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第19話『お披露目会前の大忙し。だけど萌は……』

前話でお披露目会が決まり、大盛り上がりのヴィンテ・ラジ公爵家。第19話では、お披露目会に向けて屋敷中が大忙しになります。そんななか、3歳の体を持て余す萌は……?健気な萌と、みちゃーれの絆にぜひご注目ください!

お父様のお披露目会宣言から

数日。ヴィンテ・ラジ公爵邸のなかは、お披露目会に向けてまさに戦場のような大忙しだ

った。


屋敷のあちこちをメイドたちがバタバタと走り回り、家族も

それぞれ準備に追われている。


そんなドタバタな状況のなか、萌はというと――。

「みんにゃ、いそがちそうだね。何かわたち、てつだうことにゃいかな?」


(私だってヴィンテ・ラジの

一族だもん! 元OLのスキルを活かして、少しでもみんなの

手伝いをして楽にして

あげたい!)


そう思って、私はさっそく行動に移してみることにした。まずは、廊下を忙しそうに歩いていたアレク兄様に声をかけて

みる。


「もえちゃん、どうしたの? 遊びたいのかな? だけどごめんね、今どうしても外せない用事があって忙しいから、みちゃーれと一緒に遊んでてね」


アレク兄様は一瞬だけ足を止めて頭を撫でてくれたけれど、

完全に

「遊び相手を探している」と

勘違いしたまま、再びドタバタとどこかへ行ってしまった。


続いて、ライダ兄様を見つけて声をかけてみる。

「萌、ごめんな! 今やらなきゃいけない仕事があるから、

遊ぶのは後な……。ほら、このお菓子を食べて、みちゃーれと

遊んでな!」


ライダ兄様には、ポケットから出した美味しそうなお菓子を

手渡され、そのままバタバタと小走りで去っていかれて

しまった。


(……お兄様たち、私はただ手伝いたかっただけなんだよ? 

遊んで欲しいとか、お菓子が

欲しいとかじゃあないんだよぅ……)


ちょっぴり切なくなりつつも、私は諦めずにメイドさんたちや、お父様、お母様にも声をかけてみた。


「お嬢様、申し訳ございません! 今はお嬢様のお相手をすることができないので、みちゃーれ様と遊んでいて

くださいね!」


「もえちゃん、今お父様はちょっと手が離せないんだ。大人しく本を読むか、みちゃーれと遊んでいてね」


「もえちゃん、ごめんね。今

お母様はドレスのデザイナー

さんと大切な打ち合わせをしてるの。あっちで遊んでてね? 危ないことはしちゃダメよ?」


誰も彼もが「忙しい」と

言って、私の手伝いは必要ないみたい……。


(私って、こんなにやることがないんだね……)

前世の社畜OL時代は、大人だったから山ほど仕事を任されて

いた。毎日やることが多すぎて、すべてを投げ出して逃げ出したいとすら思っていたのに。


まさか、あの頃の忙しい自分が羨ましくなる日が来るなんて、人生(二周目だけど)分からないものだ。


ぽつんと廊下に取り残され、

私が目に見えて落ち込んでいると――。足元から、私の大好きな相棒が優しく慰めるように、顔をすりすりと寄せてきた。


「にゃあにゃあ(萌、元気だして〜。僕といっぱい遊んでいいし、気が済むまで撫でてもいいよ。なんなら『猫吸い』だってさせてあげる! 

