『第87話 大量ゲット砂糖をお菓子変身』
いつも応援ありがとうございます!前回、裏で不穏な黒幕の影が何やら恐ろしい陰謀を企み始めましたが……。
当の萌たちはそんなこと1ミリも知らず、頭の中にあるのは「大量ゲットしたお砂糖の行き場」のことだけ!
最高の素材を使って、前世で大流行した「あのお菓子」を作ろうと大興奮する萌。しかし次の瞬間、馬車の中に衝撃の異変が巻き起こり――!?新章突入のドタバタ回、どうぞお楽しみください!
ゴトゴトと心地よい振動を立てて、高級馬車は次の目的地へと向かって街道を
進んでいる。
遥か遠くの薄暗い屋敷で、謎の黒幕が
不気味にお茶をすすりながら
「次こそはあのエルフの小娘を絶望の
底に……」なんて恐ろしい陰謀を企んでいることなど、私たち一行はこれっぽっちも知る由はなかった。
では、その頃の私たちが何を考えていたかというと――。
「……それにしても、本当にものすごい量だな」
アレクにい様が、私のアイテムボックスの中身(データ一覧)を覗き込むようにして、感心したように息を吐いた。
そうなのだ。悪徳お菓子宿の跡地から
「残務処理」および「正当な損害賠償」として回収した最高級の砂糖は、馬車の中でちょっとやそっとプリンを作るくらいでは、底が見えないほどの超大量
だったのである。
「これだけあれば、一生分のおやつが
作れそうだけど……萌ちゃん、これからの旅でどうするんだい?」
「おう、どっかの街の商会に売り払って、全部金に変えちまうか?」
ライダにい様とアレクにい様に尋ねられ、私はジント様の隣のシートで小さな腕を組み、うーんと唸った。
元OLの経済観念から言わせてもらえば
これほど質の良い最高級の砂糖を一気に市場に流せば、価格が暴落してしまう
危険性がある。
何より、こんなに素晴らしい素材をただ右から左へ売るだけなんて、元スイーツマニアのプライドが許さない。
どうせなら、この最高級の砂糖の価値を何倍にも跳ね上げるような、異世界の人たちの度肝を抜く「最高のお菓子」に
大変身させてから売り出したい。
そう、たとえば――。
「ジント様、お兄ちゃんたち! あっちの方向に向かって走って欲しいでしゅ!」
私が突然、馬車の窓の外、遠くに見える大きな建物を指差して立ち上がると
3人とみちゃーれが一斉に私に注目
した。
「あそこの建物(工房)を借りて、この大量にゲットした砂糖をふんだんに使ったお菓子を作るでしゅ!! 前世の日本で女子に大流行した、見た目もカラフルで可愛い、最高に贅沢なお菓子……!」
私はフンスと鼻を鳴らし、バッとポーズを決めて叫んだ。
「その名も――マカロンでしゅ!!」
「「「マカロン……?」」」
ジント様たち3人が、聞いたこともない異世界の単語にきょとんと首を傾げる。
よし、みんなの興味はバッチリ惹きつけた! ここから元OLのプレゼン能力を
発揮して、マカロンがどれほど高級で
美味しく、貴族たちに高く売れるかを
理路整然と説明して――。
「……? あれ?」
説明しようとした、その時だった。私は自分の口から出た言葉の違和感に
ハッと目を見開いた。
(ちょっと待って……? 私、今なんて言った? 『欲しいでしゅ』?
『作るでしゅ』……!?)
さっきまで、元OLの意識がはっきりと
覚醒して、大人のトーンできちんとした敬語を話していたはずだった。
それなのに、なぜか急に舌がうまく回らなくなり、強制的に幼児の「赤ちゃん
言葉」へと戻ってしまっているのだ。
「……? もえちゃん? なんで急に赤ちゃん言葉に戻っちゃったの??」
アレクにい様が、不思議そうに眉をひそめて私の顔を覗き込んできた。
さっきまで「考えられる可能性は3つ
あります」なんて冷静に会議を引っ張っていた妹が、急に「マカロンでしゅ!」と幼児退行したのだから、疑問に思うのも当然である。
「ち、違うんでしゅ! 私は大人の言葉を話そうと……うにゃ? おかしいでしゅ、言葉が勝手に、フニャフニャに……っ!」
必死に大人の口調に戻そうとするけれど、脳からの指令がうまく口に伝わらない。まるで頭の中の「OLの意識」のネジが、急激に緩んで幼児の肉体に飲み込まれていくような感覚だった。
「お、おい萌! 言葉もそうだけど
お前……なんか、背がどんどん縮んでねぇか!?」
突然、ライダにい様が悲鳴のような声を上げて立ち上がった。
アレクにい様は私の言葉の異変にも
びっくりしていたけれど、それ以上に
私の身体に起きている信じられない視覚的変化に、目を剥いてガタガタと震えている。
「え……? 縮んでいる……?」
ジント様が鋭い視線を私に向けた。
その瞬間、私の着ている子供服の袖が、ズズッと不自然に余って手の甲を完全に覆い隠してしまった。
「うにゃあぁぁっ!? 服が、服がぶかぶかになっていくでしゅ!!」
そうなのだ。ライダにい様の言う通り
私の身長は今、リアルタイムでどんどん縮んでいた。
2歳児相当だったはずの私の身体が
さらに小さな、まるで生まれたての赤ん坊一歩手前のようなサイズへと、目に見えて小さくなっている。
さっき放った規格外のチート魔法
『浄化の光』の反動なのか、それとも
魔力を使いすぎたせいで肉体が防衛本能で縮んでいるのか――原因は分からないけれど、とにかく体が一気に幼児化していく。
「もえちゃん……っ!?」
「萌!しっかりしてくれ!
おい!どうしちまったんだ!」
「萌ちゃん……!」
目の前でみるみる小さくなっていく私を見て、お兄ちゃんたちとジント様の顔
から一瞬にして余裕が消え失せ、凄まじい大パニックの渦へと叩き落とされた。
「にゃ、にゃ〜〜んっ!?」
(わわっ!?な、何が起きてるだにゃ)
膝の上から転がり落ちたみちゃーれも
小さくなった私を見上げて驚いたように毛を逆立てている。
「ふにゃぁ……なんだか、すごーく眠くなってきまちた……。マカロン……マカロン作るんでしゅ……むにゃ……」
身体が縮むと同時に、強烈な睡魔が私を襲う。
大人の意識が完全にシャットダウン
され、私はぶかぶかの服に埋もれた
まま、ジント様の腕の中にコテッと倒れ込んで、そのまま意識を失うように眠りに落ちてしまったのだった。
(第87話 完)
第87話をお読みいただき、ありがとうございました!
大量ゲットしたお砂糖の使い道として、前世で大流行した高級お菓子『マカロン』を作ろうと大興奮する萌ちゃんでしたが……なんと、ここでまさかの大異変が発生!
急に赤ちゃん言葉に戻ってしまっただけでなく、身体
までみるみる縮んでいってしまいました……!
目の前で最愛の萌ちゃんが幼児化して眠ってしまい
ジント様やお兄ちゃんたちは今頃、心臓が止まるほどの大パニックを起こしているに違いありません(笑)。
一体萌ちゃんの身体に何が起きてしまったのか!?
作者からのお願い 「マカロンでしゅ!って言ってる
萌ちゃんが可愛すぎる!」
「急に縮んじゃって、ジント様たちのパニックが
心配!」と思ってくださった方は、ぜひ作品への応援をお願いいたします!ページ下部にある【広告の下】
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