第57話『仕切り直しのお披露目パーティー』
いつも『社畜OLの葛木萌、猫を助けて異世界へ!』を読んでいただき、ありがとうございます!前回はジントにぃにの圧倒的なチートっぷりと、黒幕の不穏な陰謀が明かされましたね……!ザイガヴィスの1兆という報酬の裏にあった真実には、私も驚きました。今回は、事件直後のパーティー会場の裏側のお話です。ヴィンテ・ラジ家の見事なチームワーク(過保護)と、ポツンと残された2人のお兄ちゃんたちの動きに注目です!それでは、第57話をお楽しみください!
最悪の誘拐事件から無事に生還し、王宮の豪華な控室に戻ったのは良かったけれど……。そこからはまた、別の大きな問題が浮上していた。そう。このままお披露目パーティーを『続行するか、中止にするか』の話し合いである。
「萌ちゃんの安全が第一ですわ! 今日はもう中止にして、ゆっくり休ませるべきよ!」
お母様は青い顔をして、私の小さな手をきつく握りしめながら訴える。
「しかし、急に中止にすれば貴族たちの間で良からぬ噂が立つ。それに、ヴィンテ・ラジ家の威信にも関わるぞ……」
お父様も苦渋の表情で腕を組み、低く唸った。お兄ちゃんたちも深刻な顔で議論を重ねている。けれど、元社畜アラサーOLの私からすれば、自分のせいで大きなイベントがドタキャンになるなんて恐ろしすぎる。
裏方の人たちの血の滲むような苦労や、遠方からわざわざ足を運んでくれた取引先(貴族たち)の予定を想像しただけで、胃がキリキリと痛くなってしまうのだ。
(ここで中止にしたら、私のせいで何百人もの大人のスケジュールが狂っちゃう……!)
「お父ちゃま、お母ちゃま……萌、だいじょうぶ。パーティー、がんばる!」
まだ誘拐犯に飲まされた薬のせいで
舌がうまく回らない。「大丈夫」と言いたかったのに、幼児化ボディのせいで
「だいじょうぶ」になってしまった。
けれど、私の健気(?)な一言が決定打となった。
「萌ちゃんがそう言うなら……!」と
大人たちの意見が一致し、お披露目パーティーはひとまず中止されることなく、続行されることになったのだった。
◇いざパーティー会場へと戻ったのはいいが、そこにはさらなる試練が待ち受けていた。
参加してくれた貴族たちが
「早く幻のエルフの萌様をもう一度拝みたい!」
「今度こそ我が家との繋がりを!」と、私を見るためにとんでもない大行列を作って待ち構えていたのだ。
押し寄せる熱気と、ギラギラとした大人たちの視線。ただでさえ薬のせいで疲れているのに、この人数を相手にするのはさすがに骨が折れる。
そんな大混乱の会場の壇上で、お母様が凛とした、だけど少し必死な声を張り上げた。「皆様、大変申し訳ありません! 今、萌ちゃんは少し体調を崩しておりまして……っ。ですが! もしよろしければ、今並んでいる方で、この萌ちゃんが描いた絵が欲しいという方はこちらへどうぞ!」
そう、今のお母様は、誘拐されて泣きじゃくったせいで私のおめめがパンパンに腫れてしまっているのを、もの凄く気遣ってくれていた。
だからこそ、私が事前に(前世の記憶を頼りに暇つぶしで)描いていた、なんとも言えないゆるい質感のネコの絵を景品にして、貴族たちの注目を一気に釣ろうとしていたのであった。
「「「な、何ぃぃぃ!? 萌様の直筆の絵だとおおおぅ!?」」」
「並びます! 私は萌様の絵が欲しくて
並んでいたのです!!」
お母様の狙いは完璧だった。現代日本の「ゆるキャラ」の概念などないこの世界において、そのデフォルメされた謎の生き物の絵は、芸術の最先端として映ったらしい。
国宝級の価値があると思われたのか
貴族たちは一瞬でネコの絵に群がり
会場は別の意味で大パニックに陥った。
「さぁ、萌ちゃん。今のうちに個室へ行って、メイクやドレスを直そうね」
お父様はお母様が貴族たちの気を引いている隙を見逃さず、私を素早く抱き上げると個室へと連れて行ってくれた。
腫れてしまった涙の跡を隠し、ドレスの乱れを急いで整えるためである。さすがはお父様、素晴らしい連携プレーだ。
◇一方、その頃。お母様の機転とお父様の神がかった誘導によって、一気に人がハケたパーティー会場。
その広い会場の中で、二人だけポツンと取り残されているお兄ちゃんたちがいた。
「アレク、俺たちはどうする? お母様は貴族が萌のところへ行かないよう気を引いてるし、お父様は萌を小部屋へと連れて行った」周囲の貴族たちの喧騒を遠巻きに見ながら、ライダにぃにが太い腕を組んで尋ねる。
自分たちにできることは何だろうと
ライダにぃにの顔には焦りと悔しさの色が浮かんでいた。
誘拐現場では、ジントだけが圧倒的な格好良さで大活躍し、ジント様の魔法よって萌を助けられて俺たちはただジント様が合図をしてくれたから萌を助けることができた、だけどアレク、ライダはただ
抱きしめて萌にいい所を見せれなかったことが悔しかったんだ。
大大大好きな萌のため、何もしないでただ待っているなんて、兄として、男として耐えられなかった。
「そうだねぇ、どうしようか? ――……あ、そうだ。この手があるじゃないか! ライダ、僕を手伝ってくれ」
アレクにぃにが、何かとんでもない妙案を思いついたように、悪戯っぽく不敵に微笑んだ。
「わ、わかった! それなら、俺たちがここで時間稼ぎをすればいいんだな!」
どうやらアレクにぃにとライダにぃには、私がメイクを直して会場に戻ってくるまでの間に、ある『とんでもない
作戦』を仕掛けるみたい。一体、お兄ちゃん二人はここで何をするのでしょーか……?
ダンスかな?それとも歌を歌うの
でしょーか?次回をお楽しみに
(第57話 完)
第57話をお読みいただき、ありがとうございました!お母様の「萌ちゃんの絵で貴族を釣る」というナイスアシスト、最高でしたね。前世の知識で描いたゆる〜いネコの絵が、まさか異世界で最先端の芸術として大パニックを引き起こすとは……(笑)。お父様の連携プレーもさすがでした。今回はいつもより文章を少し長めに肉付けして、たっぷり2,000文字のボリュームでお届けしました!楽しんでいただけていたら嬉しいです。さて、会場に取り残されたアレクにぃにとライダにぃに。萌ちゃんがメイク直しから戻ってくるまでの間、一体どんな「とんでもない作戦(時間稼ぎ)」を仕掛けるのでしょうか……!?続きが気になる!と思ってくださった方は、ぜひブックマーク登録や評価の星(★★★★★)で応援していただけると、執筆のめちゃくちゃ励みになります!次回、お兄ちゃんたちの奮闘(?)をお楽しみに!




