第7話ご飯いただきます
前回(第6話)は、お風呂に入ってさっぱりした萌ちゃんでしたが、幼児の生理現象(眠気)に勝てずにギャン泣き悶絶。そして鏡の前でついに自分の「天使すぎるエルフ姿」を初目撃しました!今回は、そんな萌ちゃんが待ちに待った「異世界初ごはん」のお話です。お腹の虫を盛大に鳴らした萌ちゃん、無事に大人としてのプライドを守りながらご飯を食べられるのでしょうか……!?それでは、第7話をお楽しみください!
私はお腹を「きゅ〜う」と可愛らしく鳴らせ、顔を真っ赤に染めながらメイド
さんに抱っこされて食堂へと向かった。
「コンコンッ」
「お待たせいたしました。萌様の準備が整いましたので、お連れいたしました」
メイドさんが食堂の扉を開けた瞬間、
室内の空気がぴたりと止まった。
席にいた全員が、私の姿を見たまま彫刻のように固まっている。
(えっ、な、なに……!? そんなに変な格好してる!?)
不安になる私を余所に、最初に沈黙を破ったのはお母様だった。
「な、なんて愛らしいのかしら……っ!! 今すぐ我が家の絵師を呼んで肖像画を描かせ、家中すべての壁に貼りたいくらいですわ!!」
「萌ちゃん、とっても似合っているよ。どうだい、僕の膝の上を特等席にしないかい?」
「萌、ちょー似合ってんじゃん! でも飯こぼして服汚さないよーになっ!!」
ライダがニシシと意地悪っぽく笑うので、私はアラサーのプライドをかけて、幼児の口で精一杯言い放ってやった。
「よごとょないもん! ちょうずにたぺらるもんっ!!」
フンス、と鼻を鳴らしてドヤ顔を決めてみせる。……が、正直なところ内心は
冷や汗モノだった。
何せ幼児化しているせいで身体が思うように動かないし、油断すると精神まで子供の脳に引っ張られそうになるのだ。
私は大人としての威厳を見せるべく、
自力で椅子に座ろうとした。
……が、短い手足が虚しく空を切り、
座面が高すぎて全く登れない。
「ぶぶっ……! 萌、顔を真っ赤にしながら必死に登ろうとするから、お腹に力が入ってお腹が鳴っちまってる
じゃねーか!」
「こらっライダ、笑ったらダメじゃあないか……っ。くくっ、ぷふっ、笑ったら失礼だよ……!」
(もうっ、みんなして笑うんだから!
私だってちゃんと一人で椅子に座りたいのっ!)
内心でぷくーっと両頬を膨らませながらみんなを睨むが、全員が必死に口元を押さえて肩を震わせているのは一目瞭然
だった。
悔しいので、もう一度だけフンッ! と
椅 子に登ろうとした、その時。
「きゃっ!?」
手が滑って、後ろへひっくり返りそうになる。あ、終わった――そう目を瞑った瞬間、大きな温かい手が私の小さな身体を優しく受け止めた。
この屋敷の主であり、絶対的権力者
(大株主)でもあるお父様だ。
「ありゅがとうごちゃいます……っ」
盛大に噛みながらもお礼を言うと、
お父様の目が「カッ!」と見開かれた。「(きゅんっ……!!!)いいんだよ、萌ちゃん! さあ、私の膝の上で一緒に
食べようね!」
そのまま抱き上げられ、お父様の膝の上へと収まった。ふと前を見ると、ライダ以外の家族たちの顔に、デカデカと
『父上だけずるい』『そこ代われ』と
書いてあるのが見えて、私は少しだけ
優越感に浸った。
「んん"っ。ではみんな、手を合わせて」「「「いただきます!」」」
心地よい合唱と共に、待ちに待った
ディナーが幕を開けた。目の前に並ぶのは、社畜時代にはコンビニ弁当やゼリー飲料で済ませていた私からすれば、気絶しそうなほど豪華なごちそうだ。
じっくり煮込まれた大ぶりの角切り肉が入った具だくさんスープ、焼き立てで甘い湯気を立てているふかふかの白パン、さらには香ばしい匂いを漂わせる黄金色のオムレツ。
(手作りの温かいごはんがこんなにあるなんて……これだけで異世界に来て大正解だよ……!)
じゅるりと溢れそうになるヨダレを飲み込み、私はスプーンを握った。ライダに宣言した手前、絶対にこぼすわけには
いかない。
「とおっ……!」
気合を入れてスープをすくい、口元へ
運ぶ。しかし、あと数センチというところで、幼児の貧弱な腕がぷるぷると震え出した。
(あ、あれ……!? スプーンってこんなに重かったっけ!?)
