第45話『天使、降臨する。』
いつも『社畜OLの葛木萌、猫を助けて異世界へ!』をお読みいただきありがとうございます!ついにやってきました、お披露目会当日の朝!朝からお母様の強烈な一言で飛び起きた萌ちゃんですが、ここからノンストップで本番への準備が始まります。キンカンのお風呂に贅沢マッサージ、そしてお母様が寝る間を惜しんで作った特製ドレスの全貌とは……!?
そしてついに、お披露目会当日の朝を迎えた。お披露目会自体は昼からの開催なので、朝はのんびりできるだろう――なんて思っていたけれど、そんな甘い
現実は異世界には存在しなかった。
「さあ! 萌ちゃん、のんびりしてる暇なんてないわよ〜! お披露目会の朝は、軽くお化粧をしたり、お風呂に入ってマッサージをしてもらってピカピカになったり、ドレスを着たりしていたら、本当にあっという間なんだから!」
お母様は朝からテンションMAXで
ノリノリの声を響かせ、私を起こそうと
する。だけど、昨日遅くまでスパルタなマナーレッスンを受けたせいで、私の小さな体は疲れ果てていて、どうしても目が開かない。
二度寝の誘惑に負けそうになっている私を見て、お母様は容赦なく、私が被っていたお布団をべりっと豪快に剥ぎ取った。
「んぅ〜〜……まだ眠いでちゅ。お母様、もうちょい寝たいでちゅ〜〜……」
私はちっちゃな両手で目をこすりながら、座ったままこっくりこっくりと
してしまう。意識が完全に夢の中へと引き戻されそうになった、その時。お母様がニヤリと意味深に微笑み、とんでもない一言を放った。
「あら、そのまま寝ちゃったら……王都から戻ってきたジント様に、お姫様みたいにキスをして起こしてもらうことになっちゃうわよ?」
「……ふぇっ!?」
一瞬、寝ぼけた頭で「なんのことでちゅか?」とフリーズする。だけど、だんだんと脳が覚醒して言葉の意味を理解した途端、私の頭にカッと血が上った。
(ジ、ジント様のキスで目覚める……!? いやいやいや! そんな少女漫画みたいなイベント、3歳児の心臓にも、中身アラサーの心臓にも刺激が強すぎるわよーーーっ!!)
言葉の衝撃に心臓をドッキンと跳ね上げ、私私はベッドからものすごい勢いで跳ね起きた。
一瞬で顔が林檎のように真っ赤に染まる。私がびっくりして飛び起きたお陰で、私の頭の上で一緒にすやすや眠っていた精霊王のみちゃーれまで、「ぴぎゃっ!?」と間抜けな声を上げてびっくり飛び起きていた。
そうしてびっくりして飛び起きた後は、ぼーっとする暇もなく、すぐに最初のお仕事である「お風呂」へと直行することになった。
「この日までマナーレッスン、本当にお疲れ様でございます、萌様。本日の
お風呂には、疲れを癒やすキンカンの
果実を贅沢に使っておりますので、日頃の疲労も一気に吹き飛びますわよ」
お世話係のメイドさんが、私の髪を優しく洗いながら微笑みかけてくれる。今の私にとって一番欲しかったものは、まさにこの甘い香りが漂うキンカンの果実
だった。
湯船に浸かると、柑橘系のとってもいい匂いが全身を包み込んで、あまりの心地よさに思わずまた眠りかけてしまう。
「きんにゃんのいい香りちて、きもちぃ……。疲れた身体中が、じわぁって休まるぅね、みちゃーれ!」
「にゃ〜〜んっ」
(僕お風呂の匂い付きなんか初めてだけど
すっごく気持ちいいし、すごくいい香りするのにゃぁ)
私の声に応えるように、お湯の中にいるみちゃーれが、気持ちよさそうに鳴いた。普通、猫という生き物は水やお風呂を嫌うはずなのだが、みちゃーれは全く嫌がる様子がない。
むしろお湯を楽しんでいるようにさえ
見える。――ううん、やっぱりそこは普通の猫じゃなくて、偉大なる精霊王だからなのかな?それから、お湯でほかほかに温まった身体を、なんとメイドさんたち5人がかりで丁寧にマッサージして
くれた。
これがもう、とろけるほど気持ちよくて最高だったのだけれど、途中でちょっとくすぐったい部分を刺激されてしまい、私は思わず「あははっ!」と声を上げて笑ってしまった。
3歳児の身体の動揺は隠せない。
だけど、お肌をツルツルに、念入りにマッサージしてもらったお陰で、驚くほど身体が軽く感じられた。
お風呂から上がると、いよいよメインイベントだ。お母様に手伝ってもらいながら、寝る間を惜しんで作ってくれたあの特別なドレスを、一品一品丁寧に身にまとっていく。
すべてを着替え終え、姿見の前に立った私は――その鏡に映った自分の姿に、
思わず見とれてしまった。
(……わぁ、すごぃ……!)そこに映っていた私は、まるで今すぐ空を飛べそうな、本物の精霊みたいな半透明の羽を背中に背負っていた。
さらにドレスの丈は、私が自分の足で裾を踏んで転んでしまわないように、
あえて少し短めの長さに調整されて
いる。
元社畜の視点から見ても、機動性と安全性を兼ね備えた素晴らしいお気遣いだ。
デザインは、ピンクと白のグラデーションで優しくコーティングされた、
フリフリのヒラヒラ仕様。
そして胸元には、とっても可愛い大きなリボンがあしらわれていた。
「わぁ! とっても綺麗でちゅ……! あっ、しかもこのリボン、みちゃーれとお揃いだ! それにこの精霊の羽、いまちゅぐ空を飛べそうなぐらいすごいでちゅ!」
みちゃーれの首輪についているリボンと、私のドレスのリボンが綺麗にリンクしている。お母様の細かい演出力には
脱帽するしかない。
鏡の中で嬉しそうに羽をパタパタ
(させるイメージで身体をゆらゆら)
させている私を見て、お母様は
「まぁ、萌ちゃん本当に天使みたい!」と嬉しそうに両手を頬に当てていた。
よし、これで衣装の準備は完璧。
あとは、寝不足でくまを作っているにぃに達、そして王都から戻ってくるジント様。何より――あの私に言いたい放題だった意地悪なマナー講師の鼻を明かしてやるために。
私はリボンをきゅっと整えて、いざ、
主役としてのお披露目会場へと向かうのだった。
第45話をお読みいただきありがとうございました!お母様が徹夜で仕上げた特製ドレス、本当に「天使」そのものの可愛らしさでしたね!ピンクと白のグラデーションに、みちゃーれとお揃いのリボン。さらに3歳児の萌ちゃんが転ばないように丈を短くしてあるというお母様の優しさに、萌ちゃんも大感激です。これで身支度はバッチリ整いました!次回、いよいよお披露目会が開幕します。会場で待つお兄ちゃんたちのリアクションや、ジント様との再会。そして、陰で萌ちゃんを出来損ない呼ばわりしていたあの意地悪マナー講師への、スカッとリベンジ(ざまぁ)が始まります!「ドレス姿の萌ちゃんを早くみんなに見せてあげたい!」「みちゃーれとお揃いリボン尊い!」と思ってくださった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】の評価やブックマークで応援していただけると、毎日の執筆の大きな励みになります!次回の更新もお楽しみに!




