第136話:笑顔の消えた衛兵と、震えが止まらないエルフの森
いつもお読みいただきありがとうございます!
前回の第135話では、案内役のエルフ・アルヴィスから
萌ちゃんがかつてこの里を追い出されていたという衝撃の事実が明かされました。
今回は、そのエルフの非道な行いの詳細が、アルヴィス自身の口から平然と語られます。
「あの時はまだ二歳だった」「一人で生きていけないのに危ない森へ追いやった」
そんなエルフのあまりにも残虐で傲慢な言葉を聞き、ヴィンテ・ラジ公爵家の一同が本気
でキレました!
いつもはお肌ツルツルで優しいお母様が、にっこり微笑みながら絶対的な恐怖でエルフを分からせる、最高にスカッとする制裁回です!
世界の調和を保つ高貴な種族。
人間に勝る魔力を持ち、大自然の精霊に愛された美しき長寿の民。
そんな傲慢なエルフの誇りと選民思想が詰まった冷酷な言葉が、静かな森に響き渡っていた。
目の前にいる白い毛玉――うさぎ姿の萌ちゃんを見下ろし、この森の警備兵であるアルヴィスは、どこまでも穏やかで優しい声のまま、恐ろしい過去を平然と口にした。
「そのものは、かつてこのエルフの里で生まれた。だが、あまりにも魔力の出来損ないであったため、我が里の血を汚さぬよう、私たちがこの手で外へと追い出したのだ。
……確か、あの時はまだ二歳だったな。
出来損ないなら一人で生きていけないというのに、わざわざ魔物の蠢く危ない森へと追いやったのだよ。それが我が里の鉄の掟だからね」
アルヴィスはふんわりとした微笑みを顔に貼り付けたまま、人間の
公爵たちに向けて
「だからその獣を連れて今すぐお帰り」と淡々と言い放つ。
ピキリッと周囲の空間そのものが
凍りついた。
まだ二歳という、ほんの幼子。
一人では生きていけない赤ん坊同然の
子供を、わざわざ危険な森の中に放り捨てた。
それは居なくなれと言っているのと
何が違うというのか。
エルフの衛兵の口から飛び出した
あまりにも容赦のない残虐な事実。
「てめぇ……! 今なんて言った……!?」
ライダ兄様が激昂し、激しい金属音を立てて腰の剣の柄を握りしめた。
その全身から、怒りのオーラが爆発するように立ち上る。
お父様の目にも、先ほどまでの交渉人のそれとは比べ物にならないほどの
昏い怒りの烈火が宿った。
ヴィンテ・ラジ公爵家の大切な愛娘を
侮辱されただけでなく、こんなにも小さな我が子に、かつてそんな非道な仕打ちを強いたエルフという種族への
底知れない怒りだ。
「私たちの前で、我が妹を侮辱し、その罪を誇った意味を理解していますか?
エルフの衛兵よ」
アレク兄様のメガネの奥の瞳は
まるで絶対零度の氷のように冷たく
細まり、その周囲の空気が重圧で歪み始める。
ジント様にいたっては、言葉すら
発しない。
しかし、彼の周囲の空間は、今にも暴走しそうな魔力の高まりによってビリビリとひび割れんばかりに震えていた。
自分たちの大切な萌ちゃんを
『出来損ない』と呼び、二歳で捨てた
という告白は、ヴィンテ・ラジ公爵家の男たちの逆鱗を完全に踏みちぎった。
今この場で、エルフの森ごとすべてを消し去ってもおかしくないほどの殺気が渦巻く。
男たちが武器に手をかけ、魔法を展開しようとしたその時。
それまで沈黙を守っていたお母様が、ゆっくりと前に出た。
いつも通りの、優雅で、上品で
慈愛に満ちた――にっこりとした完璧な微笑みをその美しい顔に浮かべて。
しかし、お母様がアルヴィスの方へと一歩近づくたびに、周囲の空気が目に
見えて歪んでいった。
朝からツルツルピカピカだったお母様の美肌から放たれる輝きは、今や神聖な光のオーラとなり、大気をパキパキと爆ぜさせている。
「……っ!?」
アルヴィスの顔から、それまで張り付いていた余裕の笑みがスッと消え
失せた。
お母様がただにっこりと微笑みながら歩いてくるだけなのに。
まるで、世界の理そのものが目の前に迫ってくるかのような、絶対的な死の
恐怖がアルヴィスの全身を支配した。
エルフの鋭い魔力感知能力が
目の前の女性が
「決して怒らせてはいけない規格外の
化け物」であることを告げていた。
カタカタ、カタカタと、周囲の巨木
たちが恐怖に震えるように激しく揺れ始める。
大自然の精霊たちが、お母様の怒りに怯えて一斉に平伏し、森全体がガタガタと震え出しているのだ。
アルヴィスはあまりの圧迫感に息が
できず、冷や汗を滝のように
流しながら、一歩、また一歩と無意識に後ずさりした。
その指先は恐怖で激しく震え、背負った弓に触れることすらできない。
お母様はアルヴィスの目の前まで来ると、首を少しだけ傾げ、どこまでも
優しく、鈴を転がすような美しい声で
こう言った。
「出来損ないだから捨てた……。
ふふ、それは、高貴なエルフ様がやることなんですの?」
「あ、う……」
アルヴィスの喉から、情けない掠れた声が漏れる。お母様の瞳の奥にある
底知れない絶対的な闇に射抜かれ
蛇に睨まれた蛙のように身体が硬直して動かない。
お母様はにっこりとした笑顔を崩さないまま、さらに言葉を重ねる。
その声は静かだが、森の地鳴りのようにアルヴィスの脳内に直接響き渡った。
「お答えになって?
