第144話:世界樹の場所なら知ってるみゅ? 精霊王みちゃーれ、ドヤ顔で道案内を買って出る
前回の第143話では、公爵家の容赦ないガサ入れにより
萌ちゃんを元のエルフの姿に戻す正しい手順が記された古文書を発見!
しかし、必要な素材は伝説の激レアアイテム
『世界樹の涙』だと判明しました。
今回の第144話では、エルフの里を完全に見捨てて公爵家へと帰還する馬車のなか、お父様たちが世界樹の場所が分からず頭を悩ませます。
そこへトコトコとやってきたみちゃーれ(精霊王)が
なんと古文書を前足で「ゲシゲシ!」と踏みつけ
とんでもない超ドヤ顔を浮かべ始めます。
それに気づいたお父様の、頼もしすぎる決断と言葉とは……!?
みちゃーれの有能っぷりと、お父様の格好良さが大爆発する、新章突入への大注目回です!
力を完全に失い、ただの抜け殻と
なったエルフたちが這いつくばる里を
私たちは一切振り返ることなく後
にした。
今、私たちはヴィンテ・ラジ公爵家が誇る、最高級の魔導馬車のなかにいる。
ふかふかの高級絨毯が敷き詰められた広い車内には、私を優しく抱きしめる
ルミエラお母様と、我が家のお母様が
並んで座っていた。
お母様は、緊張でカチコチになっているルミエラお母様の手を優しく握り
温かい紅茶を勧めている。
「ルミエラさん、もう何も心配いり
ませんわ。
これからは我が家で、萌ちゃんと一緒に美味しいものをたくさん食べて
ゆっくり身体を休めてくださいね」
「は、はい……! あ、ありがとうございます、公爵夫人様……っ」
ルミエラお母様は恐縮しつつも、公爵家の圧倒的な優しさに瞳を潤ませていた。
その対面の席では、お父様とアレク兄様、ライダ兄様が、先ほど長老の隠し部屋からガサ入れしてきた古文書と
大陸の全図を広げて真剣な顔で話し合っている。
「……やはり、この古文書に記され
ている『幻の世界樹の森』の位置は
現在の一般的な地図には載っていないな。
数千年の間に、精霊の隠蔽結界によって人間の目から完全に隠されてしまったのだろう」
お父様が腕を組み、低い声で唸る。
「ええ。全知の魔導書も、大体の方向は示してくれますが、ピンポイントな
座標までは霧がかかったように読み取れません。
前人未到と言われるだけあって、物理的に捜索するとなれば、我が家の情報網を使っても数ヶ月、下手をすれば数年はかかるかもしれませんね」
アレク兄様が眼鏡を押し上げながら
困ったように息を吐き出した。
「おいおい、数年もかかったら、萌が
その間ずっとうさぎのままだろ?
それは耐えられねぇ!
一刻も早くもふもふから可愛いエルフの萌に戻して、お兄様って呼ばれたいんだよ俺は!」
ライダ兄様が頭を抱えてジタバタしている。
大人たちがそんな風に、伝説の激レア素材『世界樹の涙』をどうやって見つけるかで頭を悩ませていた
その時だった。
私の横で、高級なクッションの上に
丸まっていた白くてふわふわな聖獣――その正体である最高位の存在
精霊王みちゃーれ(ミカエル)が
おもむろにトコトコと立ち上がった。
みちゃーれは机の上にピョンと飛び
乗ると、お父様たちが真剣に見つめていた古文書と地図の真上に、堂々と立ちはだかった。
「……ん? どうしたんだ、みちゃーれ」
ライダ兄様が不思議そうに顔を覗き込む。
すると、みちゃーれはお父様たちが
広げていた古文書を、短い後ろ足で
ガシッと踏みつけ、短い前足で
「ゲシゲシ! ゲシゲシ!」と激しく
小突き始めたのだ。
「きゅ、みちゃーれ? それ、お父様
たちが大事にお話ししてる本みゅ?」
私がお母様の腕の中から声をかけると、みちゃーれはゲシゲシするのを
ピタッと止めた。
そして、まるで
「こんな古臭い本に頼るなんて、みんな大袈裟だみゅ」とでも言いたげな、完璧なまでの【超ドヤ顔】を浮かべた。
みちゃーれは誇らしげにふんぞり返り
ふさふさの尻尾をピコピコと
振りながら、お父様に向けて「フッ」と不敵な視線を送った。
お父様は眉をひそめ、本を踏みつける白い小さな聖獣をじっと見つめた。
「……みちゃーれ。お前、その本が役に立たないと言いたいのか?
