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第55話:『裏切りの刃と、崩れる微笑み』

いつも応援ありがとうございます!第54話をお届けします。前回、隠し通路の奥でついに犯人を追い詰めたジント様、ライダにぃに、アレクにぃに。しかし、振り返った犯人の正体は、誰もが予想もしなかった「身内の裏切り者」でした……。今回は、その裏切り者の正体と、大切な萌ちゃんを傷つけられた過保護たちの怒りが大爆発します!犯人の余裕に満ちた微笑みが、どう崩れ去っていくのか……!?それでは本編をどうぞ!

「お前……ッ! お前だったのか……!!」


ライダとアレクが信じられないものを見たかのように、驚愕の声を上げる。

だが、その2人以上に深い驚きの表情を浮かべていたのは、誰あろうジント

だった。


月明かりすら届かない暗い隠し通路の奥、振り返った犯人の顔を見て、ジントの瞳が大きく揺れる。


「……君は、我が王族に恨みでも持っているのかい? ――君、ザイガヴィスくん」


彼の名前はザイガヴィス。他でもない、ジントの専属担当として、一番近くで

その身の回りの世話を任されていた男だったのだ。


「う、恨みぃ? ――ふふっ、ははははは! 恨みなんて、そんな高尚なものあるわけないじゃないですか! ただ、お金がもらえるからですよ。このお嬢様を誘拐するだけで、なんと『1兆』もの大金が手に入る。だからやってるだけですよ〜」


ザイガヴィスは、昼間の誠実な態度を完全に投げ捨て、顔を歪めて下品にせせら笑った。王家への恨みや復讐などではない。人はあまりにも莫大な金に目が眩むと、簡単に良心を捨て去り、大犯罪へと走ってしまう。あまりにも身勝手で

救いようのないゲスな理由だった。


「なっ……金のために、俺たちの萌を誘拐したっていうのかよ! ふざけんなッ!! 俺たちがどれほど萌を愛して、今日のパーティーを迎えたと思ってるんだ……!!」


ライダは、ザイガヴィスのクソくだらない理由を聞いた瞬間、怒りで全身の血が逆流するような感覚に陥っていた。


ギリ、と奥歯を噛み締め、拳を血が滲むほどに強く握りしめる。


「萌ちゃんがお金のためだけに誘拐された……? 理由はクソほど理由になってない! ふざけるな! 萌ちゃんがどれほど

今日を楽しみにしていたと思っているんだ……っ! 萌の気持ちを踏みにじったお前を、絶対に叩きのめして倒してやるッ!!」


アレクも、怒りのあまりに肩を激しく震わせた。血の滲むような思いで準備し、萌が心から楽しみにしていたお披露目パーティー。


それを身勝手な欲望で台無しにされ、

さらにトラウマで萌を苦しめている男への怒りは、すでに限界を突破していた。


「お金……。なんでザイガヴィスくんは、そこまでのお金が必要だったのかな? 王家から今支給されている君の給与だけでも、十分に裕福な暮らしができる気がするのだけれど」


お兄ちゃんたちが激昂する中、ジントだけは周囲の空気がピキピキと凍りつくほどの冷気を纏いながらも、奇妙なほど

冷静な声を保っていた。


「たしかに、ここでの仕事は給料がいい。だが、王族様よぉ……お前たちは、その裏で何が起きているかまでは知らねえんだろうな。いくら給料が高くても、一瞬ですぐに消えるんだよ……っ」


ザイガヴィスは吐き捨てるように言うと、どこか自嘲気味に顔を歪めた。


「俺は元々、明日食うものにも困るような貧相な暮らしをしていた。じん、あんたがそんな俺を見つけて、この綺麗な王宮へ引っ張り出してくれたことには感謝しているさ。……だけどな、今の俺にはどうしても、あの『1兆』という大金が

