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第156話:『うさぎの姿で「ただいま」と言ったら、婚約者とお兄ちゃんたちの溺愛が限界突破しました』

いつも応援ありがとうございます!


前話では、世界樹の主ルーミーエラ様から温かい祝福を授かり、自分の過去とも向き合う覚悟を決めた萌。


そしてついに、現実世界で待っていたじんと様の腕の中で、初めてその「声」を届けることができました!


第156話では、モフモフの姿のまま初めて喋った萌ちゃんを巡って、じんと様をはじめ、過保護すぎるお兄ちゃんたちやご両親、そしてルミエラお母様まで大慌てで駆けつけてきて……実家の溺愛が完全に限界突破いたします!


大自然の中での賑やかなドタバタ劇をお楽しみください。


……そして、お話の後半では、世界樹のさらなる深淵へと意識が導かれていき――!?


最後までどうぞお見逃しなく!

「じんと様、ただいまです……。

私、お話しできるようになりました……みゅ」





 最後につい、いつものうさぎの語尾がぽろりと漏れてしまったけれど、私の口から紡がれたのは間違いなく、人間の

少女としての私の声だった。






 世界樹の主ルーミーエラ様に授かった祝福。





それは、現実世界のモフモフな姿のままでも、大切な人たちに言葉を届けることができるという、奇跡のような贈り物。







 私の声を間近で聞いたじんと様は

驚愕に目を見開いたまま、完全に硬直していた。






 世界樹の森に満ちる清らかな風が

じんと様の美しい髪を優しく揺らしている。






あまりの衝撃に、彼の綺麗な瞳がこれ

以上ないほど丸くなっていた。






白手袋をはめた大きな手が、私の小さなモフモフの体を抱きしめた形のまま

ピきりと止まっている。






「じ、んと……様……? どうかしましたかみゅ?」






 あまりの無反応さに不安になって

私がじんと様の胸元にうさぎの頭を

こてんと傾けると、その刺激でようやく彼の思考回路が再起動したらしい。






「萌……本当に、萌の声なのか……?」






 じんと様の声は、見たことがないほど激しく震えていた。






いつもなら冷静沈着で、大人の余裕に

満ちた彼が、今にも泣き出しそうな子供のような表情をしている。







「はい、萌です。じんと様、ずっと心配をかけてごめんなさ――むぐぅっ!?」






 私の視界が真っ白な布(じんと様の

高級な衣服)で埋め尽くされた。






じんと様が、愛おしさが限界突破して

爆発したかのように、私のモフモフな

体をこれでもかと優しく、けれど絶対に離さないという強い力でぎゅーーっと

抱きしめてきたのだ。






「ああ……っ、萌! 萌、萌、萌……!

人間の……姿に戻った、わけではないのに……」







 世界樹の木々の合間で、じんと様が

何度も何度も、壊れ物を愛おしむように私の名前を呼び続ける。






彼の綺麗な目から溢れ出た温かい涙が

私の白い毛並みにぽつぽつと染み込んでいくのが分かった。






「嬉しい……。私の名前を、その愛らしい声で呼んでもらえる日がこれほど早く来るなんて。もう一度、もう一度だけ

私の名前を呼んでくれないか?」







 じんと様は私を少しだけ腕から

離すと、涙で濡れた顔で、それはもう蕩けるような甘い極上の笑顔を向けた。






元社畜の心臓には刺激が強すぎる美形

スマイルである。







「じ、じんと様……っ。もう、そんなに甘いお顔で見つめられたら、お耳がパタパタしちゃいますみゅ……」






「かわいい……っ! ああ、もう一生このまま腕の中に閉じ込めてしまいたい……!」






 じんと様が完全にベタ甘モードに突入し、大自然の中で私の頭や背中を

ハチャメチャに撫で回していた、その時だった。






「――おい! 今、世界樹の風に混じって萌の、いや、人間の女の子の声が聞こえなかったか!?」






 ザザザザッ!!! と、激しく茂みを

かき分ける物凄い音と共に、木々の

向こうから何かが猛スピードで飛び出してきた。






 案の定というか、お約束というか。





姿を現したのは、眼鏡を怪しく光らせたアレク兄様と、愛用の木刀をどこかに

放り出してきたライダ兄様。






さらにその後ろから、息を切らせて全力で走ってきたお父様とお母様、そして

普段の美しい佇まいからは想像もつかないほどスカートを翻して走ってきた

ルミエラお母様だった。






「みんな、驚かせてごめんなさい。

私、うさぎ姿のまま喋れるようになったんです」






 私がじんと様の腕の中から申し訳なさそうに長い耳をぺたんと伏せて喋ると

お兄ちゃんたちとご両親の脳内で何かが盛大に消し飛んだ。






「萌がッ! 萌が喋ったアアアァァァーーーー!!!」







 ライダ兄様が森中に響き渡るような

歓喜の雄叫びを上げ、周囲の小鳥たちが一斉に飛び立つ。





そのまま地響きを立てながら私の方へと突進してきた。






「ずるいぞじんと殿! 森の中でこっそり二人きりで萌の声を独り占めするとは!


