第143話:エルフに戻る方法を発見!……って、必要な素材がちょっと面倒そうです?
前回の第142話では、すべてを失った里を置き去りにしようとした瞬間、全知の魔導書が激しく発光!
萌ちゃんを元の姿に戻す方法がこの里にあることを告げられました。
今回の第143話では、公爵家の男たちが長老の庵を容赦なくガサ入れし、アレク兄様が隠し部屋の結界を秒
で粉砕!
ついにジント様の手によって、萌ちゃんを元の可愛いエルフの姿に戻すための古文書が発見されます。
ジント様が威厳たっぷりにその同調術式を読み上げる
なか、判明した必要な素材は、なんと伝説の激レアアイテム『世界樹の涙』で……!?
一方、馬車から駆けつけた精霊王みちゃーれが、大好きな萌ちゃんをペロペロと舐めて癒やす、最高に尊いやりとりもお見逃しなく!
「おい! そこを動くな、不審な動きをしたら容赦なく叩き斬るぞ!」
ライダ兄様の怒号が、長老の庵に響き渡る。
お母様のツルピカ魔法によって精霊の力を完全に奪われ、ただの非力な老人に成り下がった長老は、もはや床にへたり込んでガタガタと震えることしかできなかった。
「ひぃっ、あ、私の、私の集めた歴史
あるコレクションが……っ!」
「うるせぇ、萌を蔑んだてめぇの私物なんざ知るかよ!」
ライダ兄様はフンと鼻を鳴らし
長老の庵の壁を大剣の柄で容赦なく
ぶち破った。
すると、隠されていた壁の裏から
怪しげな魔法の術式が刻まれた隠し扉が姿を現す。
「ふむ、さすがは往年の長老。
それなりの隠蔽結界が施されていますね。
……ですが、精霊の加護を失った現在のあなたの魔力では、この程度の結界など紙屑も同然です」
アレク兄様が冷ややかに言い放ち
眼鏡の奥の瞳を妖しく光らせる。
彼が指先からほんの少しの魔力を放っただけで、隠し扉にかけられていた
最高級の結界は、まるでガラスのようにパリンと小気味いい音を立てて秒で粉砕された。
「そ、そんな……長年かけて構築した我が結界が、一瞬で……っ!」
長老が絶望に顔を歪めて這いつくばる横で、ジント様が躊躇なく隠し部屋へ
と押し入る。
すると、アレク兄様の鞄から飛び出していた全知の魔導書が、再び
「ピカッ!」と一際激しい光を放ち
棚の奥深くに厳重に保管されていた一冊の古びた古文書を指し示した。
「これですね。全知の魔導書がこれほど強く反応するとは……。父上、どうぞ」
アレク兄様が慎重にその古文書を手に取り、家長であるジント様へ
と手渡した。
ジント様は厳かな手つきで古文書を
受け取り、パラパラとページをめくっていく。
庵の外でルミエラさんに抱っこされていた萌ちゃんは、大人たちの物々しい
雰囲気に気づいたのか、むにゃむにゃと小さな目をこすりながら起き上がった。
「きゅ……? みゅー?」
(みんな、なにしてるのみゅ……?
なんだか、お部屋がボコボコになってるみゅ……?)