制御不能になった腕が傾き、スープが数滴、私の服にポタポタと落ちてしまう。
「あぅ……」
「ほら見ろー! 萌、さっそくこぼしてんじゃん!」
「ライダ、からかうのはよしなさい」
すかさず煽ってくるライダを嗜め
ながら、お父様が優しく私の手から
スプーンを取った。
そして、スープを優しくすくい、フーフーと息を吹きかけて冷ましてから私の口元へ運んでくれる。
「さあ、あーん、だよ」
(う、うぐぐ……! 精神アラサーとしては猛烈に羞恥心で爆発しそう……!
でも、背に腹は変えられない……!)
私は恥ずかしさを誤魔化すように、
ぎゅっと目を瞑って小さな口を開けた。「あ、あんむっ……!」
お父様のスプーンからスープが口の中に広がった瞬間、私の脳内に激震が
走った。
(な、何これ……めちゃくちゃ美味しい……!!!)お肉の旨味が信じられないくらい濃厚に溶け込んでいて、一口飲んだだけで旅の疲れがフワァッと吹き飛んでいく。)
あまりの美味しさに、私は目をキラキラと輝かせながらお父様を見上げた。
「おいちいっ!! おにきゅ、とろとろしゃんっ!」語彙力は完全に幼児化しているが、そんなことはどうでもいい。
すると、目の前でお父様が
「ふはっ……!」と胸を押さえて悶絶した。背後に控えるメイドさんたちも
「尊い……」と言いたげに天を仰いで胸を焦がしている。
「そうか、美味しいかい! よし、次は
このふわふわのパンにスープをつけて
食べようね。あーん」
「あむっ……! ぅん、ふかふか
しゃんっ!」
お父様は完全に私の「あーん係」として覚醒し、至上の幸福そうな顔で次々とごはんを口に運んでくれる。周りの家族
たちは、ギリィ……と歯を食いしばりながら、凄まじい嫉妬の視線をお父様に投げつけていた。
そしてついに、メインディッシュの後のデザートがお出ましになった!「これぇ〜でしゃーと? ぷるりゅるしてて、てかてかしてるぅ」目の前に現れたのは、ガラスの器に入った透明感のある綺麗なゼリーだった。
前世でもこんなにプルプルしたゼリーは見たことがない。早く食べてみたい!
「これはゼリーだよー。風邪をひいた時や、小さい時によく食べるんだよ。
ほら……あー」
お父様が再びスプーンを差し向けた、
その瞬間だった。凄まじい風圧と共に、視界がグワリと歪んだ。お父様の膝の上にいたはずの私は、次の瞬間にはお母様の膝の上へと「神速の瞬間移動」を
遂げていたのだ。
「ほら萌ちゃん、今度はわたくしが食べさせてあげますわ。あーん!」お母様のあまりの親バカ執念(物理)に、
驚きすぎて開いた口が塞がらなかった。だが、目の前のゼリーの誘惑には
勝てない。
「んふっ! おいちい!! ぷるりゅるしたのが喉にちゅーと入って行くちゅ、もっとたぺちゃい!!」
夢中でスプーンに食らいつき、美味しいデザートで胃袋を満たされると、幼児の身体に強烈な満足感と眠気が一気に押し寄せてきた。
「ふにゃあ……(こっくりこっくり)」舟を漕ぎ始めたその瞬間、私の身体が
ぽぁっと淡い神秘的な光を放った。
それは、愛らしい寝顔を見守っていた家族全員がしっかりと目撃していた。
「お、お父様……! 今、萌の身体が光りましたよね!? ほんの少しですが……」「あぁ……間違いない、たしかに光ったな。……やはりこの子は
『幻のエルフ』
「この能力、俺たちで全力で守り抜かなければならないな」
そんな重大でシリアスな会話が交わされていることなど知らずに、
萌はすぅすぅと健やかな寝息を立てて夢の中へと旅立っていた。
萌の身体に宿る、その秘められたチート能力の正体とは、一体なんだったの
だろうか。
今回は待望の異世界グルメ回でした!お父様の独占禁止法(?)が発動したかと思いきや、お母様の執念による「神速の瞬間移動」でお母様の膝の上へと拉致されてしまった萌ちゃん(笑)。前世の社畜時代には味わえなかった、みんなで囲む温かい食卓とプルプル食感のゼリーに、すっかり胃袋を掴まれたようです。そしてラスト、すやすや眠る萌ちゃんの身体が謎の光を放ちました。お父様たちも何やら警戒を高めているようですが、一体「幻のエルフ」である萌ちゃんには、どんな規格外のチート能力が隠されているのでしょうか……?次回、萌ちゃんの異世界ライフ&チート能力が本格始動!?【作者からのお願い】もし「萌ちゃん可愛い!」「続きが気になる!」と思ってくださったら、ぜひ画面下部にある「ブックマークに追加」や、広告の下にある「⭐⭐⭐⭐⭐(星)」をタップして応援していただけると、執筆の凄まじい励みになります!どうぞよろしくお願いいたします!次回もお楽しみに!




