第44話そしてお披露目前日
いつも『社畜OLの葛木萌、猫を助けて異世界へ!』をお読みいただきありがとうございます!お披露目会まで残りわずか。今回は前日譚の後半戦をお届けします!お父様とお母様だけでなく、お兄様たちもそれぞれの方法で萌ちゃんのために限界突破!?そして、留守中のジント様への萌ちゃんの想いや、不穏な家庭教師の影も……?それでは、第44話どうぞ!
あれから、目まぐるしく慌ただしい日々が続いていた。特にお母様は、家族
みんなが当日に着る衣装の制作に追われ、寝る間も惜しんで作業に没頭している。
「萌ちゃんには、やっぱり精霊さんみたいな可愛い羽がついたドレスがいいわよね〜! あ、それからライダは、はちみつ精霊さんとお揃いのブレスレットにしましょう! それなら男の子でも女の子でも、お揃いで身につけられて素敵じゃない? アレクはかっこよくて紳士的な服装が絶対に似合うわよね!」
お母様の頭の中には次々と素晴らしいデザインが浮かんでいるらしく、ペンを持つ手が恐ろしいスピードでスラスラと進んでいた。天才デザイナーのゾーンに入ったお母様は、誰にも止められない。
一方、お父様はお父様で、会場のデザインや出席者への招待状の送付に追われていた。
「会場はとにかく華やかにしよう!
ジント様との婚約発表の瞬間には、派手に花火を打ち上げて、花びらをたくさん散らせたら絶対に綺麗だろうなぁ!」
ブツブツと楽しそうな演出を企画しているお父様だったが、机の上に山積みにされた書類の束を見て、急にガクッと肩を落とした。
「はぁ……あとはこの招待状の手紙か。王族の方々や、私の友人たちにも送らないといけないな。……ああぁぁ、それにしても萌に会えない! 作業が多すぎて、萌をモフモフする時間が足りないよぉぉぉ! 萌が恋しいよぉぉーーーっ!!」
お父様は書類仕事をこなしながらも、
演出や案内状の文面など考えることが多すぎて頭がパンクしかけていた。あれこれと悩みながら、最後は
「萌が恋しい!」と大声で泣き叫びながら、半ばヤケクソでペンを走らせるの
だった。
その頃、ライダ兄様もせっせと当日の準備に励んでいた。何の準備かというと――会場の装飾作りだ。大工仕事のような力仕事の工作を、一人で黙々とこなしている。
「うぅおおおっ、あぁぁ、クソッ、また失敗したァ! 俺、こういう細かい作業はめっちゃ苦手なんだよなぁ……。
でも、萌のために絶対に成功させたいし、何よりあいつの喜ぶ顔が見たいんだよ!」
ライダ兄様は、相棒のはちみつ精霊さんと一緒に、慣れない飾り付けに苦戦しながらも、前日の夜遅くまで汗を流して頑張ってくれていた。
そしてその頃、アレク兄様は部屋にこもり、お披露目会にやってくる大量の出席者たちのチェックリストに目を通して
いた。
「ふむ……この貴族は、最近金遣いが荒くてよからぬ噂が立っているな。悪い方にチェックだ。えーと、こちらの男爵は、最近孤児院に食料を寄付したり子供に優しかったりするらしい。この人は
よし、と……」
アレク兄様はお父様に裏事情を聞き回りながら、萌ちゃんに悪い虫や不審者が近づかないよう、目の下に大きなくまを作りながら必死にリストを精査していた。
みんなが私のためにそこまでしてくれている中、あのジント様はというと、
さすがに我が家に長居することはできなかったようで、一度王都へと帰って行ってしまっていた。
(……ジント様、もう王都に着いたのかな。やっぱり、王都にはジント様の本命の『大好きな人』が待ってるんだろうなぁ……)
ふとした瞬間にジント様のことを考えてしまい、また胸の奥が少しだけズキズキと痛む。けれど、今の私にはそんな感傷に浸っている暇はなかった。
お披露目前日までに、私はお勉強や、
淑女としての姿勢、マナーなどを叩き込まれていたのだが――。
「ふん、そんな不格好な一礼で、明日の大舞台に立てると思っているのですか? ジント様の婚約者(仮)に選ばれたからと、調子に乗らないことです。エルフの出来損ないが」
「……う、うぅ……」
私の目の前で偉そうにダメ出しを連発しているのは、お披露目会のために雇われたマナー講師の先生だ。
この先生、お父様やお母様の前ではものすごく真面目で優しい先生を演じているのだが、私と二人きりになった途端に態度が一変し、言いたい放題に意地悪を
言ってくるのだ。
(中身は大人の私だから耐えられるけど、普通の3歳児なら泣き叫んでトラウマになってるレベルの圧迫面接なんだけど……!?)
理不尽なダメ出しばかりで一向に合格をくれない先生を前に、私は内心で冷や汗を流しながらも、元社畜の根性でぐっと堪える。
(みんなが寝る間を惜しんで、くまを作ってまで私のために準備してくれたんだもの。明日の本番、絶対に失敗するわけにはいかない!)
(この意地悪先生の鼻を明かして、お披露目会を大成功させてやるんだから……!)
こうして、家族それぞれの想いと、少しの不穏な空気を孕んだまま――。
ついに、運命のお披露目会当日の朝が
やってくるのだった。
第44話をお読みいただきありがとうございました!お父様とお母様だけでなく、ライダ兄様は泥臭く力仕事を頑張り、アレク兄様は寝不足になりながら萌ちゃんを守るためのブラックリスト(?)を作ってくれていました。お兄ちゃんたちの愛も本当に深いです!しかし、ジント様の不在を狙うかのように、萌ちゃんの前に現れた意地悪なマナー講師……!親の前での態度と、萌ちゃんの前での態度のギャップが本当に腹立たしいですね。ですが、元社畜の萌ちゃんは負けません!次回、いよいよお披露目会本番!萌ちゃんの完璧な淑女っぷりで、意地悪先生や周りの貴族たちを驚かせることができるのか!?そして王都へ戻ったジント様は……?「お兄ちゃんたち優しすぎる!」「マナー講師を早くざまぁしてほしい!」と思った方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】の評価やブックマークで応援をお願いします!次回の更新もお楽しみに!




