街で伝説のアイテムをサクッと見つける大きなエネルギーになります。どうぞよろしくお願いいたします!

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