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第70話:初めての街並み

いよいよお屋敷を飛び出して、萌ちゃんの本格的な旅がスタートします!ローラーシューズの乗り心地や、頭の上の頼れる(?)相棒とのドタバタな道中をお楽しみください。そして、ついに辿り着いた初めての街の雰囲気とは……!?

「お先に失礼ちまちゅーーー!!」


ジント様に見送られながら、萌は大きな門をくぐり抜け、外の世界へと勢いよく飛び出して行ったのであった。


カカトに仕込まれた車輪が、異世界の

綺麗に整備された石畳を小気味よく捉える。ローラーシューズを履いているお陰で、小さな足で地面を軽く蹴るだけで、面白いほどグングンと前にスピードが

出た。


「ふはぁぁ……! すっごく気持ちいいでちゅーーーっ!」


びゅんびゅんと後ろへ流れていく景色の中、萌は思いっきり風を切って走る。

頬を撫でていく風からは、少し青々とした森の匂いがして、ツンと鼻腔をくすぐった。


ブラック企業の閉ざされたオフィスで

年中エアコンの澱んだ空気を吸わされていた頃とは大違いだ。


(あぁ……私、本当に自分の足で歩いてる。誰にも命令されにゃい、自分の意志での『出張(ぼうけん)』に出たんだ……!)


お披露目パーティーの窮屈なドレスの

重みからも、過保護すぎる家族の視線からも解放され、萌の胸は期待でいっぱいに膨んでいく。


これぞ、社畜時代に夢にまで見た完全

なるフリーランス(自由人)の瞬間で

ある。


そんな中、萌がローラーシューズで

スースーと快調に道を滑り進んでいると、頭の上から必死な声が聞こえてきた。


「にゃ、にゃぁぁぁっ!?」


萌の頭の上にチョコンと乗っていた相棒のみちゃーれが、あまりの速さに後ろへ飛ばされそうになり、短い前足で萌の髪の毛に必死にしがみついていたのだ。


(も、もえちょっと早すぎるよ! 風は気持ちいいけどスピードが早すぎて、僕が飛ばされちゃうよーーーっ!)


頭頂部に伝わる必死なモフモフの抵抗感に、萌は苦笑いしながら前を向いたまま声をかける。


「みちゃーれ、あと少しだから頑張ってくだちゃい! それか、みちゃーれは空中に浮かべるんだから、乗っかってるより浮かんだ方が早いでちゅよ?」


(あ、そっか……。いや、でも萌の頭の上が僕の特等席にゃんだから、ここがいいのーーーっ!)


そんな、乗っかっているより自分で浮かんだ方が絶対に楽で早いのに、意地でも萌の頭にしがみつこうとするみちゃーれと微笑ましい会話を交わしながら

萌はさらに街へと向かってローラーシューズを滑らせていった。


そのまま滑ること約30分。


視界の開けた大街道の先に、いよいよ

巨大な石造りの防壁と、大きな入場門が見えてきた。


「止まる(ブレーキング)でちゅ!」


萌はカカトのブレーキを上手に使い

門番の兵士さんがいるゲートの前で

ピタッと綺麗に停止してみせる。


すると、ゲートを守っていた強面の門番さんが、目玉が飛び出そうなほど驚いた顔でこちらを見下ろしてきた。


「お、おいおい……なんだってこんな幼いエルフの、それも見たこともねえ上等な服を着たお嬢ちゃんが、一人で大街道を走って……いや、滑ってきたんだ!?」


「こんにちはでちゅ! 萌はちょっと、大人の事情で市場視察の旅をしてる途中でちゅ!」


萌が満面の営業スマイルで愛らしく挨拶をすると、門番さんは「う、市場視察……?」と困惑しつつも、幼児姿の

エルフという圧倒的な可愛さにすっかり毒気を抜かれてしまったようだ。


身分証代わりの魔導具に小さな手をかざして簡単なチェックを終えると

門番さんは「迷子になるんじゃないぞ」とものすごく優しい笑顔で門を開けてくれた。


「ありがとうございまちゅ!」


そうして一歩街の中に足を踏み入れると、そこはまるでお祭りの日のように活気にあふれた世界だった。


「わぁぁ……! すっごいにぎやかでちゅ……!」


あちこちの露店から漂ってくる

お肉やスパイス、甘いタレをジュージューと香ばしく焼いている最高の匂い。


職人たちの活気ある掛け声や、掘り出し物を探す買い物客たち、旅の荷物を抱えた冒険者たちが行き交う楽しげな


『おと』。


さらに少し進んだ広場の方では、大道芸人による華やかなマジックショーまで行われていた。火や水が鮮やかに宙を舞う、異世界ならではの魔法パフォーマンスに、周囲の子供たちが「わあ!」と

歓声を上げている。


街全体が弾むようなエネルギーに満ちあふれていた。


ブラック企業のどんよりとした、全員の目が死んでいたあのオフィスとは

まさに天と地ほどの差だ。


「これ、これでちゅ……! 萌が求めていた、誰もピリピリしてにゃいホワイトなスローライフの街並みでちゅーーーっ!」


萌の瞳は、初めて見る異世界の眩しい街並みに、キラキラと輝きっぱなしだった。


頭の上の席を死守しきったみちゃーれも、ようやく風が止んでホッとしたように、萌の髪に顔をすり寄せて「にゃ〜」と満足そうに鼻を鳴らす。


さて、記念すべき初めての街に無事到着したことだし、元社畜OLの本能として、まずは旅の拠点となる安心・安全な

『宿の確保(出張手続き)』と

お腹を満たすための『異世界グルメの市場調査(買い食い)』を始めなければ!


誰にも命令されず、誰にも縛られない、自由気ままな幼児化エルフの異世界スローライフ旅。


まずはこの賑やかな街並みを、ローラーシューズでトコトン満喫することから

スタートするのであった。


(第70話完)

第70話をお読みいただき、ありがとうございました!無事に初めての街へと到着した萌ちゃん。スピードを出しすぎて飛ばされそうになるみちゃーれが、必死に頭にしがみついている姿を想像するとほっこりしますね(笑)。浮かんだ方が早いのに、やっぱり萌ちゃんの頭の上が一番落ち着くようです。門番さんのチェックも可愛いエルフパワーで難なくクリアし、目の前に広がったのは活気あふれる賑やかな街並み!次回からは、元社畜OL待望の「異世界グルメの買い食い」や「宿探し」が始まります。一体どんな美味しいものに出会えるのでしょうか?【作者からのお願い】萌ちゃんの自由気ままな旅をこれからも応援したいと思ってくださった方は、ぜひページ下部の【☆】評価や【ブックマーク】をポチッと押していただけると、執筆の大きな励みになります!よろしくお願いいたします!

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