必要なんだよ」


ザイガヴィスの言葉には、ジントさえも知らない「王族の裏の闇」が含まれているようだった。


ジントはすかさず本当の理由を聞き出そうとしたが、ザイガヴィスはそれ以上、何も語ろうとはしなかった。


「……もういいですよ。あんたたち高貴な王族様や、そこの能天気なお貴族様には、どうせ分かりゃしない。大人しく

その娘と、俺をここから逃がしな!」


核心を隠すようにザイガヴィスは声を荒らげ、台車の上の袋――萌にむけて

ギラリと光る短剣を突きつけた。人質を取って優位に立ったつもりなのだろう。


ザイガヴィスの唇に、再び卑屈な微笑み

が戻る。だが、その微笑みが維持できたのは、本当に一瞬の出来事だった。


「……ザイガヴィスくん。君を救い上げたのは、君にそんな浅ましい真似をさせるためではない」


ジントの低く冷徹な声が響く。直後

バキバキバキッ!!! と凄まじい轟音が轟いた。


ジントから放たれた圧倒的な氷の魔力が一瞬で通路を支配し、ザイガヴィスの足元を、そして萌に突きつけられていた

短剣を持つその腕ごと、分厚い氷塊の中に完全に氷結させたのだ。


「なっ……あ、腕が動か……っ!? なんだこの、ケタ違いの魔力は……っ!?」


あまりの速度と威力に、ザイガヴィスは目を見開いた。さっきまで浮かべていた余裕の微笑みはガタガタと崩れ落ち、

その顔は恐怖で真っ白に染まっていく。


激昂したライダとアレクが、今度こそザイガヴィスを叩きのめそうと地を蹴り、一歩を踏み出そうとした――その瞬間だった。

「ははっ……! 腕が動かなくとも、君たちが動けば終わりだ! この通路の床には、あらかじめ広範囲に爆弾が仕込んであるんだよ。一歩でも動いて振動を与えれば、即座に大爆発する仕組みさ。

……一歩でも動けば、その台車にいる娘の命はねぇよ、はははははッ!!」


ザイガヴィスは引きつった口元をニヤリと歪め、勝ち誇ったように狂った笑い声を上げた。


「なっ……爆弾だとっ!?」


「くっ……ふざけるな……っ!」


ライダとアレクは、踏み出しかけた足をピタリと止め、驚愕に顔を歪めた。地面を這う不穏な魔力の回路。


もし今ここで衝撃を与えれば、萌ごとこの通路が木っ端微塵に吹き飛んでしまう。萌の命を盾に取られ、手も足も出せなくなってしまったお兄ちゃんたち。


ザイガヴィスは動けない3人を見下ろし、形勢逆転とばかりに再び下品な微笑みを取り戻そうとしていた。


だが、男は致命的なまでに忘れていた。


目の前にいるのが、葛木家の過保護な兄たちだけではなく――この王国の次期最高権力者にして、稀代の氷魔法の使い手である『氷の王子』ジントだということを。


「……ザイガヴィスくん。君は本当に、私の魔法の恐ろしさを分かっていないようだね。――なぜ、俺が最年少で王族に選ばれたと思う? それはね、持っている魔力の次元が……君たちの言う

『規格外』に値するからだよ。地面を

歩かなければ、爆弾は発動しないんだろう?」

「は……? 何を言って――」


ザイガヴィスが言葉を失った、その瞬間。ジントが指先を小さく鳴らすと

バキバキバキッ!!! と通路の空間全体が激しく鳴動した。


ジントの足元から、透き通るような美しい氷の結晶が瞬時に伸び上がっていく。


それは床の爆弾に一切の振動を与えないよう、空中にかけられた『氷の架け橋』だった。


「な、なんだこれは……っ! 床に触れずに、空中に道を作っただと……!?」

ザイガヴィスの顔から血の気が引き

その口元がガタガタと恐怖で震え出す。


ジントは一歩、また一歩と、自らが作り出した氷の道を優雅に、そして圧倒的な威圧感を放ちながら歩みを進め――気づけば、呆然と立ち尽くすザイガヴィスと、萌が囚われている台車の目の前へとたどり着いていた。


