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第8話萌が寝たあとの出来事

いつもお読みいただきありがとうございます!前回(第7話)は、お父様とお母様による凄まじい「あーん争奪戦」が勃発し、美味しい異世界ゼリーを満喫した萌ちゃんでした。しかしラスト、眠りについた萌ちゃんの身体が謎の光を放ち……?第8話は、萌ちゃんが眠った後の「大人たちの時間」です。お父様たちが国や能力のことでシリアスな家族会議をしている中、寝室からトコトコと萌ちゃんが現れて……!? 前世の社畜トラウマと幼児化の甘えが混ざり合う、ちょっと切なくてとびきり尊い回となっております。それでは、どうぞ!

私はご飯を食べてウトウトしていて、

お母様の心地よい温もりを感じながら、そのまま深い夢の中へと入って

しまった。


「まぁ! 寝ている姿もなんて可愛いの

かしら! このままわたくしの部屋まで連れて行って、朝まで一緒に寝たいわ!」


「母上ずるいです、僕だって萌ちゃんと一緒に寝たいです!」


「お母様もお兄様もずるいです! 僕だって一緒に寝て、絵本を読み聞かせてあげたいです!」


遠のいていく意識の中で、そんな幸せな家族の会話を聴きながら、私はメイドさんにそっと抱っこをしてもらい、そのまま客間の寝室へと連れて行って貰った。


萌が部屋を出た後、食堂では残された家族による、静かな家族会議が

始まっていた。


「お母様、萌ちゃんを我が家の養子に

することはできないんですか?

……やっぱり、国の声には逆らえないのでしょうか?」


お兄様が、神妙な面持ちで切り出す。


「そうだぜ。萌はとっても可愛いし、あんな小さな子を養子にすることって、そんなに難しいもんなのか?」


兄弟は二人揃って、萌を家族として迎えることに強くこだわっていた。


お母様は痛ましげに眉をひそめ、首を横に振る。


「すぐ養子に迎えられるものなら迎えたいわ。でも、そう簡単にはできないの。国の許可が必要なのもそうだけど、あの子は能力を持っている……それも、誰も見たことがないほど珍しくて清らかな

能力を……」


お父様も、重々しく頷いた。


「あの治癒の光はこの世界には必要不可欠な、伝説級の力だ。それを知れば、

国や教会が放っておくはずがない

だろうね。

あの子を政治の道具にさせるわけにはいかないが……」


家族がこれからの国との交渉について深く話し込んでいた、その時だった。

――ガチャリ。


静まり返った食堂に、突然ドアが開く音が響いた。


「ん……ぅ……」


そこに立っていた人物を見て、全員が目を疑った。

トコトコと、小さな足音を響かせて入ってきたのは萌だった。

さっき確実に寝室で爆睡していたはずの彼女が、今この瞬間に、ここに現れる

なんて誰も予想していなかったのだ。


「も、萌ちゃん!? どうしたの? トイレに行きたくなっちゃったのかい?」

お父様が慌てて駆け寄る。


「萌、怖い夢でも見たのか? ほら、お兄ちゃんが隣で一緒に寝てやるよ!」

ライダも椅子から飛び出すが、お母様だけは萌の様子がどこかおかしいことに

気がついた。

萌の瞳は、どこにも焦点を結んで

いない。


「……違うわ。これ、夢病気(夢遊病)だわ……。激しい爆睡状態に入っているのに、身体だけが勝手に動いてしまう

病気なの。……強いストレスや疲労が

原因らしいけれど……」


「ストレス、だって……?」


お母様の言葉に、兄弟が息を呑む。そんな大人たちの心配を他所に、幼女の身体の萌は、フラフラと食堂の机の周りを歩き回っていた。


その小さな手は、宙を彷徨いながら何かを探している。

「ふむ。萌はなにか探しているよう

だな。ペンかな? それとも絵の具

かな?」


お父様がそっと手近なペンを握らせようとした、その瞬間。萌の小さな唇から、たどたどしい、けれど悲痛な幼児語がポロポロと溢れ出た。

「しりょー(書類)……つくらなきゃ……。まだ、おわってないもん……。ざんぎょう(残業)しなきゃ、怒られちゃう、の……ぅ……」


「っ……!!」


その場にいた全員の胸に、鋭い刃が突き刺さったような衝撃が走った。

書類、残業、怒られる――

その意味は分からずとも、

萌が前の世界で、どれほど小さな身体(※大人ですが)で過酷に、心をすり減らしながら働かされていたのか、

そのトラウマがひしひしと伝わっ

てきたからだ。


「萌ちゃん……もう頑張らなくていいんだよ……!」


お兄様が今にも泣きそうな顔になる。

しかし、萌の探索は終わらない。ペンを放り出し、小さな足でトコトコとお父様の方へ歩いていく。そして、お父様の

ズボンの裾を、


小さな手でぎゅっと 必死に掴んだ。


「おじちゃん……。……ひとり、は

いや……。あったかいの、どこ……?」


そう呟いた瞬間、萌の緊張の糸が切れたように、カクッと膝の力が抜けた。

お父様が慌ててその小さな身体を

抱き止める。


萌はお父様の腕の温もりに包まれると、張り詰めていた表情を一気に緩ませ、

「すぅ、すぅ……」と


今度こそ本当に安心したような寝息を立て始めたのだった。


「……ああ、なんて健気で、かわいそうな子なんだ……」


お父様は萌を壊れ物を扱うように抱きしめ、その目には大粒の涙が浮かん

でいた。


お母様もハンカチを涙で濡らし、

ライダとお兄様は固く拳を握りしめて

いる。


((((国が何と言おうと、世界を敵に回そうと、この子は俺たち

(わたくしたち)が全力で甘やかして、

生涯守り抜く……!!!))))


家族全員の過保護度と決意が、国家機密レベルへと跳ね上がった瞬間だった。


そんな大人たちの超シリアスな決意など知らずに、萌はお父様の腕の中で

「むにゃ……おにきゅ、とろとろ……」と、幸せそうな寝言を呟いているの

だった。

第8話も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!今回は萌ちゃんが寝ている間の、家族たちの裏側エピソードでした!まさかの夢遊病(夢病気)で、寝ぼけたまま「しりょー(書類)つくらなきゃ……」と呟く萌ちゃん。前世の過酷な社畜時代のトラウマが垣間見えて、お父様たちだけでなく、作者の私も書いていて目頭が熱くなってしまいました……(涙)。でも最後は、お父様の裾をぎゅっと握って「ひとりはいや……」と本音が炸裂。これには公爵家(※お屋敷の主たち)の面々も、世界を敵に回してでも萌ちゃんを生涯全力で甘やかすと誓わざるを得ませんでしたね! 萌ちゃんの無自覚な可愛らしさが、国家を揺るがす過保護へと発展してしまいました(笑)。次回、翌朝ついに目覚める萌ちゃん。家族たちの「超過保護モード」がさらに爆発する予感がしますが、一体どうなってしまうのでしょうか……!?【作者からのお願い】「萌ちゃんを全力で保護したい!」「前世の分まで幸せになって!」と思ってくださった方は、ぜひ画面下部にある「ブックマークに追加」や、広告の下にある「⭐⭐⭐⭐⭐(星)」をぽちっと押して応援していただけると、執筆の凄まじい励みになります!次回もお楽しみに!

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