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第71話:街の中は誘惑だらけ?

いよいよお屋敷を飛び出して、萌ちゃんの本格的な旅がスタートします!しかし、辿り着いた街の中は元社畜OLの理性を揺るがす、美味しそうな匂いと誘惑で溢れかえっていました。懐かしの「あの屋台」を見つけた萌ちゃんは、さっそく人生初の買い食いに挑みます!

お屋敷の過保護な包囲網を突破し

無事に初めての街へとたどり着いた萌。


宿探しという本来の目的(出張手続き)があるにもかかわらず、一歩足を踏み

入れたその場所は、まさに元社畜OLの

理性を狂わせる危険なパラダイスだった。


萌は街中を、ローラーシューズでスースーと快調に滑りながら移動していた。


カカトの車輪が綺麗に整備された石畳を滑るたび、あちこちの露店から波のように押し寄せる未知の異世界グルメの匂いが、萌の胃袋をこれでもかと刺激してくる。


そんな中、萌はあるお店の前でピタッと車輪を止めた。


香ばしいソースの香りと、お肉が焼ける極上のジューシーな音が、その店から爆発的に漂っていたのだ。萌は思わず

幼児の短い人差し指をそのお店へと向けた。


「あれ、あれなんでちゅか……!?

ぜんちぇ(前世)で見た屋台でしゅか?! お肉を販売しながら、お肉を切ってもりちゅけるところ……! しかも

すっごくいい匂いがするでちゅーーーっ!」


萌の視線の先には、大きくて分厚い謎の魔獣のお肉の塊が、巨大な串に刺さって豪快にぐるぐると回転しながら焼かれている露店があった。


外側はカリッと香ばしい狐色に焼き上がっており、中からは溢れんばかりの肉汁がじゅわじゅわと音を立てて滴り落ちている。


そして何より特徴的なのは、お店の職人さんが、注文が入るたびにその巨大な肉の塊から、大きなナイフで薄くお肉を

スライスして、手際よくお皿やパンに盛り付けている点だった。


(あれ、完全に前世の秋葉原や渋谷の駅前でよく見た『ケバブ屋台』のシステムでちゅーーーっ!?)


まさか異世界で、あの懐かしの効率的かつ最高に食欲をそそるビジネスモデルに出会うとは思わなかった。


職人さんの無駄のないナイフ捌きは

元OLの視点から見ても実に見事な

『業務効率化』である。


「にゃ、にゃあ……!

(萌、あのぐるぐる回ってるお肉、

すっごく美味しそうな匂いがするよ……! 僕、お腹と背中がくっついちゃうにゃ!)」


萌の頭の上で、みちゃーれが早くもヨダレを垂らしそうな勢いで、短い前足を

バタバタとさせて大興奮している。


「みちゃーれ、落ち着くのでしゅ。まずは萌が、あの露店の安全性を確かめるために『市場調査(買い食い)』をしてみせるでちゅ!」


そう言い訳をしながら、萌は幼児の小さな財布(お披露目パーティーのどさくさでしっかり確保してきた軍資金)を

ギュッと握りしめ、お肉の誘惑に吸い寄せられるように露店へとローラーシューズを滑らせていった。


萌は肉の屋台のところへトコトコと近づき、上を見上げてお肉を頼んだ。


「おにくひとつくだちゃい!」


元気な声を上げて、ロリータドレスの

裾をふわりと揺らしながら、幼児の身長ではどうしても届かない高すぎる屋台のカウンターに向けて背伸びをする。


一生懸命に短い手を置き、人差し指を

一本ピンと立てて「1つ」と合図をした。


すると、奥でお肉を大きなナイフで

削っていた大柄な店主さんが手を止めた。


「あん……? なんだ、お客さんか?」


店主さんは不思議そうな顔で屋台からわざわざ出てきて、萌のところへと歩み寄ってきた。


熊のようにはち切れんばかりの筋肉を

持った、かなり強面の髭面の男だ。


周囲の通行人が「おいおい、あの大男が幼児をカツアゲしてるんじゃないだろうな……」と一瞬ハラハラした視線を向ける。


しかし、そんな見た目に反して、店主さんは萌の小さな背丈に合わせるように、その場にどっこいしょと優しくしゃがみこんでくれた。


「嬢ちゃん、一人かい? ……うおっ

よく見りゃあ、えらく綺麗なエルフの

お嬢ちゃんだな。でもな、嬢ちゃん。

このお肉はちょっと筋が多くて硬いんだ。大人でも噛み切るのが大変な野生の魔獣肉なんだが、本当に食べるかい?