ゴロゴロ……)」


「……ふふ、ありがと、みちゃーれ。そうだね、あっちの部屋で遊んで待っていようか」


生まれたてなのに私の心を察してくれる優しい精霊王(猫)に元気をもらい、私は少し作り笑いを浮かべながら、みちゃーれと一緒に自分の部屋へと

戻った。


部屋に戻ってから、私はみちゃーれと静かに遊んで過ごしていた。けれど、部屋の外からは、まだみんながバタバタと忙しそうに動き回る足音が聞こえて

くる。


(……なんで私は3歳なんだろう。早く大きくなって、みんなを楽にしてあげたいのに……)

現実はそう簡単にはいかない。


どれだけ前世の知識や大人の心を持っていても、今の私は一人じゃ何もできない、ただの無力な幼児なのだ。

自分の不甲斐なさに胸がぎゅっと締め付けられて、なんだか無性に涙がこぼれそうになる。


でも、こんなことで泣きたくない。みんなが私のために頑張ってくれているのに、主役の私が泣いちゃうなんて絶対に嫌だ。


「わたちは、なかないもん……っ。みんな、わたちのために、うごいてくれてるんだもん……っ」小さく声に出して自分を

奮い立たせようとするけれど、上手く言葉が回らない。


幼児の体って、本当にやだなぁ……。心の中にある複雑な気持ちを言葉にして伝えられないもどかしさが、さらに心を苦しくさせる。だめだ、このままだと部屋に誰かが入ってきたときに、泣いているのがバレて

しまう。


私はそっと立ち上がり、屋敷

の中で

「静かに一人で泣ける場所」を探して歩き出した。


廊下の隅まで来ると、ちょうど人がすっぽり入れるくらいの、年季の入った大きめの木製棚を見つけた。


(ここなら……ここなら狭いし、泣いている声も外に聞こえないよね?)

ギギ、と静かに扉を開けて、

私はそっと中に入った。

狭くて薄暗い棚の底で、小さな体をさらに丸めて、膝に顔を

うずめる。


「ひっ……うう……うあ……うう……」

棚の中に入ると、今まで押し殺していた感情が一気に溢れ出してしまい、涙がどうしても止まらなかった。


そんな私に、みちゃーれが一生懸命に寄り添い、頬の涙を優しく舐めてくれる。

それが20分ほど続いたあと、

私はとうとう泣き疲れてしまい、狭い棚の中でみちゃーれを抱きしめたまま眠ってしまったのだった。


その頃、ヴィンテ・ラジ公爵邸の家族たちは大パニックになっていた。


「萌! どこにいるんだ!? 今日はもうやること終わったから、いっぱい遊べるぞ! 

出ておいでー!」


ライダ兄様は、部屋にお菓子を残したまま萌がいないことにいち早く気づき、大慌てでみんなに知らせて回っていた。


「なんだって!? 萌ちゃんが居ないのかい!? 一体どこへ行ってしまったんだろう……っ」


そう叫ぶアレク兄様は、いつもの落ち着きが完全に消え去り、顔から冷や汗をダラダラと

こぼしていた。


「えっ!? 萌ちゃん、さっきまであそこにいたわよね!? 私たちが目を離した少しの間に、どこへ行って

しまったの!?」


お母様はあまりの衝撃に手元を狂わせ、インク瓶をバシャリとひっくり返してしまった。


せっかく夜通しで考えたお披露目会のドレスのデザイン画が、一瞬で真っ黒に染まっていく。けれど、今の彼女にそれを気にする余裕など微塵もなかった。


「みんな、何をそんなに騒いでいるんだ……って、何だって!? 萌ちゃんがいないの

かい!?」


ただならぬ騒ぎを聞きつけたお父様も、顔を真っ青にして

部屋から飛び出してくる。


お披露目会を前に、屋敷中が狂わんばかりに大慌てしている

中――。当の萌は、泣き疲れて薄暗い棚のなかで眠ってしまっている。


すれ違ってしまった家族の

想い。萌の行方は、一体どうなってしまうの!?

(第20話へつづく)

第19話をお読みいただきありがとうございました!みんなを楽にさせたくて空回りしちゃう萌ちゃん、切なすぎて抱きしめたくなりますね……! そしてお母様のデザイン画が真っ黒に……公爵家、大パニックです!果たして家族は萌ちゃんを無事に見つけられるのか!?続きが気になる方は、ぜひ【ブックマーク登録】や下の【☆☆☆☆☆】での応援をよろしくお願いします!励みになります!

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