さあ、もう一度私の名前を呼んでおくれ萌、お兄様が一生甘やかしてあげるから!」






「どけアレク! 萌、俺だ! ライダ兄ちゃんだぞ! 可愛すぎて死にそう、ちょっと一回抱っこさせてくれえええ!」






「お前たち、うるさい。萌を最初に抱きしめる権利は婚約者である私にある。

下がれ」






 じんと様がいつもの冷徹な美形

スマイル(ただし目が笑っていない)で、お兄ちゃんたちを牽制するように

私をぎゅっとガードする。





「まあ、なんてことでしょう……!

萌、萌の本当の声なのね……!?」






「ああ、我らが愛しの萌が言葉を……! 奇跡だ、世界樹の奇跡が起きたのだな!」







 お母様とお父様が涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらお互いに抱き合い、歓喜に震えている。





さらにその横から、ルミエラお母様が

美しい瞳を潤ませながら、じんと様の

ガードをすり抜けて私に顔を近づけてくれた。





「萌……本当に、本当によかったわ……。その愛らしい声で、また私たちの名前を呼んでくれるのね。


ああ、愛しい我が娘、今日はお祝いに

あなたの好きなものを何でも作って

あげるわ。タルトも、何枚だって焼きましょう!」






「ルミエラお母様……! はい

みんなでまたタルト作りたいですみゅ!」






 私が元気にそう答えると、ルミエラ

お母様は胸を押さえて

「まぁ……っ、なんて愛くるしいの!」と悶絶し、お父様とお母様も

「私たちも混ぜておくれ!」

「萌、お母様って呼んで!」

と、森の草生す地面の上で大騒ぎが始まってしまった。






 世界樹の美しい森の中で、私の

「初めての声」を巡って、壮絶な

モフモフ争奪戦(過保護な家族のぶつかり合い)が勃発している。




「みんな、仲良くしてくださいみゅ! 私、みんなのことが大好きなんですから!」






 私が少し声を張り上げてそう言うと

争っていた男たちも、涙ぐんでいた

お母様方も一瞬でフリーズし、愛おしさに胸を撃ち抜かれたような顔で同時に私を見つめてきた。






 言葉が通じるようになったことで

みんなの溺愛はこれまで以上に限界突破していくらしい。





ああ、本当に幸せだな――。






 そう思った、次の瞬間だった。






――シャラン、シャラン、シャラン。

 賑やかな森の音が、急に遠ざかっていく。






 ハッとして目を開けると、いつの間にか私はじんと様の腕の中にも、みんなのいる世界樹の森にもいなかった。






「あれ……? 私、また戻ってきたの……?」






 そこは、先ほどルーミーエラ様と

お別れしたはずの、黄金の光に満ちた

世界樹の領域だった。






姿もうさぎではなく、銀髪の

『幻のエルフの幼女』に戻っている。






 どうやら、現実世界で一度声を届けたものの、私の意識はまだ完全に世界樹の深淵から抜け切っていなかったらしい。







 ルーミーエラ様の姿はもうどこにも

なかったけれど、光の粒が優しく風に

揺れるように、空間のさらに「奥の方」へと向かって流れていくのが見えた。






 何かに導かれるように、私は幼児の

小さな足で、トコトコとその光の川を

追いかけて奥へ、奥へと進んでいった。






 どれくらい歩いただろう。





 光の霧がふわりと晴れたその先に

それはそれは圧倒的な存在感を放つ

天をも貫くほどに巨大な一本の『木』がそびえ立っていた。





世界樹の、すべての生命の根源とも言える大樹。






 その神々しさに息を呑み、一歩足を踏み出した時だった。





 巨大な大樹の根元、あたたかい光の木漏れ日の中に――誰かが、静かに佇んでいるのが見えた。






「え……? 誰、か……いるの……?」






 ルーミーエラ様ではない。





その人影は、じっと大樹を見上げた

まま、こちらの足音に気づいてゆっくりと振り返る。






 光に遮られてまだはっきりと顔は

見えないけれど、そのシルエットは

どこか懐かしく、あるいは私の胸を優しく締め付けるような、不思議な気配をまとっていた。






 世界樹の最奥、巨大な木の袂で私を

待っていた『誰か』の正体とは――。


(第156話 終わり)

第156話をお読みいただき、ありがとうございました!


うさぎ姿のまま「ただいまです」と言った萌ちゃん、

可愛すぎましたね……!


しかし、初めての可愛い声を巡って、じんと様とお兄ちゃんたちの間で壮絶なモフモフ争奪戦が勃発してしまいました(笑)。


さらにルミエラお母様まで「タルトを何枚だって焼きましょう!」と大興奮で、まさに家族総出の溺愛限界突破回となりました。前の世界の寂しかった過去を、みんなの愛が完全に上書きしてくれています。


……ですが、幸せな余韻に浸る間もなく、萌ちゃんの意識は世界樹のさらなる最奥へ。


天を貫く巨大な大樹の麓に佇んでいた、あの懐かしくも不思議な気配をまとった『誰か』の正体とは一体……!?


一気にファンタジーの本筋が動き出す予感がして

私自身も次の展開を動かすのが今からワクワクしています!


「喋るうさぎ萌ちゃんに癒やされた!」

「大樹の麓にいる謎の人物が気になる!」

と思ってくださったら、ぜひ評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎)や感想

ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆さんの応援が何よりの執筆のエネルギーになります。


次回、世界樹の最奥で明かされる新たな真実(?)の

第157話もお楽しみに!

11月4日はおやすみ致します

すいません!!

11月5日投稿致します

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