いや、そうではないな。
その自信に満ちた顔……まさかお前
世界樹の森がどこにあるのかを知っているのか?」
お父様がそう問いかけた瞬間
みちゃーれは待ってましたとばかりに
「きゅん!」と短く鳴き、胸を張って
小さく頷いてみせた。
「マジかよ!?」
ライダ兄様が文字通り椅子から飛び上がった。
「そういえば、みちゃーれの正体は
最高位 of 最高位の精霊王ミカエル様……。
世界樹の森といえば、精霊たちの聖域ですわ。
精霊たちの王であるみちゃーれなら
隠蔽結界の場所も、世界樹の正確な座標も、知っていて当然ですわね!」
お母様がポンと手を叩き、嬉しそうに声を弾ませる。
お父様は驚きに目を見張った後
フッと口元を和らげ、みちゃーれの
頭を大きな手で力強く、かつ優しく撫でた。
「なるほど、盲点だったな。
我が家にこれ以上ない最強のナビゲーターがいたわけか。
よし、ならば世界樹の森への道案内は
すべてお前に一任する。
萌を元の姿に戻すため、力を貸してくれるか、みちゃーれ」
お父様に直々に頼まれ、みちゃーれはさらに満足そうに目を細め、
「にゃあにゃあっ!」と誇らしげに鳴いた。
まるで「僕にすべて任せるにゃ!」と
胸を叩くかのような、実に頼もしい態度である。
「みゅふふ、みちゃーれ、すごーい
みゅ!」
私がお母様の腕の中からパチパチと
短い前足を叩いて褒めると、みちゃーれは嬉しそうに机から飛び降りて私の元へと戻ってきて、再び私の顔を
「ペロペロ、ペロペロ」と激しく舐め回し始めた。
「みゃはは! くすぐったいみゅ~!」
車内に萌ちゃんの愛らしい笑い声が
響き渡り、それを見た大人たちも
先ほどまでの深刻な空気をすっかり忘れてドッと笑い声を上げた。
「ははは! よし、方針は決まったな! 一度公爵邸に戻り、みちゃーれの案内に従っていつでも動けるよう、我が家の戦力と遠征の準備を完璧に整えるぞ!」
お父様の力強い言葉に、兄様たちも
ジント様も
「おうよ!」「承知いたしました」と
深く頷いた。
前人未到の秘境という最大の難所は
みちゃーれのドヤ顔と、お父様の
頼もしい決断であっさりと解決して
しまった。
一度家に帰り、しっかりと遠征の準備を整えたら、私たちは精霊王の案内で世界樹の森へと向かうことになる。
公爵家への帰還、そして新たな冒険に向けて、馬車はガタゴトと心地よい音を立てて走り続けるのだった。
(第144話 終わり)
第144話をお読みいただき、ありがとうございました!
大人たちが真面目に悩んでいる横で、本を
「ゲシゲシ!」と足蹴にするみちゃーれ、相変わらず
生意気可愛すぎて最高でしたね!
そんなみちゃーれの意図を瞬時に見抜き
「世界樹の森がどこにあるのかを知っているのか?」
と真っ直ぐに問いかけるお父様、さすがは公爵家の主
です!
確信を得たあとの「道案内はすべてお前に一任する。
力を貸してくれるか」というセリフも、聖獣(精霊王)を対等な相棒として信頼しているのが伝わってきて
めちゃくちゃ痺れました。
ラストの「我が家の戦力と遠征の準備を完璧に整えるぞ!」というお父様の宣言にも、これからの大冒険へのワクワクが止まりません!
萌ちゃんに褒められて嬉しくなり、また「ペロペロ、ペロペロ」と舐め回して甘えるみちゃーれの可愛さとの
ギャップも最高でしたね。
次回、公爵邸に到着し、ルミエラお母様のお披露目と、みちゃーれ案内による「世界樹の涙」奪還作戦の具体的な準備が始まります!
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