『第92話 正門は渋滞すぎてなかなか進まない!?』
いつも応援ありがとうございます!ついに大陸最大の
商業都市『グランマルシェ』の正門に到着した萌たち。
名のあるジント様の高級馬車ならすぐ通れるかと思いきや、さすがは大都会、正門前は人や馬車でとんでもない大渋滞!なかなか進まない列に
「これじゃ日が暮れちゃう!」と焦る萌ですが、そこはポジティブな元OL。この退屈な待ち時間を楽しく過ごすため、前世の定番ゲーム『ババ抜き』を閃きます!
マジカルカバンからトランプを取り出した萌ちゃんに
過保護な男たちがトランプの持ち方から全力でサポート(!?)し始める、お茶目で賑やかな第92話です!
高級馬車が完全に停止してから、どれ
ほどの時間が経っただろうか。
萌たちはグランマルシェの門の前まで
来たはずなのに、検問で長い列を待つ
ようになっていた。
名のあるジント様が乗ってるからすぐ通れる思ったけど、さすがにそんな甘くはなかった。
さすがは世界中の富と商人が集まると
称される、大陸最大の商業都市
『グランマルシェ』だ。
いくら泣く子も黙る公爵閣下の紋章が
入った馬車とはいえ、これだけ四方八方を他の馬車や荷物に囲まれてしまっては、物理的に前へ進むことができない。
日本でいうところの、お盆休みの高速道路のインターチェンジ並みの大渋滞で
ある。
対面に座るアレクにい様とライダにい様は、窓の外の進まない列を見て
「萌ちゃんを待たせるなんて……」と
ピキピキと青筋を立てて不機嫌オーラを放ち始めているし、私を抱くジント様の美しいお顔も心なしか般若のように
険しくなっている。
馬車の中の空気がどんどん重くなっていく。
そんな重苦しい行列を待つ間に、なにかできないか考えていた萌。
「あうあう……(結構時間かかりそうだから、なにかいい暇つぶしないかな)」
萌は赤ちゃんながらも、今暇なことを
楽しくできないか考えていた。
せっかくの楽しいおやつ旅なのだ。
こんな渋滞のイライラに巻き込まれて
みんなで暗い顔をして過ごすなんて本当にもったいない。
(こういう時、前世の私だったらどうしてたっけ……。スマホは使えないし
何かみんなでワイワイ盛り上がれて
この暇を楽しくなるゲームは……)
ぽこぽこと小さなおつむを働かせて
前世の記憶を一生懸命に検索する。
あ、そうだ。ルールが簡単で、大人から子供まで全員が夢中になれるあの定番
ゲームがあったじゃない。
(……ババ抜き……うん、ババ抜きがいいかも!)
みんなの心理戦も見られるし、何より
絶対に盛り上がる。名案を思いついた萌は、嬉しくなって閃いたように、手元に置いてあったお馴染みのマジカルカバンから、前世の雑貨屋で仕入れておいた
トランプの箱を「よっこらしょ」と取り出した。
「あぶーっ!(じゃじゃーん! トランプだよーっ!)」
私が短い両手でトランプの箱を掲げて
見せると、それまで険しい顔をしていた男たちの視線が一斉に私の手元へと集まった。
ジント様たちの目が、一瞬で
「萌ちゃんが何か可愛いことを始めたぞ!?」というデレデレなものへと切り替わる。
「おや、萌ちゃん。それは一体なんだい? 綺麗な絵が描かれた、小さな紙の
束のようだけど……」
アレクにい様が身を乗り出して、不思議そうにトランプの箱を覗き込んできた。
この世界には『カードゲーム』という
文化があまり浸透していないらしい。
「あうー、ばぶばぶ!(これはトランプって言うの! これでみんなでババ抜きをするよ!)」
私が一生懸命に説明しながら箱を開け
カードをばらばらとジント様の膝の上に広げると、ジント様は私の意図を察したように優しく微笑んだ。
「なるほど、萌ちゃん。これで私たちと何か遊びをしたいんだね? 君が退屈しないよう、喜んで付き合おう。
だが……萌ちゃんのその小さな手では
カードを何枚も持つのは大変そうだ」
ジント様の言う通りだった。
今の私の手は、もみじ饅頭のようにちっちゃくて丸い赤ん坊の手だ。
トランプのカードを5枚も6枚も扇状に広げて持つことなんて、物理的に不可能である。
「あぅ……(あ、そっか。カードが持てないや……)」
せっかくの閃きだったのにと私がガッカリして眉を下げると、ジント様がすかさず私の身体を包み込むようにして
カードを数枚手に取った。
「心配いらないよ、萌ちゃん。カードは私が代わりに持ってあげよう。君は私の腕の中から、どの一枚を引くか指で教えてくれればいい。私たちは
『ひとつのチーム』だ」
「あうっ!(ジント様、ありがとう!)」
ジント様の甘い低音ボイスと完璧な
エスコートに、私の胸はキュンと跳ね上がる。
さすがは私のスパダリ婚約者様
サポートが完璧すぎる。
「おいおいジント、ずるいぞ! 萌ちゃんとチームを組むなんて特権階級の乱用だ!」
「そうだね。それなら僕とライダで
チームを組むか、あるいはそれぞれが個人戦として戦うべきだ。萌ちゃん、僕も萌ちゃんのカードを持ってあげたいな」
お兄ちゃんたちが早くも負けず嫌いを
発動させて、馬車の中でワタワタと騒ぎ始めた。
渋滞のイライラなんてどこへやら
みんな萌ちゃんとのゲームに早くも夢中である。
「静かにしろ、ヴィンテ・ラジの兄弟。ゲームを始めるぞ。萌ちゃん、ルールを教えてくれるかい?」
ジント様がカードを綺麗にシャッフルしながら私を見つめる。
「あうー、ばぶばぶ!(まずは全部のカードを配ってね! 同じ数字が揃ったら捨てるんだよ!)」
私は短い指でカードを指差しながら
ジェスチャーを交えて必死に
『ババ抜き』のルールを説明し始めた。
大都会グランマルシェの正門前。
外は一歩も進まない大渋滞で緊迫した
空気が漂っているというのに、私たちの高級馬車の中だけは、0歳児エルフの
私が主催するトランプ大会で、最高に
賑やかで楽しい時間が始まろうとしていた。
(ふふん、前世のOL直伝の心理戦
みんなについてこれるかしら!?)
私は赤ん坊のちっちゃな拳をきゅっと
握りしめて、ニヤリと心の中で不敵な笑みを浮かべるのだった。
(第92話 完)
第92話をお読みいただき、ありがとうございました!大都会ならではの「大渋滞」に巻き込まれてしまった萌ちゃんたち。
ジント様ほどの権力があってもすぐには通れないリアルなハプニングの中、中身OLの萌ちゃんは焦るどころか
「退屈な時間を楽しくしよう!」と『ババ抜き』を閃きました!
赤ん坊の手ではカードが持てないという弱点を、ジント様が「私が持ってあげる。
私たちはひとつのチームだ」とスマートにカバーする姿は、さすがのスパダリっぷりです。
お兄ちゃんたちも渋滞のイライラを完全に忘れて
萌ちゃんとのゲームに大はしゃぎしていますね(笑)。
次回、いよいよ馬車の中で「イケメン過保護男たちに
よる、萌ちゃんを巡る超本気のババ抜き大会」が開幕します!
ジョーカー(ババ)を手にしてしまった男たちの、顔に出る心理戦やドタバタな反応とは!?
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「渋滞中にババ抜きを始める萌ちゃんがポジティブで
可愛い!」
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