第5話兄弟達の家へ向かう
前回の第4話を簡単におさらい!猫を助けたはずが、なぜか異世界で「幻のエルフの幼女」に幼児化(?)してしまった元社畜OLの葛木萌。しかも神様(誠くん)の手違いで、送り先はいきなり「S級危険地帯」という最悪のスタート!そんな絶体絶命のピンチを救ってくれたのは、アレクくんとライダくんという最高に格好いい美形兄弟でした。危険なエリアを脱出して、いよいよ二人の「お家」へ向かうことになったのですが……?幼児の体になった萌に、異世界初の試練(?)が訪れます!
私はアレク、ライダ兄弟達に着いて行くことにした。――が。まず、私はどうやって兄弟達に追いついたら
いいのやら……。
エルフの幼女になってしまった私の体は、とにかく足が短いし、
歩く速度もカメ並みに遅い。
(一体どうすればいいのよ……!?)
悩む私の前に残されたルートは、
あの一択しかなかった。
でも、中身が成人した大人なのに、これを口にするのは恥ずかしすぎる。
その言葉は「だっこ」。たった3文字なだけなのに、羞恥心で爆発しそうだ。
でも、言わないと連れて
行ってくれないし、うぅ、うゎん……!
私が一人で悶絶していると、
アレク兄がひょいと覗き込んできた。
「どしたんだ? お腹でも減ったのか?
お腹すいてるような感じでは
なさそうだなー」
すると、弟のライダくんがポンと手を
叩いた。
「わかった! 俺たちに着いて行くから萌ちゃんの足じゃあ追いつけない、それで悩んでるじゃあない?」
「……ッ!!」めっちゃバレてる!
しかも私が言いたいこともドンピシャで当たってる……!う、ウェブの掲示板ならともかく、ここはリアル異世界。
照れてる場合じゃないよね、生き残る
ためだもんね!
「あっ、あうぅ……あれしゅ(アレク)にぃしゃん、だっこぉちてください……も、もえ(萌)、おちちゅ(追いつ)けないから」私は顔を真っ赤にして、
アレク兄の方に向かって頑張って
言った。……私、頑張ったよね? ちゃんと伝わったよね!? 心臓がドキドキ
する。
「ん? ちゃんと言わないと分からないよ? 萌ちゃん? もう1回言ってみて?」
「兄上、可愛いのはわかるけど、あんまりいじめたら萌、泣いちゃうからさ」
ライダくんがたしなめてくれる。
そうなのよ、お兄ちゃん意地悪!
「あれくのいぢわる!! もっかいゆう! だっちしてぇ!
……これでいいでちゅか!」
私はもっかい腹の底から大声を出して
「抱っこ」と言してのけた。恥ずかしさのあまり、ちょっとはぶてる
(いじける)感じになっちゃったけど。
「ふふっ、わかったよ、だっこだね。……よいしょっと。お, 思ってたより軽いね? 萌ちゃん」
アレク兄が軽々と私を抱き上げる。
視線が高くなって、ちょっと怖い。
「へぇ? そうなのか! 萌、軽いのかぁ……これは、いっぱいご飯食べて
肥えなきゃな、笑笑笑」
「もえ、かりゅく(軽く)なぁい! いっっぱいたべたら、
ふと(太)るぅ!!!」
「太る」が上手く言えなくて
「太ふぅ!」みたいになってしまったけれど、私の抗議に兄弟はケラケラと
笑った。そうして私をだっこしたまま、歩きながら兄弟達の家へ向かった。
しばらく進むと、立派な建物が
見えてきた。
「ここが僕たちの家だよー。この中でお母さん達が待ってると思うから、
中に入ろうか」
「クククッ、お母さん達どんな反応すっかな? 可愛すぎて抱きついちゃう
かな?」
ガチャっと、大きなドアが開く音が
した。そこに広がっていたのは――、
綺麗なドレスを着た兄弟達のお母様と、ずらりと並ぶたくさんのメイド達の姿
だった。
兄弟たちとお母様の目が合う。次の瞬間、お母様はものすごい勢いでこっちに歩いてきて、アレク兄に抱っこされている私をまじまじと見つめてきた。
「アレク、ライダ、その子どうしたの? しかも1歳か2歳くらいの
子じゃないの!」
「お母様、ただいま戻りました。この子は萌と言います。S級ランクの森の中でひとりでいた所を見つけ
ました」
アレク兄が真面目な顔で報告する。
続いてライダくんも口を開いた。
「お母様ただいまー。兄上が話してくれたように、萌は森でひとりでいて、
親とかは見なかったぜ! しかも萌、この国でも滅多に関われないエルフ種族なんだ! で、俺たちが連れてきたってわけ」
「なるほどね……。エルフは元々人里には降りて来ないし、降りて来るなら……能力がなくて捨てられるくらいよ……」お母様は悲しそうな表情を浮かべ、私のすぐ近くにそっとしゃがみ込んだ。
これからどうしたいか、優しく問いかけてくれた。
(捨て子扱い!? いやいや、神様の規格外な手違いなだけだけど……でも、この家においてもらわないと困る!)