小さな歯じゃ、アゴが疲れちまうぞ?」


店主さんは、こんなに小さな女の子が

一人でワイルドな肉を買い食いしようとしているのを心配して、親切に教えてくれたのだ。


どうやらこのお肉、匂いは最高なのだが、かなり歯ごたえがあるらしい。


(フッ……店主さん、私をただの幼児だと侮ってはいけまちぇんでちゅ。こう

見えて中身は、毎晩のように深夜残業でスルメや硬いおつまみをバリバリと噛みちぎりながら、日々のストレスを発散していた、タフなアラサーOLでちゅよ……!)


それに、今の萌の肉体は、ただの人間ではなく最強種族と謳われる

「幻のエルフ」。


見た目はぷにぷにの愛らしい幼児だが、内なるチートスペックを完全に舐めてもらっては困る。


「大丈夫でちゅ! 萌のアゴ(噛む力)は、ブラック企業の理不尽な現実をいくつも噛み砕いてきたので、とっても頑丈でちゅ! ぜひそのお肉をひとつ、盛り付けてくだちゃい!」


「ぶらっくきぎょう……? よく分からねえが、そこまで言うなら、とびきり美味いところを削ってやるよ!」


萌の謎の自信に満ちた

(そして最高に可愛い)態度に、店主さんは豪快に笑うと、屋台に戻って大きなナイフを構えた。


シャッ、シャッ、と小気味よい音を立てて、ぐるぐると回るお肉の塊から

特製のタレが染み込んだジューシーな

焼き目が次々と削り落とされていく。


お肉が削られるたびに、さらに肉汁が弾けて良い香りが周囲に爆発した。


そのソースは醤油ベースに少しスパイスを利かせたような、前世の焼き肉のタレを彷彿とさせる素晴らしい調合

(バリュー)だった。そうして、木製の小さなお皿の上に、山盛りのスライス肉がこれでもかと盛り付けられた。


明らかに一人前の規定量を大幅にオーバーしている。どうやら可愛い幼児化チートのおかげで、特大のオマケ

(サービス)をしてもらえたようだ。


「はいよ、嬢ちゃん! 特製ソースをたっぷりかけといたからな! 喉に詰めないように気をつけて食べるんだぞ!」


「わぁぁ……! ありがとうございまちゅ!」


差し出されたお皿を受け取ると、鼻腔を突き抜けるスパイシーで甘辛いソースの香りに、萌とみちゃーれは同時に

「はぅあ!」と歓喜の吐息を漏らした。


平日の昼間から、青空の下で楽しむ出来立ての買い食い。これからの自由な旅路を祝福するかのような極上の誘惑を前に、萌は小さなフォークをギュッと握りしめ、いよいよ実食へと移るのだった。(第71話完)

第71話をお読みいただき、ありがとうございました!異世界で見つけた、まさかのケバブ風ぐるぐる肉の屋台!匂いにつられた萌ちゃんとみちゃーれですが、店主さん曰く「ちょっと硬いお肉」とのこと。ですが、数々の理不尽を噛み砕いてきた元社畜OLのメンタル(とエルフのチート肉体)にかかれば、アゴの力なんてお茶の子さいさい(?)ですね(笑)。可愛い幼児パワーで山盛りのオマケもゲットし、いよいよ実食です!次回、第72話ではこの絶品お肉を堪能しつつ、ついに本来の目的である「宿探し」へと動き出します。ホワイトな優良物件(宿屋)は見つかるのでしょうか?【読者様へのお願い】「お肉美味しそう!」「萌ちゃんの買い食いを一緒に楽しみたい!」と思ってくださった方は、ぜひ下部の【☆】評価や【ブックマーク】をポチッと押していただけると、執筆の凄まじいエネルギーになります!どうぞよろしくお願いいたします!

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