第153話 聖域の森をトコトコお散歩!……って、世界樹の癒やし魔力が極上すぎて、元社畜は秒で寝落ちしましたみゅ
いつも『社畜OLの葛木萌、猫を助けて異世界へ!』
をお読みいただき、本当にありがとうございます!
前話では、みちゃーれが見事に(?)結界に弾き飛ばされてしまいましたが……!
今回は、結界を抜けた聖域の森でのドタバタと、ちょっとした異変(?)のお話です。
うさぎ姿の萌と、婚約者であるじんと様の距離感にもぜひご注目ください。
それでは、第153話をお楽しみくださいみゅ!
シャラン、シャランと心地よく響く世界樹の調べに耳を澄ませながら、私たちは光の道を進んでいた。
じんと様の腕の中はとても温かくて
心地よく、漂ってくる清らかな魔力の
おかげで、さっきまでパチパチと暴れていた私の中の魔力が、まるでお風呂に
入ったときのようにじんわりと解きほぐされていくのがわかる。
「みゅふ〜ん……やっぱり実家の空気は最高みゅ。
魔力の濃度がそこらの安宿とは大違い
みゅ。
僕の毛並みがさらにツヤツヤになっていくのを感じるみゅ」
「みちゃーれ、うさぎの私を座布団に
するのをやめなさいみゅ……
じゃなくて、やめてみゅ。
重くはないけど、地味に背中がモフモフして落ち着かないみゅ」
私の背中でこれでもかと手足を伸ばしてくつろぐ精霊王に呆れつつも、私は
自分の体に劇的な変化が起きていることに気がついた。
内側から溢れ出る、圧倒的な温かい
魔力。
それがパズルのピースがカチリとはまるように、私の小さなうさぎの体に満ちていく。
「おや……? 萌の様子が……」
眼鏡の奥の目を鋭く光らせたアレク兄様が、最初にその異変に気がついた。
「萌!? どうしたんだ、どこか痛むのか!?」
ライダ兄様が木刀を放り出しそうな勢いで詰め寄ってくる。
痛いどころか、むしろ逆だ。体がもの凄く軽い。
パァァァと私の小さなうさぎの体
から、白い煙のような光の粒子が
ぽこぽこと立ち上った。
「わわっ、姿が戻るのか!?」
「っ、萌……!」
お兄様たちやじんと様がゴクリと息をのんで見守る。
……けれど、光の粒子が収まっても
私は白くて長い耳を持った雪うさぎの姿のままだった。
「あれ……? 戻らないみゅ?」
じんと様の腕の中で自分の短い前足を見つめて首を傾げる。
どうやら、魔力はカチリと安定したものの、器としての姿が戻るにはまだ少し時間がかかるみたいだ。
「体調は悪くなさそうだみゅ。もう大丈夫だから一度おろしてほしいみゅ
じんと様」
婚約者であるじんと様の腕からそっと地面へ降りると、世界樹のふかふかとした苔の絨毯が小さなうさぎの足裏に心地いい。
お父様やお母様、お兄様たちに
「まだうさぎのままでも可愛いから
問題ない(ね)!」
と頭を優しく撫で回されながら
私はうさぎ姿のまま、自分の足で聖域の森をトコトコと歩き回り始めた。
人間界では見たこともない、淡く光るキノコや、つつくと綺麗な音を立てて
花開く植物たち。
元社畜の好奇心が刺激されて、私は長い耳をピコピコ揺らしながら、あちこち
歩き回って観察を楽しんでいた。
「ふふ、萌は本当に元気なうさぎさんね」
ルミエラお母様が優しく見守ってくれる中、私はしばらく夢中で歩いていたのだけれど――。
「……あれみゅ?」
急に、信じられないほどの猛烈な眠気が私を襲った。
歩く足が急に鉛のように重くなる。
頭がとろとろと溶けていくみたいに
まぶたがくっついて離れない。
どうやら、魔力が一気に安定した
安心感と、この聖域に満ちている極上の「癒やしの魔力」が、私の限界社畜
だった魂を完全に包み込んでしまった
らしい。
あまりの心地よさに、体中の力がふにゃりと抜けていく。
「萌様……!?」
トトト……と足元がふらつき、うさぎの体が横に傾きかけたその瞬間。
すかさず長い白手袋の腕が、私を優しくすくい上げた。
私の婚約者――じんと様だ。
彼は愛おしそうに大きな両手で、私を
そっと胸元へと抱き寄せてくれた。
じんと様の清らかな守護魔力と
安心する温かい香りが全身を包み込む。
もう、完全に限界だった。
じんと様の腕に包まれた瞬間、張り詰めていた心がすーっとほどけて、意識が
心地よくとろけていく。
「だ、だめだみゅ……もの凄く、気持ちよくて……ねむ、ねむだみゅ……」
「お疲れ様です、私の愛しいうさぎ殿。何も心配いりません、このままお休みください」
耳元で響く、じんと様の低くて優しい甘い声。
世界一安全で、世界一あたたかい婚約者の腕の中で、私はふかふかの波に沈み込むように、すとんと深い深い眠りへ
と落ちていった。
深い闇の中、シャラン、シャランという鈴の音が響いていた。
気づけば私は、一面が純白の光に満ちた、不思議な空間にぽつんと立っていた。
「あれ……? 私、寝ちゃったんじゃ……」
ふと自分の手元を見て、私は目を見開いた。
白くてモフモフだった前足が
白く滑らかな人間の、小さな子どもの
手に戻っている。
触れてみれば、髪はふわふわの銀髪で、耳はほんのり尖った長い耳――。
現実ではうさぎで語尾も「〜みゅ」
だったはずなのに、じんと様の腕の中で眠りについたこの夢の空間の中では
私は本来の『幻のエルフの幼女』の姿に戻り、言葉も普通に喋れていたのだ。
「ふふ、よく眠っていたね。小さくて
可愛い迷子さん」
驚く私の頭上から、優しくてどこか神聖な声が降ってきた。
ハッとして振り返ると、そこにいた
のは、透き通るような長い髪をなびかせ
背中に淡く光る大きな翅を
持った、目も眩むほどに美しい女性
(あるいは青年にも見える中性的な
存在)だった。
その体からは、世界樹と同じ、いや, それ以上に濃密な精霊の気配が溢れている。
「……あの、あなたは……?」
エルフの姿に戻った私が出会ったその新しい存在は、悪戯っぽく微笑むと
私の小さなエルフの耳にそっと触れてささやいた。
(第153話 終わり)
第153話をお読みいただき、ありがとうございました!
世界樹の癒やしパワー、恐るべし……! じんと様の腕の中という世界一安全な特等席で、萌はすっかりとろけて寝落ちしてしまいました。
そして夢の中でまさかの本来の姿(幼女エルフ)に
戻り、謎の美しき存在との出会いが――!?
一体この存在の正体は何なのか、現実のうさぎ姿はどうなってしまうのか、次回の展開もどうぞお楽しみに!
【読者のみなさまへお願い】
「うさぎ萌ちゃん可愛い!」「じんと様甘すぎる!」
と思ってくださった方は、ぜひ下にある【☆☆☆☆☆】のポイント評価や、ブックマーク登録で応援していただけると、執筆の凄まじい励みになりますみゅ!
感想やレビューもお気軽にいただけると嬉しいです。
次回、第154話もよろしくお願いします!




