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第53話:『わずかな魔力を手がかりに』

いつも応援ありがとうございます!第53話をお届けします。前回、作業員の一言から「萌ちゃんが清掃用台車に隠されて連れ去られた」という最悪の手口に気づいた葛木家とジント様。今回は、怒れる「氷の王子」ジント様と、天才肌のアレクにぃにが力を合わせて本格的な魔力探知を開始します……!そして、全員が飛び出そうとしたその時、あの人が最高にかっこいい覚悟を見せてくれて――!?それでは、本編をどうぞ!

「……突然消えた萌。そして、タイミングを同じくして紛失した作業員の台車。最後に、これほど人が密集している会場で、誰にも気づかれずに気配を消して犯行に及んだ手際。――間違いありません、萌は計画的に誘拐されました」


ジント様は美しい手をそっと口元に当て、思考を巡らせながら静かに話し始めた。残されたいくつものピースを頭の中で一つずつ組み合わせ、犯人の冷酷な犯行手順を確実に照らし合わせていく。


その精緻な分析を聞きながら、お父様も元騎士としての鋭い視線で、心に浮かんだ疑問を口にした。


「ジント殿、私も同意見です。ですが、これほど厳重な警備の中、たった一人で成せる犯行だとは到底思えません。

もし手引きした者がいて、これほど

鮮やかな誘拐に繋げたのだとしたら……この計画を裏で操っている『大元』が必ずいるはずです」


流石はお父様である。単独犯による行き当たりばったりの犯行ではない。この事件の背景には、もっと根深い巨大な黒幕が存在するはずだと、即座に目を光らせていた。


◇大人たちが冷静に状況を分析するその傍らで、息子たちもようやく理性を引き戻しつつあった。


「チッ……! 今は言い合ってる暇じゃあねぇな。おいアレク、お前の感知魔法で、ぜってぇ萌を見つけろよ!」


ライダ兄様は、アレク兄様の胸ぐらを掴んでいた手を乱暴に離した。これ以上揉めて時間を無駄にしている場合ではない。そう自分に言い聞かせるように、

ライダ兄様は


「絶対に引きずり出してやる」という強い決意を込めて声を張り上げた。

しかし、胸ぐらを離されたアレク兄様も、張り詰めた表情のまま鋭い視線を返す。


「……言われなくてもやるよ。僕が作ったチェックリストには、絶対に間違いはなかったはずなんだ。招待客の素性も行動も、事前にお父様に聞いて徹底的に精査したんだから。……だけど、ライダに言われなくたって、僕の感知魔法を最大限に放出して萌ちゃんを絶対に見つけ出してみせる!」


アレク兄様は、自分自身の仕事に不備はなかったと固く口をむすんだ。妹を守るために全力を尽くしたという誇りがあるからこそ、簡単に自分の罪を認めたくはなかったのだ。


何より、ライダ兄様に頭ごなしに命令されたことで、その心には少しだけイライラとした火が灯っていたのだった。


◇アレク兄様は心の中のイライラを必死に抑え込みながら、呪文を唱えて静かに目を閉じた。全神経を集中させ、波紋を広げるように周辺の魔力を感知していく。


(……くそっ、萌ちゃんはどこにいるんだ!? お披露目パーティーの会場なだけあって、人が多すぎる……! いろんな人間の魔力が混ざり合って、上手く

感知ができない。……何か、萌ちゃんを特定できるようなしるしは残っていないのか!?)


アレク兄様は額に青筋を立て、眉間に深いシワを寄せながら、必死に魔力の網を広げていた。焦れば焦るほど、膨大な人間の気配に阻まれて視界が曇っていく。そんなアレク兄様の肩に、ジント様が

そっと大きな手を置いた。


その手の温もりと、冷徹ながらも確かな信頼の籠もった声が、アレク兄様の耳に届く。


「アレク。イライラして焦っても、萌は見つからないよ。まずは深呼吸をして、頭を冷やすんだ。会場内の人間は一旦無視していい。視線を『外の方』へと向けて探してみてくれ。――俺の魔力も、今そっちに繋ぐから」


