第150話:男たちの奮闘は何だったのみゅ? 永久閉鎖の危機、精霊王の『パスワード入力(物理)』で一発解決です
いよいよ記念すべき第150話!いつも応援ありがとうございます!
前回、お父様のやりすぎ防衛システムのせいで、神話級の防壁に閉じ込められてしまった萌ちゃんたち。
じんと様やお兄様たちが必死に壁と戦うなか、パニックの引き金を押したポンコツ精霊王みちゃーれが、名誉挽回のために密かに動き出します!
お父様の萌ちゃんへの愛を逆手に取った、みちゃーれ流の「物理解決」にどうぞご期待ください!
――ドガシャーーーーン!!!
バチバチバチッ!!!
「くっ、さすがはお義父様の防壁
だな……! 私の剣技をもってしても
傷一つ付けることができないとは……!」
じんと様が額の汗を厳かに拭い、愛剣を力強く構え直した。
その鋭い眼光はまっすぐに漆黒の防壁を射抜いており、私の前に立ちはだかる
背中には、どんな危険からも絶対に守り抜くという強固な意志が満ち溢れている。
「じんと様、無理はしないでほしいみゅ……!」
「心配いりません、萌。我が剣はあなたを守るためにあります。
何があろうと、この私があなたの盾と
なりましょう」
じんと様は私を振り返り、キリッと
した凛々しい表情のまま、安心させるように深く力強く頷いてくれた。
ただ優しいだけじゃない、騎士として
の圧倒的な頼もしさに胸がキュンとするみゅ!
その横では、アレク兄様が魔導書を
高速でめくり、ライダ兄様が
「おおおらぁ!」と木刀で防壁を殴りつけて火花を散らしている。
「はっはっは! 私が萌とルミエラと
愛しする妻ために作った最高傑作だからね! そう簡単には破らせないよ!」
お父様がなぜか誇らしげに胸を張っているけれど、あなたが解除コードを
忘れたせいでこんなことになってるんだみゅ!
男たちが全力で防壁と戦い、お母様
たちが優雅にお茶をおかわりしている
その背後で。
「……にゃふふ。お父ちゃんのこと
だから、絶対に萌ちゃん関連の
パスワードに違いないみゅ」
私のクッションの後ろで、精霊王
みちゃーれが不敵な笑みを浮かべていた。
みちゃーれは男たちの戦闘のドサクサに紛れ、小さな体でするりとサロンの
隅にある隠しダクトへと滑り込んだ。
目指すは、この飛空艇の最深部――
お父様が言っていた
『地下の制御ルーム』だ。
狭いダクトの中を、みちゃーれは
トコトコと四足歩行で進んでいく。
「おやつをくれたライダ兄様や
凛々しくてかっこいいじんと様たちが
困っているのを放っておくわけには
いかないみゅ!
ここは精霊王である僕が、ビシッと解決してドヤ顔をしてやるみゅ!」
短い手足をシャカリキに動かし
みちゃーれはついに地下の制御ルームへとたどり着いた。
そこは、無数の魔導回路が怪しく
光る、飛空艇の心臓部。部屋の中央には、お父様が特注で作らせたという
最高級の防壁制御パネルが鎮座している。
パネルの画面には、真っ赤な文字で
こう表示されていた。
【警告:永久閉鎖モード起動中。
解除パスワードを入力してください】
「やっぱりあったみゅ! パスワード画面みゅ!」
みちゃーれはコントロールパネルの
前に飛び乗ると、ふんぬーと鼻息を荒くした。
「萌ちゃんのお父ちゃんが考える
パスワードなんて、世界で一番予想し
やすいみゅ!
どうせ『萌ちゃん命』とか『萌ちゃん
天使』に決まっているみゅ!
……だけど、僕には文字を入力する
キーボードなんて小さすぎて使えないみゅ!」
そう、精霊王の短い肉球では
細かな魔導キーボードのボタンを正しく押すことなんてできない。
だが、みちゃーれは最初から普通に
入力する気などさらさらなかった。
「文字なんて打たなくても、僕の魂に
刻まれた『萌ちゃんへの愛のエネルギー』を、物理的にぶち込めばそれが
パスワードになるみゅーーー!」
みちゃーれは小さな右前足を高く
掲げた。
その肉球に、精霊王としてのガチの
神威パワーが凝縮されていく。
キィィィンと空間が鳴動し、地下室全体の魔力がみちゃーれの手元に集束した。
「くらいみゅ! パスワード入力(物理)――『萌ちゃん、世界一可愛いみゅーーー!!!』」
ドガシィィィィィンッ!!!!
