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第124話:異世界の甘い魔法、カスタード作りに挑戦です!

いつも温かい応援をありがとうございます

!前回は、萌ちゃんが食べたいお菓子が前世で大好き

だった

「カスタードたっぷりのフルーツタルト」

に決定しました。

おかげさまで、ブックマーク50人突破&注目度44位という最高の勢いの中で今回の第124話をお届けできます!

本当にありがとうございます!

今回は、特別な高級食材を使うのではなく、公爵邸の

キッチンにある「ごく普通の卵やミルク、小麦粉」だけを使って、みんなで初めてのタルト作りに挑みます。

しかし、異世界にはない未知のお菓子作り。

エプロン姿の大人たちは大苦戦&失敗続きでキッチンは大騒ぎに……!?

総監督のうさぎ萌ちゃんと、必死に頑張るみんなの姿をどうぞお楽しみください!

「よし、材料はこれだけだな」





 公爵邸の広大なキッチンに、お父様の引き締まった声が響いた。





 作業台の上に並んでいるのは

お城の倉庫から運ばれてきた

ごく一般的な卵、今朝搾ったばかりの

新鮮なミルク、小麦粉、砂糖、そして

今の季節に中庭の菜園で採れる普通の

赤い木の実(いちごに似た果実)

だけだ。





 国中から幻の食材や魔力を持つ特別らな果実をかき集めることもできたが

萌の魂が求めているのは、前世のOL時代に『身近にあった、お小遣いで買えるご褒美の味』。




だからこそ、あえて特別な魔術的食材は一切使わず、この世界のごく普通の材料だけで再現することにしたのだ。





 お父様も、ライダ兄様もアレク兄様も、そして宮廷魔術師長のエルハルト

まで、全員が職人が使うような純白の

エプロンをしっかりと身に纏っている。





 ジント様の肩の上には、白くて丸いうさぎの姿になった萌がちょこんと座り

長いお耳をピコピコと動かして

「総監督」としての構えをとっていた。






「まずは、卵とミルクと砂糖を混ぜて

火にかけ、じっくりと煮詰める……

『カスタードクリーム』というものを

作るのだな?

よし、最初にこの私がやってみせよう」





 ライダ兄様が頼もしく腕をまくり

自信満々でお鍋に材料を入れた。





萌が肩の上から

「ぷう!(焦げないように、とにかく優しく混ぜてね!)」

とおててを振る。 





しかし、異世界の宮廷料理に

「卵液を火にかけながら、絶妙なとろみをつける」という繊細な概念は存在しない。






「おお、だんだん底の方が固まってきたぞ! ダマにならないよう、もっと

力強く、全力で混ぜねばな!」






「ぷ、ぷうぅっ!?

