第126話:世界で一番甘い時間! 粉まみれの大人たちと小さなご褒美
いつも温かい応援をありがとうございます!
前回は、みんなの愛が詰まった特製フルーツタルトが完成し、前世の懐かしい味に萌ちゃんが嬉し涙を流す
感動の回でした。
おかげさまで、ブックマークが【60人】を突破いたしました! 想像以上にたくさんの方に見守っていただけて
本当に、本当に励みになっています。皆様の応援が執筆の原動力です!
今回は、苦労して作ったタルトを、キッチンに椅子を並べてフルメンバーで賑やかに試食します。
やんちゃなライダ兄様、穏やかなアレク兄様に加え
お上品なお母様と、「にゃあにゃあ」と大喜びする
みちゃーれも参戦!
粉まみれの大人たちに囲まれてお腹ぽんぽこになる萌ちゃんの幸せな時間をお楽しみください。
しかし、お茶会の最中、萌ちゃんの手元にある
『あの本』が突然怪しい光を放ち始めて……!?
ほっこりからの衝撃の急展開を、どうぞ最後までお見逃しなく!
「さあ、みんなで椅子を並べて、この
特製タルトを味わおうじゃないか」
お父様の呼びかけで、いつもは厳格な公爵邸のキッチンに、即席の椅子と
小さな丸テーブルが並べられた。
身分や立場はこの際、一切関係ない。
純白のエプロンを小麦粉で真っ白に染めたお父様、元気いっぱいのライダ兄様
いつも物静かなアレク兄様、お上品な
お母様、にゃあにゃあと騒がしい
みちゃーれ、エルハルト、料理長、
そして私の特等席であるジント様の腕の中。全員が机を囲むようにして椅子に
腰掛けた。
中央に置かれたのは、切り分けられた美しいフルーツタルトだ。
「萌、改めて成功を祝して、みんなで一緒に食べよう」
ジント様が優しく微笑み、フォークで小さく一口サイズに切り分けたタルトを私の口元へ運んでくれる。
私は「ぷう♪」と嬉しそうに鳴いて
再びそのサクサクとろとろの甘みを堪能した。
何度食べても、みんなの優しさが染み込んでいて涙が出そうになるほど美味しい。
「どれ……私も萌がこれほど感動した
未知のお菓子とやらを、一口いただこう」
お父様が大きな手でフォークを握り
タルトを口へと運んだ。
サクッ、とキッチンに心地よい音が
響く。
その瞬間、お父様の鋭い目が限界まで見開かれた。
「な、なんだこれは……! 濃厚でありながら、後味が驚くほど瑞々しい。
この黄色いクリームと果実の酸味の調和は一体どうなっているのだ!?」
「うわ、何だこれ! めっちゃくちゃ
美味いじゃん!」
次にタルトを口に放り込んだライダ兄様が、椅子の背もたれをガタッと鳴らして身を乗り出した。
やんちゃな瞳をキラキラと輝かせ
粉まみれの顔で豪快に笑う。
「おいエルハルト! 俺のあの絶妙な
混ぜ加減と、お前の火加減が奇跡の合体を遂げちまったな! ほら、父上もアレクも、もっとガツガツ食えよ!」
「ふふ、ライダ、落ち着きなさい。
せっかく萌のために作ったお菓子なの
だから、もう少し上品に味わわないとね」
アレク兄様が、そんな騒がしい弟を
たしなめるように、穏やかな微笑みを浮かべてフォークを口元に運んだ。お茶を静かに一口読み、どこまでも優しい声で私を見つめる。
「……うん、本当に美味しいよ、萌。
我が国の宮廷菓子は砂糖の甘さが強烈なものばかりだけれど、これは君のように優しくて、いくらでも食べられて
しまうね。
頑張って生地を練った甲斐があったよ」
「まぁ、本当に素晴らしいお味です
こと。あなた方が粉まみれになって奮闘していたお姿を見て、少し心配しておりましたけれど、これほど格式高く
優しいお菓子が出来上がるなんて思いもしませんでしたわ」
お母様が上品にハンカチで口元を抑えながら、おっとりと艶やかな微笑みをみんなに向けた。お母様の上品な言葉に
お父様もどこか誇らしげに胸を張る。
「にゃあ! にゃあ! これ、すっごく美味しいにゃあ!」
その横で、みちゃーれがフォークを
両手で握りしめながら、大興奮でタルトを頬張っていた。
口の周りにカスタードクリームをいっぱいつけて、お耳をピコピコと動かしながら「にゃあにゃあ」と美味しさを爆発させている。
「このサクサクのところと、とろとろのクリームがたまらないにゃ!
