第13話国王の謁見へ
いつも『社畜OLの葛木萌、猫を助けて異世界へ!』を応援いただき、ありがとうございます!第13話はいよいよ、物語の最初の大きな山場である「国王との謁見」です。前世のスキルを活かした萌ちゃんの可愛い挨拶と、不穏な空気を漂わせる国王……。そしてピンチに陥るヴィンテ・ラジ一族の運命をお見逃しなく!
国王陛下との謁見に向かうため、
私たちは大きな馬車に乗り込み、お城へと走り出した。
パカパカと小気味いい馬の蹄の音が響く中、窓の外に広がる景色に、私は思わず目を輝かせる。
「わぁ! まちぃ広くて人がたくちゃんいるよ! おみちぇいっぱいあって、時間があったら回って見ちゃち(見たい)!」
「ふふふ、萌ちゃん、そんなに身を乗り出したら馬車から落ちてしまうわよ。この街にはね、何百万というたくさんの人達が暮らしているの」
お母様は優しく私を引き留めながら、
少し真面目な顔をして外を眺めた。
「中には、私たちのように裕福ではない人たちもいるけれど……いつかそれを、私たちが解決していきたいと
思っていますわ」
お母様の優しい決意に私がコクリと
頷いていると、隣からライダが身を乗り出してきた。
「萌! 街に着いたらお菓子屋に行こうぜ! 色んなお菓子があるから、全種類買ってやるよ!」
「もちろんライダのお金から出してよね。僕は出さないから、温かく見守っていることにするよ」
アレク兄様が眼鏡をクイッと上げて冷静に突っ込む。
「アレク兄上の意地悪! ちょっとくらい出してくれたっていいじゃん! 萌が美味しそうにお菓子を食べる姿、
見たいだろ!?」
「それは見たいけれど、それとこれとは話が別さ」
車内で始まったいつもの兄弟喧嘩に、
ついに助手席のお父様から一喝が
入った。
「こら、静かにしなさい! お菓子は
萌ちゃんの用事が無事に終わってから
買いなさい、二人とも。……さあ、
着いたぞ」
馬車が止まり、私は「よっこらしょ」と自分で降りようとしたけれど、すかさずお母様に愛おしそうにひょいっと
抱っこされた。
馬車を一歩降りると、そこには見上げるほど巨大なお城がそびえ立っていた。
うちの屋敷も相当広かったけれど、
さすがは一国を治める王宮だ。
スケールが違いすぎて、一人で歩いたら確実に迷子になる自信がある。
「国王陛下が王の間でお待ちです。
どうぞ、こちらへ……」重厚な鎧に身を包んだ兵士が、緊張した面持ちで大きな扉を開けて待っていた。お父様もお母様も、お兄ちゃんたちも、ゴクリと小さく唾を飲む。家族全員の緊張が肌に伝わってきて、私も腕の中のミチャーレ(卵)を少し強く抱きしめた。
一歩、また一歩と赤絨毯を踏みしめて、私たちはついに国王陛下の待つ王の間へと足を運んだ。
広い部屋の奥、一段高い玉座に座る男女――国王陛下と王妃様が、じっとこちらを見下ろしている。
「国王陛下並びに王妃様、ごきげんよう麗しゅう。この度は王宮への謁見が大変遅くなってしまい、誠に申し訳ございません。萌がまだ幼く、体調を崩しがちであったため、不敬ながら先延ばしにさせて頂きました」
いつもは私にデレデレで
「萌ちゃん〜!」と頬ずりしてくる
お父様が、聞いたこともないような厳格で立派な貴族の口調で話し出す。
そのギャップの凄さに、私はなんだか落ち着かない気持ちになってしまった。
「さあ、萌ちゃん。国王陛下並びに王妃殿下にご挨拶してね」
お母様に促され、私はお父様の横に
トコトコと並び、三歳児なりの精一杯のカーテシー(おじぎ)を披露した。
「王妃ちゃま、こうこうはいかとゃま
(国王陛下様)、ごきげんうるわちゅうでござぃす。わたちのために時間を取らせて頂き、ありがとうごちゃぃす」
ふふん、噛みまくりなのはこの三歳児の頼りない滑舌のせいだ。中身は前世で理不尽なお偉いさん相手に何度も頭を
下げ、完璧な接待ビジネス敬語を叩き込まれてきた元アラサーOL。これくらいの挨拶、緊張もせずに楽勝の極みである。
しかし、玉座の上の国王は、私の完璧な挨拶を冷淡に受け流した。
「うむ、挨拶はもう良かろう。さて、本題に入ろうか……」
国王の鋭い眼光が、私たちを射抜く。
「ヴィンテ・ラジの一族は、エルフの萌を拾って屋敷に迎え入れたそうだな。
なぜ、すぐ王国に報告しなかった?」
「それは……萌様もお身体が弱っていたため、報告は元気になってからでも遅くないと判断いたしました」
お父様が必死に弁明するが、国王の追及は止まらない。
「それは言い訳ではないだろうな? エルフはこの国でも大変貴重であり、しかも凄まじい魔力もあるそうじゃないか」
その言葉に、ついにライダが我慢できずに一歩前に踏み出した。
「ですが、萌には萌自身の人生があります! エルフだからって、国の都合で国家の道具として使うのはおかしいです!」「そうだ! 萌には萌自身の人生があって、自由に生きるのが一番の幸せじゃないんですか!」
ライダはお城の兵士たちに囲まれているのも構わず、声を荒らげて必死に私のことを守ってくれている。
続けて、アレク兄様もいつになく熱い口調で言葉を重ねた。
「そうですよ! 萌ちゃんは可愛くて、少しお転婆なところはあるけれど、僕たち家族にとってはかけがえのない大切な存在なんです」みんなが、私のために……。前世のアラサーOL時代、誰からもこんな風に全力で守られたことなんてなかった。
胸の奥から温かいものが溢れてきて、
私はどうしても涙腺が緩くなって
しまう。
「ええーい、うるさい! エルフはこの国にとっては国宝なのだ! しかもこれほどの魔力を使えるとなると、我が国の強力な戦略になってもらう! これは命令だ、萌を国家に迎え入れる!」
王の非情な一喝が響き渡る。私の運命は、国家によって勝手に利用されてしまうの……?でも、そんなの絶対に嫌だ! せっかくこの優しい家族と巡り会えて、みんなと仲良くなれたのに。
離れ離れになるなんて絶対に嫌だし、
私をたくさん甘やかしてくれるのも、
この大好きなみんなのおかげなんだから!私がギュッと拳を握りしめ、三歳児の体を張って全力で反抗しようとした――まさに、その時だった。
一年半の間、ずっと静かだった私の腕の中の卵が、突如として眩い桜色とゴールドの光を激しく放ち始めたのだ。
急に光り出した卵に、王の間の誰もが目を見開く。
さあ、この後は一体どうなってしまう
のか。卵の光の正体は、
あるいはヴィンテ・ラジ一族の運命は――?次回、どうぞお楽しみに!
第13話を最後までお読みいただき、ありがとうございました!萌ちゃんを国に渡すまいと、王命を前にしても一歩も引かないお兄ちゃんたちの姿に胸が熱くなります……! しかし国王の命令は絶対。絶体絶命のその時、1年半眠り続けたあの卵がついに動き出しました!果たして卵から何が生まれるのか!?「家族みんなで乗り切ってほしい!」「続きが早く読みたい!」と思ってくださったら、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からポイント評価や、ブックマーク登録で萌ちゃんを応援していただけると、とても執筆の励みになります!