萌ちゃんが不思議そうに首を傾げていると、馬車の方からトコトコと小さな
足音が近づいてきた。
公爵家がエルフの里を文字通り蹂躙している間、馬車で大人しくお留守番をしていたはずの、白くてふわふわな
聖獣――その正体である最高位の存在
精霊王みちゃーれ(ミカエル)である。
みちゃーれは、精霊の力を失って抜け殻のようになったエルフたちには一瞥もくれず、真っ直ぐに萌ちゃんの元へと
歩み寄った。
「きゅ、みちゃーれ!」
萌ちゃんが嬉しそうに短い前足を
伸ばすと、みちゃーれはルミエラさんの腕の中にいる萌ちゃんの顔や身体を
愛おしそうに「ペロペロ、ペロペロ」
と優しく舐め始めた。
「みゅふふ……あったかくて、くすぐったいみゅ~…… 」
知恵の限界を迎えて少し疲れていた
萌ちゃんは、精霊王直々の極上の癒やし(ペロペロ)を受け、すぐに幸せそうな笑顔を取り戻して、みちゃーれの
モフモフな身体にすりすりと
甘えだした。
ルミエラさんも、我が子を慈しんでくれる聖獣の姿を、涙を浮かべながら優しい眼差しで見つめている。
そんな尊すぎる癒やしの空間の横で
古文書を見つめていたジント様が
皆に聞こえるように朗々とその内容を読み上げ始めた。
『――昏き器に眠る、黎明の光を呼び覚ませ。体内に宿る本来の魔力を呼び起こし、不安定な幼子の器を正しく
同調せしめる。これぞ、大いなる
エルフの姿を呼び戻す、正当なる同調の術式なり』
ジント様の地響きのような、重厚で威厳のある声が庵に響き渡る。
読み終えたジント様は、古文書から視線を上げ、息子たちへと頷いてみせた。
「……やはり、これは呪いの類では
ない。
萌の体内で眠っている本来のエルフの
魔力と、幼子ゆえの不安定な器を正しく調和させ、急激な成長を促すための
固有の術式だ。
この手順通りに魔力を流し込めば
萌は安全に元の可愛いエルフの姿へと
戻ることができる。……ただし」
「ただし、何だよ、ジント?」
ライダ兄様が大剣を肩に担ぎ直しながら尋ねると、ジント様は眉間を少し険しくし、古文書の最後に記された一文を
再び声に出して読み上げた。
『……術を発動するために、どうしても不可欠な触媒あり。
それこそは、前人未到の最深部に眠る
世界樹の涙なり』
「世界樹の涙、ですか……!」
アレク兄様が目を見張る。ライダ兄様も「おいおい、マジかよ」と苦笑いを
浮かべた。
「世界樹の涙って、確か遥か彼方の秘境、前人未到と言われる『幻の世界樹の森』の最深部にしか存在しないって
いう、あの伝説の激レア素材だろ?
いくら我が家の権力や財力をもってしても、市場に出回ることすら皆無の
シロモノだぜ」
「その通りだ。物理的にそこへ赴き
世界樹から直接その雫を採取してくる
しか方法はない」
ジント様は古文書をパタンと閉じると、庵の外にいる萌ちゃんへと視線を
向けた。
萌ちゃんを元の高貴で愛らしい姿に
戻すためには、どうしてもその秘境へと、新たな遠征に向かう必要がありそうだ。
財力でのゴリ押しが効かない、物理的に非常に面倒な目的地。
しかし――次の瞬間、お母様が
「あら」と上品に微笑み、ジント様は
フッと不敵な笑みを漏らした。
「何を悩む必要がある。萌のためだ。
世界樹の森だろうがどこだろうが
我が公爵家の総力を挙げて突き進み
その『涙』とやらを根こそぎ毟り取ってくればいいだけの話だろう?」
ジント様の圧倒的な親馬鹿ゴリ押し
宣言に、ライダ兄様が
「違いねぇ! よっしゃ、腕が鳴るぜ!」と豪快に笑う。
「きゅ? せかいじゅ……? おいしいのみゅ?」
みちゃーれにペロペロされてご機嫌な萌ちゃんは、大好きな家族が自分のために、とんでもない壮大な旅路を決意したことなど露知らず、のんきに首を傾げるのだった。
(第143話 終わり)
第143話をお読みいただき、ありがとうございました!
ジント様が古文書の術式を実際に朗々と読み上げる
シーン、重厚感があってめちゃくちゃ格好良かったですね!
「黎明の光を呼び覚ませ」というファンタジー全開の
文章を、ジント様のあの渋いイケおじボイスで脳内再生すると鳥肌が立ちます。
呪いではなく、萌ちゃん本来の力を引き出す手順ということで本当に良かったです!
力を失って自分のコレクションをひっくり返される長老の無様な姿は、最高の「セカンドざまぁ」でした
(笑)。
そして、そんなシリアスで格好いい朗読のすぐ横で
トコトコやってきて萌ちゃんを「ペロペロ、ペロペロ」と舐めて癒やし始めるみちゃーれの可愛さたるや……!
萌ちゃんも「くすぐったいみゅ~」って甘えていて
このシリアスと癒やしのギャップがたまりません。
判明した解除方法に必要なのは『世界樹の涙』!
前人未到の秘境にある激レア素材ですが
「根こそぎ毟り取ってくればいい」と即決するジント様の圧倒的な親馬鹿ゴリ押しっぷりが最高にヴィンテ・ラジ公爵家らしくてシビれました。
次回、本当のお母さんルミエラさんも一緒に、一度公爵家へと帰還し、新たな「世界樹の涙」遠征への準備が始まります!
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明日10月19日は投稿をおやすみ致します!
10月20日火曜日また投稿開始致します!