毎日食べたいにゃあ!」
みんなが笑顔で机を囲み、賑やか
にお喋りを楽しんでいる。
そんな大人たちの幸せそうな姿を見つめながら、私は小さ浅お腹がぽんぽこに膨らむまでタルトを夢中で食べ進めた。
(みんなが喜んでくれて良かった。
前世の味が、この世界でもみんなを笑顔にしてる……)
温かいキッチンの空気と、満腹感。
解けた緊張感。
そしてジント様のトントンと背中を叩く心地よい手のひらの動きに、私はだんだんとお目目がトロンとしてきた。
ジント様の胸元にまぁるい体をすり寄せ、幸せな余韻に浸りながらうとうととし始めた、その時だった。
パササッ……!
私のすぐ目の前の机の上に置いて
あった、前世の記憶や世界の謎が記される『不思議な本』が、誰の手も借りずに突然ひとりでにページをめくり始めたのだ。
「む……? 萌の本が、急にどうしたのだ?」
お父様が不審そうに眉をひそめる。
お茶会の温かい空気は一瞬にして吹き飛び、全員の視線が机の上の本へと集中した。
めくれ止まったページから、ブワッと淡く、どこか冷ややかな光が放たれる。
ジント様が私を庇うようにきゅっと
腕の力を強める中、光るページの上に
まるで黒いインクがじわじわと染み出すようにして、新しい『文字』が静かに追加されていった。
そこに浮かび上がったのは、見慣れた前世の言語――。
『――否。これではない。求めているものは、これではない』
冷酷に、そして明確に、今私たちが
作ったタルトを全否定するような
言葉が、そこに刻まれていた。
「萌……なんて書いてあるんだい?」
ジント様が真剣な面持ちで私の顔を覗き込む。お父様たちも、本の放つ異様な気配に息を呑んでいた。
みちゃーれも「にゃ……?」とフォークを止めて首を傾げる。
私は、ぽんぽこだったお腹の満腹感も
一気に吹き飛び、真っ白なお耳をピきンと直立させたまま、その文字を何度も見つめ直した。
(これではない……? 嘘でしょ……?
ライダ兄様もアレク兄様もお母様もあんなに喜んでくれて、間違いなく前世のあのカスタードタルトの味だったのに……。普通の材料だけじゃ、ダメだったってこと……!?)
あんなに必死に試行錯誤して、みんなで笑い合って完成させた特製フルーツ
タルト。
それなのに、本が突きつけてきた
「これではない」という冷たい否定の
メッセージ。
一体、何が足りないというのだろうか。
幸せに満ちていた公爵邸のキッチンに、新たな謎と、不穏な静寂が静かに広がっていくのだった。
(つづく)
第126話をお読みいただきありがとうございました!
みんなで椅子を並べて机を囲む、アットホームで世界一甘いお茶会の時間。
やんちゃなライダ兄様、穏やかなアレク兄様、お上品なお母様、そして「にゃあにゃあ」と大喜びするみちゃーれが加わり、公爵家の温かい絆がこれ以上ないほど賑やかに描かれました!
しかし、そんな幸せの絶頂のなか、突然光り出した本に追加された文字は、「これではない」という冷酷な否定……。
一体何が違ったのでしょうか?普通の材料だけでは到達できない「何か」があるのか、それとも萌ちゃんの記憶の奥底にまだ別の秘密があるのか……!?
おかげさまでブックマークも60人を突破し、物語も
さらに熱い盛り上がりを見せております!
本当にありがとうございます。この不穏な引きに
執筆している私も次の展開にワクワクしています。
「みんなのお茶会に癒やされた!」
「みちゃーれの食べっぷりが可愛い!」
「まさかの急展開、続きが気になる!」
と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で萌ちゃんたちのこれからの挑戦を応援していただけると嬉しいです!
次回の第127話では、本の否定にショックを受けるみんなと、ジント様が気づいた「ある違和感」について迫ります。どうぞお楽しみに!