「ジン、完璧だ……っ! ライダ、やれッ!!」


後ろで控えていたアレクが即座に叫ぶ。爆弾の危機が完全に去ったことを瞬時に理解したライダは、獰猛な肉食獣のような笑みを浮かべて地を蹴った。


「よくも……俺たちの萌の命を、そんなクソみたいな爆弾で脅してくれたなぁッ!!」


「ひっ、あ、悪――」


ザイガヴィスが悲鳴を上げる暇すらなかった。怒りが100%凝縮されたライダの拳が、ザイガヴィスの顔面に容赦なく

炸裂した。


ドゴォッ!!! という凄まじい衝撃音とともに、ザイガヴィスは壁へと叩きつけられ、白目を剥いてその場に崩れ落ちた。


さっきまで浮かべていた卑劣な微笑みは、文字通り形も残らず粉々に砕け散ったのだった。


◇「萌、もう大丈夫ですよ」ジントは

すぐさま台車に駆け寄ると、魔力で袋の紐を優しく解き明かした。


バサッと開いた袋の中から姿を現したのは、涙で顔をぐしゃぐしゃにし

パニックで過呼吸になりかけていた萌の姿だった。


「……っ、う、あ……ジ、ジント、

さま……? にぃ、に……?」


「萌ちゃん!!」


「萌、怖かったな……っ! ごめんな、

助けるのが遅くなって!」


アレクとライダが駆け寄り、萌の小さな身体を壊れ物を扱うようにそっと抱きしめる。


ジントもまた、愛しい婚約者を安心させるように、その背中を大きな温もりで包み込んだ。大好きな三人の温もりと

懐かしい匂い。


その瞬間、萌の脳裏を支配していた真っ暗な前世のトラウマは、まるで嘘のように、綺麗に溶けて消え去っていったのだった。


「……うわぁぁぁん! 怖かったぁ……っ、みんな、ありがとぉ……っ!


」萌は三人の胸に顔を埋め、子供のように声を上げて泣きじゃくった。身近な者の裏切り、 潜める爆弾。最悪の危機を乗り越え、萌は無事に連れ戻された。


しかし、気絶したザイガヴィスを見下ろすジントの瞳には、まだ深い懸念の影が残っていた。


『支給されている給料が一瞬で消える、王族の裏の闇』――。


彼が残したその不穏な言葉は、これから始まる、さらに巨大な陰謀の幕開けを告げているようだった。

第55話をお読みいただき、ありがとうございました!ジント様、格好よすぎて全読者が惚れ直しましたね……!

「道を歩かなければいいんだろう?」からの空中氷結ロード、まさに規格外の天才王族にしかできない圧倒的なチートっぷりでした。ライダにぃにの怒りの鉄拳もザイガヴィスの鼻柱を叩き折ってくれて、本当にスカッとしました!そして萌ちゃん、本当によかった……!

お兄ちゃんたちとジント様に抱きしめられて、前世の辛い記憶が解きほぐされていくシーンは、書いていて涙が出そうになりました。葛木家とジント様の愛は、どんなトラウマよりも強いですね。ザイガヴィスは倒しましたが、彼が言っていた「王族の裏」や、裏で動いているであろう組織の存在など、不穏な謎が残りました。次回、ついに「萌ちゃんお着替え・安心編 & 黒幕の影が迫るプロローグ」へと物語が展開します!「ジント様がチート格好良すぎる!」「萌ちゃん、無事で本当によかった……!」「裏切りの黒幕を絶対に許すな!」と思ってくださった方は、ぜひ評価(★)やブックマーク、いいねで応援していただけると、56話の執筆の大きな励みになります!次回もどうぞお楽しみに!

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