「ジント、様……」


ジント様が静かに目を閉じると、その身体から桁外れの圧倒的な魔力が溢れ

出し、アレク兄様の感知魔法へと優しく、けれど力強く溶け込んでいった。


王族最年少にして至高の魔力を持つジント様と、緻密なコントロールを得意とするアレク兄様。二人の天才の魔力が重なり合い、探知の網は会場の壁を突き抜けて、一気に王都の夜の街へと広がっていく。


(……あ、これ、は……!)混ざり合う無数の気配の向こう側。会場から遠ざかっていく裏通りの暗闇の中に、ぽつんと取り残されたような、奇妙に歪んだ

『わずかな怪しい人物の魔力』を、二人の網は見事に捉えたのだった。


◇「……見つけた」ジント様がパチリと鋭い目を開けた瞬間、その瞳に冷酷なまでの「氷の王子」の輝きが灯る。犯人の魔力を捉え、全員が一斉に会場を飛び出しようとした――その時だった。


「待ちなさい」背後から掛けられた凛とした声に、一同の足がピタリと止まる。振り返ると、そこにはいつの間にか貴婦人たちとの会話を切り上げたお母様が、まっすぐな視線で立っていた。


「悪党の魔力を感じられたようですわね。……けれど、このまま私たちが全員でここを離れてしまっては、大切なお披露目パーティーの会場を収める人間がいなくなってしまいます。そんな隙を、

これ以上他国の間者や悪党に見せるわけにはいきませんわ」


お母様はぽつりと、けれど有無を言わせぬ確かな口調でそう告げた。そして

お父様の隣へと一歩歩み寄る。


「ですから、ここ(会場)の仕切りは私とお父様が引き受けます。……ジント様、ライダ, アレク。あなたたちは今

すぐ、萌ちゃんの元へ行ってきなさい」


お母様は息子たちとジント様に向けて、力強く、そして慈愛に満ちた強い瞳を向けた。その瞳は、言葉にせずとも確かなメッセージを伝えていた。


――我が家の宝物である萌ちゃんを

絶対に無事に連れ帰ってね、と。



「……っ、はい! 母さん、行ってくる!」


「うん、お母様、ここは任せたよ!」


ライダ兄様とアレク兄様が力強く頷き、さっきまでのイライラを完全に吹き飛ばして拳を握り直す。


ジント様もお母様の覚補に深く一礼すると、冷徹な笑みをその端正な唇に浮かべた。


「ヴィンテ・ラジの奥様。会場のことはお任せします。――我が愛しいフィアンセを攫った大馬鹿者に、この世で最も

冷酷な地獄を見せてやりましょう」


お母様とお父様に会場の後ろ盾を託し、ジント様、ライダ兄様、アレク兄様の三人は、一陣の風の如く王都の夜の街へと飛び出していったのだった。


次回、ついに犯人を捕捉!? 怒れる過保護たちの容赦なき大追跡が始まる――!

第53話をお読みいただき、ありがとうございました!お母様、本当にかっこよすぎます……!全員が怒りと焦りでパニックになって飛び出しそうなところを、冷静に引き止めて「会場の仕切りは任せなさい」と言えるお母様、まさに葛木家の最強の精神的支柱ですね。お父様が隣にそっと寄り添う姿も、長年連れ添った夫婦の信頼感が溢れていて胸が熱くなりました。そして、イライラを乗り越えて見事な連携を見せたジント様とアレクにぃにの魔力探知も最高でした!二人の天才の魔力が重なり合い、ついに夜の街へ逃げる悪党の『わずかな魔力』を捕捉しましたね。お父様とお母様に後ろ盾を任せ、ジント様、ライダ、アレクの最強布陣がいよいよ夜の街へと出撃します!犯人の運命はすでに決まったようなものです(笑)。次回、ついに犯人に追いつくか!? 怒涛の「大追跡・お仕置き編」が幕を開けます!「お母様頼もしすぎる!」「にぃに達、力を合わせて萌ちゃんを助けて!」「ジント様、犯人に特大の地獄を見せてあげてください!」と思ってくださった方は、ぜひ評価(★)やブックマーク、いいねで応援していただけると、54話の執筆の大きな励みになります!次回もどうぞお楽しみに!

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