第148話:僕についてくるみゅ! 伝説の飛空艇は大迷宮!? ナビを気取る精霊王、広すぎて無事に迷子になる
前回の第147話(番外編)では、女の子たちの甘々なお茶会と、それを盗み聞きしてパニックになる男たちの超過保護な大騒ぎをお届けしました!
今回の第148話からは再び本編へと戻ります!
大株主のお父様も合流し、展望サロンではヴィンテ・ラジのお母様(婦人)と、萌ちゃんの実のお母さんであるルミエラさんという、お二人の素敵なお母様に囲まれて、さらに優雅で甘いティータイムが続いていました。
しかし、そんな夢のような飛行を続けていた船が、突然ガガガと急停止!?
敵襲か、それとも不吉なトラブルか!? ジント様やお父様、お兄様たちが一斉に身構える緊迫した空気のなか、サロンの扉をぶち破って飛び込んできたのは……涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった精霊王みちゃーれでした!?
「僕についてくるみゅ!」とドヤ顔で飛び出していったはずの精霊王が、なぜか半泣きで萌ちゃんに泣きついてきた理由とは……!?
大株主の財力が生んだ規格外の飛空艇で、世界一可愛い精霊王のポンコツ大迷宮劇が幕を開けます!
先ほどまでの賑やかな大騒ぎが嘘の
ように、展望サロンには再び穏やかで
甘い時間が流れていた。
大株主であるお父様の呼びかけで
ジント様もアレク兄様もライダ兄様も
サロンへと合流し、みんなで円卓を囲んで絶品ケーキを味わう最高のティータイム。
「ふふ、やっぱり皆様と一緒に食べるおやつは格別ですわね」
大株主の奥様であるヴィンテ・ラジのお母様――婦人が、紅茶を優雅に口に運びながら微笑む。
その隣では、私の実のお母さんであるルミエラさんも、マッサージの手を止めて嬉しそうに微笑んでいた。
さらにその横で、私は婚約者である
ジント様に特製クリームケーキを
「あーん」してもらい、みゅふふーと
至福の声を漏らしていた。
――ズズズズン……ッ!!!
その時、夢のような飛行を続けていた超大型魔導飛空艇の巨体が、不自然に
大きく揺れた。
ガガガガ、と小刻みな振動が走った
かと思うと、窓の外に流れていた真っ白な雲海がピタリと動きを止める。
「な、何事だ……!? 船が止まった……!?」
私の前にすぐさま立って庇うように
体勢をとったジント様が、鋭い目を光らせた。
アレク兄様も眼鏡の奥の目を険しくさせ、ライダ兄様はいつでも木刀を引き抜けるように腰を落とす。
お父様に至っては、愛する婦人とルミエラさんを背中に隠しながら、いつでも
ヴィンテ・ラジの全戦力を動かせるほどの凄まじい覇気を放ち始めた。
「敵襲か!? それとも機関のトラブルか……!?」
緊迫した空気がサロン内に張り詰め
男たちが今にも飛び出そうとした、その時だった。
「も、萌ぢゃぁぁぁぁぁん!! 助ける
みゅーーーーーっ!!」
バァァァン!! とサロンの豪華な扉が勢いよく開き、何かがもの凄いスピードで飛び込んできた。
真っ白でふわふわの毛並みを涙と鼻水でぐしゃぐしゃに濡らした、小さな小さな精霊王。みちゃーれである。
「み、みちゃーれ!? どうしたのみゅ!?」
私がクッションから飛び降りると
みちゃめーれは私の短い前足に全力で
しがみつき、激しく号泣し始めた。
「うぇぇぇん! 怖かったみゅー! 出口がどこにもないみゅ!
