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第39話『その頃、大人たちは……』

いつもお読みいただきありがとうございます!前話では、料理長が作った特大タワーケーキをみんなで美味しくいただきました。アレクにぃにやライダにぃに、そしてはちみつの妖精さんとの微笑ましい時間が描かれましたが……。今回は少し視点を変えて、その裏で起きていた「大人たち」の、涙なしには語れない(?)深夜の激闘をお届けします。ジント様たちの普段見られない一面にもご注目ください!

子供たちが特大ケーキを囲んで

「美味しい!」「あーん!」と大盛り上がりしているその頃。 


お城の萌の部屋では、どこか愛おしくもシュールな光景が広がっていた。 

なぜなら、この国の最高権力者レベルの大人3人が、今にも限界を迎えそうな顔でそこにいたからだ。 そこには、

当の萌さえも知らない、昨夜の涙ぐましい激闘があった。 実は昨晩、萌はひどいうなされ方をしていた。 前世の幼少期に負った辛い記憶が、悪夢となって襲いかかってきたのだ。 


恐怖でパニックになった萌の恐怖から暴れはじめたのであった。幻のエルフと

しての本能的な防衛魔法

『緑のゆりかご』が発動し、頑丈な蔦と葉で固く心を閉ざしてしまった。

 ゆりかごの奥から漏れる、

「料理や…掃除する…からたたかないで、おいていかないで」という悲痛な

うわ言。 それによってジント様は、

萌が『別の世界からの転生者』であることを見抜いた。 


だが、お父様もお母様も、そしてジント様も、驚きを遥かに超える深い愛で、

結界に向かって叫び続けた。


「お前を絶対に傷つけさせない!」

「魂がどこから来ようと愛している!」 その無条件の愛が届いたからこそ結界はほどけ、朝方にようやく萌のパニックは収まったのだが……。


 ――朝、ちゅんちゅんと鳥のさえずりで目を覚ました萌には、そんな激闘の

記憶は一ミリも残っていなかった。


(う~ん、よく寝たにゃぁ! ……って、ひゃあ!?)


 ぱちりと目を覚まし、ベッドから起き上がった萌は、部屋にいる大人たちの姿を見て息を呑んだ。 3人はまだ起きて萌を見守ってくれていたのだが、その目の下には、全員お揃いでバッチリと大きなくまが出来上がっていたのだ。


まるでデスマーチ明けの社畜のような顔である。 萌には昨夜の記憶がない。 


自分が『転生者』だとジント様にバレたことも、何一つ覚えていないのだ。 

そんな萌がパチリと目を覚ましたのを見て、3人はフラフラになりながらも、無理に優しい笑顔を作って同時に声をかけてきた。


「「「萌、おはよ! 気持ちよく寝れた?」」」 


お母様もお父様も、そして王族であるジント様までもが、自分たちの限界などそっちのけで、まずは萌の心配をしてくれている。


(ええええ!? なんでみんなそんな社畜みたいな顔でおはようって言うの!?

もしかして、夜中に悪い魔物でも襲ってきたのを徹夜で守ってくれたのかな!?) 


萌はそう勘違いしつつも、前世の大人としての気遣いが瞬時に働いた。自分たちのために徹夜してくれた優しい大人たちに、これ以上無理をさせるわけにはいかない。


「うん! もえ、よくねんねちたよ! みんな、ありがとう!」


 萌はあざとかわいい笑顔を浮かべてお礼を言いながら、小さな手を背中に隠し、大人たちにバレないように内緒で生活魔法(睡眠魔法&誘導魔法)を唱えた。


「おや、なんだか急に、猛烈な眠気が……」


「萌、様……ベッドが、私たちを呼んで、いるような……」


 萌の優しい魔法にかけられた3人は、抵抗する気力もなく、ふらふらと萌のベッドへと引き寄せられていく。 萌は「はーい、みんなこっちでちゅよー」と、内緒の魔法で大人たちを優しくふかふかのベッドへと誘導し、そのまま横にさせて寝かせたのだった。


「ふふ、みんな、ゆっくり休んでね」 大人たちの寝顔にそっと毛布をかけてから、萌は部屋を抜け出し、

お兄様たち達との食堂と向かった。


  ――それから、あれから4時間ほどが経った頃。 ようやく深い眠りから目覚めた大人たちは、まだ頭が寝ぼけているのか、ぼーっとした様子で起き上がった。


「んん……あら? 私、なんで萌の部屋で寝ていたのかしら。……そうだわ!

なんだか急にもの凄い眠気に誘われて、そのままベッドで寝ちゃったんだわ。……あれ? 萌ちゃんはどこ?」


 お母様は、ふかふかの枕を抱えたまま首を傾げ、部屋の中に愛しの我が子・萌の姿がないことに気づいた。


「ふぁぁぁ……ん、うう、よく寝たーーーっ!」


 隣では、お父様が実にも気持ちよさそうに盛大に伸びをしながら、

同じく首を傾げていた。


「あれ? なんで俺たち寝てたんだ? 確か、夜中に萌の泣き声がして、会議室から全員で慌てて飛び出してきて……

必死にあやして、そこからどうなったんだっけ……?」 


徹夜の限界状態で記憶が少しおぼろげになっているお父様とお母様。 

そんな2人の横で、最後にベッドへ倒れ込んだはずの王族――ジント様が、

ふふっと優雅に微笑みながら上体を起こした。


「ふぁっ……。どうやら私たちは、完全に寝かしつけられてしまったようですね。……それにしても、萌様の魔法は本当に素晴らしい。おそらく、徹夜でくまを作った私たちを気遣って、内緒で睡眠魔法をかけてベッドまで誘導してくれたんだね。部屋にまだ、彼女の温かくて優しい魔力の残骸が残っています」 


ジント様は意外にも朝は機嫌が良いタイプらしく、萌ちゃんの底知れない優しさと魔法の手際に、早くも限界突破でうっとりと思いを馳せている。


(萌様……私たちがあなたの秘密(転生者)を知ったとも知らず、そんな優しい魔法で労ってくださるなんて……。

やはり、私は一生を賭けてあなたを守って行く、そのためには力をつけなければ…!) ジント様が一人でクソデカい感情を爆発させているその頃。


「ライダこれ! ぶどうも乗ってて

すっごく美味しいよぉ!」


『わぁぁ! 萌、これあまくて最高……!』 


当の萌は、はちみつの妖精さんやお兄様たちと一緒に、まだ誰も起きてこないリビングで特大フルーツケーキの2回戦目をのんきに堪能しているのであった。

第39話をお読みいただき、ありがとうございました!大人たちが目の下に大きなくまを作っていた理由、実は萌ちゃんの知らないところで大変なこと(&尊いこと)になっていたのでした。ジント様は萌ちゃんの秘密に気づきつつも、さらに愛を深めてうっとりしてしまっていますね(笑)。当の萌ちゃんがケーキの2回戦目をのんきに楽しんでいるギャップを、クスッと笑っていただけたら嬉しいです。次回はいよいよ第40話!目を覚ました大人たちがリビングの萌ちゃんたちと合流します。一体どんな会話が繰り広げられるのでしょうか?もし「大人たちのクソデカ感情が良い!」「萌ちゃんに癒やされた!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク登録や、下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価で応援していただけると、執筆の励みになります!次回の更新もどうぞお楽しみに!

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