第149話:精霊王のポンコツが引き金に!? 飛空艇に隠された「お父様のやりすぎ防衛システム」が起動してしまいました
前回の第148話では、ナビを気取っていた精霊王みちゃーれが広すぎる飛空艇で無事に迷子になり、パニックに
なって「赤いボタン」を押して船を止めてしまいました!
ライダ兄様のおやつで無事に捕獲され、再び船が動き出したのですが……どうやらお話はそれだけでは終わら
なかったようです!
第149話、動き出した「その瞬間」に、お父様のやりすぎた財力と過保護が牙を剥きます!
まさかの神話級防壁トラップが起動し、サロンは完全閉鎖の大パニックに!?
過保護全開で壁に挑む男たちと、それを見ながら超マイペースにお茶を楽しみ直す二人の母親たちの、ハチャメチャな格差コメディをお楽しみください!
ライダ兄様から特製ケーキを、ヴィンテ・ラジのお母様である婦人から温かいハーブティーをもらい、すっかりご機嫌になった精霊王みちゃーれ。
「みゅふふー、やっぱり萌ちゃんの隣が世界一安全で美味しいみゅ〜」と
私のクッションの横で幸せそうにふにゃふにゃと溶けている。
「ふふ、落ち着いてくれて良かったですわ」
私の実のお母さんであるルミエラさんが、みちゃーれのふわふわな頭を優しく撫でて微笑んだ。
「さあ、みちゃーれが押してしまった
非常ブレーキの解除も終わったようだ。世界樹の森へ向けて、再び出発だな」
ジント様がそう言って、サロンの壁にある魔導通信機へと合流のサインを
送る。
直後、遠くの機関室から
ゴオォォォ……という重低音が響き
窓の外の雲海が再びゆっくりと後ろへ流れ始めた。
「みゅー!(無事に動き出したみゅ!
よかったみゅ〜!)」
私はホッと胸をなでおろし、短い前足で自分の胸を叩いた。
誰もが「やれやれ、これにて一件落着だ」と確信し、再び穏やかなお茶会に
戻ろうとした、まさにその瞬間だった。
――ピキィィィィィィン……ッ!!!!
飛空艇の全身を、鼓膜を突き刺すような鋭い魔導音が駆け抜けた。
次の瞬間、サロンの優雅な絨毯の
床に、禍々しいほどに巨大で真っ赤な
魔法陣が幾重にも重なって浮かび上がる。
「な、なんだみゅ!?」
私が驚いて飛び上がると同時に
サロンの頑丈な扉と窓の前に、突如と
して厚さ数十センチはあろうかという
漆黒の魔導防壁が、ガシャーーーン!!!と凄まじい音を立てて降ってきた。
「くっ、扉が……完全に封鎖されただと!?」
アレク兄様が眼鏡の奥の目を鋭く光らせ、即座に扉へと駆け寄って手を
かざす。
だが、放出された解析魔法は、漆黒の防壁に触れた瞬間にバチバチと火花を散らして霧散してしまった。
「な、なんて強固な結界術だ……!
神話級の魔導壁だぞ、これは!」
「待て、それだけじゃないぞ! 上を見ろ!」
ライダ兄様が天井を指差す。
見上げれば、サロンの豪華な
シャンデリアの隙間から、まるで生き物のように蠢く無数の「防壁の草の鶴
(魔力で作られた絶対防御の壁)」
がニョキニョキと生え渡り、サロンの
空間そのものを内側からどんどん狭めるように侵食し始めていたのだ。
「ひゃぅぅぅあ!? また出口が消えた
みゅー! 壁が襲ってくるみゅー!!」
せっかくケーキを食べて泣き止んでいたみちゃーれが、白目を剥いて私の背中に飛び乗ってきた。重いみゅ!
「落ち着け、みんな! 一体何が起きたんだ!?」
ジント様が抜剣し、私をかばいながら周囲を警戒する。
すると、その騒ぎの真ん中で、大株主であるお父様が「あ……」と間の抜けた声を漏らし、冷や汗をだらだらと流しながら頬をひきつらせていた。
「お、お父様……? 何か知っている
のみゅ?」
私がジト目で問いかけると、お父様は震える指先で、みちゃーれが先ほど押したという「緊急停止ボタン」の方向を
指差した。
「い、いやね……萌……。あの赤いボタンには、私がヴィンテ・ラジの全財産と
最高峰の魔導師たちを動員して
作らせた、超絶過保護仕様の
『絶対防壁トラップ』が込められていたのを忘れていたよ……」
「ぜ、絶対防壁トラップみゅ!?」
「あぁ……。あのボタンが押されて船が急停止した後、一定時間内に
『大株主の生体認証(私の指紋と
魔力)』で解除コードを入力して再び船を動かさないと……
船が『テロリストに占拠された』と
魔導頭脳が誤認して、サロン内の人間を外敵から(物理的に)守るために
神話級の防壁が永久に展開し続ける
システムなんだ……」
「お父様のやりすぎ設定のせいだったみゅーーーーーっ!!!」
まさかのみちゃーれのポンコツ
やらかしが、お父様の
「やりすぎ防衛システム」の信管を秒速でぶち抜いていたのだ。
船が動き出した「その瞬間」に
トラップが発動するなんて、どんな鬼畜仕様の設計みゅ!?