みちゃーれの小さな肉球パンチが
お父様が全財産をかけた最高級制御
パネルの中央に、物理的にド直球で叩き込まれた。
一瞬の静寂の後、ピキピキピキ……
とパネル全体にひびが入り
バゴォォォン!!とド派手な爆発音と
共に、魔導回路が真っ黒に焦げて火花を吹き出した。
「みゅひ。これで入力完了みゅ!」
入力というか、制御システムそのものの物理的な破壊である。
――その頃、上のサロンでは。
「お義父様、防壁の魔力が急速に霧散していきます……!」
じんと様が鋭く異変を察知し、即座に私を背後に隠しながら剣を構えた。
先ほどまで国家最高火力でも壊れ
なかった漆黒の魔導防壁が
突然「エラー! エラーみゅ!」
という謎の幻聴(みちゃーれの念写)
と共にパリン……とガラスのように儚く砕け散ったのだ。
ガシャーンと扉が開き、窓の外には
美しい青空と、目の前に迫る
『世界樹の森』の巨大な大樹が広がっている。
「な、何が起きたんだ!? 私の最強結界が、内側から完全に強制終了された
だと!?」
お父様が白目を剥いてその場に崩れ
落ちた。
全財産をかけたシステムが、跡形もなく消滅したのだからショックはデカい。
「ふぅ。萌、もう大丈夫です。怪我は
ありませんか?」
じんと様はすかさず剣をサヤに収め
私の両肩をしっかりと掴んで真剣な目で見つめてくれた。
「じんと様、私は大丈夫だみゅ!
でも、これって……」
私がダクトの出口を見つめると
そこから全身煤まみれになった
みちゃーれが、誇らしげに鼻を高くしてトコトコと歩いて出てきた。
「みゅふん! 僕が地下の制御ルームで
パスワードを『物理入力』して直して
やったみゅ! 男たちの奮闘は何だったのみゅ? って感じみゅね!」
ドヤァ……と短い両足を腰に当てて胸を張るみちゃーれ。
「あ、コラ! お前、制御パネルを壊したな!?」
アレク兄様に即座に見破られ
みちゃーれは「みゅぎゃっ!?」
と悲鳴をあげてんこもり私の後ろに隠れた。
「まあまあ。結果的に、無事に世界樹の森へ到着できたのですから良いではありませんか」
「本当ですわね。みちゃーれ様
よく頑張りましたわ」
ルミエラお母さんと婦人が優雅に拍手を送り、サロンには再びのどかな笑い声が響く。
男たちの血と汗の努力を一瞬で過去にした、精霊王の物理パスワード。
飛空艇はいよいよ、目的地の絶対結界の目の前へと滑り込むように着陸して
いくのだった。
(第150話 終わり)
第150話をお読みいただき、ありがとうございました!
ついに150話の大台突破です!
じんと様のキャラクターを
「萌ちゃんをしっかり守る、芯の通った格好いい騎士」のトーンに修正いたしました!
優しいだけでなく、危険な状況でも毅然として
盾になってくれるじんと様、めちゃくちゃ頼りがいが
あって素敵ですね。
萌ちゃんへの接し方も、真剣だからこその格好良さが引き立ちました。
それにしても、みちゃーれの「パスワード入力
(物理)」のパワーが強すぎました(線)。
文字が打てないからって、萌ちゃんへの愛のエネルギーを込めた肉球パンチでシステムごと粉砕バグらせるなんて、さすがは精霊王(脳筋)です!
お父様が全財産をかけた最強システムをあっさり
壊され、男たちがズッコケるなか、お母様たちが優雅に褒めてくれる格差がやっぱりこの公爵家の最高なところですね。
次回、第151話からは、いよいよ目的地である「世界樹の森」での本編が始まります!
150話突破おめでとう!じんと様が格好良かった!
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