右に行っても左に
行っても同じようなピカピカの廊下
ばっかりで、上を見たら謎の巨大プールがあって、下を見たら劇場があった
みゅ! この船は呪われた大迷宮みゅーーーっ!!」
「みゅー……(ただ船が広すぎただけだみゅね……)」
そう、世界樹の森までの案内役として「僕に任せるみゅ! 先に行って道を
調べておいてあげるみゅ!」とドヤ顔でサロンを飛び出していった精霊王は
ものの数分で無事に迷子になっていたのだ。
「ま、迷子になったのは分かったみゅ。
でも、どうして船が急に止まった
のみゅ?」
私の問いかけに、みちゃーれはビクッと身体を震わせ、気まずそうに視線を
泳がせた。
「そ、それは……早く萌ちゃんのところに戻りたくて、必死に走ってたら……
壁に、すっごく大きくて赤い、押し心地の良さそうなボタンを見つけたみゅ。
それを, えいって押したら、船がプスンって止まっちゃったみゅ……」
「緊急停止ボタンを押したみゅーーー!?」
みちゃーれのまさかの告白に、サロン内の全員がズコッとズッコケそうになった。
敵襲でも機関トラブルでもなく
ただ迷子になった精霊王がパニックに
なって非常ブレーキを踏んだだけだったのだ。
「は、はははは……敵襲でなくて何よりだったな。
しかし、我が公爵家の誇る最高峰の飛空艇のセキュリティをあっさりと突破して緊急停止させるとは、さすが精霊王と
言うべきか……」
ジント様が冷や汗を拭いながら
苦笑いを浮かべる。
「いやジント殿、感心している場合ではありません。
大株主であるお義父様が設計に関わったこの船は、あまりにも広大ですからね。
確かに初めて入った者が迷うのも無理はありませんが……
まさか精霊王ともあろうお方が
これほど見事なポンコツっぷりを披露してくださるとは」
アレク兄様が眼鏡をクイと上げ
ながら、呆れたようにため息をついた。
「おいおい、泣くなよ精霊王サマ
ほら、お詫びに美味いケーキでも食うか?」
ライダ兄様がニカッと笑い、自分の皿に残っていた特製ケーキを小さく
フォークですくって差し出す。
「みゅ……? ケーキ……? ぱくり……っ、おいしいみゅーーー!!」
さっきまでこの世の終わりのように
泣いていたみちゃーれは、一口ケーキを食べた瞬間、一瞬で目を輝かせてご機嫌になった。
「うふふ、本当に可愛い精霊王様です
こと。お茶ならまだたくさんありますわよ」
ヴィンテ・ラジのお母様である婦人が優しく微笑みながら、みちゃーれのために小さな器にハーブティーを注いであげる。
「まぁ、本当に小さくて愛らしい神獣様のようですのね」
ルミエラお母さんも、みちゃーれの
頭をそっと撫でて微笑んだ。
「婦人、ルミエラさん、ありがとう
みゅ!
……萌ちゃん、僕、やっぱりここから
一歩も動かないことにするみゅ。
萌ちゃんの隣が一番安全で、一番美味しいみゅ!」
すっかりおやつで懐いたみちゃーれは、私のクッションの横に陣取り
ふにゃりと幸せそうに溶けていた。
「みゅー(ナビはどうするのみゅ……)」
私はジト目を向けつつも、やっぱり
泣き虫で可愛いみちゃーれが愛おしくて、その頭を優しく撫でてあげるのだった。
船はジント様たちの手によってすぐに再始動し、再びゆっくりと大空を進み始める。
ドヤ顔ナビから一転、無事に迷子に
なっておやつで捕獲された精霊王を仲間に加え、私たちの賑やかな旅はまだまだ続いていく。
(第148話 終わり)
第148話をお読みいただき、ありがとうございました!
「僕に任せるみゅ!」とあれだけ自信満々だったみちゃーれが、一瞬で迷子になって泣きついてくる展開、可愛すぎてニヤニヤが止まりませんね(笑)。
大株主のお父様が用意した飛空艇が、プールやら劇場やらがあって広すぎるのも原因ですが、パニックになって「一番押し心地の良さそうな非常ブレーキ」を
えいっと押しちゃうみちゃーれが愛おしすぎます。
そして今回は、ヴィンテ・ラジのお母様(婦人)と
萌ちゃんの実のお母さんであるルミエラさんという
お二人の美しいお母様たちの優しい母性にも癒やされる回となりました。
最終的に、ライダ兄様におやつでホイホイ捕獲され
お二人の母親に優しくされて「やっぱり萌ちゃんの隣が一番安全で美味しいみゅ!」とナビを速攻で放棄する姿には、萌ちゃんじゃなくてもジト目になってしまいます(笑)。
ジント様やアレク兄様たちのツッコミもキレキレでしたね!
次回、第149話では、みちゃーれをお膝に載せたまま、飛空艇はいよいよ目的地の「世界樹の森」を覆う、誰も破れないとされる【古代の絶対結界】の前へと到着します!
果たしてみちゃーれはおやつパワーで精霊王としての名誉を挽回できるのか!?
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