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第79話:届かない声、消えないお母ちゃんの呪縛

いつも『社畜OLの葛木萌、猫を助けて異世界へ!』をお読みいただきありがとうございます!前話のラスト、ゲス店員の魔の手が迫る中、萌を守るために立ちはだかったみちゃーれ。完全に幼少期の精神に戻ってしまった萌の前で、小さなヒーローの大奮闘と、店員の本気の反撃が始まります。絶対絶命のピンチの瞬間、物語は劇的なクライマックスを迎えます……!それでは、第79話をお楽しみください!

「さあ、極上のエルフのジュレになりなさ――」


女性店員が勝ち誇った顔で、萌をドロドロに溶かすための魔法を唱えようと手を伸ばした、まさにその瞬間だった。


萌は恐怖のあまり、みちゃーれの後ろで小さくなってガタガタと激しく身体を震わせていた。


その尋常ではない怯えと震えを

みちゃーれは自分の背中でしっかりと

察知した。


大好きな萌が、見たこともないほど深く傷つき、怯えている。その事実が

小さな相棒の心に強烈な怒りと使命感を燃え上がらせた。


みちゃーれは女性店員をキッと鋭い目で睨みつけると、背中の毛を逆立て、口を大きく開けて「シャャャッ!!」と激しく威嚇の声を上げた。


「にゃぁぁ!!(萌は僕が守るから安心してにゃ!)」


みちゃーれは、まるで物語に出てくる

正義のヒーローのように、小さな身体で萌を立派に守る仕草をしてみせた。


そして、前足から鋭い爪をシャキインと剥き出しにすると、いちごゼリーの床を力強く蹴り、女性店員に向かって一直線に飛びかかって引っ掻いた。


「きゃぁぁッッ――ふっ、2度も喰らわないわよ! そんな私、マヌケじゃあないし!」


店員は素早い身のこなしでみちゃーれの爪をひらりと一歩でかわし、冷たい笑みを浮かべた。


さっき顔を引っ掻かれたのは油断していただけ。同じ手を何度も食らうような間抜けではないのだ。


「今度はこっちが反撃の番ね!」


キィィィン! と、店員の周囲に、先ほどよりも一回り大きな禍々しい紫色の魔法陣がいくつも展開される。


店員の瞳は完全に血走り、狂気に染まっていた。自分を愚弄した生意気な幼児と、その飼い猫を跡形もなく消し去る。


その強い殺意が、大広間の空気をピリピリと震わせていた。


「生意気な糞猫もろとも、跡形もなく消し飛ばして、新しいお菓子の肥やしにしてあげるわ! 二人まとめて死になさい!!」


ドォン! と、店員の放った容赦のない

紫色の魔力弾が、激しい音を立てて放たれた。


「にゃ、にゃあぁぁんっ!」


空中で避ける術のないみちゃーれは

自身の持つ全魔力を練り上げて、目の前に小さな防壁を展開した。


ズガガガガァンッ!!


激しい衝撃音とともに、紫色の魔法がみちゃーれの防壁に直撃する。


だが、大人と小猫の魔力差はあまりにも大きすぎた。


みちゃーれの展開した防壁は一瞬で粉々に砕け散り、その衝撃波がみちゃーれの身体を容赦なく吹き飛ばした。


みちゃーれは床を何度も激しく転がり、壁のパンケーキの装飾にドスンと背中を打ち付けた。


美しい三毛の毛並みは、はちみつと自分の血でドロドロに汚れ、ゼリーの床に

小さな血の跡が点々と広がる。


「か、可愛い……? 猫ちゃん……?」


目の前で起きた激しい爆発と、吹き飛ばされた猫の姿に、萌は涙で濡れた瞳を大きく見開いた。


「う、うあぁん……! ごめんなさい

私がいい子じゃないから……! 私のせいで、猫ちゃんが死んじゃう……!

お母ちゃん、助けて、助けてぇ……ッ!」


みちゃーれがボロボロになって自分を

守ろうとしてくれているのに、その優しさすらも、今の萌にとっては「自分が悪い子だから周りを巻き込んでいる」と

いう、前世で親から植え付けられた最悪の罪悪感(呪縛)へと変換されてしまう。


萌を蝕む『暴食の呪い』の精神汚染は、想像以上に深かった。


心の最も脆い部分を突かれた萌の心は、分厚い鉄格子の奥に閉じ込められたように、頑固に心を閉ざしたままで、解ける気配が全くなかった。


「はぁ、はぁ……にゃ、にゃおん……

(萌……泣かないでにゃ……僕は、大丈夫にゃ……)」


血を吐きながらも、みちゃーれは震える足で必死に立ち上がった。片目が腫れ

上がり、視界もぼやけている。


それでも、みちゃーれはただ萌を守ることだけを考えていた。足を引きずりながら、はちみつにまみれて泣きじゃくる萌の元へと近づいていく。


「にゃ〜ん……(萌、僕はここにいる

にゃ……。だから、そんな怖い幻なんか見ちゃ駄目にゃ……!)」


みちゃーれは最後の力を振り絞り、萌のぷにぷにとした小さな手に、そっと自分の鼻先を押し当てた。


冷たくなりかけた萌の手のひらに

みちゃーれの温かい体温が伝わる。


「届かないわよ。そんな糞猫の安っぽい絆なんて、私の精神汚染の前には無力だわ!」


背後から、コツン、コツンと不気味な足音を立てて店員が近づいてくる。

その右手には、先ほどよりもさらに巨大な、終わりを告げるための紫色の魔法陣が、狂い咲く花のように展開されていた。


「さあ、今度こそお終よ。二人仲良く、あの世で泥水でもすすりなさい!」


逃げ場のない大広間で、幼い二人にとって最悪の結末――。逃れようのない

絶対的な『災厄』がまさに訪れようとしていた……。


――ガシャァァァァンッ!!!


その瞬間。凄まじい破壊音とともに

大広間の壁際にある、色鮮やかなキャンディで飾られたお菓子の窓が、内側から激しく爆発するように木っ端微塵に打ち砕かれた。


飛び散る甘い破片の雨を浴びながら

その破壊された窓の向こうから、一人の影が猛然と大広間の中へと飛び降りて

来たのだった――。

(第79話 完 )

第79話をお読みいただきありがとうございました!萌の後ろでの震えを察して、「萌は僕が守る!」とヒーローのように立ち向かったみちゃーれ。しかし、店員も2度目は攻撃をかわし、凶悪な魔法で反撃してきます。みちゃーれの必死のぬくもりも、萌を縛る「お母ちゃんの呪縛」を解くには至らず、絶体絶命の『災厄』が迫るその瞬間――!お菓子の窓をド派手にぶち破って、誰かが大広間に飛び降りてきました!!果たして、この窮地に駆けつけたのは一体誰なのか!?ついに次回は記念すべき大台の第80話! 萌たちの運命をお見逃しなく!【作者からのお願い】「みちゃーれ、本当にかっこよかった!」「窓から来たのは誰!? 続きが気になる!」と思ってくださった方は、ぜひ下にある【ブックマーク登録】や、評価の【☆☆☆☆☆】を★★★★★にして、二人の応援をよろしくお願いいたします!

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