「お義父様、永久に展開し続けるとは
どういうことです!? 解除方法は!?」
ジント様が焦ったように叫ぶが
お父様は青ざめた顔で首を横に振った。
「それが……絶対に萌とルミエラを傷つけないために、『一度起動したら内側からも外側からも、国家最高火力の魔法をぶち込んでも絶対に壊れない防壁』
として作らせてしまったから……
解除スイッチは、船の一番底にある
最深部の機関室にしかないんだ……」
「完全に閉じ込められたみゅーーー!?」
私が頭を抱えて叫んだその時、天井から伸びてきた防壁の草の鶴が、ついに
私たちの頭上へと迫ってきた。
「チッ、壊れないなら、壊れるまで叩き切るだけだ!!」
ライダ兄様が凄まじい闘気を放ち
木刀を大上段に構えて防壁へと
突撃する。
「待てライダ、無茶だ! 私の魔法で防壁の魔力循環を一時的に狂わせる、その隙を突け!」
アレク兄様も即座に無数の魔導書を展開し、サロン内は男たちの過保護な戦闘モードで大爆発寸前の騒ぎとなった。
「萌ぢゃん! ごめんなさいみゅ!
僕のせいでみんな大ピンチみゅー!」
みちゃーれが私の背中で涙をぽろぽろと流して平謝りしている。
そんな、男たちが叫び、精霊王が泣き叫ぶ大パニックのなか。
「あらあら。お父様の過保護が
また困った形で発動してしまいましたわね」
ヴィンテ・ラジのお母様――婦人が
防壁の草の鶴がすぐ近くまで迫っているというのに、全く動じることなく優雅に微笑んだ。
「本当ですわね。でも、あの方たちが
用意してくださったこのお部屋の
防壁は、確かにとっても頑丈で安全そうですわ」
ルミエラお母さんもクスクスと
笑いながら、婦人が淹れ直してくれた
ハーブティーを新しく受け取っている。
「男の人たちは、いつでも元気で頼もしいですわね。
せっかくですから、あの子たちが壁を
壊すか、お父様が機関室へ行くまでの間、私たちはもう一杯お茶を楽しみましょうか」
「ええ、喜んで。ルミエラさん、こちらの焼き菓子も美味しいですよ」
ドガシャーン!! バチバチバチ!! と、ジント様やお兄様たちが防壁と全力で戦っているすぐ横で、お二人の母親
(大人女子組)の周りだけ、信じられないほど優雅で穏やかなお茶会の空気が
流れ直していた。
「みゅ、みゅー……(お母様たち
メンタルが強すぎるみゅ……)」
私は完全にジト目になりながら
男たちの奮闘とお母様たちの優雅な
ティータイムを交互に見つめるの
だった。
ただの迷子では終わらなかった
お父様のやりすぎ防衛システム大暴走。
果たして私たちは、世界樹の森に着く前に、このサロンから無事に出ることができるのだろうか――!?
(第149話 終わり)
第149話をお読みいただき、ありがとうございました!
みちゃーれのポンコツ迷子、まさかお父様の隠された
「やりすぎ防衛システム」の起動スイッチだったなんて、ただの迷子じゃ終わりませんでしたね(笑)!
「一度起動したら国家最高火力でも壊れない壁」を愛する娘たちのために作っちゃうお父様の過保護っぷりが
完全に裏目に出ていて最高に笑えます。必死に壁と戦うジント様やアレク兄様、ライダ兄様が不憫で愛おしい
です。
そして何より、そんな大騒ぎの中で「あらあら、男の人は元気ですわね」と平然とお茶を飲み直す
ヴィンテ・ラジのお母様(婦人)とルミエラさんの
大人女子コンビの肝の座り方が最強すぎます(笑)。
萌ちゃんのジト目もキレキレでしたね。
次回、第150話では、この永久閉鎖シェルターと化したサロンから脱出するため、ついに萌ちゃん(あるいは涙目の精霊王みちゃーれ)がとんでもない方法で防壁を突破することに!?
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10月26日月曜日は投稿をおやすみします
10月27日火曜日から投稿致します