(違う、そっちじゃない、早すぎるし

力が強すぎるーっ!)」






 ライダ兄様が騎士としての強靭な

腕力でゴリゴリとお鍋を激しくかき混ぜた結果、強火で一気に加熱された

卵液は、とろりとした滑らかなクリームではなく、ぽろぽろと水分が抜けた

『ただの甘いスクランブルエッグ』に

なってしまった。






「……む。なんだか、萌の言っていた

滑らかで濃厚なものとは、程遠い仕上がりになってしまったな……」






 ライダ兄様が、木べらですくった謎の甘い卵料理を見て、ガックリと大きな

肩を落とす。






「ふっ、ライダはいつも力任せすぎるんだよ。料理というものは科学だ。

ここは魔力による完璧な温度管理が

必要不可欠なのだよ」





 次に自信たっぷりに名乗りを上げたのは、宮廷魔術師長のエルハルトだった。





新たにお鍋に材料を入れ、不敵に

微笑む。





「私の得意とする生活魔術で、お鍋の底を均一に、一定の温度で加熱すれば……あ、あれ?」






 ボフッ! という鈍い音と共に

お鍋から黒い煙が立ち上がった。






エルハルトが緊張のあまり、ほんの一瞬だけ指先の魔力を強めてしまい、一瞬でお鍋の底が真っ黒に焦げ付いてしまったのだ。





「けほっ、けほっ! す、すみません

公爵様、このカスタードというやつ

火加減が繊細すぎますぞこれ!」





「エルハルト、危ないから下がっていなさい」 






顔を薄黒くしたエルハルトを、お父様が冷ややかな呆れ顔で下がらせる。






横で見守っていたベテランの料理長

すら「卵に完全に火を通さず、かつ

分離させずに滑らかにするなど……

我が城のこれまでの常識にはございま

せん」と、青い顔で頭を抱えていた。





「では、クリームの火加減が難しいの

なら、私が土台となる『タルト生地』を作ろう」 






お父様が厳しい表情のまま、小麦粉と

バターの大きな塊に向き合った。





萌の記憶にある、あのサクサクとした

心地よい食感のクッキー生地を作る

べく、大きな手で粉をこね始める。




 だが、ここでも異世界の大きな壁が

立ちはだかった。





「萌が美味しく食べられるよう、生焼けにならぬよう、しっかりと中まで強固に焼き上げねば……!」





 お父様は真面目すぎるがゆえに

オーブンの前で腕を組んだまま

じっくりと、執拗なまでに焼きすぎてしまった。 






チン、と鈍い音がして、焼き上がった

タルト生地をオーブンから取り出してみると。





「……硬い。あまりにも硬すぎるな」 






アレク兄様がコツコツと指の関節で叩くと、まるで鉄板か、鍛え上げられた盾のような鈍い金属音がキッチンに響いた。






お父様が試しに鋭い調理ナイフを突き立てようとしたが、刃先がカチンと

大きな音を立てて弾かれてしまう。






「これでは、萌のあの可愛い前歯が折れてしまうわ……!」 







お父様はあまりのショックに、真っ白

な小麦粉にまみれたまま、ガタッと

床に膝をついた。






「僕も代わりにやってみたけれど……

今度はバターを練りすぎて、ボロボロに崩れて砂のようになってしまったよ」 






アレク兄様が作った生地は、触っただけでサラサラと崩れてしまい、タルトの

形を保つことができない。 






キッチンの中は、焦げた匂いと、宙に

舞う真っ白な粉煙、そして積み上がった失敗作の山に囲まれ、大人たちの

どんよりとした重いため息で満たされてしまった。





(みんな、私のためにあんなに一生懸命になって、エプロンまでつけてやってくれているのに……。

前世ではデパ地下で当たり前に買って

食べていたお菓子が、ゼロから作ると

なると、こんなに難しいなんて……) 







ジント様の肩の上で、萌はきゅっと胸が締め付けられるような申し訳ない気持ちになり、長いお耳を外側へとしょんぼりと垂らした。






 その時、ジント様が肩の上の萌を

そっと両手で包み込み、自分の暖かい胸元へと優しく引き寄せた。






「みんな、そんなに落ち込まなくて

大丈夫だよ。

これだけ萌を喜ばせるために全力になれるみんななら、絶対に次は成功する」 







ジント様は優しく微笑み、萌のまぁるい小さな頭をそっと大きな指先で撫でた。







「萌。もう一度、君の記憶を僕の心に

直接預けてくれるかい?

『どのくらいの優しい火の強さ』?

『どんな風にバターが小麦粉と混ざり

合っていたか』……君が前世で見ていた景色を、僕がみんなの頭の中に伝えるから」






「ぷう……っ!」





 萌はジント様の頼もしい言葉に

救われ、潤んだ瞳でコクンと大きく頷いた。






ジント様の瞳がほんのりと温かい光を帯び、萌の記憶にある

『デパ地下のタルト』の、あの甘くて

優しいメイキングの感覚が、ジント様の精神魔法を通じてキッチン全体へと

静かに共有されていく。





「なるほど、これほどの弱火で、

このように混ぜるのか……!

よし……もう一度だ。今度こそ、萌を

笑顔にする最高のタルトを作ろう」




 お父様が服の粉を払い、力強く立ち上がった。


失敗続きの暗かったキッチンに

再び温かい希望の火が灯るのだった。

(つづく)

第124話をお読みいただきありがとうございました!

今回は「今ある普通の材料だけ」で挑んだからこそ

大人たちの試行錯誤と苦戦がリアルに描かれました!

ライダ兄様の甘いスクランブルエッグ、エルハルト様の黒焦げ、そしてお父様の「剣も弾く鉄壁のタルト生地」など、粉まみれで大真面目にやらかす大人たちが

愛おしかったですね(笑)。

失敗続きでしょんぼりする萌ちゃんを、ジント様が

精神的にも魔法的(記憶の共有)にも優しくフォロー

するシーンは、やっぱり二人の特別な絆を感じてキュンとします。

おかげさまでブックマークも50人を突破し、注目度も

44位です!

読者の皆様の応援が

本当に執筆の支えになっています。

「みんなの粉まみれの奮闘が愛おしい!」

「ジント様のスパダリっぷりが最高!」と

思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】や【評価

(★★★★★)】で萌ちゃんたちを応援していただけると嬉しいです!

コメントも頂けたら嬉しいです

次回の第125話では、ジント様のナビゲートのもと

いよいよ「奇跡のカスタード&サクサクタルト生地」

が形になります!どうぞお楽しみに!


9月28日月曜日はおやすみします

9月29日火曜から再開致します

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