私は必死になって、幼児の口を
動かした。
「もえ、いしょ(一生)まちゅ(待つ)にゃい(ニートしない)から、
ちごと(仕事)するし、おてちゅたい
(お手伝い)もするから……ここに、
おいてくだちゃい!!」
元社畜の必死のプレゼンである。私の必死な訴えに、お母様は一瞬、驚いたように目を見開いた。
そして、すぐにその綺麗な顔を信じられないほど優しく綻ばせる。
「お仕事ですって? ふふ、そんなに小さな手で、一体何をするつもり
かしら。……アレク、ライダ」
「「はい、お母様」」
「この子は今日から、我が家の大切な家族よ。メイド長! 今すぐ萌ちゃんに一番上質な部屋を用意して。それから、栄養満点で美味しいご飯の準備もね」
「かしこまりました、奥様!」控えていた大勢の メイドたちが、一斉に一礼して楽しそうに動き出す。
その様子を呆然と見つめながら、
私は心の中で思いっきりガッツポーズ
をした。
(よっしゃあああ!! 首の皮一枚繋がったーーー!!)これでひとまず、異世界で行き倒れる心配はなくなった。
……けれど、お母様やメイドたちの、
私を見る目がなんだかすごくキラキラ
している。「さあ萌ちゃん、これからいっぱい食べて、いっぱいおっきくなりましょうね。
まずは可愛いお洋服に着替えましょうか?」
「も、もえ、おちごと……
(あれ、なんか思ってた展開と
違うぞ!?)」
誰にも縛られない、自由気ままな異世界旅……のはずが、どうやら私はこのお屋敷の人間たちに、全力で
甘やかされてしまう運命のようです。
第5話を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!元社畜のプライドを捨てて(?)「だっちしてぇ!」とおねだりした萌ちゃん、めちゃくちゃ頑張りました(笑)。アレクくんとライダくんの意地悪&優しいコンビネーションも最高でしたね。そして辿り着いたお家では、お母様やメイドたちに「捨てられちゃった可哀想で可愛いエルフの幼女」と勘違いされ、お仕事する気満々なのに全力で甘やかされるルートに突入してしまいました……!果たして萌ちゃんは、元社畜の意地でお手伝い(お仕事)を勝ち取れるのか、それとも可愛いお洋服の着せ替え人形で一日が終わってしまうのか!?次回、お屋敷でのドタバタ甘やかされ生活が始まる第6話も、どうぞお楽しみに!【作者よりお願い】「エルフの幼児萌ちゃんを応援したい!」「兄弟のママとお屋敷のメイドたちナイス!」と思ってくださった方は、ぜひ下にあるブックマーク登録や、評価の星(★★★★★)をポチッと押していただけると、執筆の凄まじい励みになります!応援よろしくお願いいたします!