それは、エルフの長も含めて、里全体で決めて歩んできたこと?
それとも……今そこにいる、あなた
個人が勝手に決めたことですの?」
「………そ、れは…うわっ」
ついにアルヴィスは
その場にみっともなく腰を抜かした。
エルフの傲慢なプライドは完全に粉砕され、ただガタガタと震えながら
涙目で頭上のお母様を見上げて命乞いをする。
もし「里全体の総意だ」と答えれば
この無敵のお母様の手によって
エルフの隠れ里は今日この瞬間に地図から消滅するだろう。
お父様やジント様、お兄様たちも
いつでもお母様の合図一つで森ごと
すべてを消し去る覚悟で、冷徹な視線をアルヴィスに突き刺している。
凄まじい魔力の嵐と、大人たちの
恐ろしい殺気が渦巻く、文字通りの
暴風域。
そんな中、大人たちの背後にぽつんと残された白い毛玉はというと。
「みゅ〜う? おかあしゃま、お顔がピカピカできれいでしゅ〜」
萌ちゃん(うさぎ姿)は、怒りの魔力で神々しく光り輝くお母様の背中を
見つめ、長いお耳をぱたぱたとさせて
うっとりしていた。
自分を捨てたエルフへの恨みも
今起きている恐ろしい修羅場の空気も
ピュアな萌ちゃんには一切届いて
いない。
ただただ、大好きなお母様が今日も美しくて素敵だな、とのんきに座り込んで
眺めているのだ。
そんな萌ちゃんの無邪気な鳴き声が
響いた瞬間、お母様の背後で今にも
魔法を放ちそうだったジント様やお父様たちの殺気が、ほんの少しだけ
和らいだ。
萌ちゃんの天然な可愛さは、公爵家の
男たちにとって唯一の最強のストッパーだった。
お母様は腰を抜かして震える
アルヴィスを冷たい目で見下ろしたまま、ふっと息を吐く。
「さあ、案内していただけるのかしら。それとも――ここで皆様まとめて
わたくしの美肌のサビにして差し上げましょうか?」
笑顔の消え去ったアルヴィスは
もはやエルフの威厳など塵一つ残っておらず、ただただ何度も激しく首を縦に
振るしかなかった。
ガタガタと震えが止まらないエルフの森の中、ヴィンテ・ラジ公爵家の
一同は、恐怖で完全に支配した衛兵を
先頭に立てて、いよいよエルフの里の
深部へと進むのだった。
(第136話 終わり)
第136話をお読みいただき、ありがとうございました!
エルフの兵士・アルヴィス、本当にどこまでも胸糞悪いエルフの傲慢さ全開でしたね……!
まだほんの二歳で、一人では生きていけない赤ん坊同然の萌ちゃんを、わざわざ魔物の蠢く危険な森へ置き去りにした過去を笑顔で誇るなんて、あまりの非道さに読んでいて拳が震えました。
だからこそ、その後の我が家のお母様の
「にっこり分からせ」が最高に格好良くてシビれ
ました!
にっこり微笑んでいるからこそ、放たれる覇気と美肌の輝き(魔力)の恐怖が引き立ち、さっきまで勝ち誇っていたアルヴィスがみっともなく腰を抜かして命乞いをする姿には、最高にスカッとさせられましたね。
森全体がガタガタ震えている描写も、ヴィンテ・ラジ公爵家の格の違いを表していて最高です。
その横で、相変わらず「おかあしゃま、お顔ピカピカできれい〜」とのんきにうっとり眺めている萌ちゃんが
最高の癒やしであり、大人たちの唯一のストッパーでした(笑)。
アルヴィスを完全に恐怖で支配し、いよいよ次はエルフの里の深部、そして長老との対面になりそうです。
里の連中全員にお母様たちがどんなお仕置きを下す
のか、今から楽しみで仕方がありません!
この先の展開でエルフたちにどんな因果応報が待っているのか気になる!と思ってくださったら
ぜひブックマークや評価(☆☆☆☆☆)でお母様と萌ちゃんを応援していただけると励みになります!




