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第35話お兄様たちと朝食

お待たせいたしました、第35話です!限界までお腹を空かせた萌ちゃんの前に現れたのは、夢のような朝食でした。※深夜にお読みの方は、飯テロにご注意ください……!

「にぃに、お腹ちゅいた! 食堂連れってぇ~~」


ウルウルとした瞳でそうおねだりされた瞬間。二人のシスコンお兄様たちの

胸に、撃沈する音が響き渡ったのは言うまでもなかった。


萌ちゃんが可愛くおねだりすると、二人の心には目に見えるようなハートの矢がドスッと突き刺さってしまう。


アレク兄様もライダ兄様も、同時に胸をギューッと押さえて、

「きゅんー!!」と声が漏れそうなほどに射抜かれていた。


すると、弟のライダ兄様が激しく胸を押さえながらガタッと立ち上がった。


「アレク! 俺と勝負しようぜ! どっちが萌を食堂まで連れて行くか、じゃんけんだ!」


その言葉を聞いた兄のアレク兄様も、

すっと静かに立ち上がる。なぜか

ツラリと流れた鼻血をポケットから出したハンカチでフキフキと拭いながら、

真剣な眼差しでじゃんけんに挑もうとしていた。


「僕だって萌ちゃんを抱っこして食堂まで行きたいんだ! いくらライダ

だって、これだけは絶対に負けないよ……!」


火花を散らす二人。息を呑むような緊張感が廊下に走り、二人の拳が振り

上げられる。


「「さいしょはぐっ、じゃんけ……」」


「勝負するじゃあなくてぇ、お兄様

ふたりと手をつにゃいで行きたい

でちゅ!」


「「っ……!!!!」」


ピキィィィン! と二人の動きが完全に停止した。まさかの


「両手に花(お兄ちゃん)」のご指名である。(だって、じゃんけん待ってたらお腹空いて倒れちゃうもん。ふたりと

一緒に歩けば平和解決でちゅ!)


そんな脳内アラサーOLの計算など微塵も知らないお兄様たちは、萌ちゃんの破壊力抜群の言葉に、今度は鼻血どころか

ハートが木っ端微塵に爆発したような顔をしている。


「ふ、ふたりと……手をつなぐ……ッ!」


「あぁ、萌ちゃん……なんて優しい子なんだ……!」


二人はじゃんけんのことなど一瞬で忘れ去り、とろけそうな笑顔で私の両隣に膝をついた。そして、宝物を扱うかのようにそっと、私の小さな右手と左手をそれぞれの手で包み込むように握って

くれる。


「よし! それじゃあ三人で仲良く食堂へ出発進行だ!」


「萌ちゃん、段差があるから足元に気をつけてね」


こうして私は、右にアレクにぃに、左にライダにぃにという、超過保護な最高峰のボディーガード二人を従えて、トコトコと幸せな足取りで食堂へと向かうの

だった。


三人仲良く手を繋いで食堂に向かい、

大きなドアをうんしょっと開けると、

そこに広がっていたのは――。


「わぁぁぁぁ! 大きなパンケーキ!

わたち初めて見ちゃーよ! しかも

バター乗っててはちみつがキラキラしてておいちちょう!」


食堂の大きなお皿の上に、絵本から飛び出してきたかのような分厚いパンケーキが、何枚も何枚もタワーのように積み重なっていたのだ。


てっぺんで余熱でじゅわっと溶けていく四角いバター。その上から、まるで宝石の琥珀のように光を反射してキラキラと輝くはちみつが、たっぷりと滴り落ちている。


目の前にどーんとそびえ立つパンケーキからは、甘くて香ばしい湯気がふんわりと立ち上り、私の鼻腔を容赦なくくすぐってくる。


じゅわじゅわと溶けるバターの油分がはちみつと混ざり合って、お皿のフチに

黄金の湖を作っている様子は、見ているだけで気絶しそうなほど美味しそうだ。


萌は目をキラキラさせながら、今にも口からこぼれ落ちそうなヨダレを必死に

ゴクリと我慢していた。


(何これすごすぎる……! 前世のSNSで大流行してた『奇跡の極厚パンケーキ』のさらに上を行ってるじゃない! 料理長さん、天才天才大天才!!)


「おぉ、萌お嬢様! 昨晩は大変だったと聞き及びましたので、本日の朝食は特別に、私の特製『ふんわり極上ハニーパンケーキタワー』をご用意いたしました!」


厨房から出てきた恰幅の良い料理長が、私の反応を見て嬉しそうに胸を張る。


「料理長、最高の仕事だ! ほら萌、特等席に座りな!」


「萌ちゃん、危なくないように僕が椅子を引くからね」


お兄様二人に至れり尽くせりで席に座らせてもらい、私の前にナイフと

フォーク、そして小さなスプーンがセットされる。


「にぃに、料理長しゃん、いただきまちゅ!」


待ちきれなくて、まずははちみつとバターがしっかり染み込んだパンケーキを、小さくカットして口にパクリと放り込んだ。


(サクッ……しゅわぁぁぁ……っ!? なにこれ、お口に入れた瞬間に消えた!?

外側は香ばしいのに、中は信じられないくらいふわっふわで、まるで雲を食べてるみたい……!)


さらに、上質なバターの塩気と、はちみつの濃厚だけど上品な甘さが合わ

さって、口の中が完全に幸福の暴力に支配されている。


「んん〜〜っ! お、おいちぃーー!!」


両頬をちっちゃな手で押さえて、幸せのあまり身体を左右にふにゃふにゃと揺らす。限界社畜時代の疲れなんて、この

甘美な味わいの前には一瞬で消し飛ん

でいく。異世界、本当に最高すぎる!


「……ライダ、今すぐこの料理長に我が領地の最高勲章を授与しよう」


「おうアレク、俺も同感だ。萌のこんなに可愛い笑顔が見られるなら、小麦粉とはちみつを国中から買い占めてもいいぜ……!」


目の前で悶絶している妹を見て、お兄様たちはまたしても胸を押さえながら


「きゅんきゅん」と限界を迎えているようだった。


「にぃにたちも、いっしょに食べよ?

はい、あーん!」


フォークに小さく刺したパンケーキを二人に差し出すと、シスコンお兄様たちのハートは今度こそ完全に木っ端微塵に撃破されたのだった。


こうして、私はお兄様たちにこれでもかと甘やかされながら、お腹いっぱい大満足の朝食を堪能したのだった。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!料理長特製のパンケーキタワー、萌ちゃんに喜んでもらえて何よりです。前世の社畜時代の苦労が、少しずつ癒やされていくといいなと思います。今後も萌ちゃんの自由気ままな異世界旅を応援してくださる方は、ぜひブックマークや評価での応援をよろしくお願いいたします!

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